【コラム】ソウル駅からホームレスがいなくなるためには(上)

 ホームレスの社会復帰を目的に発行される雑誌『ビッグイシュー』の韓国本社は、ソウル市永登浦区にある青果市場2階の片隅にある。昨年取材のため訪問した際、自動車1台がようやく通れる位の狭い路地で何度も迷ったのを覚えている。古いいすとテーブル、印刷物が散らかっている同事務所は、1980年代の大学の学生会室を連想させた。「ソウル型社会的企業」のここで、20‐30代が少ない手取りにもかかわらず、熱心にホームレスを支援する姿が印象的だった。

 『ビッグイシュー』は1991年、英国でホームレスの社会復帰を目的に創刊された雑誌で、今では英国、日本、南アフリカ共和国など10カ国で販売されている。韓国法人は昨年7月に設立された。3000ウォン(約214円)の雑誌が1冊売れると、1600ウォン(約114円)が販売員(ホームレス)に与えられる構造になっていて、多くのホームレスたちがこのシステムを通じて社会復帰に取り組んでいる。

 『ビッグイシュー』の関係者の紹介でホームレスに会い、職業が人間をどのように変えるのかを実感することができた。一体どのくらいの期間ホームレスとして暮らしてきたのか自分でも覚えていない人が、再び仕事を始め、小銭を貯めたことをきっかけに、新たに生まれ変わっていた。職業とは生きて行くための方便にすぎないが、場合によっては職業自体が生きるためのきっかけになることもある。

 当時会ったあるホームレスは「1カ月働いて20万ウォン(約1万4200円)の収入を手にしたとき、感激の涙が出た」と話した。このホームレスは収入をきちんと銀行に預金していた。事業が失敗したためホームレスになったある人は「友だちに小遣いをもらい、1日に焼酎2、3本で耐え忍んだ日々は数え切れない。今回販売員の仕事を始めるようになってから、またご飯を食べられるようになった」と言って笑みを浮かべた。酒に代わって白米を食べられるようになったというのは、まさに人間的な生活に戻ったことを意味している。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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