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小沢を争点化しようとする日本記者クラブの思考停止

永田町異聞

新恭 プロフィール

「脱」か「親」か、相変わらず小沢が争点では情けないと言いながら、この対立を煽っているのが新聞、テレビといった大マスコミだ。

つまらぬ政局報道にうつつを抜かすことをやめないかぎり、まともな政策論議など展開されるはずがない。

5人の民主党代表選候補者が顔をそろえた日本記者クラブの共同記者会見で、テレビでおなじみのベテラン記者が長々と時間を割いて質問したのは、小沢一郎氏の党員資格停止を解除するかどうかといったレベルの話だった。

この国で、政策論議が盛り上がるためには、記者が政策について突っ込んだ質問をし、通りいっぺんではない答えを引き出し、それを詳しく、わかりやすく、そして複眼的に吟味した記事やニュースにして伝えるほか手だてはない。

さて、この共同記者会見。ひょっとしたら世間が大記者と信じているかもしれない面々の質問にしばし耳を傾けてみよう。

質問者は日本記者クラブの企画委員である読売の橋本五郎氏や朝日の星浩氏ら4人だ。

最初に質問した橋本五郎氏が、民主党政権の体たらくを責めたてたあと、小沢氏が支持を明らかにしたという海江田氏に矛先を向けた。

「党員資格停止中の方が大きな影響力を持っている。異様な光景だ。どう考えているのか」

橋本氏に続き、他のベテラン記者たちも海江田氏に対し、小沢関連の質問を集中的にぶつけた。たとえばこんなのがあった。

「小沢さんは海江田さんを支持するということだが、小沢さんは数をバックに神輿をかつぐ人だ。参院の輿石氏、西岡氏を担ごうとして断られた。総理大臣になるにあたって。あなたは第三の神輿でいいのか」

筆者にはこの質問の意図がよくわからない。海江田氏がどう答えていいか戸惑うのはあたりまえだ。

星氏はこのテーマにことのほか熱心だった。

「小沢氏の党員資格停止を即座に解除するつもりか、場合によっては幹事長にする可能性を排除しないのか」「小沢さんは秘書三人が逮捕起訴され公判中で、本人は強制起訴された。いまだに国会での説明はない。どうお考えか」「一般の公務員は起訴されたら休職する。小沢さんもそうあるべきだが、どう思うか」

これでは、若い記者たちの質問内容が貧困になるのもやむを得まい。今の日本で、何が政治の優先課題なのかが分かっていない。

そもそも小沢氏の元秘書三人については、東京地検特捜部の供述調書の多くを、東京地裁が証拠価値のないものと判定しており、無罪になる可能性が高まっている。彼らが無罪であれば、共謀を問われた小沢氏も無罪となって当り前である。

そんな状況を知りながら、この国難のおりに、いまだに「小沢問題」を引きずろうとするこの国の大ジャーナリズムの姿勢には暗澹たる思いを禁じ得ない。

政局記者ばかりが幅を利かすこの国のマスコミ界の惨憺たる状況について、筆者は2009年12月22日の当ブログに「フルオープン小沢会見にみる政策記者の不在」と題する記事を書いた。小沢氏が幹事長だったころだ。それを以下に転載する。

◇◇◇

小沢幹事長というと、マスコミ嫌いのイメージが強いが、その週一度の定例記者会見は、記者クラブ加盟社のみならず、全てのメディアに開放されている。

「別に好きじゃないけど、フルオープンにやるべきだと思っている。今後もその方針を変える考えはありません」

昨日の会見でも、フリーランス、外国人ジャーナリストがふつうに質問していた。記者クラブ加盟社しか相手にしない自民党では見られない光景だ。

もちろん、ネットで動画が配信されており、リアルタイムでも、録画でも見ることができる。

こういう時代になってくると、質問内容も国民に丸わかりだから、記者たるもの、ほんとうに大変だ。
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