| 穢なき純 |
主人公
本名 シオール・ジョゼフィナ・ゼルプハルト
(綴り Ciole
Josefina Selbhalt)
生粋の純血のエルフ
純真無垢で健気な心の持ち主
性善説に満ち溢れていて、ある意味いつもポジティブ
自分のエルフの里・ゼルプハルトの族長を尊敬し、憧れている
くちばしがピンクの白い小鳥・ピッポーさん(シオール命名)をよくつれており、
熱烈に想いを寄せている
が、ピッポーさんはただの普通の小鳥であるため、会話や意思疎通ができるわけではない
しかしシオールは相思相愛であると言い張る。このように一方的に恋人同士である
ピッポーさんは自由に飛び回るため、ふられたと思い込んだシオールが茫然自失に陥ることは日常茶飯事
髪は白いようだが、陽に透かすとあわく虹色に色合いを変える
瞳に決まった色はなく、見ているものの色を移す
(失神やショックで、点滅したり大変なことになる)
尖った耳の先からは樹の葉が茂っていて、四季折々でちゃんと変化する
(シオールが絶望したりすると、やはり大変なことになる)
あらゆる面で自然とリンクしているらしく、環境の善し悪しで容姿も激変する
シュバイクザームでは一応ハーフェンサーカスの世話になる
(トルセルとチェザーレの家に居候する)
かといって一条やハイメルシュタットを嫌うわけでもなく、
むしろ誰もに対して眩しいほどに友好的
シュバイクザーム内ではじめて出会う「ニンゲン」の醜さをまのあたりにしつつ、
勢力争いに巻き込まれながらも成長していく
七不思議編の初期で、一条刃に扮した一条優と出会い、
「シュバイクザームで金持ちの悪党をたおしてヒーローになる」約束をする
この「キセキの約束」は優の企みであった
また、物語の最初にシオールは、ハーフェンサーカスの人身売買品の品目リストから、
副団長・トルセルに名を消してもらうことで救われているが、これはトルセルの企み
| 地獄を説く裏社会の王者 |
ハーフェンサーカス団 団長
本名 ユーリウス・フレンカ
(綴り Julius Frenca)
ハーフェンサーカスの創立者にしてトップ
愛らしい幼い外見と笑顔とは裏腹に、
非常に冷徹なリアリストであり、徹底的に裏社会に浸かりきった人格の持ち主
人間の風上にもおけない所業を「仕方ないね」の一言で肯定する
そんな神も仏もない人物像ながら、“地獄”だけは信じている
※実際に12歳のとき、罪を購うようにとエルフの族長によって
生きたまま地獄へ落とされている
しかしどうやったのかは謎だがあっけらかんとして生還、
現世にはない不老の術まで手土産に奪ってくる
いつまでも姿が幼いのはそのため
本物の地獄を知り、性格はさらに卑劣度を増す結果となった
トルセルを育てた養父でもあり、彼とは特に強い信頼関係がある
シュバイクザームで一応サーカスは解散したが、彼の街での権力は絶大
一条家やハイメルシュタット家のように表の世界には出てこず、目立とうともしない
逆に両家が公にできない裏の部分をすべて掌握することで、
街での自分の権力を安定化させている
人身売買・売春・運び屋などを各国の巡業サーカスの片手間にすませていたようで、
今でも似たようなことをしている
これだけいわくありげな人生を歩みながら、ユーリウスには正体などない
麻薬中毒の両親から生まれただけの普通のただの人間
しかし周囲は常軌を逸しすぎた彼を、悪魔の子だとかダークエルフだとか噂する
耳がまるでエルフのように尖がっているが、
本人曰く「このほうがみんな安心するでしょ?」
その耳は、ローレンスに影の耳を縫い直して作らせたレプリカで、
影業を学んでいたローレンスの最初の作品でもある
自分が人間であることに恐ろしいまでのプライドを持つためか、
エルフの国・アロッケンに踏み入っても誘惑されることなく正気で戻ってこられる
それを活かし、アロッケンを自由自在に歩き回って、
運び屋としての危険な仕事を成したりしていた
(それがエルフの族長の怒りに触れ、地獄に導かれることになったのだが)
「反省?十分したよ。アロッケンを通るときは、清らかな顔をして、
エルフの耳をつけてないといけないってね。だからローレンスに耳を作らせたのさ」
| 面倒見のいい副団長 |
本名 トルセル・フレンカ
(綴り Torcell Frenca)
ユーリウスが作りあげたサーカス団「Hafen-ハーフェン-」の副団長
薄桃色の髪に褐色の肌、と派手な外見だが生まれつきである
褐色人種が悪魔と罵られ迫害にあう世で、
フリークスとして身をさらすことで生活する道を選ぶ
シュリーセンと恋仲であり、永遠を誓う証として彼女の薬指に入れ墨を刺している
根本は、世話好きで子供に好かれる好青年
現在はシュバイクザームの街角や道端で、子供たち相手に芸を披露したりして、
ストリートクラウニストとして細々と気ままに生活している
チェザーレと二人暮らしをしており、ローレンスやラティーシャ等の
ハーフェンサーカスの関係者のことも、こまめに気にかけている
なぜか他人に好意を寄せられやすい体質で、ラティーシャ、チェザーレ、シュリーセン、シオール・・・と、ちょっと優しくしただけで慕われている
ハーフェンサーカスの団長である父・ユーリウスの人柄について深く知る人物でもあり、
基本的に他人を信用しないユーリウスに唯一信頼を置かれているほど
普段は一条やハイメルシュタットの垣根を気にせず、街の誰とでも親しく接する気のいい男だが、そこは副団長。
サーカスの規則を破った者への制裁・団員に手を出した者への、彼の報復は凄まじい
放浪の民・ジプシーの子として生まれるが、
行きがかりのハーフェンサーカスの団長・ユーリウスに金で売られる
以来、団長に実の息子のようにして育てられた
シュバイクザームでハーフェンサーカスが解散した元凶たる人物である
シュリーセンとの関係性の縺れが原因だが、現在はそのことにはあまり触れない
そのことで、一度イレガルに頼んで、自ら暗室に監禁までされている
それを転機に、髪を切り、化粧を落とし、喪服を着る等、装いをがらりと変えている
ただひとつ、シュリーセンには一度も手を出さず、
最後までプラトニックな関係をつらぬいたことだけは誇っているようだ
覇王編においてのキーキャラクターであり、
トルセルがダルム国の王に会いに行くところからスタートする
まずはイレガルの城へ行く
昔、シュリーセンの一件で狂った部分を切り離して暗室に放置していったのだが、
それを拾いに来たのだ
シュバイクザームにはサーカスのために居続けなければいけないが、
シュリーセンのそばにいると我を忘れることになる
苦渋の末の切り捨てだった
しかし、恨みや悔しさ・執着心がなければダルムに行っても意味はない
そうしてトルセルは喪服から昔の道化服に着替え直し、デビルハットをかぶって出ていった
トルセルのピンク色の髪は非常に珍しい色であり、
偶然ダルム王も同じピンク色の髪に褐色の肌をしていた
他国ではダルム王は嫌われ者であり、外見の似ているトルセルはジプシーの中でもひどい迫害を受けてきた
ダルム王・トリステンを復讐で殺しにでも行くのかと思いきや、本人にその気はなかったようで、ただどのような人物なのか確認したいという程度だったらしい
重要だったのは国王に殴り込みをかけることでの自身の処刑だったようだ
| お人好しな眠り男 |
本名 チェザーレ
(綴り Cesare)
ハーフェンサーカスでクラウンを務める青年
暗い場所でしかものを視ることができない
故に両目を覆い隠す異様な眼帯は、光を遮断するため
それ以外にも、「邪眼」という己の特殊体質を抑えるためでもあるようだ
イレガルの好奇心から、暗室に閉じ込められたまま、長い年月を過ごした過去を持つ
「チェザーレ」とはイレガルに付けられた愛称であり「眠り男・夢遊病患者・予知者」の意
暗闇に精神を食いつぶされた果てに、発狂するとサーカスに売り飛ばされた
ハーフェンサーカスで過ごす中で、副団長のトルセルに目をかけられ、
彼に温かく接してもらえたおかげで徐々に正気を取り戻す
トルセルに非常に懐いており、今でも一緒に暮らしている
何事にも一生懸命にとりくむ愛すべき性格の持ち主
ハーフェンサーカスの人間にしては珍しくスレておらず、純朴で心優しい正直者
| 恋に恋するロボットの想い人 |
本名 ラティーシャ・アンネ・トーリン
(綴り Lateesha Anne Thorin)
ハーフェンサーカスの見習いクラウン
大きな青い瞳の、快活で可愛らしい少女。11歳
副団長のトルセルを非常に慕っており、シュリーセンをライバル視している
しかしそのあどけない恋心は、本気というより恋に恋しているといったほうが適切なようだ
元々はハーフェンサーカスとは関わりなく、シュバイクザームの一条派の家庭に生まれる
しかし、一条刃の持つ機械で動くロボット「飛厳-Higen-」と出会い、運命は変わる
機械のあまり発達していない社会にいきなり現れたロボットの飛厳は、
心を持たない動く人形として、街の人々から恐れられていた
しかしその飛厳を、ラティーシャだけはまったく恐れなかった
飛厳に普通の人間として接し続け、二人は自然に友達になる
同時に、彼女の家族は、ロボットと心を通わせる彼女を悪魔ではないかと不審がり、
そうしてラティーシャは虐待を受けるようになった
飛厳の主である一条刃は、ラティーシャのこの境遇を飛厳から聞いて知り、一計を廻らす
刃にそそのかされた飛厳は、ラティーシャの片目をえぐり取ってしまう
当時、飛厳の顔にはまだ白い仮面しかついておらず、瞳はなかった
現在の飛厳の瞳はラティーシャのものである
片目を失くしたラティーシャは完全に家庭での行き場を失ったため、
ハーフェンサーカスで生活する道を選ぶ
実はこのとき飛厳をそそのかした一条刃は、刃に扮した優であった
| 喧嘩上等の骨董品屋 |
本名 ローレンス・ゼルプハルト
(綴り Laurence Selbhalt)
シュバイクザームの骨董品店「REHEN-レエン-」の店主
影を自在に操る能力を持つ、美しいハーフエルフ
直射日光に非常に弱く、肌をなるべく露出させない服を着る
店には天井から、遮光カーテンとその紐が所狭しと下がっている
元々はハーフェンサーカスの団員で、トルセルとは兄弟同然の仲
輝くほど美しい完璧な容姿を生まれ持つが、中身はというと、
ギャンブル好きで、ケンカっ早く、口調も態度も粗野で、手に負えない乱暴者
トルセルいわく「中身はただのオッサン」
権力や柵を嫌うため、一条にもハイメルシュタットにも介入しすぎない
ただ、ハーフェンサーカスの昔馴染みにはすこし優しい
店にある骨董品は、サーカス団員時代に趣味で集めた影(客からかすめ盗ったものや、旅先での珍品・名物など)が大多数
ビンに詰めたり、本に挟んだりして収納している模様
イレガルが仕事上で入手した穏やかでない物品なども、引き取って店先に並べたりしている
他に、客の足元に影を縫い付けて縫製する、といった簡単な仕事も慈善事業程度に請け負っている
エルフと人間の混血児・ハーフエルフであり、髪の色素が一部欠けている
淡いエメラルドグリーンだが、日光に当てると半透明の不思議な発色をする
街で誰かにケンカをふっかけ、大乱闘になり、副団長トルセルに通報が行き、トルセルにとめられる、というのがパターン化してきている
ゼルプハルトで過ごした幼年期のなごりなのか、スペイン語のようなへんな言葉がふいをついて出るクセがある
団長やトルセルは巡業で数ヶ国語を話せるため、会話に支障が出そうなときはその二人がたまにフォローを入れる
ハーフエルフであるため手足も長く、背も異様に高い
シオールの勧めで身長を図ってみたところ、208cmもあった
| 街を統べる賢女 |
本名 サーリーン・ガラク・ハイメルシュタット
(綴り Saleen Gurk Hymelstadt)
シュバイクザームの三大勢力の一つであるハイメルシュタット家のトップ
憂いさえ帯びた眼差しに細い四肢と、儚げな美貌を生まれ持つ
自らの魔女裁判において、その美貌で周囲を惑わし、有罪を無罪にひっくり返した過去を持つ
その事実は、有罪であった
裁判前に聖水につけて短く切られた髪は、再び伸びることはない
着ている服は今でもそのときの囚人服で、縫い直しては大切に着ているらしい
実名はサリーシャだが、ランサレーマへの亡命の際にランサレーマの言葉の発音に合わせてサーリーンと名を変えている
今に至ってはシュバイクザームの実質的な統治者の一人であり、
シュバイクザームに巣くったハーフェンサーカスや、古くからの商家・一条との折り合いは非常に悪い
しかしながら、ハーフェンサーカスが街に居つく原因となったのが自分の妹(シュリーセン)のせいでもあるため、力任せに追い出すこともできず、苦々しい思いもしている
街の半分は、一条の所縁の人間であるため、一条家を追い出すことはなかば諦めている
最下層に暮らす闇医者のレティガンとは、恋仲だった
一条サイドにつこうとするレティガンを、今でも悲しげに見つめる
魔女裁判の横行する祖国・アウシュタットを家族と捨ててきたことになるのだが、
当時彼女はまだ15・6歳のあどけない少女であり、亡命などは一族の意志に従っただけだった
しかし今では家長の位についているため、亡命騒ぎもすべてサーリーンの悪巧みのように扱われてしまっている
妹のシュリーセンを「外見に惑わされない愛情の対象」として溺愛しており、
トルセルとシュリーセンの仲を知った際には、動転してシュリーセンの記憶を魔法で消してしまっている
美しすぎるサーリーンの場合は他人を脅すにあたって、周囲より自分への攻撃(自殺や自傷を匂わせること)のほうが効果抜群であるため、今でもひどく自虐的
覇王編において、シュリーセンの魔力が姉のサーリーンを上回ったため、シュリーセンには記憶が戻る
過去に心から愛しあった夫ノイエ・ガラク・ハイメルシュタットがいたが、失っている
彼女のミドルネームの「ガラク」は夫の名前を想いの代わりにと受け継いだものである
両足には大きな傷跡があるが、ドレスで隠している
※バトンで明かしているが、公歴1850年の12月31日生まれ、山羊座のO型。両利きである。
特技は大食い・早食い。ピアノ。(シュリーセンによく弾き語りをしてやっている)
ハイメルシュタットの食費は大幅に彼女に割かれている。
(七不思議編のあと)街のガラの悪い酒場にもよく出向いてはバーテンをことごとく打ち負かす酒豪でもある。
幽霊や怖い話の類が苦手。(霊感があり、見えるから)
一条刃に足のサイズまで調べられていたらしく、23とのこと。
体の前で手を組むクセあり。
| 最強無比の切り札 |
本名 テディ(セオドア)・シュトライヒ
(綴り Theodore Streich)
ハイメルシュタットの最強の切り札
サーリーンがいるため魔力では絶対的に有利なハイメルシュタットだが、実戦能力に弱点がある
そこを補うべく招かれたハーフエルフの騎士
ハーフエルフというのは血統においての話であって、本人にハーフエルフの自覚はあまりない
また、多くのハーフエルフが魔法を得意とするのに対し、
テディは剣技や徒手空拳などの武術を得意とする
正体は、イレガルの実験によって生まれた、人工的な傭兵専用のハーフエルフ
イレガルの興味という名の悪意によって、魔力を欠いた欠陥を持って生まれる。耳も尖っていない
シュリーセンから「強くてのっぽのくまさん(テディ)」と呼ばれたことから、「テディ」の通称で通る
おそろしく強いため、テディには何があってもケンカを売ってはならないのがシュバイクザームの暗黙の了解
本人にその自覚はあまりないようで、いつものんびりと街を歩くが、周囲は心の底でおびえきっている
魔法相手に剣で勝てる、剣を取られても拳で勝てる、手を縛られても足で勝てる
体を拘束されても精神は折れないという強者
おそろしく融通が効かない性格で、一見すると生真面目で常識人
しかし傭兵専用の生物に育つよう、イレガルに遺伝子操作されているため、根底には暴力ですべてを解決しようとする姿勢が常に見られる
さらに、殺人・戦闘において迷いが出ないように、感情の振り幅も極端に下げられている
細部まで微調整が施されたテディだが、イレガルが一番強化させたのは満足度の感じ具合
テディはこの不幸な境遇において、自覚がないし、不幸であってもなんの問題もないと感じている
学ぶものの成長はせず、なにかに飢えることもないだろう
本名 シュリーセン・エレナ・ハイメルシュタット
(綴り Schliessen Elena Hymelstadt)
トルセルに惹かれるハイメルシュタット家の娘
当主・サーリーンの妹であり、彼女から偏愛されている
知能低下の不治の病に侵されており、記憶が減り、話せる言葉も減ってきている
その病の真実は、シュリーセンからの愛を独占したいサーリーンによる呪いである
トルセルのサーカス団が移動すると知ったとき、彼と離れたくない一心でサーカス団を買収し、解散にまで追いやった
他人を悪魔的に魅了する体質を生まれ持ったトルセルに、強烈に惹かれる
シュリーセンと出会ったトルセルも、彼女に惹かれ始める
シュリーセンにも生まれつき、他人を誘惑するような魅力があった
トルセルは特殊な身の上のため
シュリーセンはハイメルシュタット家の魔女の血筋のため
最初は可愛らしい恋人同士だったが、近づきすぎたために、やがてそれは狂気に変貌しだす
お互いがお互いの魅力にあてられ、依存し、
相手の生死までもを己が常に握っていなければ、不安と恐怖に打ち勝てないまでになる
それはもはや愛でも恋でもなかった
トルセルは自らの狂気と対峙するため、イレガルの城へ赴き、自分を厳重に監禁してほしいと頼む
そしてトルセルは皮肉にも、昔自分が助け出してやったチェザーレが監禁されていた暗室へ入る
シュリーセンと無理やり距離をつくったことが功をなし、トルセルは暗室で正気を取り戻す
出てきたトルセルは髪を短く切り、妖艶な化粧もおとし、奇抜な服も着なくなった
シュリーセンに溺れた自分と決別するため
しかしシュリーセンは純粋に今でもトルセルを慕い続けている
トルセルの本心は、閉じ込められた暗室の中、今や誰にも窺い知ることはできない
覇王編において、シュリーセンの魔力はサーリーンを上回る
そのときシュリーセンの記憶を封印していた呪いは解け、トルセルについても思い出すことになる
伸ばすようにとサーリーンに言われていた髪を、シュリーセンはトルセルがやったようにばっさりと切る
「そうやってわたしも髪を置いてくれば、また一緒にいてもいい?ピエロさん」
本名 一条
刃
(綴り Ichijyo Yaiba)
ハイメルシュタット家より以前からのシュバイクザームでの長い歴史を持つ商家「一条」
その三代目にして、現当主の青年
東洋系の民族からなるキルシュト(切里)からの流れをくむ家柄で、家風も佇まいも「和」と「近代」である
一条家の力により、シュバイクザームの街の様相も「和」だった
そこへ魔女裁判で無罪を勝ち取ったサーリーンがハイメルシュタットの根を生やし、
各国を渡ったハーフェンサーカスまで定住し、
シュバイクザームは和洋の織り交ざった複雑な街へと変化する
このようにシュバイクザームの治安が混乱したことによる、一条家の恨みは根深い
刃はサーリーンを積極的に嫌っており、一条家とハイメルシュタット家の仲は最悪
サーリーンもまた刃を嫌っており、双方のお互いへの見解は「小賢しい悪党」と、一致している
しかし「一条」の家柄を除けば、刃自身は気さくな現代風の青年
近代文明を好み、商家の当主らしく金の転がし方も巧み
これでいて愛人を16人も囲っている
シュバイクザームに長く伝わる七不思議に、「一条が極秘に扱う商品・不老不死の秘薬」というものがある
確かに一条家の商品目録の中に「不老不死の薬」があることは、刃もあっさり認めている
そして一条家の歴代の当主は、全員刃と容姿が瓜二つである
一条家は昔から、正妻を持たず愛人を数多く抱えるスタイルできた為、刃の実母も所在不明
「一条の初代当主が、実は不老不死で、一度も世代交代せず、刃本人なのでは?」というのが、シュバイクザームの七不思議「一条の不老不死の秘薬」の概要である
その噂の張本人たる刃だが、そのことについては否定したり肯定したり、ふらふらと言い分が定まらない)
公式見解では、初代・一条真、二代目・一条冷、そして三代目・一条刃となるらしい
そうすると刃は計算上、もう50歳近くのはず・・・なのだが、なぜだか若々しい
これには仕掛けがある
七不思議編にて明かされる「一条の不老不死の秘薬」の正体とは、
サーカス団長・ユーリウスが地獄に行ったその昔に得た術であり、「薬」ではない
その術を教えるのと引き換えに、団長は多額の資金とシュバイクザームでのサーカス団の権限を一条から得ていた
また、一条家の祖国であるキルシュトでは「狐信仰」の概念が深く、一条家は「狐憑き」「狐に祟られた血筋」と迫害を受ける立場にあった
本名 飛厳
(綴り Higen)
一条刃につき従う秘書
一条家の財を結集して作られた、心優しいロボット
顔の部分には無機質だが、憂いを帯びた表情の白い仮面
そして仮面の裏には要のコンピューターが脳としてはめられている
無数に伸びる赤と青のコードは、思考や感情の揺れで、蛇のように自由に動く
胴体部分には黒いマントをはおっており、中がどうなっているのかは謎
球体間接人形のような腕はときどきマントからのぞいていて、
黒いカバーの分厚い聖書のような本を大事そうに抱えている
見慣れない機械人形として街の人々に恐れられる中で、小さな少女・ラティーシャと出会う
彼女との友好を深め、飛厳にはつたない自我が生まれた
そこに一条刃(一条優)から「本物の目でそのコと見つめ合いたくない?」とけしかけられ、彼女の目で彼女を見て、見つめあうことに憧れた飛厳は、彼女の片方の瞳をえぐりとってしまう
そこに悪意はまったくなく、それは純粋なラティーシャへの想いだった
現在の飛厳の青い左目は、ラティーシャのものである
優がそうけしかけたのには訳があった
まず、ハーフェンサーカスは、どこか心身にハンデを負った者しか入団させないという事実がある
飛厳の影響で家族から虐待されるようになってしまったラティーシャを、
さらに片目にすることで、虐待の家庭からハーフェンサーカスへ優が導いたのである
その思惑を、飛厳は知っていたのか、知らなかったのか
飛厳については謎が多い
が、街で穏やかに買い物をする姿からして、凶暴というわけではないようだ
| 屋敷の奥の大きな秘密 |
本名 一条 優
(綴り Ichijyo You)
「一条刃」の正体
存在を隠された一条刃の実の息子
藍色の和式の服をまとった青年
腰にいくつも下げられた鈴は、いつでも所在がすぐに分かるように
シュバイクザームでの一条家は、初代・一条真、二代目・一条冷
三代目・現当主・一条刃となり、以降はまだ引き継がれていない
刃には27歳になる実の息子がおり、
それが本来では4代目になっているはずのこの優である
父・刃は、生まれた息子の出生届は出さず、自分の完全な影武者として育てることを決意
優は誕生の事実からすべて消されることとなる
一条本家の、「息子には、もっとも人を傷つけるものを名に」というしきたりにならい、
刃はそれを「優しさ」であると考え「優」の名をつける
刃より若干線が細いが、骨格や顔の造作はクローンといっていいほどほぼ同じ
生まれつきよく似てもいたが、ここまで完璧に仕上がったのは、
闇医者のレティガンが優に幼いころから整形などの手術をくわえてきた結果
ゆえにレティガンだけは優の存在を知っている
ほんの少しのケガや痣でも外見に差が出てしまうと、レティガンにいちいち調整させるほどの念の入れよう
刃の容姿が若いままなのは、シュバイクザームの七不思議「一条家の不老不死の秘薬」と関係している
優の本来の性格は、刃より丸く弱く、喋り方も刃とはわずかに異なる
が、街に出て「一条刃」としてふるまうときは、完全に己を消せるようだ
このように変質した関係でも、親子仲はいいほうで、しょっちゅう「遊び」と称して意味なく入れ替わっている
片方が出かけるときは、もう片方は一条本家の屋敷のはなれにこもる
いつも必ず「一条刃」がロボットの飛厳を連れて歩くのは、
他人と出会ったり会話したりして、二人の間の記憶や認識のすれちがいが起こるのを避けるため
飛厳は「一条刃」の情報をすべて持ち歩き、
狂いが生じそうなときはさりげなく助言をいれたりしている
親子仲はいいものの、刃より精神面が弱いため、性格には不気味な歪みがある
「これくらい、刃ならどうってことないよ」と、尊敬か悪意か分からないようなことを言いながら、わざと刃が困るようなことをしてくる
どちらかといえば「双子の兄弟」の関係に近いようだ
七不思議編のキーキャラクターであり、刃に黙ってシオールと「キセキの約束」を結ぶ
| 命を嫌う闇医者 |
本名 レティガン
(綴り Retygun)
最下層の地区に住む闇医者
手術中ですら酒を飲み、病室で煙草を吹かし、平気で女を弄んで孕ませる、最低の不良医師
その徹底した命を軽んじる生活態度は、己の出生を肯定するためでもある
その正体は、とある人物のクローン
同じくクローン体の双子の弟・フォルエンがいる
密入国・出国をさんざん繰り返して、あらゆる罪状でさまざまな権力に追われている
もとから治安の悪いシュバイクザームでは目立たず暮らせるため、現在はシュバイクザームに定住中
どの権力にも属していないが、三大勢力の中では一条(刃個人)と気が合う様子
しかし医者としての客は、喧嘩っ早いハーフェンサーカスの連中が多いとか
サーリーンと恋仲であったが、関係はもつれ、いまだに人知れず想いを引きずっている
どちらかというとハイメルシュタットではなく一条寄りの姿勢を見せるのは、彼女へのあてつけ
一条の最重要人物の「優」の存在を知っている数少ない人物でもある
七不思議編において、イレガルに造られた生立を少し明かしている
シュトライヒ城にいたこともあるが、イレガルを父だとはまったく認めていない
むしろ嫌悪の対象であり、イレガルが他人の命を好き放題に弄ぶ人物であるためか、
レティガンは決して人を殺さない
護身用に銃を持ち歩くこともあるが、ローレンスに作らせたただのレプリカで、銃の形をしたライターである
ヘビースモーカーで、タバコの銘柄はモデラ皇国から直輸入でしか手に入らない高級煙草「ヒュアキントス」
七不思議編にてシオールに年齢を聞かれて、数えていないと答えている
レティガンはクローン体故のDNAの異常か、体の成長と老いのスピードが遅い
年はとっているためいつかは死ぬし、ゆっくりとだが確実に老いていくため、不老不死ではない
戦乱編後、恋敵にあたるはずのサリーシャの夫・ノイエから異常に構われている
医者でもあるノイエとは、やはりどこか通じるものがあるのだろうか
| 悪行と背徳の中毒者 |
本名 ガレッティ・ダコルハイト
(綴り Galetti Dacolheit)
一条家の弱点である魔力を補う役割を担っている、ハーフエルフの快楽殺人者
死と暗闇と性欲をこよなく愛し、死体に欲情する異常な性癖を持つ
その性質上、おそらくダークエルフの血筋が入っている
「キティ」の通称で知られるが、その由来は一条家のセックスペットだった頃の愛称からという暗いもの
奇しくも、街を身軽に飛んで徘徊する様はキティ(野良猫)である
現在では彼を「キティ」と名指す者は少ない(そう呼ぶとキレるため)
しかしシュバイクザーム内でも、一条刃のみは彼を今でも「キティ」と呼んで可愛いがる
ガレッティも、一条家で性欲の捌け口として扱われていたとき、当主の刃に救われた過去があるため、刃には逆らえない
ハーフエルフのローレンス同様、直射日光は苦手
髪はやはりローレンスやテディと同様に、陽の光にすかすと淡く発色する不思議な色合い。オレンジと赤が混じっている
長い蛇のようなみつ編みの中にはピアノ線が仕込まれており、最後の手段としてよく活躍するようだ
趣味はブレーキを使用しない車の運転
特技は床の上での手練手管
覇王編において、ダルム国の王・トリステンとの逸話が出る
ハーフエルフは太陽の光を浴びると灰になるという言い伝えを信じ、暗い場所にしかいようとしない少年のガレッティ
そのガレッティを見て、覇王は日の照りつける地面に立ってみせた
覇王はヴァンパイアであり、ハーフエルフなどよりもっと日の光は危険であった
覇王の青白い肌は日に焦がされ、煙が立ち上り、結果、覇王は全身火傷。肌は褐色に変化してしまう
それでも死にはしないのだと言ってガレッティの頭を撫でた覇王は優しく笑っていた
本名 イレガル・シュトライヒ
(綴り Illegal Streich)
シュバイクザームの外、北西のフッターベルク山脈の城に住む学者
毒々しい奇抜な色合いの縞模様のネクタイを着ける
レティガンいわく、「近づくなという毒蛇のアピール」
顔の右半分は包帯で大雑把に覆われており、常に顔面蒼白
キセルを愛用し、唇は麻薬中毒のためか異様に青い
人畜無害なふうな笑みを絶やさないが、血色の悪さ故になにか良からぬことを企んでいると思われがち
自覚なき悪であり、すべて本人に悪気はない
しかし生まれついての疫病神で、彼にかかわった者はろくな目に合わない
現にシュバイクザーム内に住んでいるわけでもないのに、
シュトライヒ城から一番近い街というだけで、シュバイクザームには彼の被害にあった者があとを絶たない
クローンの研究中にレティガンを生み出した張本人であり、面白がってなにかと父親顔をしたがるが、レティガンからは避けられている
テディもレティガンと同様に作り出しているのだが、傭兵として使うという動機しかなかったからか、テディには絡まない
チェザーレを実験と称した遊びで、長きにわたって真っ暗な闇しかない部屋に監禁し、発狂させた
飽きるとチェザーレのことは、ハーフェンサーカスに「気が狂ったフリークス」として売り払っている
ハーフェンサーカス団の団長・ユーリウスとは、浅からぬ因縁がある様子
数々の事柄を合わせても、不老不死なのかは定かではないが、少なくとも外見は歳をとっていない
顔半分を覆っている包帯は時が進むにつれ、体全体に広がっているようで、
戦乱編で登場したときは顔全体がほぼ包帯状態になっていた