2011年8月28日10時44分
「ライフ――いのちをつなぐ物語」(9月1日公開)は、イギリスの公共放送BBCが、35億円の制作費と6年という歳月をかけて、野生の生き物を追ったドキュメンタリーだ。3千時間の映像素材を90分に凝縮し、命を次世代へと受け継ぐ姿を描く。
映画は、南極で子育てをするウェッデルアザラシから始まる。食べ物もほとんどない極寒の地であえて過ごすのは、天敵がここでは暮らせないからだ。共同監督の一人、マイケル・ガントンは「ヘリから見下ろすと、周りにアザラシの親子以外は何もない。子育てのために、こんなところを見つけるなんてすごいことだ」と話す。
70人を超えるカメラマンが、最新のカメラを持って世界中に散った。目指したのは「動物と同じ目線」だという。
中央アメリカのコスタリカでは、真っ赤なイチゴヤドクガエルを接写した。10グラムしかない小さな両生類が、オタマジャクシを背中にのせて木に登る。我が子を安全な水たまりまで運ぶためだという。水面を走るトカゲのバシリスクや、地面を滑走するハネジネズミの姿も至近距離で撮っていて迫力満点だ。
ロケ地は18カ国の24カ所。生き物の行動は、どこか人間の姿を見ているようでもある。もう一人の共同監督マーサ・ホームズは「映画的なものにしようと常に意識した」と話す。「場面ごとに主人公がいて、主人公にはチャレンジがあり、困難を乗り越えていく。学術的に貴重な映像が撮れても、物語に合わなければ使わなかった」
雪の中、温泉に入るニホンザルも出てくる。「世界には知らない人がたくさんいる。愛らしくて、賢くて、とても人間的ですね」とホームズは話した。