民主党の横峯良郎参院議員が、賭けゴルフや暴力団組長との花札賭博などを報じた週刊新潮の記事で名誉を傷つけられたとして発行元の新潮社(東京都新宿区)などに5500万円の賠償を求めた訴訟で、議員側が東京高裁(芝田俊文裁判長)に自らの主張に理由がないことを認め、報道内容を事実上容認する「請求放棄」を申し立てることが分かった。30日の口頭弁論で手続きを行い訴訟は終結する。法的に敗訴確定と同じ効力を持つだけに、議員の説明を求める声が上がっている。
新潮社側弁護士によると、議員側から19日「請求を放棄する」と電話連絡があった。30日は元々、高裁判決の予定日だったが、高裁は予定を取り消し、弁論を再開して議員側の申し立てを認める予定だという。
記事は横峯議員の知人が「1打1万円で賭けゴルフをし(ある人は横峯議員に)70万円ぐらい負けてその場では払えなかった」「暴力団組長と十数年来の付き合いだそうで、ゴルフや花札賭博をした」「愛人の首を絞め包丁を壁に突き立てた」と証言する内容。07年8月30日号から同9月20日号まで4号にわたり掲載された。
横峯議員は07年8月の提訴時、会見で「報道はほとんどが事実ではない」と説明したが、09年11月の証人尋問で「しょっちゅう賭けゴルフをした。1回1、2万円」「ゴルフをした後で(相手が)暴力団関係者だったと聞いたことがある」と証言を変えた。昨年11月、東京地裁で全面敗訴して控訴し、高裁では「記事のような高額レートではない」などと主張していた。
週刊新潮編集部は「都合が悪くなると逃げ出すのは政治家失格で、即刻議員辞職すべきだ」とするコメントを出した。横峯議員の事務所は取材に「議員が不在なので説明できない」と答えた。
民主党では、秘書給与の肩代わり疑惑を報じた週刊新潮の記事で1000万円の賠償を求め提訴した山岡賢次副代表も昨年5月、請求を放棄した。【太田誠一、小林直】
【ことば】請求放棄
民事訴訟で原告自らが請求に理由がなかったことを意思表示する手続き。被告の同意は不要で一方的に申し立てられる。口頭弁論などの際に裁判所が作成する文書(調書)に記載された段階で、原告の請求を全面的に退ける確定判決と同じ効力を持ち、再び同じ訴訟を起こすことはできない。
毎日新聞 2011年8月29日 2時33分(最終更新 8月29日 8時33分)