2011年8月27日放送

気になるニュースを"じっくり"深読み!


『どう処理する?"放射性"がれき』



法律は成立したけど処理の現実は?


京都の夏の風物詩「五山送り火」。 被災者を慰霊しようと岩手・陸前高田市の松を燃やす予定でしたが、松から放射性物質が検出されたことから、計画は頓挫。 こうしたことなどをきっかけに被災地のがれきも放射能に汚染されているのではないかという不安が広がっています。

当初は、がれきの受け入れを表明していた全国各地の自治体の中にも、二の足を踏むところも…。その一方で、膨大ながれきを被災地だけで処理できるのかという問題も浮上しています。

行き場のない"放射性"がれき。一体どうすればよいのでしょうか。


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《今週の出演者》



●専門家
森口祐一さん(東京大学大学院教授)
児玉龍彦さん(東京大学アイソトープ総合センター長)…福島放送局スタジオから
谷田部雅嗣解説委員(科学・環境・医療担当)
●ゲスト
桂文珍さん(落語家)
髙田万由子さん(女優・タレント)


〈文珍さん〉

「国の責任で」という言葉をよく聞きますが、これは「国民の税金で」ということ。私たち自身が考えていくべき問題であると思います。





プレゼンテーション1

「被災地の"がれき"、どう処理するか?」



■「広く全国で受け入れる」か「地元で処理」か



宮城県1820万トン、岩手県580万トン、福島県340万トン。
東日本大震災で発生したがれきの量です。宮城県の1820万トンというのは、実に23年分のゴミの量にあたります。 特にがれきが多い宮城県石巻市では、仮置き場に620トンものがれきが積まれています。これは、なんと年間に出るゴミの100年分にもなるというんです!

いつまでもがれきの山が片付かないことによって、粉じんや悪臭、さらにはハエなどの虫が発生し、市民生活の妨げになっています。 こうしたがれき、とても地元だけでは処理できないと、国は4月に方針を打ち出しました。

それが「広域処理」です。



宮城と岩手のがれきについては、全国の自治体に受け入れてもらおうというものです。国が呼びかけたところ、572の自治体や地方公共団体が、協力すると名乗りを上げました。

しかし!その後、大きく事態が動きます。宮城県の稲わらから放射性物質が検出。さらに、京都・五山送り火で燃やそうとした岩手の松も放射能に汚染されていたことがわかりました。放射性物質が福島だけでなく広く飛散していることが改めて浮き彫りになってきたのです。


当初、がれきの受け入れを表明していた自治体には、住民から「絶対受け入れないで」といった声が多く寄せられるようになり、がれきの処理が滞るようになりました。

福島県のがれきは、当初から地元で処理する方針でした。
しかし今、除染作業によって大量に削り取った土がどんどん増えています。

今は仮に穴を掘って埋めていますが、県は最終的な処分場は県外にしてほしいと国に要請しています。原発事故担当の細野大臣は「福島県内は最終処分場にはしない」と発言しましたが・・・。



〈髙田さん〉『国がしっかり管理してほしい』

まず、汚染されたがれきを全国にばらまいていいのでしょうか。

何が、どこに行ってしまったかわからなくなるのが不安です。国がしっかり管理して処理していくべきだと思います。






〈児玉さん〉『拡散を防ぐため"現地"で処理を!』

福島の原発事故では、広島の原爆の29.6個分の放射性物質が飛散したとされ、いまだ7万人が避難しています。汚染された国土を救うために力を合わせるときです。

放射性物質の拡散を防ぐために、全国に分散させず、現地で処理するのが鉄則です。




〈森口さん〉『被災地だけでは処理しきれない』

現地処理が望ましいことも理解できますが、ただ、被災地では処理施設も被災しています。

がれきを全国で受け入れてくれなければ、その処理に長い時間がかかってしまいます。



プレゼンテーション2

「東日本各地の"下水汚泥"、どう対応 」



■たまる一方の"放射性"下水汚泥


東京・立川市にある下水処理場。ここの地下倉庫には、放射性セシウムが検出された下水汚泥の焼却灰が袋詰めで保管されています。
その量は100トン!国の基準値を超える放射性セシウムが検出されて以来、引き取ってくれるところがなく、今も毎日1トンずつ増え続けています。スタッフは、放射線防護服を着用して作業にあたっています。新たに保管倉庫を建設中ですが、このままだとそこも10月には満杯になってしまうといいます。


実は放射性セシウムは青森県から静岡県の17の都県の下水汚泥から検出されています。

なぜこれだけ広がったのか。原発で水素爆発があったときに、広範囲に降った放射性セシウムが、下水の処理過程で、濃縮されていくからなんです。







下水処理場(合流式)ではどのような処理が行われているかというと・・・

雨水を含む下水は、まず泥や不純物を沈殿させます。沈殿したものを「下水汚泥」といいますが、放射性セシウムは泥とくっつきやすく、このときに一緒に沈殿します。





沈殿した下水汚泥は、次に「圧縮・乾燥」そして「焼却」と処理されていきますが、この過程で、放射性セシウムは濃縮されていくのです。
焼却灰は今までセメントや肥料として再利用されたり、埋め立てたりしてきましたが、震災後は引き取り手がなく、下水処理場にたまり続けているというわけなんです。


〈児玉さん〉『早急に保管施設を整えるべき』

高濃度に汚染されたものは青森県六ヶ所村にあるような施設で保管すべきです。

そういった設備を被災地に整え、これから新設する堤防の中、盛り土、高速道路の下などに埋めることを考えるべきでしょう。




〈森口さん〉『放射能汚染の実情を知ろう』

被災地はひとくくりに語られますが、地域によって汚染の程度は異なります。一般ゴミ焼却灰から検出された放射性物質の濃度が、被災地より東京の方が高いこともあるんです。

ですから、濃度が低いものは、被災地以外でも受け入れる余地があるのではないでしょうか。





〈谷田部解説委員〉『国が責任を持って処理を』

どの程度汚染されているか国も把握していないのが現状ですが、放射能に汚染されたがれきの処理に関する法律が国会で成立しました。

国が定めた基準値より高濃度のものについては「国」の責任で処理し、基準値以下のものについては、「自治体」が処理することを初めて定めました。



〈児玉さん〉『国が責任を持って処理を』

これまで放射能を管理する組織として原子力安全委員会がありましたが、ほとんど機能していなかったので、これからは過去に責任がないメンバーによって清新な組織をつくって問題解決にあたるべきでしょう。

農業が収穫期を迎える前に、とにかく迅速に対応しなければなりません。


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