【萬物相】海軍基地と観光地
地中海を望むフランスの美しい港、トゥーロンは毎年6月に音楽都市に様変わりする。今年で30回目を迎えた「トゥーロン音楽祭」では、シャンソン、ジャズからロックに至るまで、あらゆるジャンルの公演が行われた。市民と観光客は屋内で、そして屋外で昼夜を問わずステージを満喫した。政府と地元自治体の後援により、全てが無料だ。
トゥーロンでは11月に国際図書展も開かれるが、実は文化都市としてではなく、海軍基地としての方が有名だ。かつてルイ14世が要塞の建設を指示し、フランス革命後には、革命に反対する王党派が招き入れた英国軍をナポレオンが撃破した場所だ。現在はフランスの地中海艦隊、空母シャルル・ド・ゴールの母港となっている。同時にクルーズ船、ヨットも平和に行き交うリゾート地として愛されている。
米国のサンディエゴは、年間通じて天気に恵まれ、風景も美しい。ここは米太平洋艦隊の母港だ。空母2隻をはじめ、約50隻の艦船、約400機の航空機が駐留している。300万人の住民のうち、軍人が9万人を超え、国防総省がさまざまな公共工事で地域経済を発展させてきた。メリーランド州のアナポリスは、人口が34万人にすぎないが、海軍士官学校がある港町だ。おかげで年間600万人を超える観光客が訪れる。
イタリアのナポリ、オーストラリアのシドニー、中国の海南島はいずれも世界的な観光地でありながら、国の安全を守る海軍基地がある場所だ。
韓国では、済州島の江汀地区で海軍基地建設をめぐる賛否論争が過熱している。済州海軍基地は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権当時、地域住民の同意を得て、合法的な手続きを経て始まった事業だ。しかし、全国で左派勢力が結集し、反対デモを主導。海軍基地が「平和の島」という済州島のイメージや環境を損ね、外国人観光客が来なくなると主張している。
慶尚南道の鎮海には海軍基地があるが、毎年春には桜の花見客でにぎわう。鎮海で幼年期を過ごした小説家、鄭美景(チョン・ミギョン)は最近コラムで「軍港・鎮海がどこの海辺よりもきれいなように、江汀もその名の通りに浄潔(韓国語で「浄」と「汀」は同音)な姿を維持しながら、国家安全保障の重責を担うことができると思う」と書いた。海軍基地があっても、済州島は「平和の島」であり続ける。海軍基地をやみくもに「戦争基地」と決め付けるよそ者さえいなければ、島の平和はおのずと保たれる。
朴海鉉(パク・ヘヒョン)論説委員
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