「災厄の魔女ですが、変な男に付きまとわれて困っています」を読んでいただき、ありがとうございます。
ここで皆様にご報告があります。
読者の方から「あるWeb漫画とそっくりではないか?」というご指摘がありました。
確認して来ましたがピーチボーイリバーサイドというWeb漫画のスピンオフである「魔女の初恋」と現在までの展開がそっくりでした。
正直、盗作と呼ばれるレベルです。
私はこちらの魔女の初恋を読んだ事はありません。
普段、書けないヒロインを書きたいと思って書き始めましたが、こんなにも被るものかと悔しく思います。
この後、向こうの作者様に相談して、この作品を削除するなり検討させていただきます。
しかし、削除するにしても絶対にきっちり完結させてから削除します。
盗作していません、信じてくださいとは間違っても言えないような状況ですが、ここまで来て終わらせられないというのは私が私を許せません。
それは問題だという御意見もあるでしょうが、申し訳ありません。
お騒がせして本当に申し訳ありませんでした。
10
森に入ったゲオルグはとにかく早い。
城にいる時の三倍で動くゲオルグに着いていける者はいない。
しかし、近衛の長たる者一人でフラつくのはどうか、という事で部下の中から持ち回りで必ず従者が着いている。
「あれ、隊長早かったでござるな……って、どうしたんですか!?」
森の外縁でぼんやりとしていた部下が、ゲオルグを姿を見つけるとあまりの様子に思わず、騎士っぽいと自分で考えている口調が崩れてしまった。
「……………………なんでお前がここに?」
「隊長が壊れた!? 隊長が壊れたら、誰が僕を出世させてくれるんだ!」
焦点は合わず、身体から骨が消え失せたようにふらふらと歩くゲオルグは、いつもの覇気溢れる姿とは程遠かった。
自信に満ちた態度は白痴のごとき。
颯爽とした足取りは泥酔者のごとき。
「いつもの隊長みたいに傲慢を絵に描いたような感じじゃないと無能がバレる! 無能がバレたらクビになる!」
「お前が俺をどう思ってるか、よくわかったわ!?」
「あ、嘘です。 ジョークです」
しかし、そんな醜態はあっという間に消え失せた。
魔女がいない時のように、横柄で勢いに満ちたゲオルグだ。
「ところで一体、何があったんですか? 明らかに普通じゃなかったですよ」
「むぅ……実はキスをされたんだ、魔女殿に」
「隊長、無理矢理はいけませんよ」
「違うわ! ……魔女殿からだ」
「本当にですか!? おめでとうございます。 ……キスをされて、フラフラになって帰って来たという事は、つまり」
「ああ、お前の思っている通りだ……!」
二人は声を揃えて言った。
「あまりの幸せに記憶も吹き飛んだ」
と、いう結論に達したのだった。
生まれてこの方、片思いの部下。
純情ロマンチストのゲオルグ。
二人は似た者同士だった。
「あっ!? キスした後は何かこう……あれです、ムーディーな台詞とかビシッと決めて来たんですか!?」
「むぅ……俺とした事が迂闊にもキスされた以降、記憶にないのだ。 別に初めてしたという訳ではないのだが」
悩むゲオルグに部下は慌てた様子で伝える。
「そりゃー不味いですよ! 初めてのキスの後、黙って戻って来たら」
「くそっ、このゲオルグ・シューゲルクライバーともあろう者が何たる醜態! 何としても今からこの失態を取り返して来なければ!」
一目散に元来た道を走り出すゲオルグ。
「あ、でも隊長、仕事は!?」
無駄だと思っていても一応、声をかける部下。
ゲオルグがやらなければ、その仕事が自分に回って来るのはわかりきった事だ。
無駄だとわかっていても、自分の安寧のために言わねばならない。
「…………」
しかし、部下の制止に応えたのか。
馬のように走り出していたゲオルグがぴたりと止まった。
「……隊長?」
「今すぐ王都に戻れ」
「はっ」
この雰囲気は知っている。
戦場にいる時の隊長の姿だ。
近衛というお行儀のいいお飾りではなく、敵に死をもたらす兵士のゲオルグだ。
その姿は敵に恐怖を、味方に畏怖を与え続ける。
帰って来た、という喜びを胸に部下は命令が下るのを待った。
「南から敵が来る。 それだけを伝えろ。 走れ」
端的な命令。 誤解しようもない言葉で相手に指示を出すのは、戦場のゲオルグの特徴だ。
「はっ、南から敵が来ると報告してまいります」
言うが早いが、部下はその場で余分な重さになりそうな服を脱ぎ捨てる。
上半身の裸を晒し、ズボンのみをはいた姿はお世辞にも近衛としては相応しくあるまい。
しかし、近衛の騎士になりたかった訳ではない。
この人の部下でありたかっただけなのだ。
「剣を借りる」
地面に捨てた剣をゲオルグは拾うと、部下に背を向けた。
ああ、くそ、着いて行きてえなぁ……と思いながら、部下は問いかける。
「隊長、どちらへ!?」
「魔女殿の元へ」
ゲオルグは走った。
まだ姿の見えぬ、だが部下にも確かに感じられるようになった馬蹄の群れへと。
地面の振動が聞こえる。
「きちんと剣、返してくださいね!」
それだけを叫び、王都へと走る。
まだ自分はゲオルグの部下でありたいのだ。
足よ、千切れよとばかりに走った。
「魔女殿ですな。 女性のお宅にお邪魔するのに兵は無粋かと思われますが失礼しますぞ」
「ああ、ようこそ。 今なら君達のような輩も歓迎したい気分だ」
ジョッキで酒を飲む魔女の家にドアを叩き壊し、泥で汚れた鉄靴で侵入して来た兵達
その後ろから侯爵が現れ、酒を飲み顔を赤くする魔女を見て顔をしかめた。
「……驚かないので?」
ほんの僅かでも魔女がおかしな動きをすれば、完全武装の兵達がその手にした剣を振るう事だろう。
そんな敵意の中、魔女は揺るがない。
怠惰と廃退の空気を漂わせ、ゆらりと立ち上がった。
「慣れてるんだ、こういうの。 それより僕を殺すのかな?」
「はい、申し訳ありませんが」
「何、構う事はない。 ちょうどこの長い生にも飽きた所だ」
そう言うと魔女は踏み出した。
兵が持つ剣の切っ先へと。
ずぶり、と魔女の柔らかな腹に鉄の剣はあっさりと侵入する。
思ってもみない行動に剣を持つ兵も呆然。
しかし、魔女は身を貫く剣の腹に手をかけると、そのまま下に押した。
剣に人の肌が耐えられるはずもなく、切り裂かれ、腸がずるりと零れ落ちた。
「なっ……!?」
「貴様、剣を引け!」
「は、はっはいっ!?」
混乱の兆候を見せた侯爵に代わり、その背後に備えていた老人が一喝。
兵があまりに勢いよく剣を引いたせいで、魔女の血と添えられていた指が辺りに飛んだ。
「すまなかった、爺……」
「今はそれより」
「慌てる事はないよ。 ほら、見ててごらん」
それは何という光景か。
零れ落ちた腸が、切り裂かれた指が、切り裂かれた腹が時を巻き戻したかのように元通りになったではないか。
「僕は普通の方法じゃ死なないんだ。 今からその方法を教えてあげよう」
アルコールに浸った脳髄だけは何故か戻らない。
その事が再生するたびに毎回、不思議だったが、今はそれを感謝していた。
魔女でも素面のまま死ぬのは、なかなかしんどい。
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