■上岡龍太郎さんと「同い年で引退というのに運命を感じます」
――長い芸能生活を振り返っていま、紳助さんにとっての芸能界、芸能生活はどういうものだったのでしょうか。
島田: やっぱり素晴らしい人にいっぱい巡りあえたし、素晴らしい人ばっかりでした。そして自分が、勝手にですけども「心の師」と仰いでいる上岡龍太郎さんが引退されたのが55歳なんですよね。だから今自分が55歳で、「絶対、君は引退したらあかんぞ」「どんなことがあっても引退したらあかんぞ」と上岡さんに何年も前から言われてたんですけども、なんかこういう結果になって、同い年で引退というのになんか運命を感じます。そして、僕がこの地位に上がれるまで力を貸してくださった和田アキ子さんにも、メールでなく電話で報告しようと思ったんですけども、電話にお出にならなかったので報告はできませんでした。
――今まで芸能界で長い活動があっていろいろ思い出があると思うんですけども、今一番思い出されるもの、思い出されるシーンなどはございますでしょうか。
島田: やっぱり6年くらい前にトラブルを起こして、自分でもうダメだろうなと思ったときに、皆に暖かく迎え入れていただいて、そして、もういっぺんなくなった命だから、やりたいことをやろうとやらせていただいたときに「ヘキサゴン」という番組があたって、子供たちのような人たちがたくさんスターになっていってくれて。それがうれしいです。昨日も上地雄輔がうちに来て泣いてたんですよ。「父ちゃん、父ちゃん」って言いながらね。みんな僕の子供たちですから。「父ちゃんが引退しても、子供たちの成長はこれからも見守るから」と。そんな話でした。
――みなさん涙なみだの時間だったわけですか。
島田: そうですね。でも奴らはしっかりしてますよね。上地は昔から言うとるんですけども「一生お父ちゃんを守るからね」と。
――この長い芸能生活のなかで、本当にこの世界で一番良かったと思われることはなんでしょうか。
島田: やっぱりいろんな方とお会いできたことが、自分のなかで一番の財産ですね。普通の人やったら会えなかった人とたくさん会えましたし。本当に。例えば孫(正義)さんと食事をさせてもらったときなんかは、本当に歴史上の偉人と食事をしているような時間でしたし。帰って感動しましたし。なんかいろんなことを教えられましたわ。自分が成長できました。孫さんと食事して、2時間の予定が4時間になって。わかってるかわかってへんかわからん僕に、一生懸命しゃべってくれてるときは、本当に幕末の偉人としゃべっているようでした。
そして次の日、お礼のメールを送ろうと思いましたが、僕の携帯はドコモだったんで「これはいかんな」と思ってソフトバンク(の端末を)買いに行って、「ありがとうございました」と1回だけ打って、また契約解除してドコモの新しいのにしました。そんなときに「ソフトバンクから送らなあかんな」と思わせることも、孫さんでしたし、そんな偉い方とたくさんお会いできたのが僕にとって一番の財産だと思います。
そんな方々には本当に感謝していますし、そして僕みたいにわがままなので本当に少ししかいないんですけども、そんな方々から手紙とかをいただいて、「人生が変わった」とかいろんな熱い手紙をいただいたことが僕にとって、「人の役に立てることもあるんだ」と思いまして。人気者でもなんでもない僕に対してそういう手紙をいただいたりすることが、「やっててよかったなぁ」とほんまに思いました。
先日、なんのギャグもない偉そうな『紳助の100の教え』みたいな本を出させていただいて。あの本が僕の芸能生活のなかで一番売れた本になったときに僕は一番嬉しかったです。お笑いだけやなくて、こんなことも求めてくれる方がいるんだなぁと思いまして。本当に申しわけなかったです。だから『100の教え』を買ってくれた30万人の方に心から感謝をするのと同時に、今日は101個目(の教え)ですわ。アホなことのようですけども、毅然とした態度で、自分で一番重い処分を与えなさい。
――10数年前にトラブルの解決を暴力団の方に頼んだことが、今回のきっかけになったかと思うのですけども、暴力団の方にAさんを介して頼んだことについて、いま後悔はしてないのでしょうか。
島田: 僕がAさんに暴力団の方を頼んだのではなくて、Aさんが話を聞いて電話してこられるわけですよ。「どうしたんだ」とおっしゃった。そのときAさんはまったくの堅気の方ですから、「こういう問題なんだ」と。心配して電話してきた方には、その方だけじゃなく何人かにしゃべりました。そしたら「そうなんや」と言って、僕が知らないあいだにAさんがその方にお願いして解決してくださったんです。
――ただBさんという暴力団の方に「こういうかたちで解決してもらったんだよ」と聞いて、ご自身はどう思われたのでしょうか。
島田: はい。僕はそれを聞いて本当に(芸能界を)やめるつもりでおりましたから、解決できるということに一番ホッとしました。ただBさんに解決してもらって、「これはあんまりよくないことが起こったな」というのは認識がありました。だから「どうしよう」と。この世界の方とその世界の方が接してはいけないと思いました。
で、僕は(Bさんに)会いに行きました。そしてそのことを伝えました。「僕たちの世界の人間は、そういう方に接することはできない」と伝えました。するとその方は「会う必要もないし、TVでがんばればいいんだ」と。「それが一番の恩返しとちがうか」と。僕は「接触することは良くないから」と教わりましたし、「君が僕に恩を一切感じる、そういう必要もない」と。「僕はAに頼まれて、これは不条理だなと思って解決しただけだから、君は何も思う必要はない」とおっしゃられて。
それでも僕はなんか違和感があったので、はっきり言うて「お金かなんか渡さなあかんのかな」と正直思いました。(すると)「馬鹿なことを言うな」と。「そんなことはあり得ない」と。「君が(感謝しているという)そういう思いを持っているのなら、僕もそういう思いでいる」「本当に心と心でつながったら会う必要もない。いつか俺が死んだら手を合わせてくれ。遠くから」とおっしゃったんです。そのとき自分が一番困ってるから、ヤンキーあがりの僕には一番その言葉が響きました。だから僕は心のなかではそういう思いで、そのときは退出しました。だからさっきも言ったみたいに、直接メールすることもなかった。