赤木智弘の眼光紙背:第190回
ところが現実には、そのたった数クリックの手間すらかけず、ただ記事のタイトルだけを鵜呑みにして「徳光が走った距離は43.7キロ」と吹聴して回った人がたくさんいるのである。
そもそも、今回デタラメ記事に利用されてしまった、24時間マラソンの追跡隊は、2002年に走った西村知美がショートカットをしたのではないか? という疑惑の中で「じゃあ俺たちで監視しようぜ!」ということから、翌年の山田花子の監視からスタートした活動であり、かれこれ9年目になる。
いかにもネットのノリでスタートした活動ではあるが、少なくとも24時間マラソンの事実性を確認するという目的は十分達成していると言っていいだろう。
しかし今回、この活動が「徳光が走った距離は43.7キロだ」という風説の流布に利用されてしまった。実際に追跡した人たちのTwitterなどをみるに、ネットユーザーの代わりに事実を確認するために行われている活動が、当のネットユーザーによる風説の流布に利用されてしまったということに、追跡者が困惑している様子が見て取れる。
ネット上でよくみられる言論に「マスメディアは嘘を付いており、ネットはそれを暴く」というものがある。
テレビは都合のいい情報のみを取り上げるが、ネットは沢山のユーザーがいるために、そうした一方的な情報は流通しない。さらにはネット上で多くの人に査読される事により、ネットに幅広く流れる言論は真実に限りなく近くなる。ネットにはそんな「信仰」とでもいうべき感覚が通底しているように、私には思える。
しかし、私は今回の件を経て、改めて「ネットに真実をあぶり出す能力はない」と断じたいと思う。
ネット上では盛んにデマや思い込みが吹聴される。もちろんそれが流言飛語であると気づく人はいるが、気づかない人もたくさんいる。そしてその多くに「それは間違っている」という情報は届かない。
今回のような、追跡者による事実のデータがあり、かつそれが元記事にリンクされているような、極めて簡単に「これはデマである」と断定できる情報ですら、こうして広範囲にばらまかれ、それが真実のような顔をして居座っているのである。
しかし、逆に言えば、いまもまだネットには「たったの数クリックで事実を確認するためのツール」がたくさんあるとも言える。9年も続いた追跡隊も、そうしたツールの1つである。
それらを利用して事実をあぶり出すのは、結局「人間」の仕事である。人間が手を抜けば、どれだけ優れたツールがあっても、事実にたどり着くことはできない。人間の側に「眼の前のものを鵜呑みにしたい欲求」がある限り、マスメディアだろうが、インターネットだろうが、誰かにとって一方的に都合のいい流言飛語が飛び交うメディアで在り続けるのだろう。
あ、そうそう。
今のところ、私は「徳光さんはいまココです」に掲載されているデータを「鵜呑み」にしている。
もし「徳光さんはいまココです」のデータが事実かどうかを調べたければ、24時間テレビやその後に放送されたドキュメント番組で放送された映像から、交差点の名前や、お店などを調べて確認すればいい。そうすれば更に精度のいい「事実」が浮かび上がるはずだ。
*1:徳光さんネットユーザに走行距離が43.7kmと特定される(秒刊SUNDAY)
http://www.yukawanet.com/archives/3908709.html*2:秒刊SUNDAYが「走ったコース」としているGoogleMap(google)
http://bit.ly/p1vIZs(URLが長いため、短縮URLを使用しています。ご了承ください)
*3:徳光さんはいまココです!(いまココ!マップ☆)
http://imakoko.didit.jp/2011-tokumitsu/*4:走行ルート2011(24marason @ ウィキ)
http://www39.atwiki.jp/24marason/pages/23.html