07/19(火曜日)

読んで下さい! 東日本復興構想会議の提言

 

先月25日、東日本大震災復興構想会議の提言がとりまとめられ、五百旗頭(いおきべ)議長から菅総理に手交されました。提言は、4月14日の第1回会合から計12回、日によっては5時間を超える委員の間での濃密な議論の末、とりまとめられたものです。もうお読みいただけましたか?

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写真1:五百旗頭(いおきべ)議長から菅総理への提言書の手交

 

今般の大震災は、被災地の方々に大きな被害をもたらしただけではありません。すべての日本人にとって、これまで依拠してきた価値観を根本から変えてしまうような出来事でした。提言は、「つなぐ」という言葉をキーワードに、助け合いの重要性をうたっています。被災地とそれ以外の地域、今の世代と将来の世代を「つなぐ」ことを通じて、被災地の復旧・復興は、この世界に生きるすべての同時代人にとっての課題として意識されることになる、と論じています。

 

提言作りを支えた委員の方々の情熱と真剣勝負

この提言を作り上げたのは、何よりも、委員の方々の情熱です。「発言が聞き入れられないのなら、委員を辞める」とまで表明された方もいらっしゃったと伺います。現場で悩み、途方に暮れる被災地の方々とこの会議をつなごうとする熱い思いを持った委員の方々が、それぞれの真摯な想いを正面からぶつけ合いながら、最終的には1つの提言をまとめあげていく作業は、全く予定調和的ではなく、毎回が「真剣勝負」そのものでした。

 

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写真2:復興構想会議での議論の様子

 

「悲惨の中の希望」~ 提言の概要

破壊は前ぶれもなくやってきた。平成23年3月11日午後2時46分のこと。大地はゆれ、海はうねり、人々は逃げまどった ・・・ 一瞬の恐怖が去った後に、収束の機をもたぬ恐怖が訪れる。かつてない事態の発生だ。かくてこの国の「戦後」をずっと支えていた“何か”が音をたてて崩れ落ちた・・・

 

こうした前文から提言は始まり、続く本論の中で、被災地と日本が抱える様々な課題と今後の取組の方向性を列記しています。

 

今回の災害を踏まえた地域づくりとコミュニティ再生の考え方、地域経済や産業のあり方を含めたくらしの再生に向けた青写真、原子力災害からの復興に向けた取組と課題、そして「開かれた復興」の考え方を順に、包括的でありながら、それぞれを具体的に分かりやすく、語っていきます。

 

提言の指摘する大きなポイントを具体的に見ていきましょう。

 

【その1】巨大津波災害には、災害時の被害を最小化する「減災」の考え方が重要。

 

今回の地震は、我々が当然のように思っていた防災に対する意識を大きく変えました。今回のような巨大津波に対して、防波堤や防潮堤など最前線のみで防御することはできません。被災したとしても、人命を守り、経済的被害を極力少なくし、被害を最小化する「減災」の考え方が重要だと提言は指摘します。そして、「逃げる」ことを基本とする防災教育など、ソフト面での対策を重視しつつ、避難のためのハード整備、土地利用規制などの各種施策を総動員することが重要だとしています。

 

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図1:津波防災地域・まちづくりに関連する施策のイメージ

 

【その2】被災地は地形、産業などの状況が多様。代表的な5つの地域モデルごとに復興施策の要点を提示。

 

以下のように、5つの類型毎に、進めるべき復興施策の要点を示しています。

 

<類型1>平地に都市機能が存在し、ほとんどが被災した地域
 →高台移転を目標とするが、水産業など産業活動の必要から平地の活用も必要。

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<類型2>平地の市街地が被災し、高台の市街地は被災を逃れた地域
 →高台市街地への集約・有効活用が第一だが、すべての移転は困難で、平地の安全性を向上させた上での活用が必要。

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<類型3>斜面が海岸に迫り、平地の少ない市街地及び集落
 →住居などの高台移転が基本。平地は産業機能のみを立地させ、住居の建築を制限する土地利用規制を導入。

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<類型4>海岸平野部
 →海岸部の巨大防潮堤の整備ではなく、新たに海岸部および内陸部での堤防整備(二線堤機能)と土地利用規制とを組み合わせ。

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<類型5>内陸部や、液状化による被害が生じた地域
 →被災した住宅・宅地に「再度災害防止対策」を推進するとともに、宅地の復旧等のための支援を推進。

 

【その3】市町村の能力を最大限に引き出せるよう、区域・期間を限定した上で「特区」手法を活用すべき。

 

例えば、地域経済や雇用の観点から重要な「水産業」については、漁業者が主体的に民間企業と連携し、民間の資金と知恵を活用することも、漁業の再生には有効であることから、地域の理解を基礎としつつ、地元漁業者主体の法人が漁協に劣後せずに漁業権を取得できる仕組みとするため、特区を活用することを提言しています。
また、復興のために必要な各種施策が展開できる、使い勝手の良い自由度の高い交付金の仕組みも必要としています。

 

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図2:「特区」手法のイメージ

 

【その4】復旧・復興財源は、次の世代に負担を先送りせず、臨時増税措置として基幹税を中心に多角的に検討すべき。

 

復興のための財源については、次の世代に負担を先送りすることなく、今を生きる世代全体で連帯し、負担の分かち合いにより確保すべきとしています。その上で、復興需要が高まる間の臨時増税措置として、基幹税を中心に多角的な検討を速やかに行い、具体的な措置を講ずるべきとしています。

 

【その5】国が責任を持って、一刻も早く原発事故を収束させるべき。

 

原子力災害については、国が責任をもって、一刻も早く原発事故を収束させるべく、今般の原因究明とその妥当性の検証等を国際的な信任を得られるように徹底的に行うとともに、正確な情報発信と継続的な情報開示によって、福島県民や日本国民全体に安心と信頼を与え、日本に対する国際的な信頼感を回復させるべきとしています。

 

日本産の食品・物品に対する科学的根拠に基づいた対応を要請

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写真3:日中韓サミット(5月21日~22日)

 

【その6】「開かれた復興」であることが大事

 

被災地の復興が被災地にとどまらず、被災地の創造的な営みが日本全国に、さらには世界各国に広がっていく。そうした「開かれた復興」であるべきことが提起されています。
例えば、世界の先駆けとなるような持続可能な環境先進地域を東北に実現することで、日本が環境問題解決のトップランナーたることで、成熟した先進国家の災害からの復興過程のモデルとなるべきことなどを指摘しています。

 

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図3:持続可能な環境先進地域のイメージ(スマートコミュニティ)

 

1文字、1行ともおろそかにせず、提言を実行に移す

・・・この「提言」は、「悲惨」のなかにある被災地の人々と心を一つにし、全国民的な連帯と支えあいのもとで、被災地に「希望」のあかりをともすことを願って、構想されたものである。政府が、この「提言」を真摯に受け止め、誠実に、すみやかに実行することを強く求める。

 

提言は上記の2文で締めくくられています。政府として、提言の内容の実現に全力を尽くしてまいります。

 



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