どこかで見たぞ(笑)


作:逃げ馬









 ここは、剛気体育大学付属高校。 一応は”共学”の高校なのだが、なぜか、女性は職員も含めて一人もいない・・・・男ばかりの高校だ。
 この日も、青いジャージ姿の数学の担当の国崎は教科書を持って1年3組の教室のドアの前に立った。
 「フ〜〜ッ・・・」
 大きくため息をつくと、教室のドアを開けた。汗臭い・・・・男の匂いが発ち込める教室に、ブレザーの制服姿の男子生徒たちが机の前に座っている。普通の学校に比べると、居並ぶ生徒たちは、がっしりとした体つきをしている。
 『まったく・・・・男臭い学校だな・・・・』
 そう思いながら教卓に向かって歩いて行く国崎自身が、数学の教師でありながら鍛え上げられた肉体を持ち、格闘技のk-○に出場すれば、野獣のような選手とでも互角に試合をするのではないかという印象を彼の教え子達に与えているのだが・・・。
 「起立!」
 号令と同時に生徒たちが立ちあがる。
 「礼!」
 生徒たちが国崎に頭を下げると同時に、国崎もぺこりと頭を下げた。
 「・・・・じゃあ、教科書を開いて・・・・」
 国崎は、教室の生徒達を見回しながら、
 「今日は・・・35ページからだな・・・・」
 国崎は教科書を開くと黒板に向かい授業をはじめた・・・・。



 『退屈だな〜・・・・』
 新谷正孝は、このクラスの生徒・・・・サッカー部の新入部員だ。
 教壇では国崎が授業を進めている。しかし、その国崎の声は今の新谷にとってはまるで子守唄のように・・・新谷の瞼が重くなってきた・・・・大きく船を漕ぐように・・・・新谷は・・・。
 


 クラブを終えた新谷が部室から出てきた。すでに部員たちはみんな家に帰っている。新谷も大きくため息をつくと歩き始めた。
 「全く・・・・うちの先輩たちは・・・人使いが荒すぎるんだよ!」
 毒づきながら歩いていると、
 「新谷君!」
 ハッとして振り向くと、ショートカットの髪のブレザー姿の可愛らしい少女が、大きな瞳をクリクリさせながらこちらを見つめている。
 「君は・・・?」
 「わたし・・・あなたをずっと見つめていたの・・・かっこいいなあなんて思いながら・・・」
 少女が俯いた。頬が赤く染まっている。
 「・・・・これ・・・・」
 少女がリボンのついた小さな箱を差し出した。驚く新谷。
 「わたし・・・・新谷君が好き!」
 澄んだ大きな瞳で見つめられる新谷。 思わず少女の小さな肩を抱くと、少女が瞳を閉じた。二人の唇が近づいていく・・・・。



 「新谷!!」
 ハッとして目を開けた新谷に向かって国崎の投げたチョークが唸りを上げて飛んでくる!
 『150km/h!!』
 「ウワッ?!」
 チョークが額にあたった新谷が椅子ごともんどりうってひっくり返る。大きな音が教室に響き生徒たちの笑い声が起きた。国崎が呆れたように床にひっくり返っている新谷を見つめている。
 「なにやってるんだ・・・・新谷!」
 新谷が慌てて立ち上がった。 制服についた埃を払って周りを見回すと、クラスメイトたちの視線が彼に集中している。
 「何をしていたんだ・・・・新谷!!」
 国崎が厳しい口調で問い詰める。新谷は顔を真っ赤に染めて叫んだ。
 「夢を見ていました!!」
 教室中が爆笑に包まれていく。国崎は半ば新谷を馬鹿にした口調で、
 「おまえ・・・・夢を見ていたなんて・・・・」
 するとその時、
 「ア・・・・アアアッ?!」
 思わず声を上げる新谷は、自分の体が何か信じられない力によって変化をしていくのを目の当たりにしていた。ブレザーの制服の胸のあたりが、まるで下から押し上げられるようにムクムクと膨らんできている。思わずその形の良い膨らみを両手で掴む。
 「アッ?」
 胸からは『掴まれている』という感覚が、彼の脳に伝わってくる。そして掌からは、今まで感じたことのない柔らかい感覚が・・・・そして思わずあげた声は、まるで可愛らしい女の子のような声だった。短く刈り込んでいた髪の毛はスルスルと伸びていくと綺麗なショートカットの髪になってしまった。ニキビの出ていた肌は、ツルツルの綺麗な肌に変わっていく。教室にいる生徒たちは信じられない光景を目の当たりにして、身動きすら出来ずにいる。 
 その間にも新谷の体の変化は続いている。ウエストにはくびれが出来、ヒップはまん丸に大きくなりズボンのお尻の部分がはちきれそうになっている。
 「いったい・・・何が・・・?」
 可愛らしい声で呟きながら、すっかり変わってしまった自分の体を、自分のものとは似ても似つかない細く綺麗な指で撫で回す新谷・・・だった少女。
 驚きと恐怖の目で見つめる生徒たちの目の前で新谷の変化は続いていく。ネクタイの長さは短くなり、真っ赤なリボンになって胸元で結ばれる。グレーのズボンはドンドン短くなっていく。
 「アアアッ?!」
 驚きの声を上げる新谷の目の前でズボンは一本にまとまって青いチェックのプリーツスカートに変わってしまった。足元を見下ろすと、その美しい足には紺色のソックスを穿いている。今や新谷は、すっかり可愛らしい女子高校生に変わり果てていた。窓ガラスに映る自分の姿を見つめる新谷。窓ガラスには、不安そうな眼差しでこちらを見つめるショートカットの髪の美少女がいた。そこに映っているのは、あの夢に出てきた美少女だった。そんな新谷を凍りついた表情で見つめていた国崎と生徒たち・・・次の瞬間。
 「アアアアッ?」
 「・・・まさか?!」
 国崎の目の前で、クラスの生徒たち全員が自分の体を見下ろしたり、なでまわしたりしている。
 「おまえたち・・・?」
 国崎は思わず言葉を飲み込んだ。彼の目の前で生徒たちが全員が次々女に変わっていく。いまや教室の中は、教壇に立つ国崎以外は・・・全員が女になってしまっていた。
 「ウフフッ・・・・」
 微笑みながら国崎を見つめる新谷だった少女。突然、新谷だった少女が教室の真中で踊りだすと、クラスの全員がそれにあわせて踊りだす。体をくるっと回転させるたびにプリーツスカートがふわっと広がり健康的な脚線美が国崎の目を刺激する。
 「おまえたち・・・?」
 国崎が呟くと、新谷だった少女はくるっと体を回転させて、国崎に向かい合う形でピタリと体を止めた。にっこり微笑むと、右手で国崎を指差した。
 「エッ? 先生も?」
 新谷だった少女に言われて自分の体を見下ろす国崎。
 「アアアッ?!」
 思わず声をあげる。
 ジャージの胸のあたりを大きなふくらみが出来ていく。ウエストはグググッと細くなりくびれができ、お尻が大きくなり足は内股になっていく。鍛え上げられた腕の筋肉は溶けるように消え去り、だぶだぶになってジャージの袖の先から細く綺麗な指先が見えているだけだ。
 「まさか・・・・俺までが・・・?!」
 そう言った声は、聞きなれた自分の声ではなかった。その間にも、頭がむずむずしてくる。
 「なんだ?」
 短く刈り込んだ髪がいきなり背中の中ほどまで絹糸のような黒髪になって垂れ下がる。
 そして、ブカブカになってしまった青いジャージがドンドン白く変化していく。
 「アッ?!」
 思わず声を上げる国崎。白く変化しつつあるジャージの下で、何かが彼の胸をキュッと締め上げた。その意味を理解して頬を赤らめる国崎。その間にも、トランクスがすべすべの生地に変化をして、ぴったり肌に吸い付いた。ジャージの上着は、白い柔らかい生地のブラウスに変わってしまった。ズボンの部分は、新谷たちと同じようにドンドン短くなり黒く変わっていく。
 「ああ・・・・まさか?!」
 国崎の目の前でズボンは膝上まで短くなりタイトスカートになってしまった。その足にはストッキングが被せられ、履いていたゴムのサンダルはパンプスになってしまった・・・・呆然と窓ガラスに映る自分の姿を見る国崎。そこには、怯えた表情でこちらを見つめる若い美人教師が映っていた。視線を教室の中に移す。生徒たちは既に自分の席に座っている。新谷だった少女がニコリと微笑む。そこは、さっきまでの男臭い教室ではなく、華やいだ女子高の教室に変わってしまっていた・・・・。








 それから一ヶ月がたった。
 あの『事件』以後、1年3組は『女子クラス』として学校から認められていた。
 突然、クラス全員が女の子になってしまって家族は大騒ぎをするだろうと誰もが思った。
 しかし、現実には家族は確かに驚いたが、たいていの親はあっさりそれを受け入れてしまったのだ・・・・中には、息子が娘・・・しかも可愛らしい女の子になってしまって大喜びをした父親もいるのだ。
 新谷の家族もそうだった。学校から説明を受け、あわてて病院に連れて行かれたが原因はわからなかった。親も困惑していたが、家に帰ってみると彼の部屋はすっかり女の子の部屋に変わってしまっていた。親は全く触っていないという。新谷たちを女にした力は、それぞれの家にまで及んでいるようだった・・・。
 仕方なく新谷は『孝美』と名前を変えて女の子としての生活をはじめた。
 しかし、今まで15年余りを男として生きてきた新谷には戸惑うことが多かった。しかも学校は本来なら『男子校』であるはずの学校だ。学校中・・・果ては大学からまで『美少女ばかりのクラス』の様子を見に来る男たちはあとを絶たなかった・・・。
 そんな孝美を救ったのは、クラブ活動だった。
 女の子になってしまった1年3組の生徒たちは、どのクラブからも引く手あまただったが、孝美はもともと入部をしていたサッカー部にマネージャーとして残ることにした。
 それは、孝美がもともとサッカーが好きだったということもあるが、いつか男に戻れた時にもう一度サッカーをしたいという気持ちの表れでもあった。
 そんな孝美は、いつしか一人の少年が気になりだしていた。『なぜだ・・・・僕は男なのに・・・・』自分の心に戸惑う孝美・・・・・そんなある日・・・・。

 

 クラブを終えた孝美が部室から校門へ向かって歩いていく。
 夕焼けが雲を赤く染めているが、空は黒く厚い雲が覆い始めていた。
 「・・・・急がなきゃ・・・・」
 孝美が足を速めて歩いていく。すると、
 「おい・・・・新谷!」
 突然呼び止められて孝美の胸がドキッとする。振り返ると、まるでジャ○ーズのタレントのような長身の少年が走ってきた。逞しい腕で孝美の肩をポンと叩くと、
 「さあ、一緒に帰ろう!」
 にっこり笑いながら、孝美に声をかける少年。 孝美の頬がたちまち赤くなっていく。
 彼は岡田健一・・・この剛気体育大学付属高校の3年生で、サッカー部のMF・・・キャプテンもつとめている。そして・・・・彼こそが、女の子になってしまった新谷=孝美が気になる男性でもあった。
 二人が夕暮れの町を歩いていく。岡田はクラブのことや学校のこと・・・テレビの話題などをいろいろと話しかけるが、孝美は俯きながら相槌をうつだけだ・・・・孝美は岡田の顔をまともに見ることも出来ない・・・。
 二人が町を歩いていく。
 「アッ?」
 冷たいものが、孝美の頬に当った。思わず空を見上げる孝美。
 「雨だ!」
 岡田が舌打ちをしながら呟いた。孝美を振り返ると、
 「急がなきゃ!」
 孝美の細い手首を掴むと歩道を駆け出した。突然手を握られてドキッとする孝美。雨は激しくなり、町の人たちは慌てて雨宿りをしたり、かばんの中から傘を取り出している。街路には、色とりどりの傘の花が増えていく。
 孝美が立ち止まった。大急ぎで学生かばんから折りたたみの傘を取り出した。傘を開くと岡田の後を追った。
 「先輩?」
 孝美が可愛らしい声で岡田を呼び止めた。
 「なんだい?」
 「よかったら・・・・」
 孝美は頬を赤く染めながら傘を岡田に差し出した。
 「これ・・・・使ってください!」
 「エッ?」
 驚く岡田。
 「あ・・・ありがとう!」
 孝美の小さな手から傘を受け取る岡田。
 「やった〜♪」
 憧れの先輩に傘を渡せたうれしさで、満面の笑みを浮かべて雨の街路に駆け出す孝美。
 岡田の目の前で孝美が軽快なステップで踊りだす。クルッと体を回転させるたびにプリーツスカートがふわりと広がり、孝美の健康的な脚線美が若い岡田を刺激する。するとどうだろう、町の人たちも、色とりどりの傘を手に孝美と一緒に踊りだす。思わず岡田は駆け出した。長い髪が首筋にまとわりつき、素足に雨の飛沫がかかる。
 「びしょ濡れだよ!」
 可愛らしい声で言うと同時に傘を差し出す岡田に向かって、
 「先輩も一緒に!」
 可愛らしい笑顔で微笑みながら孝美が答える。
 「『一緒にって』・・・・あれ・・・?」
 自分の声に違和感を感じる岡田。いや・・・・それだけではない・・・・まるでズボンを履いていないようなこの感覚・・・それに、この胸の重さはいったい?
 「ア・・・・アアアッ?」
 自分の体を見下ろして、驚く岡田。ブレザーの胸のあたりはふっくらと膨らみ、綺麗な長い髪が垂れ下がっている。そして、ズボンはチェックのプリーツスカートに変わってしまってそこから孝美と同じように健康的な足がすらりと伸びて紺色のソックスに包まれている。
 呆然と孝美を見詰める岡田だった美少女。すると、体が勝手に・・・・孝美と同じように踊りだす。
 「そんな・・・からだが・・・・?」
 自分を襲った信じられない変化と、女の子になって町の中で踊る恥ずかしさに襲われる岡田・・・。
 雨の町で二人の美少女がたくさんの人たちと一緒に踊りつづけていた・・・。






 どこかで見たぞ(終わり)









 こんにちは! 逃げ馬です。

 あまりに馬鹿馬鹿しい(笑)小説?ですが・・・。
 読まれて分かった方もおられるかもしれませんが、某清涼飲料水、○っちゃんのCMのパロディーです(^^;
 休筆中に、ファイターGTさんがチャットで、
 「読むものありません(--#)」
 「ふむふむ、どんなのが読みたいの?」
 「変身シーンがいっぱいある奴!」
 「・・・・・(^_^;)」
 そんなわけで出来たのがこの作品・・・いろいろ希望を聞いて、ついでに出演して頂いて女の子になってもらいました(笑)
 
 ホームページを再開した時には・・・・もう少しまともな物を用意しますので・・・・もうしばらくお待ちください(^^;

 それでは、お付き合いいただいてありがとうございました。また、作品の中でお会いしましょう。

 2004年2月 逃げ馬




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