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きょうの社説 2011年8月28日
◎民主党代表選告示 離れた民心取り戻せるか
民主党政権下で、事実上3人目の首相を決める党代表選は、党の将来を決定付ける重い
意味を持つ。またぞろ「数合わせ」の力学で、2人の前任者と似たり寄ったりの能力不足、指導力不足のトップが就くようなら、「仏の顔も3度まで」の言葉通り、国民は民主党政権そのものを見放す可能性がある。民主党の政権担当能力に疑問符が付くなかで、坂道を転げ落ちる党勢を立て直し、離れた民心を取り戻せるのか。その道は険しいと言わねばならない。出馬した顔ぶれは、反小沢、親小沢の物差しで色分けされ、「党内融和」「挙党一致」 の掛け声がかしましい。だが、内向きの話にばかり気をとられ、超円高対策や震災復興をどう具体化していくのか、外交・安全保障政策についてどのように考えているか、各候補者が目指す「国のかたち」がよく見えてこないのは残念だ。 2006年9月の自民党総裁選では、安倍晋三氏、谷垣禎一氏、麻生太郎氏が立候補し 、憲法改正や教育再生にまで踏み込んだ具体的な政権構想を発表した。是非はともかく、よく練られた内容であり、日本のかじ取りを託す人物を評価するという点では大きな判断材料になった。 しかし、投票3日前にようやく候補の顔ぶれがそろった今回の代表選は、日本のリーダ ーを選ぶ選挙としてはあまりにも付け焼き刃で、判断材料が乏しい。これも3カ月にわたった菅直人首相の「居座り」のせいである。政策論争のための時間は少ないが、国家像をどう考え、国難を乗り切っていくのか、自分の言葉で語ってほしい。 当初、代表選の争点とみられていた「復興増税」に関しては、野田佳彦財務相が「あま りにも来年が景気が悪そうだったら増税はできない」と軌道修正したことで、前向きな声は聞かれなくなった。現在の経済状況を考えれば当然である。いずれの候補が代表に選ばれても増税論は封印してほしい。 一方、2010年代半ばまでに消費税率を10%に引き上げるとした「社会保障と税の 一体改革」では各候補の主張に濃淡がある。これも次期衆院選の争点とすべきものであり、拙速は避けてほしい。
◎振り込め詐欺 粘り強く手口など周知を
石川、富山県内で振り込め詐欺の被害が目立っており、石川県警は7月、富山県警も今
月に入ってから警報を発令するなどして注意を呼び掛けている。公的機関の職員を装い、医療費などの還付を名目に現金を現金自動預払機(ATM)から振り込ませる還付金詐欺が多いようだが、やっかいなことに、それだけに気を付ければよいわけではなく、手口が多様で、巧妙化し続けているのが、この犯罪の特徴だ。東日本大震災が発生したとたんに、苦しんでいる被災者に何とか支援の手を差し伸べて あげたいという善意につけ込む義援金詐欺などが出てきたのも、そうした特徴の表れといえるだろう。石川、富山県警には、新たな手口や犯行時に頻繁に使われるキーワードの周知徹底といった活動を迅速に、かつ粘り強く実施することを、あらためて求めておきたい。還付金詐欺やオレオレ詐欺の被害に遭いやすいとされる高齢者への声掛けにも、引き続き力を入れなければならない。 被害防止の取り組みでは、金融機関と連携するのが効果的であることはいうまでもない 。ATMでは、既に振り込め詐欺に注意を促すメッセージを表示する仕組みが普及しているが、それだけでは被害を防ぎ切れておらず、後は社員の目配りが頼りである。実際、石川、富山県内でも、社員が不審を感じて警察に通報したため危ないところで被害を免れたという事例がしばしば見られる。今後も、警察と金融機関との共同訓練や講習などを、さらに積極的に行ってもらいたい。 ただ、最近は警戒を強化している金融機関を敬遠して、「自宅で手渡し」を要求するケ ースも増えているという。こうした手口に対しては、自治体や地域の各種団体などの協力を得て、注意を呼び掛けていくことも必要だ。 もちろん、最も強い抑止力となるのは摘発率を向上させることである。「だまされたふ り作戦」などを駆使して、詐欺グループに迫る。そんな地道な努力を重ねることが、犯罪者への何よりのプレッシャーになる。
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