「大曲の花火」は、「昼花火」「10号割物花火の部」「創造花火の部」の3部門からなり、全国から選抜された27業者の花火師がその技を競います。出場者は3部門すべてに参加しなければなりませんので、花火師の持つ技術を余すところなく堪能できます。各部門から優勝者が選ばれ、夜花火の「10号割物花火の部」「創造花火の部」を総合的に審査して、最も優秀な花火師に、最優秀賞の「内閣総理大臣賞」が贈られます。成績については、こちらをご覧ください。

【昼花火の部】
5号早打5発
- 煙竜か割物を打ち上げ、その形と色の組み合わせによる総合美を競います。
5号早打ちで5発を打ち上げますが、いかに鮮明な模様や色彩を表わすかがカギとなります。煙竜は、パラシュートでさまざまな色の煙を吊り、空に模様や色彩を残すものです。また、割物は夜花火の光の代わりに、色煙で菊などを表わします。全国的にたいへん貴重で、競技としては当大会でしか見られません。
【10号割物花火の部】
課題玉 芯入割物1発
自由玉 千輪菊、冠菊、小割模様など創造的な割物1発
- 芯入割物(課題玉)と、これ以外の割物(自由玉)を1発ずつ打ち上げ、その合計点を競います。
芯入割物玉(課題玉)のほとんどは八重芯や三重芯の変化菊で、八重芯は3重、三重芯は4重の同心円を作るものです。近年は、四重芯や五重芯も登場していますが、大変難度が高く、更なる技術の進歩が期待されています。
割物自由玉は芯入割物玉以外の割物「A」(千輪菊・冠菊など)か、創造的な割物「B」を打ち上げます。「A」は盆を重視し、花火が開いた瞬間に円の中におさまるものを評価します。「B」は花火師の意図が表現され、色彩や形に工夫の見られるものなど、創造性が高く技術的にまとまりのある花火が評価されます。
年々個性的な花火が増え、観客の目を楽しませています。
【創造花火の部】
- 速射連発か8号早打ちのいずれかを選択し、2分40秒以内で打ち上げられます。音楽に合わせたものがほとんどで、音楽とぴったりのタイミングで花火が開いたり、曲調や歌詞からイメージされる斬新なデザインの花火が見られ、観客にとっても楽しみな部門です。「花火は丸いもの」という基本概念にとらわれず、形態、色彩、リズム感、立体感における創造性、独自性にポイントを置いて審査し、その創意工夫、改良や努力が評価されます。
創造花火は大曲が発祥の地であり、昭和39年から元大会委員長佐藤勲氏の考案によって全国で初めて取り入れられました。佐藤氏が考える創造花火とは、「花火は丸くなくても良い」「複雑な配色を避け、単色化する」「花火の筒の大小の組み合わせで、打ち上げにリズム感と立体感を出すこと」。つまり、わかりやすく、誰でも楽しめることが最大のテーマになっています。
創造花火発祥の地での勝負とあって、花火師たちは毎年バラエティにとんだ花火で観客席をわかせます。



割物花火観賞のポイント

大曲の花火「10号割物の部」では、一玉一玉をじっくり観賞しながら、花火本来の美しさが堪能できます。日本一を競う競技大会とあって、花火師たちは渾身の一玉で勝負しますので、精巧な割物花火が数多く見られます。
割物花火は日本ならではのもので、古来より花火師の腕の見せどころです。球状に開く花火のことを言い、スーッと花弁を描きながら大きく「菊(または引き)」と、花弁を作らずに点となって広がる「牡丹」に大きく分けられます。
二重に開くものを「芯入」、三重は「八重芯」、四重は「三重芯」、五重は「四重芯」と言い、先に述べた「菊」と「牡丹」どちらか一種類で、または二種類を組み合わせて作られます。二種類を組み合わせた場合は、一番外側になるのが「菊」か「牡丹」かによって、花火の名前が決まります。
割物花火を観賞する際のポイントは、次の5点が挙げられます。

【開き(玉の座り)】
- 打ち上げられた玉がちょうど最高点に達した時に開けば「玉の座りが良い」とされます。上昇の途中や下降してから開くと美しい球状にはなりません。
【盆】
- 星が飛び散って作る形を盆といい、真円になるのが最高です。玉の大きさに見合った広がりも重要です。
【肩】
- 星がまんべんなく放射状に広がることを「肩の張りが良い」と言います。星が抜け落ちたり、まばらだと良くありません。
【光滅(消え口)】
- 星が一斉に変化し、一斉に消えるのが最高です。
【色(変化と配色)】
- 現在の花火は色が変化していくものが多く、その中でもスッキリとした色の変化が求められます。印象に残るような変化の仕方や配色が必要です。

以上をポイントに観賞すると、より深く、割物花火を楽しめます。
また、割物花火につけられる名前を「玉名(ぎょくめい)」と言います。例えば「昇曲付三重芯変化菊」は、
「昇曲付」‥‥小さな花火を開きながら上昇する
「三重芯」‥‥中に三重の芯を持ち、四重に開く
「変化菊」‥‥一番外側の星が色を変化させながら花弁を描く
という花火です。このように、玉名は色彩・形状・変化の仕方などを表していますので、どのような花火が打ち上げられるかを想像しながら観賞するのも楽しいでしょう。
※連発の場合は、全体のイメージからタイトルがつけられます。



花火豆知識

【花火の大きさ】
- 日本では尺貫法の寸(1寸=約3.3cm)を基準とし、直径が3寸なら3号玉、1尺なら10号玉と言います。10号玉は大曲の花火「10号割物の部」でも打ち上げられますが、玉の重さは8.5kg、上空330mまで到達し、直径320mに開きます。
【花火の打ち上げ方】
- 単打ち(玉を一発ずつ打ち上げる)、早打ち(一本の筒から連続で打ち上げる)、連発(筒をたくさん並べて導火線で次々と点火し、連続で打つ。スターマイン)、重ね打ち(1本の筒に2個以上の玉を入れて同時に打つ)、対打ち(2本の筒から同時に打つ)、他に、アメリカで採用されているロングヒューズ方式があります。
この中で、早打ちは日本独特の打ち上げ方法です。頑丈な鉄筒の底部に炭火で真っ赤に焼いた鉄片(焼金)を入れ、その鉄片の上に打ち上げ火薬を取り付けた「早打ち玉」を落とすのです。火薬に火がつき飛びあがったらすぐにまた次の玉を落とす、という方法で1本の筒を使い、たくさんの玉を連続して打ち上げられます。
【花火の音】
- 「腹に響くようなあの音がたまらない」などという話もよく聞きますが、その通り、花火には音がつきものです。筒から玉を打ち上げるときの音(=発射音)、玉が上空で開くときの音(=開発音)。また、花火の種類によっては、菊の花弁の先で消えるときにパリパリと鳴る「先割の音」、ピューという音がする「笛花火」、ブーッという噴射音を鳴らす「蜂花火」など。他にも、運動会の日などに鳴る雷(らい=音花火)という、信号に用いる花火があります。発音のリズム(時間差)や音の高低は、導火線の長さや発音薬の材質、量、また、原料のアルミニウムの粒度・純度によって調整されます。
このような性質を利用し、「ドンドンパンパン、ドンパンパン」という、秋田の有名な民謡を夜空に響かせた花火師もいます。

【参考資料】
「大曲の花火」大会詳細情報(2011年
第85回版)
桟敷/交通規制図・駐車場案内/JR時刻表/テレビ・ラジオ放送/大会成績など。2011年度情報未発表の事項は、2010年度情報を掲載していますので、参考にご覧ください。


大曲の花火
文と構成/LDT(秋田県大仙市)
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