パイロット社80周年記念「雅シリーズ 3本セット」を以前紹介しましたが、それとは別にその雅シリーズの「舞楽」を今日手に入れました。 この「舞楽」は蒔絵師 吉田久斎さんの作で限定本数70本として1998年10月に84万円で発売されたものですが、この1本 な、な、なんと都内 四谷にある某文具店に眠っていたんです。つい最近、その文具店のWeb Siteで偶然発見し、即購入を決めました。雅シリーズの「舞楽」が販売店から人の手に渡らず、しかも国内に残っていたとは、まさに奇跡です。 もしこれが海外のオークションに出たとしたら$20,000はするだろう。 定価で買えた事がラッキーだと思う。



1969年 宝相華(ほうそうげ)はプロトタイプとしてパイロット社により作成された。そのプロトタイプは、金粉が蒔かれ金の薄板を唐草模様の形に切り取り、漆面に張ってある。わたしはそのプロトタイプを探しているのですが、なかなかめぐり合うことが出来ません。 画像はプロトタイプではなく、実際に限定販売されたものである。プロトタイプとは違い金粉が蒔かれていないが、こちらも希少性が高い。
パイロット社は創立80周年記念万年筆として、1998年にこの雅シリーズを発売した。
当初、パイロット社は各30本で予約を募った。 1本80万円、3本揃えて買うと240万円という価格から、それほど売れないのではないかと予想していたのである。
しかし予約締切り時点で当初限定90本を大きく上回る190本の予約が入り、結局本数を増やす事となった。
販売店に向けた当時の文書がここにある。 ココをクリック
雅シリーズの限定本数は以下の通りである。
・「舞楽」 作者:吉田 久斎/限定本数 70本
・「貝合」 作者:坂本 康則/限定本数 55本
・「草紙絵」 作者:林 勝/限定本数 65本
その雅シリーズを3本揃えて入れるための箱をパイロット社に特注で作ってもらい、さらに箱のフタ裏にそれぞれの蒔絵師のサインを書き込んでもらった。 その当時の社長恒藤さんのサインまで入っている。
この雅を発売した後、パイロット社は85周年記念、88周年記念、90周年記念と周年記念万年筆を発売したが、いまだにこの雅シリーズを越えていない。
それほどこの3本はすばらしい。
80周年記念万年筆として、この雅シリーズの他に、「四神」漆黒と朱を1918本の限定本数で販売した。
1928年(昭和3年)11月、京都御所にて裕仁天皇(昭和天皇)の即位の大礼が行われた。
パイロット社はその年、天皇即位を記念して「御大典記念梨字万年筆」を4種類発売している。
梨地3本、蒔絵1本 4本セット33円
・梨地漆塗り 3種 S213G/P213G/S113G 各4円50銭(当時価格)
・瑞祥蒔絵付梨地 T113G 7円50銭(当時価格)
写真の万年筆は、1988年にリプロダクションとして限定販売された蒔絵万年筆です。
限定本数が極めて少ないので、あまり知られていない。
ご覧の通り、レバーフィラー式に見えるが、これはレプリカ。 実際はカートリッジ式である。
パイロット社は平成元年(1989年)社名をパイロット万年筆から「株式会社パイロット」に改称するともに本社を京橋から五反田へ移転した。 その時の本社移転記念として200本のみ製作された限定万年筆「宝相華」である。 作者は吉田久斎。 私は未使用品を2本所有しているが、製作本数が極端に少ないため今は入手困難だと思う。
※現在、パイロット社の本社は平成12年に再び京橋に移転した。 また、現在の社名は「株式会社パイロットコーポレーション」である。
説明書には以下が書かれている
■宝相華(ほうそうげ)
古来より永遠の営みを表すと言われる文様「宝相華」を、新社屋落成の記念とし当社が永年にわたってつちかった蒔絵の技法を駆使して限定謹製いたしました。
黒漆をベースに、金粉とホワイトゴールド粉を贅沢に用い、平蒔絵の技法で一本一本丹念に文様を描き上げました。
「宝相華」は、西域・インドに端を発する文様で、植物の「蕾」「花」「実」「葉」を図案化し、「過去」「現在」「未来」の永遠の相を表す文様と言われ、奈良時代から現代に伝承されています。
正倉院の御物や、平等院、中尊寺金色堂の内陣をはじめ、各時代の代表的工芸品にはこの文様が使われており、現代では文化勲章の中にも使われています。
■余談だが
この「宝相華」は本社移転記念という事なので、私は落成式の時に関係者のみに贈呈されたと思っていた。 ところが、そうではなく一般に売っていたようだ。 落成記念品を商品にするって、とても不思議な気がする。 しかもたったの200本。
■さらに、ペン先についてだが
パイロット社のペン先には製造番号(データコード)が刻印されている。 たとえば "H681"これは1981年6月に、平塚工場(H)で造られたという事だ。 頭の文字 「H」は平塚工場、「T」は東京工場(志村工場:現在は存在していない)である。
ところがこの「宝相華」だが、"H1.10.1"と刻印されている。数字の間に「.」がある。 これは平成元年10月1日の意味である。 パイロット社の創立記念日は10月1日ですが、おそらくこの万年筆だけがこのような刻印のされ方をしたのだと思う。
ちなみに現在、パイロット社では全ての万年筆を平塚工場で造っているので、「H」や「T」ではない。
現在パイロット社が発売している万年筆のペン先に刻印されている頭文字は「A」か「B」である。 「A」アメリカ?「B」ブラジル?、そうではない。 平塚工場ではペン先を溶接する際の溶接機を2台使っている。A機とB機だ。
つまり刻印の「A」「B」はA機で溶接すれば「A」、B機であれば「B」としている。 不良が出た際、ペン先を見ればA機、B機 どちらの溶接機を使ったかが判るようになっているそうだ。
上から「姿」「萌」「香」
1991年(平成3年)に限定発売した「シュサブローコレクション・マキエ」の3種類です。
蒔絵師 吉田久斎により限定本数 各柄700本作成された蒔絵万年筆である。
他分野のデザイナーを起用して制作した事は、パイロット社として大変に珍しい。
クリップは22K硬質メッキが施してあり、上部に、限定製造番号が彫刻されている。
■辻村シュサブロープロフィール
1933年11月、満州、錦州省朝陽に生まれる。
人形師、着物デザイン、舞台、映画等の衣裳デザイン、演出、脚本、アートディレクター等多岐に渡り活躍。その活動は国内のみならず、数回に及ぶ海外公演、様々な作品でヨーロッパ、アメリカ等、海外での評価も非常に高い。ロックミュージシャンや他のアーティスト達にも大きな影響を与え、総合的なアーティストとして各方面より大きな注目を集めている。1974年NHK総合テレビ「新八犬伝」の人形美術を担当、一躍注目を浴びる。 2000年初めに「辻村ジュサブロー」から本名の「辻村寿三郎」に改名されました。
■余談だが
この蒔絵万年筆は各柄700本の限定万年筆であるが、購入者は3本まとめて購入するのではなく、気に入った柄を1本購入するのが一般的である。
限定製造番号がそれぞれ1?700まで彫刻されているが、1本づつ販売されたため同じ限定製造番号を揃えることは、とても難しい。
私が所有しているこの3本は全て同じ限定製造番号である。 とてもラッキーだと思う。
2006年(平成18年)10月1日パイロット社は88周年を迎え、その時に記念万年筆として限定発売された「仁王 ( におう)」である。 限定本数880本。 社内記事(PDF)→ココです
古来、日本では長寿の節目として88歳を「米寿」と言い、祝う習わしがある。
その意味で発売した訳だが、買う立場としては、何でもかこつけて記念日を作り、それを商売に結びつけるのには首をかしげる。
この「仁王」の他に、88本の限定本数で「獅子・狛犬(しし・こまいぬ)」を発表している。
その「獅子・狛犬」の制作者は林 勝さんだ。
50号ペン先のこの作品は当然デカイ。 写真を載せたので比較して欲しい。
さて、この2点の蒔絵についてだが、私がパイロット社の蒔絵を好きな理由は、或いは優れている点だと思うのは、何と言っても他社にない「色のバランス」である。
ところが、この両方の蒔絵万年筆は、ほぼ金1色である。 これには少々がっかりした。
「仁王」と「獅子・狛犬」の大きさ比較
■余談だが
2008年8月初旬に予約開始となったが、私はほとんどの周年記念を購入しているため、ショップからいつもの通り電話があった。 「今回の2種類も予約しておきます」
"ちょ、ちょっと待ってくれ!こないだNAMIKI限定の「雉(きじ)と桜」を買ったばかりだし、そんな金、どこにあるんじゃ!" という事で「仁王」のみの予約をした。
ちなみに「獅子・狛犬」は税別 1,300,000円である。←ムリ
もう一つ。 一番上の桐箱の写真だが。 茶道具、美術工芸品などの伝統的な紐の結び方「左四方掛け」を採用した。この結び方はパイロット社の周年記念万年筆では初めてだと思う。
私は慣れていないので二度と結べない。
パイロット社 創立75周年記念万年筆である。
この万年筆は1993年(平成5年)10月1日、限定7500本として発売された。
とても風格のある万年筆だ。 私は細字、中字をそれぞれ所有している。
ペン先は、金とロジュームのコンビネーションで雪を頂く富士山をイメージしたデザインだ。
また、軸・鞘はエボナイト材を一本一本削りだし、漆を塗り重ねて仕上げてあり、独特の手触り感がある。
クリップは、1930年代後半のパイロット社製品に多く使われていた菊座クリップである。
後に、発売されたカスタム845はこの75周年モデルを基本にし、同仕様で作られたとされている。
■余談だが
パイロット社は昔からパイロットの特徴でもある、"雨だれクリック"を採用している。
言いかえれば、雨だれクリップに長い間こだわっていたと言える。
しかし、最近の新商品をみると、そこへのこだわりは薄らいだように思える。
時代の流れだろうか。
個人的には、雨だれクリップより、この75周年記念に採用した菊座クリップの方が好きです。 私は1930年代後半の菊座クリップの万年筆を複数所有いているが、とてもおもむきがあって良い。
パイロット社 創立85周年記念万年筆「飛天」である。
この「飛天」は2003年10月1日、限定1000本として発売された。
シャレたデザインという事もあって、とても人気のある蒔絵万年筆だ。
スターリングシルバー台に青貝・金散し研ぎ出し蒔絵の技法で描かれている。
材質にスターリングシルバーを用いているので、空気に触れることによる酸化を防ぐ為ビニール袋に完全密封された状態で出荷された。
私は未開封のものと、開封したもの それぞれ所有している。
■説明書には以下の内容が書かれています
創立85周年記念万年筆は、薬師寺の「凍れる音楽」と形容される東塔(国宝)の水煙をモチーフにしています。東塔は730年に建造され、薬師寺で現在まで残った唯一の建築物です。
三重の塔ですが裳階が付いている為、一見六重の塔のように見えます。
塔上の水煙は四枚の透かし彫り銅版からなり、四枚それぞれに水煙状の飛雲のなかで羽衣をなびかせた天人(飛翔する天人を飛天と言います)が三体、上中下に配置されています。
一番上の飛天は両手で蓮花の蕾のようなものを捧げ持っています。 中の飛天は散華の為の盤(華籠)を持ち、下の飛天は片膝を立てて跪き、横笛を吹いております。
星の煌く夜空のなかを天人達が散華、奏楽しながら天上世界から舞い降りてきて、仏や塔の供養を行うと考えた、いにしえの人々が思い描いた空間へと私たちは誘われて行きます。
パイロット社90周年記念90本限定万年筆「朱鷺」は先に説明をしました。
今回の画像は「朱鷺」と同時(平成20年10月1日)に限定発売された「螺鈿 朱鷺」である。
実際私の手元に届いたのは12月初旬だったが。
限定本数は世界で900本、その内日本国内は700本である。
この「螺鈿 朱鷺」は、銀粉と螺鈿を施した研出蒔絵を用い波の上を飛ぶ朱鷺を表現しています。
説明書には以下の内容が書かれている。
■朱鷺(とき):学名ニッポニア ニッポン
「日本書紀」にも「桃花鳥(つき)」という名で記されている朱鷺は、その名の通り、わが国を代表する鳥でした。独特の淡い朱色を帯びた羽色は「とき色」と呼ばれ、日の光を浴びて黄金色に輝くさまはたとえようのない美しさであったとされています。
創立90周年記念限定万年筆は、この「朱鷺」をモチーフに製作されました。
これは企業として100周年に向けてさらなる飛躍を目指す思いを、蒼空に舞う朱鷺の飛翔に重ねたものです。
研出高蒔絵、卵殻、螺鈿など伝統技法を余すところなく駆使した90周年記念限定万年筆を末永くご愛用いただければ幸いです。
■余談だが
パイロット社は85周年記念に"飛翔する天人"「飛天」を1,000本限定発売した。
この時、思ったより売れ行きが良く、販売店ではあっという間に完売してしまったようだ。
この飛天は完売になった現在でも、欲しい方が多いようだ。
今回の「螺鈿 朱鷺」は、発売時と同時期 リーマンショックの影響で国内の経済状況が悪化。
そんな状況の中、12万6000円の万年筆など とんでもない。 と思うのが一般的だが、パイロット社の限定万年筆は売れ残る事はないんでしょうね。
パイロット社 創立80周年記念万年筆「雅シリーズ」として3本の蒔絵万年筆を発売したが、雅シリーズの他に1998年(平成10年)漆黒と朱の「四神」を1918本の限定本数で販売した。
クリップまで色づけされており、重厚感と高級感を漂わせている。
なぜ限定本数が1918本かというと、パイロット社は1918年に創業したからだ。
パイロット社の周年記念は普通 創業年数が限定本数なのだが、1918本とは、ずいぶんと思い切ったものだ。
80周年記念であれば、本来ならば限定本数800本なのだが。
実はこの時、万年筆だけでなく漆塗りの3+1「四神」も限定販売している。
■四神(しじん)とは中国・朝鮮・日本において、天の四方の方角を司ると伝統的に信じられてきた神獣のことである。
青竜(せいりゅう)・朱雀(すざく)・白虎(びゃっこ)・玄武(げんぶ)から成り、これは周天を4分割した四象に由来する。
この万年筆「四神」はその名と通り、キャップには神獣が描かれている。
それと80周年記念として、「三者鼎立(さんしゃていりつ)」と記された鼎(かなえ)が社員、関係者に配られた。 このことはあまり知られていない。
※くどいようだが、私はパイロットの社員でも親戚でもありません(キッパリ)
パイロット社は社是にこの「三者鼎立」を掲げている。
■パイロット社の社是「三者鼎立」とは以下の通りである。
鼎(かなえ)には3本の足がある。どれかひとつが長く、あるいはどれかひとつが短くても転んでしまう。これは事業経営についても同じであり、使う者、売る者、造る者、三者のいずれが損し、いずれが得しても商売は成り立たない。
商品を造る者は売りひろめる人々の苦労を思いやり、また使う人達の不利不便に思いめぐらし、その上で自分の利益を考えなければならない。また売る人々は造る人達の考案の苦心、製作の努力をよく理解して販売に当たらなければならない。
※鼎(かなえ)・・・現在の鍋・釜の用に当てた、古代中国の金属製の器。
ふつう3本の脚がついている。王侯の祭器や礼器とされたことから、
のち王位の象徴となった。
パイロット社は1918年創業ですので2008年10月で90周年を迎えました。
という訳で、90周年記念万年筆が発表されました。
2種類 発売されて、この画像が「朱鷺」で、もう一種類が「螺鈿・朱鷺」のいう名です。
朱鷺は世界で90本の限定で、日本国内では限定43本という事ですので、なかなか手に入りにくい万年筆です。 蒔絵万年筆は、特に限定ともなると日本国内よりもヨーロッパ、アメリカのほうが、根強いファンが多いんです。
私は6月ごろに予約をしてまして、実際手元に届いたのが12月初旬あたりですので6ヶ月も掛かったという事ですね。1本1本が手作りなので、やむを得ません。
作者は坂本康則さんです。
朱鷺の絵柄部分は卵殻技法で仕上げています。
写真でお気づきかと思いますが、この万年筆にはクリップが付いていません。
クリップレスの方が全面に蒔絵を描けるからなんだそうです。
126万円なり。
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