従来の安全審査が全く機能しなかったことに、エネルギー工学に詳しい東大名誉教授、山地憲治・地球環境産業技術研究機構所長は「東電も政府も、シビア・アクシデント・マネジメント(過酷事故対策)が不十分だった」と指摘する。
過酷事故対策とは、79年の米スリーマイル島原発事故を教訓に欧米で導入が進んだ危機管理概念だ。日本でも想定を超えた事故に、外部電源なしでも作動する原子炉冷却装置などのハード整備とシステム運用などで対処できるようにしたはずだった。しかし、今回の事故では大津波ですべての電源が失われ、冷却できなくなり最悪の事態を招いた。
「プラント設計の問題というより、炉心損傷に至らないためのアクシデントコントロールができなかったのが問題なのです。(地球温暖化対策として)エネルギー基本計画で二酸化炭素を出さない原子力の拡大を掲げるなか、日本の原発の設備利用率(稼働率)は世界で2番目に低い。これを高めようと官民ともに努力を集中する一方で、過酷事故が発生した際にどう対処するかの訓練・準備が不足していたのでしょう」
山地所長は、そう分析し、「格納容器内の水蒸気を放出するベント作業や海水注入のタイミングの遅れが議論されているが、民間会社の東電は廃炉にした場合の株主への責任など経営責任を考える。最後はやはり、国の判断が重要なのです」と、緊急時における政府の責任に言及した。
2011年4月18日