どうも小説を書き始めてから、妄想を書きなぐりたい欲求が増大して困る。
というわけで、クロスとは名ばかりの、ありふれたリリカルなのはの設定改変話を書いてみた。
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――いたるところが破壊され見るも無残な様相を呈している研究所で、二人の女性が対峙する。
一人は、ウェーブがかかった紫の長髪を持つ妙齢の女性、稀代の天才魔導師、最強の魔女の異名で恐れられた、プレシア・テスタロッサ
もう一人は、金糸のような長髪を持つ、プレシアの娘、彼女の資質を余すことなく受け継いだ若き天才、ベルカ国防軍の若きエース、フェイト・テスタロッサ
だが、今の二人に流れる空気は、親子の間には相応しくない剣呑な空気だった。
そんな中、先に口を開いたのはフェイトだった。
「母さん、どうして……………・反乱なんか起こしたの」
「そうね、あなたにはすべてを教えるわ。――――――――そのための反乱だもの」
「えっ………」
プレシアの一言はフェイトにとっては、あまりにも想定外だった。
次元世界の中でも、ひときわ強大な大国ミッドチルダの脅威にさらされるかつての強国、だが今は一弱小国に過ぎないベルカ共和国の、陸・海・空三軍共同で設立した特殊部隊の訓練中に突如起こった反乱、それがただ、フェイト一人のために起こされたものだった。
あまりにも出鱈目なその話、だが、なぜかフェイトの裡には一つの確信があった。
――ヤメロ、ソレイジョウキクナ、ヒキカエセナクナル――
だが、フェイトはそれを力ずくで無視して続きを聞いた、聞いてしまった。
「それはどういうことです…………母さん」
「そうね、ならまずアリシアのことから話さなくてはならないわね」
「アリシア姉さん……」
プレシアがまず話したのは、フェイトには物心つく前に病で死んだと聞かされた姉の真相だった。
そもそも、アリシアは普通に生まれた存在ではなく、ベルカ共和国の軍部が現状打開のために生み出した人工魔導師、生物兵器だった。
正確に言えば、予定通りの資質を発現しなかったために廃棄された失敗作だ。
プレシアはその当時、軍部によって半ば強制的に研究に従事させられており、そんな中、情が移ったアリシアを秘密裏に引き取り、自分の娘として育てたのだった。
――姉の予想外にもほどがある生まれに絶句するフェイト、だがそんなものは序の口だった。
「だけどそんなのは関係なかった、アリシアは確かに私の娘だった。だけど、アリシアの生まれはアリシアに平穏はもたらさなかった、都合のいいサンプルとしてアリシアを狙う輩はいくらでも存在し―――――」
プレシアはそこで、数瞬沈黙した後、悔恨に顔をゆがませながら言った。
「―――――私は、アリシアをそんな輩から、守れなかった」
プレシアの独白はまだ続き――
「そのあと私は、アリシアの死を認められなかった、認めたくなかった―――――だからプロジェクトF.A.T.Eなんてものにもすがった、その結果フェイト、あなたが生まれたのよ」
――フェイトはアリシアの代替品だと告げた
続けざまに告げられる真実に、フェイトの頭は混乱に包まれながらも、それでもフェイトは告げる。
「それでも、私は!! 母さんの娘です!!」
そんなものは関係ないと、自分はプレシア・テスタロッサの娘だと。
その言葉にプレシアは苦笑する。
「そうね、私も最初はあなたを娘として愛したわ、だけど、成長するに従いわかってきたあなたの素質、アリシアが生み出された計画でも成功と判断されるほどのものが、私を打ちのめしたわ―――――私の娘には平穏は訪れないのかと」
顔から表情が抜け落ちながらも、なお独白を続けるプレシア、その様はまるで罪人のよう、いや正しく罪人なのだろう。
「そう思った時、私は八つ当たりかもしれないけど、ベルカという国そのものが憎くなったわ。ベルカが弱国でなければ、あんな馬鹿げた計画も、それに私の娘が翻弄されることも無かったかも知れないと!!」
まるで泣いているかのように見えるプレシアの顔を見ながら、フェイトは言う
「それとこの反乱、何の関係があるっていうんですか!!」
「大ありよフェイト、それはね、ベルカを根本から作りかえる存在としてあなたを作りかえるためよ、あなたは周りから優秀な魔導師と思われているみたいだけど、あなたは甘すぎる、それではいけないわ」
そう言って愛用のデバイスを突き付けるプレシア、同時に大量の魔力弾がプレシアの背後に出現する。
―――――照準は、すべてフェイトに向けられていた。
反射的にフェイトも、愛用のデバイス『バルディッシュ』をプレシアに突きつける、だが、フェイトの心情を現すかのように切っ先は震えていた、討ちたくないと無言で示していた。
「―――――どうして、どうしてっ!! 私なんですか、母さんっっ!!」
「あなたの力は私がよく知っているし、それに、あんな馬鹿げた計画が生み出したものがベルカを変える―――――中々皮肉が利いていると思わない?」
――直後、皮肉げな笑みを消し、冷徹な表情でプレシアは告げる。
「さあっ!! 私を討ちなさいフェイト、それで私の目的は完遂される!!」
「いやっ!! いやです母さん!!」
駄々をこねる子供のように、フェイトは泣き叫ぶ、しかし、プレシアは眉ひとつ変えることはなかった。
「ならば、死ぬことね」
そしてプレシアの魔力弾が発射され、研究所の室内は閃光に包まれる。
光が消えた後に残ったのは、強力無比な攻撃を、最悪な精神状態の中でも本能的に防ぎ切り、反撃までしてみせたフェイトと――――
――――望みを完遂し、安らかな顔で永久の眠りに就いたプレシアが残された。
望まぬ親殺しを行ったフェイトの顔からは、感情というものがすべて消え去り、眼から滂沱の涙を流していた。
「あ、あ、ああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァッッッッ!!!!」
――そして響くフェイトの絶叫、脳内には母親の最後の一言がいつまでも残っていた。
―――――生きなさい、フェイト―――――
それはまさしく、最強の魔女が残した、最悪の呪いだった。
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「時間だ、起き給えフェイト・テスタロッサ」
無機質な、だが怯えを隠しきれない看守の声で、フェイトはまどろみから目覚めた。
夢の時とは違い、少女の面影は消え、こんな監獄にあってもなお鮮烈な美貌を放つ美女になっていた。
「気分はどうかね、ベルカを裏切り、ミッドチルダに祖国を売り渡し、処刑されるというのは」
看守の問いに、フェイトは慈愛の笑みを浮かべる、それはこれから死にゆく看守たちへの、慈愛の笑みだ。
「そうですね、とても最高です、――――――これで続けられる、私の戦争を」
「なっ、何を言って!?」
刹那、舞い上がる鮮血、その出所は、フェイトの魔力を纏った手刀によって斬り落とされた、警備兵の首からだった。
あまりの早業、しかし、看守にはそれに驚く時間はなかった、首筋に突きつけられる手刀、同時に首筋に吐息が当たるぐらい間近に、妖しげな笑みを湛えながらフェイトが問いかける。
「ひとつ聞きたいことがあります、クロノ・ハラオウンは今どこにいますか」
「クロノ・ハラオウンだと!? しっ、知らない、あいつは今ミッドチルダ軍にいる!!」
「どうしてですか、なぜ彼がミッドチルダに?」
「あっ、あんたを捕縛した功績を使ってミッドチルダに取り入ったんだ、こ、これでいいか」
まるで猛獣、いや看守には正しく猛獣に見えているのだろう、に押し倒されたかのように動揺する看守。
それに対し、フェイトは慈愛の笑みを崩さず――
「―――――ええ、ありがとうございました」
――しかし、無慈悲に看守の首を断ち切った。
その後、返り血をふき取ったフェイトは、看守の羽織っていた黒のロングコートに着替えると、悠然と監獄から歩き去って行った。
彼女の目的は、かつてのベルカとミッドチルダの戦争中に自分を裏切った副官、クロノ・ハラオウンへの復讐、そして――――
「私の<母さん>の、戦争<戦い>はまだ始まって<終わって>いない――――」
―――――呪いの完遂だった。
そして加速する歴史、フェイトはその中心に立ち続ける、母親の望み通りに、その中で出会う様々な戦士
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「私はただ、必要とされるために、戦場に立ち続けている、自分は無意味な存在ではない、その実感がほしいから」
ミッドチルダ軍のエース、砲撃の使い手、白き災厄
――高町なのは――
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「なんなのクロノ君、ただの人間が魔導師を圧倒するなんて…………」
「ああ、エイミィには紹介してなかったな、彼は僕の個人的なボディガードさ」
「ボディガード?」
「そう、だけどただのボディガードじゃあない、そのあまりにも異質な剣技によって、魔導師すら圧倒する彼は、見る者によっては悪夢に見え、いつしかこう呼ばれるようになった、死を呼ぶ悪夢――――<ナイトメア>と」
世界最強の剣士、死を呼ぶ二刀、――――悪夢<ナイトメア>
――不破恭也――
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「さていこうかみんな、ベルカを、私たちの国を取り戻す!!」
「了解しました、主、あなたの道は私たちで切り開きます」
「そうだぜ、はやては、気にせず前へ進めよな」
「ええ、後ろは私たちにお任せを」
「無論、主には傷一つ負わせません」
「ありがとうな、みんな」
最後の夜天の王、群雲の騎士団<ヴォルケンリッター>を率いるもの
――八神はやて――
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彼女らとの出会いが何をもたらすのか、歴史はどこへと進むのか、その答えは戦場の先にこそある。
というわけで、リリカルなのはにredEyesを当てはめてみた話でした。
ちなみにこの話を思いついた理由は、フェイトって見た目死神で、愛用の武器の名前がバルディッシュだからだと言ったらみんな怒るだろうか。