世の中には科学でそうそう説明できないような不思議な出来事は沢山あるのだろうし、理不尽な出来事も当たり前のように転がっている。
事実は小説よりも奇なりってわけじゃあないが、小説の中でしか起こり得ないような非現実的な出来事も世界のどっかじゃあ起きてるのかもしれない。
だが宝くじが当たらないのと同様に、自分がそういった運命にめぐり合うはずがないと大抵の奴は考えてると思う。少なくとも俺はそうだった。
そんな俺の運命が切り替わった切っ掛けは世間的に割とよくある出来事。バイクを運転中に事故って即死。
まあ、最後の記憶は迫りくる電柱にぶつかりそうなところまでしかないので、即死だったのかは分からないわけだが。
少なくとも死んでるのは間違いないと思う。
何故かって? そりゃ気がついたら自分が赤ん坊になってれば、嫌でも「生まれ変わった?」とか考えざるを得ないだろう?
植物状態で夢を見てるとかそういう可能性もあるが、生まれ変わりのほうが救いがあると思う。
ドラえもん最終回の都市伝説とか思い出してブルーになるぜ。ワシのトラウマは108式まであるぞ。
それに夢にしては感覚がハッキリしすぎてるし。
なんか視力はすごく悪いけどね。なんていうかピントが合わない感じ。たぶん生まれたばっかりな為なんだろうけど。
うおー!なんかちょっとwktkしてきた。ものすごく不安な気持ちの中に少なからず喜びの感情があるのが隠し切れないぜ。
何せ前世の記憶はほぼ完全にあるからね。「なにこの強くてニューゲームwww人生ハジマタwww」とか思っても仕方ないと思うんだ。
ただそれも、俺の名前を聞くまでだった。
「よし、この子の名前はヤムチャだ!」
人生オワタ\(^o^)/
ヤムチャしやがって……
第1話『せめて野菜の名前が欲しかった。ヤムチャってお前……。ヤムチャってお前……』
生後数ヶ月の間は
「たまたま同じ名前ってだけさ。ヤムチャとかよくある名前だよね。うん、あるある」
「高校のクラスにも3人はいたもんヤムチャ。長宗我部ヤムチャに、勅使河原ヤムチャに、えーっと小鳥遊ヤムチャでしょー」
とか捏造記憶で自分を慰めていたが、両親の会話の中に西の都やらカプセルコーポレーションやらが出てきた時点であきらめた。
俺の住んでる村にしたって中国っぽいようで中国じゃないし。普通にトラ顔のおっさんとかいるし。どうみてもドラゴンボールです。ほんとうにありがとうg(r
二次元の表現物である漫画とリアルの造形とでは全然印象が違うからトラ顔のおっさんとか最初に見たときはビビッた。どこのグ○ンサーガかと思ったぜ。
ピッコロとかミスターポポとかどんなんだろ? なんか気持ち悪い想像しか浮かばないんだが。というかクリリンの鼻はどうなんだ。めっさ気になる。
あー……しっかし、ヤムチャって。生まれ変わってヤムチャって……あるあr……ねーよwwwww
ハッキリいってサイバイマンに殺されたり、野菜王子に彼女を寝取られるのは勘弁だ。
ぶっちゃけ一般人でいたい。ぶっちゃけ一般人でいたい。大事なことなので2回言いました。
でもなあ、この世界は一般人でも惑星単位で殺されたりするからなあ。『あの世』があるのは間違いないから死ぬのがあんまり怖くないような気もするが。
せっかくだから舞空術とかめはめ波くらいは使ってみたい。
男の子なら誰でもそうだと思うが幼いころにやったことあるだろ? かめはめ波の練習とか舞空術の練習とかさあ?
すくなくとも俺が小学生の時には練習してた記憶がある。ひょっとしたらエネルギー波くらいならだせるんじゃね? くらいの気持ちで。
……あるよね? みんなあるよね? 俺だけじゃないよねェェェェ!? ないような人とは俺っ……友達になれない!!
……まあ、そんなわけで1歳を過ぎるころにはペラペラ喋ったり、テクテク歩けるようになった俺は密かに訓練することにした。
ちなみに喋られるようになったのはかなり早かった。
だいたい生まれてすぐに両親の言葉が分かってたんだから当たり前といえば当たり前だけど、喉と舌と唇がちゃんと使えるようになったらすぐにペラペラ喋りだしたので村で神童騒ぎが起きた。
が、もんのすごい田舎だったのでジーサンバーサンが拝みに来ただけで終わりでした。チクショウ。
それにしても使われてる言葉が明らかに日本語だったから良かったけどそうじゃなかったら自分がヤムチャだってこともなかなか理解できなかったかもしれない。
まあそれはともかく訓練、というか修行というか、何すりゃいいやらよくわからんので、とりあえず悟飯が悟天とビーデルに舞空術を教えていたときを思い出しながら『気』を認識するところからはじめてみた。
で、あっという間に2歳になりました。
飛ばしすぎですか? そーですか。
とはいっても本当に何もなかったんですよねーこれが。
家の近所の竹林で瞑想を続けてたんだが、1年近くたってようやく「んーこれか?これなのか?」っていう熱さみたいのを感じ取れるようになったわけで。
この一年はほとんど瞑想ばっかりしてました。というとちょっと語弊があるか。
体もある程度鍛えとかないとまずいだろと思って走りこみや腹筋運動、腕立てなんかもやってはいるんだが、修行ってほどのもんでもない。
でも本当にそれだけの日々でした。
「そいじゃあ今日もはじめましょーかねー」
ぼそりとつぶやく。なんか俺キモイ。できるだけ独り言はやめよう。
同年代で浮いちゃってて友達いないから必然的に独り言が増えてしまっている悲しさよ。
それはともかく最近どうにかこうにか『気』らしきものが認識できるようになったので、今日は色々試してみることにした。
「ふぅー……」
集中して体から湧き出るような熱さを広げて自分を包むようなイメージを維持したまま木を殴る。
ドォオン!とまるで大男が体当たりしたような音がして木の表面がめり込んだ。
「うお、マジかぁぁぁぁ!!!すげえええええ!俺SUGEEEEEEEEE!!TUEEEEE!!」
俺大喜び。
どうみても2歳児のパンチの威力ってレベルじゃねーぞ。
「もうできたのか! はやい! きた! 『気』きた! メイン『気』きた! これで勝つる!!」
テンションがあがりきった俺はその日はそのまま暴れまくり、日が暮れても俺自身が疲労でぶっ倒れるまで木を殴りまくった。
おかげで明くる日いつものように修行場の林に行ったら荒れすぎててワロタ。やりすぎだろ……常識的に考えて。
とりあえず少しとはいえ『気』が使えるようになったっぽいので、今度は亀仙流的な修行もやってみることに。
たしか畑とか耕してたよね。素手で。
幸いウチも農家だったので手伝いがてら修行に取り込むことにした。
ちなみに二次創作の転生ものだとよく両親がかなり美形だったりするが、残念ながらウチの両親は別にそんなことはなかったぜ。
微妙に日本人とは違う顔立ちだがすごくふつーのオジサンオバサンでした。
今のところ俺の顔立ちも2歳児としてはごく普通の顔立ちだと思う。たしかヤムチャは設定上はそこそこ二枚目なはずなんで期待してるんだが。
等々と余計なことを考えつつも黙々と畑を耕す。無論『気』は使う。というか『気』を使って耕さないと素手で耕作とか俺には無理だ。
よく考えたら原作だとあんまり『気』とか意識して修行してなかったような気もするなあ。体ができてから『気』の修行をしたほうがいいのかしらん?
んん~ん~。わからん。まあ、死んだりはしないだろ。
「とりあえず飛べるようになるまでは修行しよう。うん」
あ、また独り言いっちゃった。