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[29474] 【習作未満】絶チル転生、勘違い。【TS】
Name: toxic◆037c1b51 ID:ccbe12db
Date: 2011/08/27 04:35

勢いだけで書いた。後悔も反省もしていない。

画面をスクロールしたらマジで地雷原だぜ?

あんたにその覚悟はあるかい?







絶チル憑依、勘違い。

一話 勘違いモノにでてくる原作キャラは大体通知表に人の話をよく聞きましょうと書かれている←ここテストでます。















































わたしこと、東郷鈴は転生者でTS。すなわち前世で男だった者である。中身は脂ぎった30台後半のオッサンで、多分死因は急性アル中だ。
年甲斐も無く一気呑みなんてするから悪かった。
せっかくの忘年会がぶち壊しだ。同僚には悪いことをしたと思う。
それはそうと、


「・・・・どうしてこうなった。」


「わからん。本当に一体全体どうした事だこれは・・・・。」



この爬虫類のような気持ち悪い目つきをしたイカにも悪役幹部といった風情の青年は、私と同じで転生者でTSある。名前は村田恭介。
前世では女子大生だったらしい。

顔立ちはそれなりに整ってはいるが、いかんせんその目つきと無表情。ついでに言うとぶっきらぼうな口調と神に見放されたかのごときその魔の悪さ、そして元女故の少々なよっとした動きが全てをぶち壊しにしている。

はじめあった時ぶっちゃけ私もキモイと思った。コイツも私と同じ転生者でなかったら、担当官といえど夜道に気をつけなければならなかっただろう。それくらい、生理的に受け付けないレベルの男だ。コイツは。

まぁ付き合ってみれば、良い所もそれを補って余りある愛嬌のある男(女?)なのだが、第一印象は最悪なのは間違いない。
初見でコイツの本質を見ぬくことのできるヤツがいたら私はソイツに処女を捧げてやってもいい。
それくらい、コイツは初心者キラーだ。

そのせいか、目を剥くほど有能な男なのだがB.A.B.E.L.内では毛虫のように嫌われている。
前の世界では友達百人できるかなという小学一年生に与えられる最高難度の任務を見事こなそうかと言うほどの社交性あふれる女だったらしいのだが(それはそれで気持ち悪い)、こっちに来てからは小中高と孤立しっぱなしで、両親や兄弟にも敬遠される聞くも涙語るも涙といった風情だ。

口調も、中学ごろまで女口調でオカマ状態だったらしいのだが必死で直したらしい。
効果があったかは疑わしいが。


「・・・そう気を落とすな。キョウ。次またチルドレンとの合同訓練があるじゃないか。こんどこそ友達の一人もできるって。ほら、あの何だっけ、皆本とかいう担当官。話してみたけど結構気さくだし、初対面の、しかもエスパーの私を本気で心配してくれるような優しい男だからさ、ほらお前の事もきっと分かってくれるって、な?」


「本当?うう・・・・私が努力するたびド壺にはまってる気がするんだよな。こないだコーヒー入れにいった時だって、すれ違った時目が合ったんだけどあれ、絶対殺気でてたって。僕そんな嫌われる事したかな・・・?」


それはほんとうに疑問だ。B.A.B.E.L.に入ってからコイツとペアを組んで半年程になるが、コイツは本当に善良な男だ。少なくとも私のそこそこ長い人生の中で一番。
だから、あんなチルドレンのようなおっかない(しかもうざい)エスパーにもあれほど優しく出来る人間がなぜコイツをそれほどまでに嫌う・・・いや、憎むのか。
容姿やしぐさではない。

なにか深刻な誤解でもあるのだろう。


「大丈夫大丈夫。その内きっと何とかなるって、ほら諦めるな、前を見ろ。すくなくとも私一人はお前の見方だよ。」

「うううう・・・・うん、ありがとう・・・ぐすっ。転生してからこっち、こんなに優しくしてくれたのは鈴だけだよ。・・・・・うん、今度こそ、今度こそ・・・・。」


思わず顔を上げる。目から汗が溢れそうだったから。その姿があまりにも憐れで・・・・。




────おお、神よ。天おわします神よ。今日も今日とて、無駄と知りつつ祈ります。もしも貴方が見ているのなら、この憐れな魂にどうか救いあれ。










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この僕、皆本 光一はB.A.B.E.L.でチルドレンの担当官をするようになって多くの犯罪者やテロリストを見てきたと思う。
それ以前からも、この回り過ぎる頭のせいで多くの嫌な人間と向き合ってきた。



───だが、村田恭介程の邪悪を僕は知らない。





彼は兵部や普通の人々なんか目じゃない、正真正銘の悪だ!

同情も共感もできない純粋な邪悪。
そんな奴がこの世に存在することを始めて知った。

局長も何故あんなヤツをB.A.B.E.L.にいつまでも在籍させているんだ。局長の人柄は知ってる。やむにやまれぬ事情があって手出しできないのだろうが・・・・これじゃ鈴ちゃんが救われない。

下手に村田の奴が有能だから質が悪い。

合同訓練では最強の筈のチルドレンすら、村田の指揮下にある9歳の鈴ちゃんに勝つことが出来ない・・・・・。


「くそっ!!」


ドンッ!!

無意味に壁を殴る。八つ当たりしたって鈴ちゃんの境遇はなにも変わらないっていうのに!



「皆本・・・・私、私・・・・もっと強くなりたい!私・・・嫌だよこんなの。こんなに胸がざわざわするの、嫌なんだ・・・。」

「薫・・・・。」


僕たちに出来ることは無いのか!?


















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さて、合同演習当日である。

先に言っておくが私、東郷鈴は実はバトルマニアである。

これも先に言い訳しておくが、私も前世では男だった。男だったからには、男の子だったのである。
男の子だったからには・・・・そう。剣と魔法、超能力に憧れ、一度はかめはめ波をうって見たいと思うのは当然の事と言えるだろう。

前世では喧嘩もしたことのない私だか、こちらにきて、ESPを発現してからはもうバリバリの武闘派である。
リアル聖闘士やリアルサイヤ人が出来るとなれば、バトルマニアにならない日本男児はいないだろう。間違いない。私が保証する。

キョウはこの手の荒事に関わると殆どポンコツなので仮説本部に立てこもらせて出てこさせない。
出てきてもたたき返すだけだが、前世で女だったとはいえ、情けない男だ。



「・・・・・・敵影、捕捉。固体名 明石 薫。相手はまだこちらに気付いていません。単独行動が気がかりですが、今なら奇襲可能です。指示を恭介様。」


とりあえず、一応バベルも軍隊は軍隊なので対外的には口調もそれっぽく通している。


『明石 薫と交戦を許可する。死力を尽くして闘いたまえ。』


キョウは基本荒事の最中はこんな風にそれっぽい言い回しで丸投げの指示しか出さない。
どうせこういうときはポンコツなのだから無駄なことは言うなと念を押してあるからだ。
あの時ばかりは頑なにウンとは言わなかったが、
絶交すると言えば泣いて謝ってきた。私以外友達のいないこいつに友情をたてにするのは心苦しかったが、これは譲れなかった。

なにせ勤勉な無能程恐ろしいモノはない。コイツに指示を任せるとちょっと危なくなったらやれ撤退しろやれ避難しろとガタガタ五月蠅い。

“あの”チルドレン相手に多少の無茶なくして勝つことなど出来ないのは分かりきってることだろうに。あの敗北主義者め。
キョウの事は大好きだし親友だと思っているが、この臆病なところだけはいただけない。
目つきとか以外で苦手なところといえばそれだけなのに、残念なことだ。過保護すぎるのも考え物だ。


『了解。明石 薫を落します。吉報をお待ちください恭介様。』


本部に伺いを立てるのも、マニュアルに従ってるだけで本当は煩わしくてしょうがない。

だがもう心配ない。ここからは、闘争の時間だ。私を縛る枷はもう何もない・・・・!


────獲物を前に舌なめずりとは三流の仕事とはよく言ったものだ。




猛獣以上に恐ろしい獲物をまえに思考はクールでクリア、体は熱く煮えたぎって、ハートは恐ろしい程震えている。

「薫・・・・ああ、薫ぅ。最高だよ、お前は。私の全てを受け止めてくれるのは、お前だ。お前だけだ。早く闘ろう!わくわくするよな、お前も!」







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私、明石 薫はESP能力者で日本に立った三人のLv7の特務エスパー。

そしてチーム、ザ チルドレンの一人だ。
対外的にはザ チルドレンはB.A.B.E.L.最強のエスパー部隊で通っているが、実際は違う。

コードネーム、ザ サーヴァント───東郷鈴。

彼女が本当のB.A.B.E.L.最強。複合能力者とはいえ、彼女はLv6。超度で勝り、数で勝り、年齢すらこちらが上だ。
私たちには皆本という最強の参謀もついてる。
けれど・・・・勝てない。

理由は分かってる。

私たちは、小さな頃からこの強力すぎる力に振り回されえて決して幸福とはいえない幼少期を過ごしてきた(小4はまだ幼少期とかいったらぶっ飛ばす)が、鈴ほどじゃない。

鈴は、いつも怖いほど無表情だ。誰にたいしても敬語で、心を開かない。
大人から見れば、理想的なイイコのエスパーと言える行動を演じている。
自分たちみたいに命令に背いたり、無茶なことはしない。
むしろ自己主張が希薄で、犬みたいに従順だ。(実は凄く自己主張激しいです)

特に、命令には何があっても逆らわない。(命令する村田本人が既に傀儡政治だから)

いつも見かける時は、ESP訓練室やトレーニングルーム。前見た時はAチームの人たちとESPリミッターをつけて格闘訓練までしてた。
無表情ながら、鬼気迫る迫力にB.A.B.E.L.最強のAチームのおっさんも困惑しながら相手をしてた。

なにせ、鈴は強い。Aチームのリーダーのおっさんも本気で相手をしなきゃいけないほどだって愚痴ってた。それもESP無しで、だ。

相手を誉めるとかそんな雰囲気でもなかった。ただ単純に鈴の事が心底怖かったといった感じだった。

それを責めることは私には出来ない。私も───彼女のことが怖い。


鈴は強い。この間だって、私たちが普通の人々に軍用ECMで捕まったとき、
ECM下でも作戦行動可能だからって村田の糞野郎に無理やり投入が決められたらしい。(鈴が恭介に無理やり申請させました。)

ニヤニヤ哂いながら「往け。」の一言で死地に叩き出されたというのに、
彼女は泣き言の一つも漏らさないで笑みさえ浮かべて私たちの救出作戦を了承してくれたという。(もう村田はヤケになってます)

局長は、もしも一言でいいから鈴がぽつりと弱音を吐きさえしてくれれば、それを言質に出動を取りやめさせたって言ってた。
でも、鈴は私たちの無事だけを祈って、笑って死地に飛び込んだという・・・。
いっつも馬鹿やってる局長のあんな顔始めてみた・・・・局長も、苦しいんだ。無力な自分が悔しいんだ・・・。

顔面を殴られて鼻血が噴出しても、歯が抜けても、骨を折られても、銃で撃たれても鈴は止まらない。(バトルマニアですから)


鈴は強い。でもそれは間違った強さだ。まだ9歳で、私たちの一つ下なのに殴られる事より、銃で撃たれるより恐ろしい事を知っているんだ。

だから、闘う。闘えてしまう。





────私は皆本に救われた。だから今度は私の番なんだ!

私が、鈴を止める!鈴を助けるんだ!
















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「うーん、また僕の知らないところで誤解が進行してるような気がする・・・・勘弁してよ・・・・。」






つづく。



[29474] 絶チル憑依、勘違い。
Name: toxic◆037c1b51 ID:ccbe12db
Date: 2011/08/27 14:08














絶チル憑依、勘違い。

二話 勘違いモノの感応能力者は対外ポンコツ。
























さて、いきなりだが私、東郷鈴は大ピンチに陥っている。


不自然に単独行動している明石 薫に脳筋よろしく奇襲をかました私だったが、案の定罠だった。

言い訳させてもらえば、
まぁ基本的にB.A.B.E.L.に在籍している者で皆本のオツムの出来具合をしらない奴はいない。
だから当然、チルドレンあいてに戦術を駆使しようとするのは私から言わせてもらうと無駄なのだ。
こういう場合私に唯一とれる戦法は、キョウの奴に通信で意味深な事を言わせてかく乱したり、
奇襲をかけたり罠を仕掛けたりしていかにも戦術を駆使してますよ。と匂わせておいて実際は猪突するぐらいしかない。


ま、未だそれで勝率10割をキープしているのだから、こと戦いに関しては私も天才と呼ばれる類なのだろう。

それに昔の人はいった。「天才を騙すのは簡単だ。馬鹿を騙すのは難しい。ブタを騙すのは不可能だ。」

私の戦術なんて将棋で言えば王将で敵陣に切り込むような愚かな捨て身戦法だというのに、
皆本はいろいろ頭を悩ませてくれているのだろう。有難いことだ。

それに、基本的にチルドレンの実働部隊の三人も対外頭がいい。
一番馬鹿とされる明石 薫でさえ、私が10才の時にあれほど物事を整然と捉えられただろうか?

家庭内に不和を持つ子供は、早熟で大人を時にひやりとさせるぐらい大人びている事があるというが、
彼等も苦労してきたのだろう。

いつもキョウのことが気がかりとはいえ、人生今が楽しくてしょうがない私とは大違いだ。
高潔な彼女らとは比べることもおこがましいのだろう。



「ぐ・・・・かはっ!」




しかし流石だ。テレポートで大量の瓦礫を突如頭上に出現させそちらの対応にリソースをとられた一瞬で明石 薫が動きを封じる。

単純だが、言うは安し行うは難しだ。本気で動く私の速度に合わせてくるとは子供とはとても思えない。
なにせ私は短時間とはいえ電磁加速で自由自在に空中を滑空するのだ。

加えて、私の慣性を無効化する念動力で対Gはまったく問題にならないので不規則に加速する私を捕捉するのは不可能に近い。
また、限定的だがも私の超能力の一つ念動力の応用能力、斥力操作も大きい。
発現時は相当弱かったので必死で鍛えたが、空気圧を完全に無視できるというのは非常に有難い。

おかげで今では、前世で35ぐらいの時嵌った「アーマードコア」というゲームの機動を完全再現して戦果を挙げている。


そして私は超度6。あいてが超度7とはいえ、加速した私を面制圧で封じることは出来ない。

だというのに、薫たちが見事合わせてみせたのはサイコメトリーの姿が見えない事と無関係ではないだろう。
あの皆本がまたあたらしいエスパーの運用戦術を思いついたらしい。有能な敵は憎らしいことこの上ない。


────下手をすると、初黒星になりかねん。


負けたくない!──意地があるんだよ、男の子にはぁ!!



「っ!・・・・恭介様、TRANS-AMを使います。許可を!」


『・・・・・許可する。3秒で終わらせたまえ。』



「了解!・・・・トランザム!」



しかし、TRANS-AMってなんなんだろうな。キョウが言うにはガンダムらしいんだが、私は知らない。
私見では赤くなって性能が3倍というとシャア専用ザクしか思いつかない。

私のこれは実際には1.3倍という所も特によく似ている。

しかし開発者のキョウにはコレはトランザムだといって強硬に押し切られた。

これがジェネレーションギャップというものか・・・・・。














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「トランザム!・・・・・あ゛あ゛あああああぁぁぁぁ゛!!」








捉えた!という喜びも束の間。鈴はいきなり出力を上げて私の拘束を振り切った。
これは、超度6なんてものじゃない!私たちと同等・・・いやそれ以上!



・・・・そこからの展開は、ぼんやりとしか覚えてない。

突然、鈴の顔が目の前にあったと思ったら、意識が暗くなっていく・・・・。




───また負けた。

だというのに私の胸に去来するのは、燃えるような悔しさではなく諦めにも似た虚無感。

トランザムっていうのが何なのか分かんないけど、あれが良くない物だって言うことだけは、良くわかった。
また村田って奴が何かしたんだろう。あの時の鈴の様子は尋常じゃなかった。
悲鳴を上げて、汗が噴出して、骨を折られても変わらなかった無表情が歯を食いしばるように歪んでた。

そして何より、・・・・鈴は泣いてた。赤い光に包まれながら、鈴は泣いてたんだ!。

超度6と超度7の壁は厚い。そこには普通の手段では超えられない絶対の壁がある。

それをいとも容易く飛び越えてきたのだ。まともな手段じゃないのは馬鹿の私でも容易に想像がつく。


「くそぉぉぉぉ!!・・なにが超度7だ!なにが特務エスパーだ!・・・・・泣いてる鈴ちゃん一人助けられないなんて・・・・・、こんな力に何の意味があるんだよぉ・・・・。」

「薫・・・・。」


皆本光一は、慟哭する明石 薫にかける言葉が見つからなかった。
なぜなら彼もまた、自分の無力に絶望し、静かに慟哭をあげていたから。

それは、皆本自身気付かないうちに目から零れ落ちていく。


「泣かないで、皆本さん。きっと方法はあるわ、探せば必ず見つかる。・・・・必ず鈴ちゃんは助ける。そう誓ったでしょ?」

三宮 紫穂は、世界最高のサイコメトリーだ。だがその彼女をもってしても、村田恭介という悪鬼の心を暴く事は出来ない。

「村田って人が何を考えているのかは私にも読めない・・・・。恐ろしいほどの邪気と憎悪が渦巻いていて、思考が塗りつぶされてるから。・・・・でも、最近になって分かったこともある。彼は見た目程超然とした悪じゃない。強い孤独と疎外感・・・・彼にも、邪悪に落ちる何かがあったのよ。」


「トラウマを暴くっていうのはいい気分じゃないけど、あの人相手なら遠慮はいらないわよね、もう一度彼の背後を洗って見ましょう。今すぐ。それとも何、鈴ちゃんに同情してる自分可愛そうって、ここで泣いてるの?・・・そんな情けない人だったっけ?貴方たち。」


「そうやで、泣いてるだけじゃなにも変わらへん。自分から手をさしの伸ばさなって、教えてくれたのは皆本はんやんか。なんとか手考えてみよ。それにお天道様が見とる。あんな奴長生きできるわけあらへんて!」


「葵・・・・紫穂・・・・・・・ああ、そうだよな。こんな所で泣いてる場合じゃない。」


皆本光一は顔を上げる。その目には最早涙は無い。
そこにあるのは超然とした決意。燃え盛る覚悟の炎だ。


「・・・・・薫!君はここで療養に専念しててくれ。模擬戦なんかじゃ君に一番負担が行くからな。休むのも仕事うちだ。葵くんも、今日はもうテレポートの使いすぎで動けないだろう。君も待機だ。」


「紫穂、僕はこれから、僕の研究室のパソコンからB.A.B.E.L.のデータベースにクラックしてやる。もうまともな手段で調べられる範囲は調べたからね。手伝ってくれるかい。」


「ふふ、当然よ。微力を尽くすわ。」


最早、その足取りも軽い。男子三日会わざれば刮目して見よ。覚悟を決めた男の背中は巨きい。











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TRANS-AM 通称トランザム。

その正体は何のことは無い。ようは唯の電池である。

私の首に取り付けられている継ぎ目の無い金属製のごつい首輪。ニードレスの神父がしてたやつを思い浮かべてくれるといい。
大体そんな感じだ。MURATAと銘もほってある。

対外的にはESPリミッターと紹介されているが実際は違う。いや確かにリミッター機能もついているのだが、

これはキョウが独自の研究で開発した常温超伝導ナノコイルを12基直列に配置し、カーボンナノチューブ、
インパラヘン王国産レアメタルとチタン-モリブデンの複合合金で覆った特別製の首輪。
キョウに初めてもらったプレゼントであり、思い出の品でもある。とても軽い。

ようは着用者に放電することの出来るビリビリ首輪だ。
もちろん電気を操る超度6の私以外の人間が装着すると、感電死を通り越して消し炭にになる程の威力で、
キョウ曰く、世界で始めて自然界の雷の威力に迫った工業製品だという。

誕生日プレゼントだったのだが、キョウもいい仕事をする。
レアメタルの変電装置で私がもっとも操りやすい波長に電流を調整できるのが一番画期的な点だ。

つまり、電力を一時的に生命エネルギー、サイキックパワーに変換できるのだ。

しかも副作用は、精々疲労が酷いというだけで、費用対効果で考えると無いといって過言ではない。
(キョウは心配性で5秒以上の使用を許したことは無いが)

使用者は私に限られるが、そこも専用機って感じでロマンを感じる。


ただ、私が考えるところ問題点も3つ程ある。

まずデザインは気に入らない。そこも村田監修だ。
無くて七癖とも言うし、まあ許容範囲だが、もっと他に無かったのだろうか。

ゴスロリっぽくて良くない?とは村田の談だが、風紀に関わるのだろう。B.A.B.E.L.でいい目で見られたことは無い。


二つ目は、キョウが首輪の変電装置の設定をリモコンで自由に変えられるという点だ。
最も会わない波長の電流にされるといくら私でも操りきれない。つまり本当にただの電気首輪とかすのだ。

わたしがしょっちゅうはめを外すのが悪いのだろうが、キョウの奴も事あるごとにお仕置きと称してビリビリとやる。
前世の事とはいえ、男は女に頭があがらないという査証だろう。前世の女房に尻にしかれる感覚に良く似ている。

ラムちゃんと諸星あたる、幻想殺しと超電磁砲。なんのことですか?


・・・・三つ目は、コレが一番問題なのだがTRANS-AMは起動させると私に最適化した電流を流す。
その流された感覚が、その・・・・、

ストレッチで限界ぎりぎりまで肉を伸ばした時のような痛気持ちよさと、
同じ姿勢でずっと座ってた後たまに足とかくるビリビリってくるあの感覚と、
足の裏と手のひらと脇腹と内股を同時に擽られた時のようなえも言われない感覚と、
全身を愛撫されているような(されたこと無いけど)エロイ感覚が同時に襲うのだ。


お蔭様で実験の時とか私の涙腺はいつも大崩壊。必死で歯を食いしばってもどおしても声が出てしまう。

今日模擬線で初めて実戦運用したが、薫に泣き顔を見られなかっただろうか?恥ずかしい・・・・・。








すぐに気絶させたし、大丈夫だよな?・・・・な?











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「僕も主人公なんだけどなー。僕の主観これで終わり?」








つづく









あとがき



村田も結構暴走気味です。
鈴と出会う前から小中高大学とボッチだった経歴は伊達じゃありません。
結局、似た者同士ということです。



[29474] 絶チル憑依、勘違い。
Name: toxic◆037c1b51 ID:ccbe12db
Date: 2011/08/27 19:18













絶チル憑依、勘違い。

第三話 勘違いものでは、組織の上層部は深読みしすぎの連中が多い。
























────某所、空港






「村田様、持ち物の点検が終了いたしました。どうぞ、こちらです。」

「そうか有難う、・・・鈴。」

「ハイ、恭介様。」


いつものやり取りだ。キョウは実は昔、筋ジストロフィーを・・・いや今も患っている。
そもそも研究者を志したきっかけがそれらしいのだ。
ある程度研究は結実し、症状の進行は止められたらしいし根治ももう目前らしいのだが、
未だに虚弱体質で筋肉が少ないのは変わらない。

いつか、人一倍元気に動く私がうらやましいと零したこともあった。(人一倍どころの騒ぎではないが。)

雷を生み出す超能力因子を持った私のDNAのおかげで、研究は飛躍的に進んだらしいが、まだまだ彼は病人だ。


だから、ノートパソコンより重いものは基本的に私が持つ。
キョウの体は20まで治療を続けていても自重を支えるので精一杯だ。

だがむしろ、同じ病を知る人間からすれば、20になる患者が車椅子にのらず自分の足で立っている事に驚愕するだろう。

これはノーベル賞ものの偉業だ。


しかもキョウは筋ジストロフィーの治療薬で特許をキッチリとっているが、それは金のためじゃない。
キョウは同じ病や同レベルの難病の子供たちを集めて保護する医院を運営してる。

そう、同レベルの患者。

筋ジストロフィーだけでなくて、他の難病の子の闘いにも終止符を打とうというのだ。キョウは。
そして実際に成果を挙げている。

そのための資金として、特許料を取っている。
しかもどこかの医薬品会社に所属して特許をとったわけではない。完全に個人の施設と資金でここまでたどり着いたのだ。
だから、全体から見ればキョウの取り分はビビたる物で、薬が世に行き渡らないなんてことにもならない。

そうでなければばキョウにとって特許なんて髪の毛一本の価値すらないのだ。

私はキョウのこういうところを心底に尊敬している。
前世でも、医大生だったらしいが、どうしてこうまで人に献身的になれるのか・・・・・。

闘うしか能のない私なんかじゃ足元に及ばないと、つくづく思う。


けれど、周囲の人はそんなキョウの献身を嘲笑うかのようにキョウに冷たい。

それでも一生懸命説得したら、姉さんや親父は分かってくれた。



だからこそ、この先もずっと私だけはキョウの見方でありたいと、人に尽くすキョウに尽くしてやりたいと思ってる。

絶対に、この友情は間違いなんかじゃないって信じてるから。
















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「村田様、持ち物の点検が終了いたしました。どうぞ、こちらです。」

「そうか有難う、・・・鈴。」

「ハイ、恭介様。」




やっと僕の主観が来た。・・・・僕だってこのSSの主人公なのに三話でようやく出番って酷くないかな。

まぁメタるのはこのくらいにして、僕はいつものようにこの小さな親友に大きなバッグを持ってもらっていた。

実は昔は遠慮して、遠出するときは荷物を最小限に抑えようとがんばっていたけど、
そうしたらそうしたで鈴はトレーニングだっていって鞄に鉄板とかいれたりするもんだから、
今はもう遠慮しないで研究資料とか一式入れてもらってる。

思えば、僕にそういう変な遠慮をするなって意味だったんだろうが最初は意味が通じなくて困ったものだった。
男として生活して長いけど、やっぱりこういう男同士の友情っていう感覚がわからなくて区労する事も多い。
ましてや前世で中の人が30後半のオッサンだとしても、鈴ちゃんは見た目9歳の美幼女だから。
ちょっとくすぐったいって事もあるんだけどね。

まぁそれ以前に僕は友達が殆どいないんだけどさ。それでも、まぁ鈴だけってわけじゃないんだけどそれはまたこんど。


それにしても、ハァ・・・・・。B.A.B.E.L.に帰るの億劫だなぁ・・・・。

エスパーを保護するって言う組織の理念は素敵だし、湯水のように研究資金も出してくれる。

でもエスパーだけじゃなくて僕も保護してほしいもんだよ・・・・。
局長もあんまり僕にいい感情もってないみたいだし、組織ぐるみのパワーハラスメントだよこれは。


なんか僕のパソコンに進入した形跡すらあるからね。


サイコメトリージャマー・・・・サイコメトリーの最も嫌う思念波で、
思考をプロテクトする僕の発明品だ。
そんなものまで使って頭のなかの研究データすら守らないといけないなんて・・・嫌な職場だよ。



結局、僕がB.A.B.E.L.にいる理由って鈴ちゃんがB.A.B.E.L.所属の特務エスパーだからって理由だけなんだよね。

鈴ちゃんと初めて出会った場所だっていうのもあるし。

鈴ちゃんと離れたくはないけど、B.A.B.E.L.にも帰りたくない・・・・・。


成り行きで始めた医院のほうが、まだ懐いてくれる子がちらほらいるんだよね・・・・。

大道寺のおじさんもスポンサーになってくれるってガハガハいいながら肩を叩いてくれたしね。

最初の辺はあのオッサンもなんか深刻な勘違いをしてたみたいだけど、
鈴の姉さんの主治医として真摯に向き合えばちゃんと理解してくれた。

ほんっっっっっっとうに貴重な理解者の一人だ。

今では婿に来ないかなんて冗談が飛び出す程だ。鈴の姉さんの目が怖くなるからやめてほしいが。

もう本格的にこっちに専念したい気分だよ・・・・。


・・・・どーしたもんかなぁ。














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「うわ、何あの人あんな大きい荷物女の子に持たせて。しかも様付け呼ばせるなんて何処の変態よ。」

「召使、とかそんなかんじなのかな?それにしたって時代錯誤だよね。気分悪ーい。」


彼女らは空港の受付嬢。彼女らの言葉は彼らに届くことは無い。
だが、およそ一般人の意見を代弁しているといっていいだろう。

みんなも障害者の親を介護する子供がいたりしたら、邪推することがあるかもしれない。
偏見イクナイ。気をつけようね。

彼らに幸あれ。








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「なんて事だ・・・・・こんな事が、こんな事があっていいと言うのか!?」


ダァン!!

今日も皆本の拳が壁に突き刺さる。さて、今日は彼はどんな勘違いに至ったのだろうか?


「何てことだ・・・・彼が子供を集めて人体実験を繰り返してるなんて・・・。しかも、それが政府公認だから局長も手が出せないだなんて・・・・・。」

「しかもコレ・・・・・なんて事、最重要患者リストの中にどうしてこの子 の 女市 さん が い る の !?」

「人質ってことだ・・・鈴ちゃんが常に結果を出し続けないと、この子がどうなるかわからないってことなんだろう。」

「そんな!?どうして・・・・、どうしてこんな酷いことができるの・・・・・? 」


B.A.B.E.L.のセキュリティーレベルの高い情報をクラックしていくうちに、

局長が調べ上げたと思わしき恐るべき事実がそこには羅列してあった。
それによると鈴は大道寺財閥の妾腹の子で、お母さんはとおに死んでいて、
屋敷で召使のようにこき扱われていたらしい。
もともと認知されていなかったらしいが、ESPに目覚めて本当に放逐されてB.A.B.E.L.にきたらしい、

資料にはそう書いてある。

ご丁寧に得意の金の力で戸籍までいじって、名前さえ奪い「東郷」鈴にして。


けれど、それだけじゃない。もっとこの資料にはもっとセキュリティの高い裏の裏があった。局長は、もうどうにもならないと見て封印してしまっていたようだ。

・・・・・鈴ちゃんは難病にかかった姉さんがいた。
姉妹仲は良くなかった、いやそれどころか鈴は彼女に虐待されてたらしい。


だがその姉さんを村田に優先的に治療させるために、鈴 ちゃ ん は売 ら れ た。

ESPが発現したからB.A.B.E.L.に来たんじゃない、その前から鈴ちゃんはエスパーだった。




・・・・そう、   村 田 が い る か ら B. A. B. E. L. に 来 た 。



恥知らずにもこの大道寺という男はさんざん召使として利用してきた鈴ちゃんを交渉のカードにしたんだ!

読めば、鈴ちゃんのDNAをつかった村田の研究成果がある。

文字通り鈴ちゃんは汚い大人たちに、骨までしゃぶりつくされようとしてるんだ・・・・。

読み進めていくうちに、局長の必死であがいた形跡が読み取れる。
だがそのことごとくが潰されてる。


そして・・・・悪いことにこれで終わりじゃない。


村田は、スポンサーでもない財閥ごときに尻尾を振るような男ではなかった。

彼は姉さんを無菌室といって村田医院の最深部ブロックに入院させた。・・・・・資料では完全無菌室とあるが、
そんなことを鵜呑みにする奴はこのB.A.B.E.L.にはいないだろう。

無菌室の壁がこれほど頑丈な必要はない。太陽光を取り入れる天窓さえないのは流石におかしい。

そしてただの医院の警備システムがこれほど厳重な必要も無い。これは下手をするとB.A.B.E.L.並のセキュリティだ。

そしてこの医院には無菌室は他の病棟にある。最深部にある意味が無い。


これは牢だ。だれも逃げ出せない、助け出せない牢獄だ。


大道寺本家でさえ手出しが出来なくなったようで、再三の引渡し要求が拒否されてる。

しかも、彼女が無菌室に入ったあたりから、大道寺財閥から村田医院に大量の不審な金が流れてる。

娘を人質にとられて揺すられてるんだ。


なんて巧妙な手口!



そんな場所に、卑劣な男に姉さんを人質に取られて、鈴ちゃんは必死に頑張ってるんだ。

それも、昔自分を苛めてた姉のために・・・・!

だれにも助けももとめられず・・・・。


「こんなことって無いよ・・・・・!」

「酷い、酷すぎるわ・・・・。」








─────勿論、大よそ勘違いである。










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...trrrrrrrrrrr....trrrrrrrrrr ガチャッ。

「はいもしもし。こちらは村田恭介様の番号です、現在出払っておりますのでご用件があれば私が・・・・って姉さん!?。もう話せるまで回復したんだ!?」

『ふふ、優秀なお医者様のおかげね。私、こんなに体が軽いの久しぶりよ。今ならまた昔みたいに貴方にお稽古付けてあげられそう。』

「ふふ、完治が楽しみだね。でもそれは3年後までお預けだよ。・・・あっそうそう。姉さんには負けてばっかりだったけど、私だって強くなったんだよ。・・・・そうだ!こんど病室で上達した演武を見せてあげるよ。」

『あらあら、・・・そういえばお父様が貴方に会いたがってたわよ。また昔みたいにあなたにお世話してほしいって泣いてたわ。あなたって昔から家事が好きな変な子だったわね。まったくお手伝いさん泣かせよね。』

「うん、それは否定しないけどさ。今はその経験がキョウのお世話に役立ってるし、人生何があるかわからないもんだよ。でも姉さんも体が治ったら花嫁修業はしておいたほうがいいと思うよ。結局大道寺は弟が継ぐんだしさ。」

『あら花嫁っていったら、あなたは言いお嫁さんになりそうね。ちょっと喧嘩っ早いところがなければ、貴方程大和撫子の名がふさわしい女の子はいないと思うわ。』

「よしてよ。こんなの誰も貰ってくれる奴なんていないさ。・・・うーん、親父といえばこないだキョウが愚痴ってたよ。親父が娘を家に帰してくれって電話でうるさいって。アレ発作みたいなものだからどうにもなんないかもしれないけど、一応姉さんから言っといてよ、親父って私の言うことは聞かないし私には何してもいいみたいなところがあるからさ。」

『そうね。娘離れできない父親を持つとお互い大変ね。でも父さんったら甘えたがりなのよ、なのにふたりも一辺に家から娘が二人もいなくなっちゃったもんだから寂しいのね、きっと。あなたって昔から大人だったじゃない。幾らいたずらされても怒らないし、しっかりしてた。だから父さんも私もついつい甘えちゃうのよ、貴方に。』


「うん、・・・・うん。あ、そろそろ切るね。訓練の時間だから。」

『あら、そうなの。もっと色々話したいこともあったのに。・・・まぁ仕方ないわね。それじゃ、バイバイ。』

「ばいばい。」


































────真の真相はえてしてこんなものである。







つづく





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