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民主代表選:野田氏 原発再稼働に前向きも依存度低下踏襲

民主党両院議員総会で代表選決選投票の票を投じる議員たち=東京都千代田区のホテルで2011年8月29日午後2時2分、藤井太郎撮影
民主党両院議員総会で代表選決選投票の票を投じる議員たち=東京都千代田区のホテルで2011年8月29日午後2時2分、藤井太郎撮影

 「電力は経済の血液。電力不足が日本経済の足かせになってはならない」。野田氏は民主党代表選でこう主張。当面の電力不足解消を目的に、定期検査中の原発の再稼働に積極的な姿勢を示す。一方で、中長期のエネルギー政策では「(東京電力福島第1原発の事故を受けて)原発新設は事実上困難」「寿命が来た原発は廃炉にする」との考えを表明。太陽光や風力発電など再生可能エネルギー普及や省エネを通じ、原発依存度を段階的に引き下げる「脱原発依存」を提示、菅直人政権の方針を踏襲する姿勢だ。

 野田氏が当面は原発再稼働を進める考えを示したのは、電力不足の長期化が震災復興と景気回復の妨げになるほか、生産の海外移転など産業空洞化にもつながりかねないと懸念しているためだ。福島第1原発事故の影響による定期検査中の原発の再稼働停滞で電力不足は全国に波及。経済界では来春には全国54基の原発の大半が停止し、電力不足が一層深刻化するとの懸念も出ている。

 野田氏はこの点について28日のテレビ番組で「国が責任をもって現場に行って、自治体の(再稼働の)了解をいただかないといけない」と発言。安全評価(ストレステスト)を終えた原発の円滑な再稼働に自ら積極的にかかわる姿勢を示し、立地自治体との調整に消極的だった菅首相との違いをうかがわせた。ただ、立地自治体は国の原子力政策への不信感を強めており、首相交代で原発再稼働に向けた調整が進む保証はない。

 長期的なエネルギー戦略について、野田氏は「再生可能エネルギー拡大と省エネによる(電力供給の)構造改革に取り組む」と説明。月刊誌で公表した政権構想では「2030年までは原発を一定割合で活用する」と電力の安定供給に配慮する一方、現状、発電電力量の約9%(水力発電を含む)にとどまる再生可能エネルギーの割合を「20年代までに20%に引き上げる」との方針を掲げた。

 今国会で成立した「再生可能エネルギー固定価格買い取り法(再生エネ法)」活用に加え、環境・省エネ分野の技術開発を経済成長につなげる「グリーンイノベーション」を訴え、関連予算の計上にも積極的に取り組む方向だ。

 ただ、発電コストが高い太陽光などの再生エネの早期普及には電力会社による買い取り価格を高めに設定する必要がある。そうなれば電気代に転嫁され、企業や家計の負担が重くなるジレンマもあり、具体的な制度設計は難しい。

 このほか、巨額の賠償負担を迫られる東京電力の経営改革論議を端緒に、発送電分離など電力制度改革も俎上(そじょう)に上るが、野田氏は「中期的な検討課題」と述べるにとどまっている。事実上行き詰まっている使用済み核燃料を再処理して高速増殖炉などで活用する「核燃料サイクル政策」の見直し論議も秋以降、本格化する。総合的なエネルギー政策をどう描くか、手腕が問われそうだ。【宮島寛】

毎日新聞 2011年8月29日 21時52分(最終更新 8月29日 23時46分)

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