nextgeneration2011
地方本部 HP 記事検索
特集 | 社会・地域 | 同胞生活 | 本国関係 | スポーツ | 文化・芸能 | 社説 | コラム | 韓国 | 本部・支部
Home > ニュース > 最新ニュース
韓・中・日 歴史紛争三つ巴に(04.8.31)
 韓民族の古代3国の一つである高句麗を自国の地方政権に位置づけ、内外に認知させようとするキャンペーンを緩めない中国。歪んだ歴史教科書を普及させ、対アジア優越史観のもとに植民地支配を合理化しようとする日本。3国の歴史問題は複雑に絡み合い、歴史にとどまらず東北アジアの安定とも深くかかわる。この地域の中軸国家を目指す韓国は、植民地下の親日反民族行為糾明問題など近現代史の内部的な清算をめぐる深刻な葛藤を抱えながら、この困難な2正面作戦に立ち向かえるのか。在日同胞100年、光復節60周年、歴史教科書採択問題など「歴史の季節」を来年に控える在日同胞にとって傍観できる問題ではない。

■□
高句麗問題は日本に漁夫の利
近代史に飛び火も…2正面対応の韓国に試練

政府樹立前の韓国史を削除

 中国は02年に開始した「東北工程(東北辺境地域の歴史と状況に関する研究プロジェクト)」によって、「高句麗は中国古代の辺境少数民族の政権」であったとする論拠と世論の造成に力を入れている。高句麗遺跡のユネスコ世界文化遺産への登録をめぐっても、北韓の一足早い申請に中国が待ったをかけ、結局、同時登録された経緯があり、高句麗史問題は国際的な話題になった。

 世界遺産登録後、韓・朝・中3国にほの見えた史跡の保存協力と共同研究の可能性をよそに、韓国と中国の歴史紛争はむしろ激化している。中国外交部のホームページは、韓国史概況から高句麗史を削除したばかりか、日本史概況に「5世紀初、大和国が隆盛した時期にその勢力が朝鮮半島南部にまで拡大した」と記述、韓日間で論争になっている「任那日本府説」をあえて紹介し、韓国の神経を逆なでする挙に出た。

 それにとどまらない。韓国政府の強い抗議を受けた中国は、「任那日本府説」の記述を撤回する一方で、こともあろうに、韓国政府樹立以前の韓国史をすべて削除し、北韓についても同様の措置をとった。韓国への明らかな意趣返しだ。

現在に生きる周恩来の発言

 こうした中国の動向に関連して、「周恩来首相の中国‐朝鮮関係対話」と題した発言録が韓国で話題になっている。1963年に中国を訪問した北韓科学院代表団とのやり取りを記録したものだ。

 そこで周首相は、「朝鮮民族は古代から中国東北部に居住しており、その足跡は遼河、松花江、図們江の流域で発掘される文物、碑文などで証明される」とし、これを否定しようとする一部の中国人学者を「大国的ショービニズム」に基づく偏向だと批判した。

 また、「渤海の遺跡から出土する文物が証明するのは、ここもまた朝鮮民族の支脈の一つであったという事実」だと語り、高句麗遺民が建国した渤海を韓民族の系統とする認識を示すとともに、隋・唐の高句麗侵攻にも触れ、「貴国の立派な将軍によってわが国の侵略軍は敗れた」と述べている。

 中国の小中高生用の現行歴史教科書は、高句麗を韓国の古代国家の一つに記述している。中国で市販されている代表的な歴史書の大部分も同じで、『中国古代史常識』(79年刊。中国青年出版社)は、隋・唐の「高句麗征伐」を「侵略」と規定し、『世界史』(86年刊。人民出版社)は高句麗史を世界史として扱っている。周首相に限らず、中国でも少し前まではこれが常識だった。

 高句麗問題に対する中国の態度転換は、極めて周到でスケールの大きい政治的な意図を含んでいる。事態収拾の動きが出てきたとはいえ、ほんの気休めに過ぎない。

 韓中両当局は24日、中国の教科書や政府出版物の高句麗史記述は従来通りとすることなど、5項目の「口頭了解」を交わした。次いで27日には中国ナンバー4の賈慶林・人民政治協商会議主席が訪韓し、盧武鉉大統領などとの会談を通じて、「われわれは2000年前の歴史問題によって、両国関係が傷つくのを望んでいない。韓国側の関心を十分認識し、誠実かつ責任ある姿勢で対応していく」と言明している。しかし、教科書に限っても、今年9月の新学期には間に合わなかっただけと見るべきだ。東北工程が進展する以上、いつ改訂されてもおかしくない状況にある。

 さらに懸念されるのは、紛糾が続くことによって、両国は歴史的に宗藩(宗主国と属国)関係にあったとの歪曲された史観が中国で常識化される可能性があることだ。中国のマスコミはすでに、壬辰倭乱時に明の援軍を受けて以来、朝鮮が明の年号を使用したことなどをあげ、明・清時代の両国は宗藩関係にあったと主張し始めた。

日本の右派と共振する論理

 こうした動きが強まれば、「新しい歴史教科書をつくる会」(以下、つくる会)に代表される日本の右派・歴史歪曲勢力を勢いづかせることになるだろう。この勢力は、日本は古代から中国とは対等であり、韓国などアジア諸国はその中国の属国であるとして、一段低く見なす日本の伝統的な対アジア観に立っているからだ。

 明を討つとして朝鮮に道案内を強いた壬辰倭乱の論理もそこから出てきた。明治維新によってこの対韓国観はさらに強化され、日清戦争を清から朝鮮を独立させる正義の戦争だと位置づけたものだった。この論理が朝鮮を植民地化し、さらには大陸侵略へと突き進む国策におおばけしたのである。

 つくる会が主導する歴史教科書(中学校用・扶桑社版)は、そのような対アジア・韓国観をちりばめ、アジア侵略を合理化するものにほかならない。この教科書が来春開校する東京都立の中高一貫校で採用することが決まった26日(関連記事5面に)、韓中両国は口をそろえるかのように遺憾の意と懸念を表明した。

 これを見るまでもなく、韓中両国は近代史に関する対日摩擦について実質上の共同戦線を張る立場にある。しかし、高句麗紛争はこれに微妙な影を落とす。中国が高句麗・渤海史を韓国史から剥ぎ取ることに、韓国を貶めようとする日本の歴史歪曲勢力は喝采をおくる素地を持っている。

 したがって、歴史的な宗藩問題に論議が発展すれば、中日両国に韓国に対する蔑視観の共振作用をもたらしかねないのだ。もちろん一方では、「富強中国」を阻む立場から、少数民族の分離独立を煽る日本の保守勢力が高句麗問題で韓国の立場を後押しする可能性もある。いずれにせよ、韓中紛争が長引けば、日本の歴史歪曲・保守勢力に漁夫の利をもたらすことになるだろう。

 翻弄されやすい条件下にある韓国には、極めてタフな対応が求められよう。なぜならこの問題は、日中両国間で新たに始まった東アジアの覇権争いと連動する要素を含んでいるからだ。

■□
自国益本位の史観へ走る中・日
覇権争いにも連動…内的葛藤を突かれる韓国

「東北工程」は根の深い国策

 高句麗史を中国に編入しようとする東北工程は、2002年11月の第16回共産党大会で、「中華民族の偉大な復興」を目指すことが強調された流れから出たものだ。19世紀から20世紀前半までの「屈辱にまみれた歴史」から決別し、成長著しい経済力を背景に、「富強中国」を実現しようとする一環として位置づけられている。

 中国には55の少数民族があり、その数は全人口の8%に当たる約1億人である。チベット族とウイグル族が分離独立運動を続けており、この少数民族問題以外にも台湾問題や日本との間で尖閣諸島の領有問題などを抱えている。「富強中国」のために、少数民族の独立運動鎮圧と国土・国境の確保が最重要課題の一つに浮上してきたのだ。

 東北工程の狙いもまさにそこにあると韓国や国際社会の一部から指摘されてきた。それなりの事情は確かにある。朝中国境の北にある北間島(延辺朝鮮族自治州)の帰属をめぐっては、朝鮮と清の紛争に決着がつかないまま、1909年の間島協約で日本が満州における利権の見返りに譲渡し、その後は朝中血盟関係のなかであいまいにされてきた。東北工程に対抗しようと、韓国の与野党議員の一部が「間島協約の根本的無効確認に関する決議案」を準備しているのは、そうした経緯があるからだ。

 韓半島の統一が実現した場合、高句麗の中心勢力が代を重ねてきた中国東北部に集住する約200万の朝鮮族が、統一韓国との一体感からナショナリズムを高め、分離独立を要求しかねない、との認識が中国にはあると分析されている。学術レベルでどうにかなる問題ではあるまい。

国益重視外交日本も強化へ

 一方の日本は来年度の外交方針を「国民を保護し、言うべきことは言う外交」に定め、韓日間で係争している東海(日本海)の表記や独島領有権問題、さらには日中間で深刻化する東シナ海大陸棚問題で本格的な攻勢に転じる構えだと報道されている。対日姿勢をいつ硬化させてもおかしくない韓国や、「中華民族の偉大な復興」路線によって派生する諸問題をにらんだものであることは明らかだ。

 日本がこの間、つくる会主導の教科書の普及を政官財あげて推進し、ナショナリズムを高めてきたのは、押し寄せる国際化の波に単一民族国家という幻想の放棄と「多民族型国家」への改革を余儀なくされつつあり、その過程で自らの国家的アイデンティティーに過敏になってきたからだけではない。

 国連常任理事国入りを目指す日本も「中華民族の偉大な復興」を志向する中国に劣らず、将来の国益のために自国中心の歴史観確立に躍起になっているのである。ともに、内外から批判を受けて当然の多くの問題を抱えているにもかかわらず、中日両国がその動きを弱めることを期待するのは間違いだ。

対外的な団結急がれる韓国

 ナショナリズムを国策として高揚させるこの両国の中間に位置する韓国は、歴史と国益の面で双方から挟撃されている格好だ。歴史的には不利に働いてきた地政学的な条件をプラスに転じさせ、東北アジアの中軸国家を目指す韓国は、対中・対日の2正面紛争にどう備えようとしているのか。

 韓中日3国はいずれも歴史問題で内的な葛藤を抱えている。しかし、中日両国には対外的にはスキを見せないよう、国家・政権レベルでの対応には自動調整システムが働いている。政府・与党が政策として、国益重視の対外姿勢より自らの歴史の内部清算を優先し、国論を二分する深刻な事態を招いているのは韓国だけである。

 植民地時代の親日反民族行為糾明をめぐる問題はその典型だ。これを重要政策に掲げた与党の代表が、自身の与り知らぬ父親の対日協力行為によって辞任に追い込まれる皮肉な事態もあった。こうした波紋はさらに広がる気配が濃厚である。

 政権ごとに評価・記述が変わったと言われる韓国の近現代史の総括は、確かに必要であろう。しかし、東北アジアは韓国に、内部的な葛藤を克服して後、初めて真の国民的な団結を可能にするという論理を許さない情勢にある。

 韓国の国益にそった対中・対日姿勢には、保革・与野の間でもほとんど差はない。植民地時代に誰が何をしたかを糾明するより、なぜ植民地に転落していったのか、その過程を第一義的に総括すれば、何より対外的な団結が急がれるのは明らかだ。

(2004.8.31 民団新聞)
最も多く読まれているニュース
韓国は中東3カ国と同組…サッカ...
 五輪7大会連続出場をめざす韓国は、中東勢と対決することになった。 7日、マレーシアのクアラルンプールのAFCハウスで開かれたロンド...
東京ドーム、豪華K-POP15...
◆KARA、少女時代、東方神起…KBS人気番組を東京ドームで日本初イベント 韓国・KBSテレビの人気音楽番組「MUSI...
脱北者の自立を支援…日本政府初...
日本語教育センター開設 北朝鮮難民救援基金インターンシップ制度検討 脱北者支援民団センター 認定NPO法人北朝鮮難民救援基金(加藤博...
その他の最新ニュース
被災地チームも元気にプレー...
小学生…三重、中学は愛知が優勝  【三重】民団中央団長カップ争奪・第5回オリニフットサル全国大会が20日、三重県四...
第66回光復節慶祝辞…民団...
「国政参与」へ健全な土壌を民団の責務重大に…不純な政治工作断固排す 親愛なる在日同胞の皆さん。そして、本国国民及び...
<寄稿>逆境克服し、つかん...
逆境克服しつかんだ栄光 日本と韓国で活躍した在日同胞スポーツ選手は数知れない。しかし、彼らの栄光は双方の差別の中で悪戦苦闘の末に...

MINDAN All Rights Reserved.