「エコキュート」などの名称で知られる電気給湯器のタンクが設置工事のミスで倒れるトラブルが東日本大震災で相次いだ。タンクは重く、お湯も熱くて危険なことから、国民生活センターは業界に安全対策を求めている。
問題になっているのはヒートポンプ給湯器と呼ばれるもの。深夜電力の利用で光熱費を抑えられることから、電力業界がオール電化住宅とともに普及を促してきた。日本冷凍空調工業会によると、2003〜10年に264万台販売された。
国民生活センターによると、震災後、29日までに各地の消費生活センターに寄せられたヒートポンプ給湯器の転倒や故障などをめぐる苦情や相談件数は102件。岩手、宮城、福島、茨城の4県で65件で、茨城県を除く関東地方でも33件あった。
多かったのが屋外に置く貯湯タンク設置に関する苦情。「玄関ドア近くに設けたタンクが倒れ、ドアが開かなくなり、熱湯が下に流れ落ちていた」(宮城県の40代主婦)といった内容が目立っている。
センターが調べたところ、タンクは3本脚で支える構造が多いが、メーカーの説明書通りに脚が金具で固定されていなかったり、メーカーが指定した基礎のボルトより短く細いもので留められたりしていた例があった。このため、地震でタンクの中の水の揺れが増幅され、倒れて故障したとみられるという。
タンクは満水時には重さ400〜500キロ、お湯は65〜90度と高温になる。国民生活センターは「倒れれば人命に関わる」として、消費者に販売業者に点検を頼むよう勧め、業者には耐震対策の検討や設置工事の徹底などを求めた。日本冷凍空調工業会は「施工業者や販売店に周知を徹底したい」と対応を始めている。(中村信義)