韓国のLNG調達にメドも予断を許さぬ価格上昇リスク
東日本大震災で高騰したLNG(液化天然ガス)のスポット価格が、上昇を続けている。東アジア向けのスポット価格は震災直後、原発停止に伴う日本での需要急増を受け、震災前の100万Btu=9ドル台から約12ドルまで跳ね上がった。だが「上昇幅は小さかった」と三菱商事幹部は振り返る。
その理由は、世界の年間LNG輸入量の約15%に当たる3000万トン強(2010年)を輸入し、日本に次ぐ世界2位のLNG輸入国である韓国からの“恩返し”だ。
発電用を主とする日本と違い、韓国のLNGは、オンドル(床下暖房)など冬場の暖房用が主流で、夏冬の需要差は倍近い。このため、韓国は例年なら、在庫が底を突く春先から冬に向けたスポット調達を始める。
ところが、韓国は今年、震災に見舞われた日本のため、自国のスポット調達を差し控えていたのだ。
じつは、01〜03年、大寒波が韓国を襲った際、日本の電力会社が韓国にLNGを融通した歴史がある。韓国ガス公社首脳は、日本の電力会社幹部に「これまでの恩の一部を返す」と告げたという。
しかし先月、その韓国ガス公社も「スポット買いを再開せざるをえない」と日本側に“仁義”を切ってきた。冬に向けた調達のタイムリミットを迎えた韓国の参入以降、価格は現在、震災前の1.5倍に当たる約15ドルに上昇した。
足元では、「今月下旬、韓国の調達量もメドが立った。価格がさらに急上昇する可能性は薄まった」と別の商社幹部は胸をなで下ろす。ただ、今冬の寒波次第で、韓国はさらにLNGのスポット買いを積み増さざるをえず、予断は許されない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 宮原啓彰)
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