肉牛から国の暫定基準値を超える放射性セシウムが検出された問題を受けて、およそ1か月半にわたって出荷できなくなっていた、福島県産の肉牛が、28日、出荷停止の解除後初めて、農家から出荷されました。
政府は今月25日、肉牛の餌の管理などの態勢が整ったとして、宮城県に続いて、福島、岩手、栃木の3県についても出荷停止を解除し、これを受けて、福島県内のJAに所属する肉牛農家では、28日、出荷停止の解除後初めて、食肉処理場への牛の出荷を再開しました。このうち、浅川町でおよそ60頭の肉牛を育てている岡部喜市郎さん(63)は、すでに出荷の適齢期を過ぎた8頭のうち、体重およそ700キロの雄牛1頭を出荷しました。出荷の遅れで太りすぎて死なないよう、餌を減らしていたため、この牛は体重が100キロ以上落ちていました。さらに、ビタミン不足で目が見えなくなっていたため、岡部さんがトラックに乗せようとしても、牛は怖がって動かず、妻の和子さん、孫の駿太郎くんと、3人がかりで牛を引っ張って、およそ20分かけてトラックに乗せました。岡部さんは2か月近く現金収入がなく、経営をやりくりする預金通帳の残高は、ふだんの300万円ほどから65万円余りに減りました。今月の餌代およそ80万円を払うことができず、生活費を捻出するのも苦しい状態だということです。岡部さんは「久々に出荷できてほっとしたが、果たして値がつくのか、県内の畜産は大丈夫なのか、不安のほうが大きいです。今後、もうけが出ない状態が続くなら、肉牛農家をやめることも考えています。国や県には、検査態勢をしっかり作って、われわれ農家を支援してほしい」と話していました。福島県内では、28日と29日で34頭の肉牛が食肉処理されたあと、30日に放射性物質の検査が行われ、安全が確認された牛肉が市場に出荷されます。