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天声人語

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2011年8月30日(火)付

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 700年ほど前に政治や世情を痛烈に風刺した「二条河原落(らく)書(しょ)」は、「コノゴロ都ニハヤル物」の書き出しで始まる。「夜討、強盗、謀綸旨(にせりんじ)……」と続くが、混乱や退廃を七五調で突いて名高い。民主党代表選を眺めながらモジリの駄文を試作してみた▼「このごろ民主に見ゆる物、居座り、号泣、内輪もめ。詣(もう)で、すり寄り、宗旨替(しゅうしが)え。操(あやつ)り人形、虚言葉(そらことば)、勝ち馬探しの品定め。雨後のタケノコ候補らは、我ぞ我ぞと立ちぬれど、彼ぞと思う人はなし。巧みなりけるはぐらかし、事(こと)新しき風情なく、挙党一致や分裂や▼処分中なる剛腕は、私利怨念(おんねん)の闇支配。手勢となりし人々は、次の選挙をにらみつつ、損得利害はかりつつ、神輿(みこし)担ぎに参じゆく。黄昏時(たそがれどき)になりぬれば、某所各所に顔合わせ、毎度なじみの数合わせ▼今は昔の宇宙人、引退表明覆(くつがえ)し、おのが所業は棚に上げ、同志をペテンとこき下ろす。反省の色さらになく、キングメークに手を貸して」――などと、ここまで書いたところで、決選で野田財務相が選ばれた。「二人羽織」を避ける常識を、何とか示したことになろう▼政権交代を果たした総選挙から、今日で2年たつ。高揚は失せ、失望は怒りへ。誠実そうな野田さんだが、昨秋の菅さんも真っ先に言った「ノーサイド」への、国民の信用は失墜している▼モジリの落書ではないが、この代表選は多くの人にげんなりと映ったろう。次の矢はない最後の機会、とにかく仕事をしてほしい。親(しん)とか反のケンカではなく。

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