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【高橋乗宣の日本経済一歩先の真相】

供給力低下しても止まらないデフレ

【政治・経済】

楽天SocialNewsに投稿!
2011年8月19日 掲載

7-9月期のプラス成長も喜べない

 日本経済がしたたかな粘り強さをみせた。11年4―6月期実質GDP成長率は、年率換算で1.3%減となったが、これは輸出が4.9%減と大幅に落ち込んだためである。内需は、震災の影響がほとんどみられなかった。設備投資と政府投資、公共投資はいずれもプラス。個人消費はマイナスだが、減少幅は0.1%とわずかである。
 東北地方に工場を構える部品メーカーの被災でサプライチェーン(供給網)が寸断され、自動車やハイテク製品は減産を強いられた。供給力が落ちれば、輸出は減る。放射能被害を恐れ、日本の製品や食料品の輸入を制限する動きが広まったのも響いた。
 ただ、サプライチェーンの復旧は急速に進んでいるし、放射能へのナーバスな対応も減ってきている。外需が落ち着きを取り戻すのは難しいことではないだろう。
 問題は、これだけ供給力がダウンしていながら、依然として1.1%減となったGDPデフレーターにある。日本のデフレは、それほど深刻な状態が続いているのだ。
 過剰な供給と不足する需要。だが、国内の供給にブレーキがかかれば、需給はトントンに近づくはずだ。日銀も考えられるだけの金融緩和策を繰り出しているし、政府は国債発行を増やして復興にカネを使う流れになっている。金融や財政の政策は、インフレ圧力を強めるものだ。それでも、現実には物価の下落は止まっていない。
 原因として考えられるのは、円高の影響だ。輸入品の価格下落が、競合する国産品の物価を押し下げる。こうなると、デフレ基調を変えるのは困難になり、企業は雇用を削る方向に向かう。新卒者の採用を絞り、パートや派遣を増やすことで賃金コストを減らし、製品価格の上昇を抑える。割安な輸入品と競争し、生き残る常套手段。実際、大卒の内定率は史上最低レベルだ。それでもダメなら、生産拠点を海外に移転させるしかない。
 大方の予想通り、7―9月期の成長率はプラスに転じるだろう。しかし、それで日本経済が明るさを取り戻すわけではない。デフレは終わらず、雇用機会が失われ、賃金は減り続ける。物価下落の芽を摘み、経済を悪くする要素を根絶やしにするのは簡単ではない。菅首相が退陣し、大連立とやらが成立したところで、経済の問題は何も解決しないだろう。
【高橋乗宣】
~2011年8月19日以前の記事~

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