新首相に選出された野田佳彦民主党代表が党運営の要となる幹事長に輿石東参院議員会長を起用した。参院からの起用は初めてだ。この人事を政治停滞を脱して政策を実現する第一歩としてほしい。
「挙党態勢の象徴」とでも言おうか。輿石氏は、代表選で海江田万里経済産業相を支持した小沢一郎元代表に近い。
野田氏とすれば、輿石氏の起用で党内融和を図ることに加え、少数与党として厳しい国会運営を強いられる参院での指導力を期待できるという読みがあるのだろう。
輿石氏も「党内融和に全力を尽くす」と述べた。この人事が同じ民主党内で「脱小沢」「親小沢」が対峙(たいじ)する「怨念の政治」を脱するきっかけになるのなら前進だ。
ただ、形ばかりの挙党態勢では意味がない。輿石氏に限らず有為な人材は、野田氏を推したか否かに関係なく登用すべきだ。
野田氏は、前原誠司前外相を起用した政策調査会長について閣僚と兼務させない方針だ。
民主党は二〇〇九年の政権交代に伴って政策調査会を廃止し、大臣、副大臣、政務官の政務三役が政策を立案、決定する方式に変えた。政策決定を内閣に一元化するのが狙いだ。
しかし、政策決定に関われない議員から不満が続出したため、菅直人首相が政調を復活させ、玄葉光一郎政調会長が国家戦略担当相を兼務する今の形となった。
自民党が確立した政務調査会による政策決定過程を、政府と与党を使い分ける二元体制だとして変えようとする意気込みは理解するが、いまだ試行段階にあり、うまく機能しなかったことも事実だ。
野田氏は政調に政策決定権を持たせることも検討する意向を示している。政権与党にふさわしい民主党流の政策決定システムを早く整えるべきである。
新内閣の発足は九月二日になる見通しだ。適材適所はもちろん、この際、女性の閣僚起用を求めたい。蓮舫氏が辞めてから、今の菅内閣では女性閣僚がいなくなった。近年では異例だ。
東日本大震災と福島第一原発事故を受けて復興担当相と原発事故担当相が新設され、そのあおりで法相が環境相を兼務せざるを得ない状況でもある。
まずは、大臣の担当見直しを進めると同時に、副大臣の活用などに努めなければならない。閣僚数を現行の十七から増やす内閣法の改正はそれからでも遅くはない。
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