衆院議員の野田聖子さん。「体調は良く、私もおなかの子も元気よ」とうれしそうに笑った=東京都千代田区、林正樹撮影
自民党の野田聖子元郵政相(50)は米国で第三者による卵子提供を受けて体外受精をし、現在妊娠7カ月。来年2月中旬に出産予定だ。長い間不妊治療を続けてきて、ようやく母になる日を迎えようとしている。いまの思いを聞いた。
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おなかの子は男の子で、元気に動いて、よくけります。名字は野田なので、下の名前は夫が考えています。
一般の人から見ると奇妙なのかもしれませんが、私からするとようやく「産み時」が来たんです。いまは大臣でもなく、野党で、いろんな制約から解き放たれているから。卵子提供を受けると決めたのは、昨年8月末の衆院選が終わって、負けた日(比例東海ブロックで復活当選)。でも、研究はその半年ぐらい前からしていました。
いまの日本でも卵子提供はできます。だけど、こっそりやることになる。私は法律を作る立場の人間だから、法が整備されている国でやって、こういう不妊治療が可能だ、という考え方を輸入しようと思った。「国内の法整備を先にしろ」という批判があるが、世論が盛り上がらないとできない。だからこそ、国会議員として、まさに「命をかけて」やっているんです。
「お金がある人しかできない」とも言われました。確かに米国では500万円以上かかる。夫が新しい車をあきらめて、やりくりをしてくれました。でも、日本ではその10分の1の値段でできるらしい。だからこそ、国内でできるようにしようよと訴えたいんです。
普通の妊娠が難しい場合、人工授精、体外受精とステップがあって、日本はここで終わり。でも諸外国では卵子提供、代理母……と、次の段階がいろいろある。
私が一石を投じたいのは、体外受精を何十回もやる必要があるのかということ。体外受精は始める勇気より、やめる勇気のほうがいる。可能性が数%でもあると言われるとやめられない。そこを医者にも考えてほしいし、患者さんも傷つく。私も14回もやって、傷ついた一人だから。
これからの女性には、私を反面教師にしてほしい。子どもを産むことを先延ばしにすると、私みたいにお金もいるし、苦労はするし、夫婦関係もこじれるよって。自分の身体をよく知ってほしいです。
高齢妊娠でも頑張れって言いたいわけではない。ただ、どうしても子どもが欲しい人に、この国はチャンスがない。不妊治療は保険適用にして、回数制限を設ければいい。その代わり、卵子提供など次の段階を用意する。欲しい人の願いをかなえられるようにしたいのです。
私の子は、ハーフ。小さい頃から夫と2人で何度も言い聞かせるつもりです。「君は私の子よ。10カ月間、私の血をあげ続けたから君がいるんだし、私の命。欲しくて欲しくて頑張って、誰よりも望まれて生まれてきたのよ」って。
家族は多様化しているし、これが私たち家族の姿なんです。新しい親子の姿を見ることで、許容してもらいたい。(聞き手・平岡妙子)
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のだ・せいこ 当選6回の衆院議員。7歳年下の飲食店経営の男性と事実婚をしている。01年に鶴保庸介参院議員との事実婚を公表。体外受精で一度妊娠したが、流産。06年に鶴保議員とは結婚生活を解消した。著書に「私は、産みたい」「不器用」。
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〈卵子提供〉 欧米では卵子提供に関する法が整備されている国が多いが、日本では法規制がない。2003年に厚生労働省の審議会が、法整備した上で匿名の第三者からの提供に限り、容認するという報告書を出した。精子提供はすでに実施されている。
日本でも、すでに卵子提供を実施している病院がある。しかし日本産科婦人科学会は、法律上の夫婦以外の卵子を使っての体外受精を認めていない。
中曽根康弘・元首相は原発推進で絶大な影響力を振るった。技術も制度も当初は米国からの借り物だったが、「自立した国家」を掲げるには原発を主体的に導入したとみせる必要があった。