制作者インタビュータイトル
トップランナー・インタビュー第12弾は、この10月からスタートする
話題のドラマ『パーフェクト・リポート』のプロデューサー、共同テレビジョンの森安彩さん。
これまで『アタシんちの男子』、『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』など、
数々のヒットドラマを生み出してきた森安プロデューサーに、作品へのこだわりや、女性ならではの業界での工夫、
プロデューサーとして大事にしていることについてお話を伺いました。(聞き手/田淵智子)

―たくさんのヒットドラマの制作に携われていますが、この業界に入られたのはどのようなきっかけだったのですか?

子供の頃から歌やダンスで表現することが大好きだったんですが、大学生の時に高校時代の仲間達とダンスと音楽を融合させた舞台を自分達で一からやったんです。その時に演じるだけではなく、舞台の手配をしたり、衣装を縫ったり、演出をしたり、裏方の仕事をやってみて、「舞台全体を作っていくのって面白いな」と思ったのがきっかけですね。それでモノづくりや表現に関われることを職業にしたいと思いました。



―なるほど。そこから実際にドラマの業界にはどのようにして入られたんですか?

普通に大学の就職課に行って、就職試験を受けました(笑)。共同テレビの関連会社のベイシスに受かって今に至ります。
私が入社した頃は、最初の1カ月間でドラマと情報バラエティの研修を受けて、その後希望を出して配属が決まりました。最初からドラマを希望していたので、ドラマ部に配属されて、そこから異動せずにドラマ一筋でやっています。配属されると、プロデュース部と演出部のどちらかに進むのですが、当時プロデューサーが不足していたことと、当時プロデューサーやAP(※注1)は女性が多かったので、おのずとプロデュース部の方に進むことになりました。

―配属当初は大変だったかと思いますが、実際はいかがでしたか?

大学時代の舞台の経験があったので、時間の不規則さとか、寝る時間がないことに驚くことはなかったですね。ただ、現場で何をすればいいのか分からないことへの焦りや、想像以上に何もできないことへの悔しさは大きかったです。
制作部の人にいろいろ教えてもらいながら、現場に一番最初から最後までいて、お弁当配りから、車の誘導、人止め、ごみのばらしなど、とにかく何でもやりながら撮影現場のことを覚えていきました。

―その当時、意識していたことはありますか?

毎日「やらなきゃいけない帳」というのをつけていました。今日できなくて悔しかったことを書きとめて、翌日の自分に課題を設けるんです。毎日たくさんのことをこなさないといけない仕事なので、その中で自分の実力を知って、「自分ができることは何か?」を考える訓練になりましたね。
それと、分からないことは「教えてください」とすぐに聞くようにしていました。聞かずにできないといろいろ言われますが、聞くと教えてもらえるし、そこからコミュニケーションが生まれるので信頼関係ができたりして、スタッフの人達との関係づくりにもつながりました。
とにかく、新人AP時代に現場で泥だらけになりながら身に付けたことが、プロデューサーとなった今でも基礎になっています。

―こつこつと現場での経験を積みながら、APからプロデューサーになられたと思うのですが、その過程でターニングポイントとなった出来事はありますか?

プロデューサーへの過程は、どれだけの作品や現場の数をこなしたかということが大事だと思います。現場での経験を積んでいくことで、先手を打ちながら、冷静にスケジュールを回せるようになります。それと、一人で全ての仕事をこなすことは、どんなにベテランになっても無理なので、他のスタッフに協力してもらえるように関係を作っていくことも大事なこと。
それらができるようになった時に、台本や監督の演出に興味を持つ余裕が出てきました。私の場合、そのタイミングで先輩プロデューサーに本の読み方を教えてもらって、どんどん台本作りの提案をするようになりました。100くらい質問や提案をし続けて、やっと1つ採用してもらえたときに、初めてクリエイティブ面で手応えを感じられてうれしかったことを覚えています。

―制作の現場は男性が多いと思うのですが、女性ということで苦労されたことはありますか?

女性ということでなめられることはありましたが、それほど気にしたことはないですね。
実際は女性だから苦労することよりも、女性だからこその細やかさや気配りが現場で発揮できて良かったと思うことの方が多いです。あと、女性の方が男性よりもキャラが立つので、居場所を作りやすいような気がします。何事もそうだと思うんですけど、足りない部分があれば、補うように努力することが大切だと思います。

―いよいよこの10月から最新作『パーフェクト・リポート』が放送されますが、どんな作品なのですか?

フジテレビの日曜21時からの新設の「明日への力 ドラマチック・サンデー」というドラマ枠で放送される作品です。明日から1週間がスタートするという休日の夜は家族がテレビの前に揃いやすい時間帯なので、みんなで観て元気が出る作品にしたいと思っています。報道記者として信念をもって取材に打ち込む女性を描いた熱いドラマです。明日から仕事を頑張ろう!と前向きになれます。新しい枠で、新しいチームが生み出す現場のわくわく感も伝わるといいなと思っています。

―とても楽しみですね。もう撮影はスタートされていると思いますが、作品を作る際にロケ地はどのように決めるのですか?

わたしはプロデューサーなので、実際にロケ地選びは行わないんですけど、メイン舞台になる場所に関しては、どんな場所が作品のイメージに合うか、監督やスタッフと話をするようにしています。
ロケ地は、『アタシんちの男子』や『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』のようにファンタジー性の強い物語に視聴者を誘導する場合と、『絶対零度~未解決事件特命捜査』のように物語を日常的に見せる場合があると思います。それぞれの場所の持つ雰囲気や撮りやすさ、時間の縛りの中で、台本の設定とロケ地のどちらを優先するか、議論しながらバランスをとっています。

―今プロデューサーを目指して現場で奮闘している方々に何かメッセージをいただけますか?

プロデューサーの仕事は現場の総合責任者なので、視聴者の目線や制作の目線などあらゆる角度から作品を見て、撮影を行い、できた作品を編集、納品、さらにそれをどうPRするかというところまで考えなくてはなりません。そのためにも、とにかく現場の数をきちんとこなしてきた土台が必要。才能よりも、99の努力とまわりの協力の上になりたつ仕事ですね。努力しない人には難しいと思います。

―最後に、今後森安さんがやりたいことを聞かせてください!

結婚(笑)。あ、仕事でですね。
今の仕事が本当に好きなので、一生現場人でいて、メッセージ性があって中身のある作品を世の中に出していきたいと、いつも思っています。昔に比べて余裕も出てきたので、やったことがないラブストーリーとか、すごいアクションとか、苦手なタイプの作品に挑戦してみたいですね。


※注1:AP…アシスタント・プロデューサーの略



【インタビューを終えて】

『パーフェクト・リポート』の制作中で、丸2日ちゃんと寝ていないお忙しい中でインタビューに答えていただきました。とにかくドラマを作ることが好きで、良い作品を作りたいという情熱が、お話の中でも伝わってきました。自分の弱点とポジティブに向き合って、それを補う努力を惜しまずきちんとお仕事をこなされてきたことが、良い作品づくりにつながっているのだと感じました。ご協力いただきありがとうございました。

『パーフェクト・リポート』は、10月17日(日)21時より、フジテレビ系にて放送!

顔写真

株式会社共同テレビジョン/プロデューサー 森安彩さんプロフィール

1974年生まれ。早稲田大学大学院人間科学研究科卒業後、株式会社ベイシス入社。 フジテレビ系ドラマ『TEAM』や『初体験』などを経て、プロデューサーへ。『赤い糸』『アタシんちの男子』、『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』、『絶対零度~未解決事件特命捜査~』など数々のヒット作を生み出した。10月からは『パーフェクト・リポート』が放送される。

株式会社共同テレビジョンの情報はこちら


2010年10月 1日

聞き手/田淵智子

業界トップランナー・インタビューへ戻る