03/09(水曜日)

【シリーズ】23年度予算ここがポイント![6]

- 日本が誇る科学技術=成長のプラットフォーム -

 

23年度予算案のポイントをご紹介するシリーズの第6回。
今回は、科学技術の発展に向けた取組について解説します。

 

社会の新たな課題解決への貢献~科学・技術への期待
人が装着することによって、自分の筋力以上の力が出せるようになる、ロボットスーツ「HAL」。
筑波大学大学院の山海嘉之(さんかい・よしゆき)教授らが、世界で初めて、人間の動きを検知しロボットを思いのままに動かす技術を実用化し、開発しました。
将来的に、身体的に大きな負担がかかる介護や、リハビリ、高齢者の生活支援などへの応用が、期待されています。政府は、こうした生活支援ロボットの実用化を支援しており、産業化を目指した研究開発が進められています。

 

 

ロボットスーツ「HAL」
(提供)筑波大学山海研究室/サイバーダイン社

 

より便利に、より豊かにー たゆまぬ進歩によって、私たちの生活に変化をもたらし続ける、科学技術。

 

あなたは、今後の科学技術の発展に、どんなことを期待しますか?

 

政府が平成22年1月に実施した世論調査では、「資源・エネルギー問題、環境問題、水、食糧問題、感染症問題などの社会の新たな問題は、さらなる科学技術の発展によって解決される」という意見に対して、そう思うとの回答は75.1%。

 

社会の課題解決に貢献し、日本や人類の未来を切り拓く科学技術に対する国民からの期待は、非常に大きいことがうかがえます。

 

※世論調査の結果の詳細については、こちら
http://www8.cao.go.jp/survey/h21/h21-kagaku/index.html

 

(1)医療分野への期待~画期的治療法の開発と実用化への「橋渡し」
前述の世論調査によると、「科学技術が貢献するべき分野」として最も多く挙げられたのが、「医療分野」(75.7%)でした。

 

世界でも異例のスピードで高齢化が進む中、私たちがいきいきと健康な暮らしを続けるためには、医療分野での技術革新が、大きなカギを握ります。

 

たとえば、現在、日本人の死亡原因の3分の1を占める、「がん」の研究。日本では、ペプチドワクチン療法(※)の開発など、将来的に画期的な治療法の開発につながる、世界でもトップレベルの研究成果が挙げられています。

 

※ペプチドワクチン療法:ペプチドワクチン(9~10個のアミノ酸からなる小さなタンパク質)を注射することにより、免疫力を高めてがん細胞を攻撃し、がんの増大を抑えたり、がんを小さくしたりする治療法。

 

また、京都大学の山中伸弥(やまなか・しんや)教授によって作製法が見出された、iPS細胞(人工多能性幹細胞)は、再生医療(※)の実現などに幅広く活用されることが期待される、世界でも注目を集める研究。

 

平成23年度予算案で、政府は

・次世代がん研究戦略推進プロジェクト(36億円、新規)
・再生医療の実現化プロジェクト(38億円、約6割増)

 

などを計上し、社会から期待される研究を応援しています。

 

※再生医療:いろいろな理由で損傷を受けた生体の機能を、幹細胞などを用いて復元させる医療。臓器移植などとは異なり、ドナーの不足などという問題を克服できることなどから、従来では治療が困難である様々な疾患についても対応が可能になると考えられている。

 

目覚ましい成果が挙げられている、医療・介護分野の研究開発ですが、実用化に多くの時間や労力がかかるものも多く、その成果が着実に社会に還元されるためには、国の積極的なサポートが必要です。

 

 

平成23年度予算案で、政府は
・全国7か所で形成された「橋渡し支援ネットワーク」における、自立した取組の促進(30億円、約2.5割増)
・民間の投資機関と連携した、研究支援と事業投資の連動による出口を見すえた支援(医療・介護分野以外も含め88億円、約3割増)

 

などを計上し、基礎研究と実用化の間を結ぶ橋渡しをサポートすること
にしています。

 

(2)地球温暖化問題への対応にも大きく貢献
世界で進む、地球温暖化への対応を進め、低炭素社会の実現を目指す動き。ここでも、革新的な科学技術が、大きな力を発揮します。

 

環境・エネルギー分野は、世界トップレベルの技術で日本が強みをもつ分野です。
また、今後、関連ビジネスの市場が世界規模で大きく拡大することが予想され(※)、この分野で高い技術力をもつことは、我が国の成長にも大きく貢献します。

 

※ 2005年に約150兆円であったのが、2020年には約2倍の約300兆円に拡大する見込み。

 

平成23年度予算案で、政府は
・温室効果ガス排出量の削減に貢献する先端的な技術開発のための研究を応援する「戦略的創造研究推進事業(先端的低炭素化技術開発)」(42億円、約7割増)
・大学が持つ幅広い“知”を活用して、環境やエネルギーに関わる研究開発や人材育成を促進するため、大学などを中心としたネットワークの構築を進める「大学発グリーンイノベーション創出事業」(20億円、新規)

 

などを計上し、低炭素化社会の実現に向けた研究開発を推進しています。

 

(3)日本が誇る先端技術~例えば宇宙:「はやぶさ」の成功~
昨年6月、数々の困難を乗り越えて地球への帰還を果たした、小惑星探査機「はやぶさ」。その姿は、私たちに、大きな夢や感動を与えるとともに、改めて、日本が誇る最先端技術のレベルの高さを、世界に示しました。

 

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世界で初めて小惑星から微粒子を持ち帰った「はやぶさ」
(提供)JAXA

 

この成果を着実に次につなげるため、平成23年度予算案で、政府は
・「はやぶさ」初号機の経験を活かした改良を行いながら「はやぶさ」後継機の開発を行い、平成26年度の打ち上げを目指します(30億円、前年度予算の0.3億円から約100倍)。

 

(4)発展のカギを握る「人材」~将来を担う若手研究者をサポート
科学技術の発展を担うのは、「人」。特に、優秀な若手研究者の育成は、日本の科学技術の未来を左右する、重要な課題です。

 

ノーベル賞を受賞するような独創的で優れた業績の多くは、比較的若い時期の研究が実を結んだもの。優れた研究成果を生み出すには、若手研究者が研究に専念できる環境を整えることが必要です。

 

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ノーベル賞受賞者の業績を上げた年齢(1987年~2006年)
(出典)平成19年科学技術白書

 

「若者が希望をもって科学の道を選べるように」―

 

平成23年度予算案で、政府は

・研究者の自由な発想に基づく研究を支援する「科学研究費補助金」を、制度創設(昭和40年)以来最大となる、633億円(約3割)増額し、2,633億円に拡充。若手研究者のチャレンジを支援するメニューについて、「単年度の使い切り」に捉われず、じっくり研究に専念できるように、「基金化」を実現しました。

 

関連記事(「来年度予算のこだわり…例えば科学技術予算」(平成22年12月27日掲載)

 

この他にも、
■優秀な博士課程修了者などが経済的な不安なく科学の道を選べるよう、生活費相当額を支給します(「特別研究員事業」、180億円、約1割増)
■若手研究者が、海外で長期間(2年間)研究に専念できる機会を増やします(「海外特別研究員事業」、19億円、約2割増)

 

こうした取組によって、若手研究者が将来に希望をもって研究に取り組
めるよう、政府はサポートしていきます。

 

まとめ 夢や希望をもたらす科学技術~さらなる発展へ
科学技術は、生活をより豊かで便利にするだけではありません。私たちに、夢や希望をもたらしてくれます。

 

昨年は、鈴木章(すずき・あきら)博士、根岸英一(ねぎし・えいいち)博士のお二人が、その独創的で優れた研究業績によってノーベル化学賞を受賞され、日本に明るい話題をもたらしました。

 

さらに、先月16日には、宇宙飛行士の若田光一(わかた・こういち)さんが、日本人として初めて、国際宇宙ステーション(ISS)のコマンダー(船長)を務めることになった、とのうれしいニュースもありました。

 

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コマンダーとしての活躍が期待される若田飛行士
(提供)JAXA

 

日本の発展を支えてきた、卓越した科学と技術の力。政府は、我が国の科学と技術の一層の発展のため、さらに力を尽くしていきます。

 

※本文中、「科学技術」とは、「科学および技術」のことをいいます。

 

【関連リンク】
・科学技術関連予算の全体像
 
http://www8.cao.go.jp/cstp/budget/index.html



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