08/22(月曜日)

社会保障・税一体改革 各論(3)(子ども・子育て支援)

 

社会保障・税一体改革の成案に盛り込まれた個別制度の改革の内容をご紹介するシリーズ。今回は、子ども・子育て支援です。

 

子どもは、社会の希望であり、未来をつくる力

社会保障・税一体改革の成案では、優先的に取り組む分野の一つとして「子ども・子育て支援」を挙げています。

菅内閣としても、「新成長戦略」の大きな柱の一つに掲げ、「待機児童ゼロ特命チーム」を設置するなど、特に力を入れてきた分野の一つです。

子どもは、《社会の希望》であり、《未来をつくる力》です。子どもたちが健やかに育ってほしいという思いは、親御さんたちだけでなく、この社会を構成するすべて大人の願いでもあります。また、乳幼児期は、その後の生涯の基礎をつくる非常に大事な時期。子ども・子育て支援は、何よりも、子どもたち自身のために行われるものでなければなりません。

加えて、少子化が進んでいく日本では、子育てをしながら仕事を続けたいと望む女性が、継続的に社会参加できるような体制づくりが求められています。保育の充実により、安心して子どもを預けられる環境を整えることは、子育て世代にとって、仕事と育児の両立のために欠かせない条件です。

さらに、保育の充実は、それに従事する方々の雇用をつくりだすことを通じ、日本経済の活性化と雇用機会の増大にもつながります。

子ども、子育て世代、そして経済全体。子ども・子育て支援の充実は、いわば《一石三鳥》の効果があります。

しかしながら、現行の社会保障の仕組みは、高齢者への給付が中心で、この分野には、十分な目配りがなされてきませんでした。国際的に比較しても、出生率(※)の回復が見られたフランスやスウェーデンでは、家族関係政策への支出の国内総生産(GDP)に占める割合が3%程度であるのに対し、日本は1%程度にとどまっています。

※(合計特殊)出生率:1人の女性が一生の間に生む子どもの数

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図1:各国の家族関係社会支出の対GDP比の比較(2007年)

 

こうした状況を踏まえ、子ども・子育て分野は、社会保障制度改革の最優先項目の一つとされています。

子どもと子育て家庭を社会全体で支援する新たな仕組み(「子ども・子育て新システム」と呼んでいます)については、社会保障制度改革全体の成案づくりに先駆けて、昨年9月から内閣府を中心に、関係者が参加したワーキングチームにおいて検討が進められてきました。

先月末まとまった「中間とりまとめ」のポイントを以下にご紹介します。

 

社会全体で応援したい、子どもと子育て家庭!

《社会の宝》たる子どもたち。しかし、現実には、日本の「子育て」を取り巻く環境は、厳しい状況にあると言わざるを得ません。

少子化の背景には様々な要因が指摘されていますが、若者の将来に対する不安の広がりが一因となっていることは間違いありません。厳しい雇用情勢のもとで、若者が望むような職に就けず、将来の生活への不安によって、結婚や出産まであきらめてしまう、という現状。これでは、日々成長していく子どもの姿に喜びと生きがいを感じ、親自身もまた成長していく、という好循環も働きません。

こうした不安の背景には、地域や家族をめぐる環境の変化もあります。核家族化が進み、特に都会では地域社会とのつながりも薄くなり、「近所の家でちょっと子どもをみてもらう」といったことも、実際には難しいのが実情です。

そして、保育所への入所を待つ待機児童の長い列。働きたくても子どもを預けられず、やむなく仕事をあきらめる女性が多い状況も改善されていません。

現状では、出産前に仕事をしていた女性の約6割が出産を機に退職

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図2:子どもの出生年別、第1子出産前後の妻の就業経歴

 

非自発的な退職理由で最も多いのが仕事と育児の両立の困難

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図3:妊娠・出産前後に退職した理由

 

こうした社会環境の変化やそれに伴って現実に起こっている問題を踏まえて、親が子育ての第一義的な責任を負うことを前提にしつつも、社会全体で「子ども」と「子育て家庭」を支える仕組み。それが「新システム」の理念です。

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図4:子ども・子育て新システムの具体的な内容

 

すべての「子ども」と「子育て家庭」を支援する!

新システムの最大の眼目は、「すべての子ども」の成育環境を保障するという点です。

そのため、次に述べる《幼保一体化》を進めて、質の高い幼児期の学校教育と保育を保障するとともに、家庭で子育てしている方への地域の子育て支援を充実させることとしています。

こうした取組によって、「家庭で子育てしているけど、気軽に相談できる人がいない」といった声にも応えます。多様な支援事業を身近な地域で充実させ、それぞれの子どもや子育て家庭のニーズに応じて、質の確保された幼児期の学校教育や保育、子育て支援が受けられるようにします。

 

幼保一体化を推進します!

すべての子どもが健やかに育つ環境づくりのために、「新システム」の最大の目玉となっているのは、《幼保一体化》です。

幼稚園と保育所。これまで、両方とも小学校就学前の幼児への「教育」と「保育」を担う主体でありながら、基準や財政支援の枠組みが異なることが指摘されてきました。

そこで、様々な観点からオープンな議論を積み重ね、《幼保一体化》を推進することとしています。具体的には・・・

(1)市町村における一元的な事業計画策定

利用者ニーズを市町村が一元的に把握し、利用者の立場に立って必要な方策を講じる計画を策定します。幼稚園と保育所に分かれていた国からの財政支援も一元化し、公平性を確保します。これにより、例えば「幼稚園と保育所で、教育や保育の内容に差があるのでは?」といった利用者の方々の懸念を解消し、それぞれの子どもや子育て家庭のニーズに応じた幼児期の学校教育、保育、子育て支援が受けられるようになります。

 

(2)「総合施設(仮称)」の創設

幼稚園と保育所の両方の良さを合わせ持った「総合施設(仮称)」を新たに整備し、家庭で子育てをする親御さんからの相談対応なども含めて、子育て家庭の多様なニーズに応えられるようにします。(なお、国の支援によって、「総合施設」の数を増やしていく方針です。)

 

(3)「指定制度」の導入による、多様な事業主体の参入促進

質の確保のための客観的な基準を満たせば、株式会社、NPO等の多様な事業主体にも財政支援を行い、それらの参入を促進します。これによって、一定の質を確保しつつ、供給される保育の量を確保します。

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図5:幼保一元化の具体的な仕組み

 

このように、満3歳以上の小学校就学前の幼児に学校教育を提供する「幼稚園」、小学校就学前の乳幼児に保育を提供する「保育所」に加え、今回、両方の良さを合わせ持った「総合施設」を新たに整備します。そして、これらの施設を「こども園(仮称)」として指定することにより、様々な子ども・子育て家庭の状況・ニーズに対応していきます。

 

制度や財源を一元化し、地域の実情に合わせる!

「新システム」は、子ども・子育て支援のための諸政策について、いくつかの「原則」を整理しています。

一つ目は、「制度と財源の一元化」です。

現在の子ども・子育て支援の「制度」と「財源」は細かく分かれています。そのため、利用者にとっても、サービスを提供する側の方々にとっても、複雑で分かりにくく、使い勝手の悪い仕組みになりがちです。

そこで「新システム」では、子ども・子育て支援に関する制度・財源を一元化することにしています。

次に、「市町村を実施主体とする」という点です。

最も身近な自治体であり、地域住民のニーズを把握しやすい市町村が、「子どもをしっかり保育する場所があれば働きたい」「家庭での子育てについて相談したい」といった住民のニーズを潜在的なものも含めてしっかりと把握し、こうしたニーズに応じた支援の提供体制を整備する仕組みをつくります。

さらに、「社会全体での費用負担」という点です。

支援の量的な拡充と、質の改善を行うためには、2015年度で1兆円超の追加的な費用がかかると見込まれます。国、地方、事業主、個人がそれぞれ応分の負担をする形で、恒久的な財源を確保しながら政策を実施していくこととしています。政策の具体化にあたっては、「子ども・子育て会議(仮称)」を設置して、各界の代表者が参加した形で進めていく方針です。

今後、政府は、関連する法案を国会に提出し、今回ご紹介したような、子どもや子育てを社会全体で支援する新たな仕組みの一刻も早い本格実施を目指します。今後の具体化に向けた取組にご注目ください!

 



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