渚カヲル成計画 プレイ記

ドラマチック育成ゲーム 新世紀エヴァンゲリオン 碇シンジ育成計画
開発・制作 : GAINAX


★第壱話
★第弐話
★第参話
★第四話
★最終話

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第壱話





今年に入ってから、ゲームをToHeart2以外碌に遊んでいないという
事実に気付き、軽く悶絶。
ハートフルなギャルゲーに漬かり、何時しか管理人の牙は欠け、
その硬派性は失われつつあった。元から無いとか言わない!




これは、少々毒抜きが必要であろう。
というかいい加減他のゲームも遊びたい。

と、云う訳で牙を研ぎなおす意味も含めての、短期集中ゲームプレイ記を
ブログにて実施してみようと思う今日この頃。

短期集中にピッタリの短さで、
尚且つ女にうつつを抜かさないゲームが条件だ。
時勢に合うならば、なお良しッ!!

と考えていた時に、偶然にも某氏が早まった真似をしてしまい、
林ふみの先生の新刊が発売され、
墓標で天さんの投稿イラストを拝見した。

これは、女にうつつをぬかす位ならば、これを遊べという啓示に違いない。
今、全ての歯車が噛みあった。





「碇シンジ育成計画」を最後まで終えると、
二巡目以降、カヲル編で遊ぶこともできるようになります。
カヲル編では、赤木リツコになってカヲルを育成します。

リツコに与えられた目的は、カヲルをシンジに急接近させ、
シンジをゼーレの思うがままに操れるようにすること。
シンジの心をとりこにするためには、シンジとできるだけ一緒に過ごすのがポイント。
そこでシンジに高い能力を見せ、尊敬を勝ち取りましょう。

カヲル編が始まるのは3月3日。エンディングまでの4週間に、
見事、シンジの愛を勝ち取ることができるか?!



女にうつつをぬかす位ならば、男にうつつをぬかす。
え、それは毒抜きとも硬派とも違う?
いや、もうはじめちゃったもん。しょうがないよ。('A`) ←人の意見を聞かない

なお、このプレイ記は既に当サイトの完結コンテンツである
碇シンジ育成計画プレイ記を見ていて、
尚且つネタバレ上等という少数派を対象にお送り致します。

何時も通りのモロバレプレイ記なので、この先を読まれる方は、
そこのトコロは十分認識の上、先に進んでいただきたい。

OKですか?


では



こいやァァァッ!




西暦2016年 2月

某所



「・・・遂に、第16の『使徒』までを倒した」

「『死海文書』に記述されている『使徒』は、あとひとつ」

「・・・約束の時は、近い。
その道程は長く、犠牲も大きかったが」

「左様。ロンギヌスの槍に続き、エヴァ零号機の損失」

「碇の解任には、充分過ぎる理由だな」

「・・・冬月を無事に返した理由の解らぬ男でもあるまいに」

「新たな人柱が必要ですな。碇に対する」

「・・・そして





ーーーーー全てを知る者が、だ。」











ゼーレ委員会の前に立つのは、赤木リツコ女史。

・・・物語は、原作、第弐拾参話の終わりに相当する。
碇シンジ育成計画プレイ記においては、拾七話が分岐点。
原作通りに話が展開した場合、フォースチルドレンは、鈴原トウジ。
葛藤の末にエヴァ参号機に乗り込むトウジだったが、
心の隙間をなにかに侵食されーーー暴走。

第13「使徒」と認定され、搭乗者がトウジと知らされぬまま、
シンジ達に第13「使徒」殲滅指令が下される。
同世代の子供が乗るエヴァを攻撃する事をためらうシンジだったが、
破壊直前まで追い込まれた初号機までも暴走し、結果、参号機は大破。

トウジは一命を取り留めたものの、意識不明の重体だった。



父、ゲンドウの冷徹さに怒り、シンジは一度はEVAを降りる。
だが、襲来した第14使徒の圧倒的な力に街が、NERV本部が、
アスカ、綾波の乗るエヴァが成すすべなく蹂躙される。
偶然居合わせた加持に背中を押され、シンジは決意を新たに再度初号機に乗り込んだ。

ーーーだが、この時、既に父と子は、けして相容れない所まで来ていた。



アスカは、異常なまでのシンクロ率低下により、戦線を退く。
脳裏に浮かぶのは、母に拒絶された、幼き日の残酷な記憶。
自らの存在意義を求めてNERVに、エヴァに乗り込んでいた彼女だったが、
NERVでの存在意義すら失い、彼女の心は砕け散った。



綾波は、使徒迎撃に出撃し、逆に使徒に肉体と精神を侵食される。
委員会の凍結命令を破り、初号機を出撃させるゲンドウ。
だが、シンジまでも使徒に侵食されかけたとき、綾波は
自分自身の意思でもって、その身をもって使徒を退けた。

ーーーエヴァンゲリオン零号機と、己の全てを擲って。
この時の綾波は、「二人目」の綾波だった。


次々に消えていく、仲間。友達。
壊れていく、第三新東京市。

シンジの心は、例えようの無い孤独感に包まれ始めていた。


一方、ネルフ本部とゼーレとの確執も徐々に表層化していた。
人類補完計画を推し進めようとするゼーレだったが、
指令である碇ゲンドウは、少しづつ、ゼーレの、委員会老人達の思惑から外れてゆく。

度重なる、命令違反。
真意の読めぬ、碇ゲンドウの態度。

思惑通りにならぬ碇の態度に、老人達の苛立ちは、もはや限界に達していた。




「我々も、穏便に事を進めたい。
きみにこれ以上、辛い思いをさせたくはないのだ。」



「私は、何の屈辱も感じていません」

委員会の招集・・・いや、尋問同然の行為に、毅然とした表情のまま立ち尽くす赤木博士。
老人達の尋問に、屈する事は無い。
だが、今の状況がNERVにとって・・・碇ゲンドウにとって
良くない状況なのは、想像に易い。

赤木博士は、黙って老人達の言葉に耳を傾ける他はなかった。


「問題なのは、エヴァ。
・・・特に、初号機とそのパイロットが、碇の手にある事だ」

「力をもって粛清するというプランもある」

「・・・だが、性急に事を荒立てるのは危険だ。
あれらが碇の手の内に有る限り、我々の補完計画まで頓挫する恐れがある」



「・・・そこで、最終手段をとる前に、穏便な手を試みることにする。
きみはそれに協力してくれればいい」



「私に、何をしろとおっしゃるのですか!?」

力での粛清・・・「最終手段」という脅しを盾に、赤木博士に協力を要請するゼーレ。
逆らう事は、NERV組織自体の崩壊・・・ひいては、碇ゲンドウの崩壊に繋がる。
碇に想いを寄せる赤木リツコにとって、それだけは避けるべき事態。

ゲンドウの身を案じるものの、委員会に逆らう事も出来ない。
赤木リツコの心中で、ゲンドウの身と、委員会の思惑が天秤で量られる。

「・・・エヴァのパイロット、シンジとかいったか。
彼をある人物に誘惑させ、碇から引き離す」

「きみには、その人物の教育を担当してもらおう。
・・・いでよ、渚カヲル」






「まさか・・・・・男の子?」

目の前に現われた少年に、思わず声を上げる赤木リツコ。
誘惑する、と言われて、まさか少年が出てくるとは思わなかったようだ。


「アナタが赤木博士ですね?はじめまして。
僕はフィフス・チルドレン・・・・・・渚カヲルです」

そういって、微笑を讃える少年、渚カヲル。
フィフス・チルドレン。エヴァに搭乗出来る潜在能力を秘めた一人。

なお、シンジ育成プレイ記では、ちゃっかりフォース・チルドレンに割り込んだ
眼鏡が居たが、当然ココでは原作同様、そんな図々しい真似は許されていない。



今度こそさようなら、相田ケンスケ。




「先に言ったとおり、目的はあくまで、
サード・チルドレン碇シンジを、このカヲルの虜にすることにある。


カヲルとシンジの接触する時間が増えれば、それだけ親密になれる。
渚カヲルという少年には、そう出来る能力が備わっているらしい。

「サード・チルドレンのスケジュールは、
NERVのデーターベースに登録されているはずだな。
日曜日に『調査』を行い、ハッキングして調べたまえ。」



「はたして、あの葛城三佐がきちんとスケジュールを
入力しておいてくれるかどうか・・・・・・」


葛城ミサトとも親交のある赤木リツコにとっては、
ハッキングよりもむしろそちらの方が疑わしい。
どういう意味か?と問い返す委員会に、リツコは言ったとおりの意味ですとため息をついた。




渚カヲルの色気を、重点的に鍛えなさい。
そうでなくては、目的の達成はおぼつくまいて」

「目標より優れた能力を獲得させることだな。
自分より劣るものに、誰も惹かれはしない」

「無理は禁物だ。我々の渚カヲルが病気になることはないが、
ストレスが蓄積すれば、学習効率は下がる。」



「病気にならないということは・・・・・・まさか!?」



「詮索は、その辺にしたまえ、赤木博士。
職務を全うすれば、その問いの答えは自然と導き出されるだろう」


詮索に、すぐさま釘を刺す委員会の老人達。
彼らの与えてきた期間は、1ヶ月。
これを超えれば、ゲンドウの、NERVの粛清は避けようが無い。

我々も、そのような事態は望んではいない。
ーーーーあくまで、今のところは。

そう呟いた委員会の老人達の声は、何処までも冷徹だった。
先程まで、親切すぎるほどハウ・トゥー・プレイを語っていたとはとても思えない。
ココに至るまでには、最低一度はシンジ育成をクリアしているユーザー相手にすら
ハウ・トゥー・プレイを徹底するのは大したもの。

もっとも、そのハウ・トゥー・プレイが男の色気をあげて男を口説けという
アブノーマル極まりない内容ではあるのだが・・・
表現を一歩間違えると変態日記になってしまう恐れもある。



「真の人類補完計画の成就は、君の手にかかっている。
全力を尽くしたまえ」



「・・・・・・わかりました」


「よろしく、赤木博士」

ゲンドウの身を守るため、ゲンドウにとって不利益になる事を行わなくてはならない。
赤木博士の複雑な心中を他所に、渚カヲルは穏やかな笑みを讃えていた。

<続く>





注:土矛さんは、至ってノーマルです。の、ノーマルなんだってば!




第弐話




「・・・そろそろ私、行かなくちゃ。
碇君も、身体に気をつけてね」


「・・・ありがとう。委員長」


「じゃあね、碇君。またいつか会おうね」

名残惜しげな笑顔を残して、洞木ヒカリは教室を去っていった。

相次ぐ使徒襲撃に、混乱収まらぬ第3新東京市。
戦火を逃れる為、街の人々は次々と疎開や、第2新東京市へと移住を進める。

クラスの友人も、一人減り、二人減り・・・・・・
今では、もう殆どの生徒が、学校には居ない。

生徒だけではなく、教師も疎開する状況に学校としては成り立たず、
今日、遂に学校は閉鎖する事となった。

シンジの知る友人が、今日もまた一人、第3新東京市を去っていく。



「・・・もう、みんなとは会えないのかな・・・・・・」

またいつか会おうね、という洞木嬢を見送りながら、
シンジは寂しそうに、そう呟いた。


ガラッ、という横開きドアの開く音。


「ひとり、なのかい?」

教室でただ一人、寂しそうに佇むシンジに声を掛けたのは、
もちろん、我らが渚カヲル。



見知らぬ学生に声を掛けられ、不思議そうにきみは誰?と問うシンジ。
対するカヲルは、転入生さ、とさも当たり前のように答える。

使徒との決戦間近に、疎開する生徒は居ても、こんなときに
転入してくるなんて・・・と、シンジは驚きを隠せない。


「・・・もう残ってるのは、
置いてきぼりにされた、僕くらいだよ」


エヴァのパイロットとして、戦地に残らなくてはならないシンジ。
だが、次々と友人が去っていく孤独感から、彼は
置いていかれた、というネガティブな心情に陥っている。

・・・渚カヲルが、彼の心に入り込むには、絶好の機会といえた。



「僕は渚カヲル。きみは?」


「碇・・・・・・碇シンジ」


「シンジ君か、いい名前だね。
じゃあ、宜しく頼むよ、サード・チルドレン」


「え?なんで僕のことを・・・・・・」


「僕はね、きみのことなら、何でも知っているのさ」

そう言って、カヲルは穏やかな笑みを浮かべていた。

何でも知ってるというのに、あえて名前を聞くカヲル。
だが、"知っている"事と、"自己紹介"される事は、全く違う。
目的は、情報収集ではなく、彼の心を開かせる事。

荒廃する第3新東京市に残された、たった二人の学生。
シンジの与り知らぬ中、ゼーレとネルフの静かな闘いが、今、幕を切った。





育成開始!

僅か1ヶ月という短い期間で養成される、渚カヲル。
ステータスは、ストレス以外は横一線の、100。
パラメータのマックス値が999なので、よほどの事が無い限り
パラメータが最大値に至る事はない。

お金、アイテムの概念が無いため、残念ながらアイドルビデオで色気急上昇という
ウルテク(ウルトラテクニックの略。死語)が使えない。
実力でパラメータを育成しなければならない。ストイックだ。


「シンジ君とは、まだあまり仲良くなれていません。
焦っても結果は出ませんよ」

『会話』コマンドでは、カヲルが現在のシンジとの関係を教えてくれる。
他には体調、育成状況の簡単な報告など。
特に言うことが無くなったときは、シンジ君をどうやって堕とそうか
と、耽美なのか下品なのか微妙な言葉でお茶を濁す。

日曜日だけのコマンドは「調査」「個人授業」の2つ。

「調査」は、カヲルのスケジュールを可能な限りシンジに併せる為
シンジのスケジュールを事前に調べておくこと。
効果的なストーキング行為が、好感度を上げる秘訣なのだ。
というか、とき●きメモリアルとか、アンジェ●ークとか
ストーキング行為で会えば会うほど好感度が上がるというのはどうなのだろうか?

「個人授業」は、文字通り赤木女史による渚カヲルの個人授業。
人間心理や、感情についてレクチャーする赤木リツコ博士。

学力と感受性、そして何故か体力が大幅に上がる。
反面、道徳が大きく下がる。
個人授業してくれてるのに逆に言う事を聞かなくなるようだ。
はて、これは何故か?



端正な顔立ちのカヲルに対し、横顔がえらく濃くて
ニューハーフみたいに見える赤木女史。

確かに、耽美系のカヲルからすればこんな暑苦しゲフンゲフン!
もとい、色ボケ年増ゲフンゲフン!
もとい、女性から個人授業などされても、不快なだけなのかもしれない。
赤木女史も手とか握ってるし。ガツガツしすぎ。







スケジュール開始。
学校は既に閉鎖されているため、スケジュールは全てNERVの
強化プログラムということになる。

1回の教育だけで、べらぼうにパラメータが上昇するカヲル。
シンジと比べると、なんと好調上昇時と比べても5倍以上の上昇率だ。
その代わり、ストレスもべらぼうに溜まる。10倍以上のストレス。オマエは心の病気だ。


「またね。カヲル君」


「あ、ああ・・・・・・またね」

あっさりカヲルと別れて去るシンジ。
パラメータが低いと、遭遇しても好感度は上がらない様子。
効果的な鍛錬が求められるという訳だ。鍛錬!鍛錬!




ヽ(`Д´)ノだというのに、すぐサボるなよ!
ストレスの上がり方が酷くて、簡単にサボってしまうカヲル。

それでストレスが大幅に解消されるのなら文句も無いが、
1回で20以上上がるストレスに対し、2しかストレスが下がらない。

明らかに、シンジよりも渚カヲルの心の方が余裕が無い

酷使は禁物として、適度な休養が求められる。
バランスを一歩間違えると、間違いなく攻略失敗となるだろう。



「やぁ、シンジ君。
こんなところで会えるとは、ステキな偶然だね」


「あ、カヲル君。
どうしたのさ、こんなところで?」


週に何度かシンジと遭遇していると、森の中で出会うイベントが発生。

一緒にどこかに行かないか?と誘うカヲルに
行くってどこに?と問い返すシンジ。


「ふふふ。イイところさ・・・・・・




無駄に思わせぶりな発言だったが、森の中で水浴びに興じる二人。
半裸で笑顔のカヲル。ただの休養の予定でも、上手くシンジが絡んでくれば
ついでに色気も上昇するようだ。シンジが絡めば、無駄が無い。



更には、シンクロテストもシンジとこなす渚カヲル。
済ました顔だが、内心は酷いストレスに苛まされている。
養成次第では、彼がエヴァに乗るような展開も有り得るのだろうか?







「・・・次回の戦闘訓練は、以上の条件で行います。
何時使徒が繰るかも判らないから、みんな気を抜かないようにね」


NERV施設で、パイロット3名とのミーティングを行う葛城ミサト。
シンジ、綾波(三人目)、カヲルの三名。

学校は閉鎖されていても三人そろって学生服なのは、
気分だけでも学生でいたいのか、ただの画像使いまわゲフンゲフン!


「伝達事項はこれでおしまい。
何か、質問はある?」



「別に」


「ありません」


「僕もです」

アスカも抜け、淡白トリオとなったエヴァパイロット陣営。
手ごたえの無さに憤慨するかと思われたミサトだったが、
今は忙しくて、それに憤る余裕もなさそうだった。

悪いけど、今日も遅くなるから、晩ご飯は一人で食べて、と
シンジに申し訳無さそうに呟くミサト。

シンジは、寂しそうな表情で判りました、と答えを返す。

帰りの廊下、カヲルはシンジに質問をしていた。
質問は、葛城ミサトとの同居のこと。
何でも知っているといっていたが、結構知らない事が多い。


「本当は、アスカっていう子もいるんだけど・・・・・・」


「ああ。セカンドは、心を壊して入院しているんだったね」


「・・・やめてよ、そんな言い方!」

アスカの事をあしざまに言われ、憤るシンジ。
色々あったが、アスカも大切な仲間だと思っているシンジ。
復帰を絶望視されているアスカだが、シンジだけは、アスカの事を諦めていない。

キミを怒らせるつもりじゃなかったんだ、と謝るカヲルに、
シンジも感情的に怒鳴った事を謝罪した。


「よければお詫びもかねて、一緒に夕食なんてどう?
ひとりの食事は、寂しいからね」


「え?それって・・・・・・」


「できることなら、きみの家で・・・・・・」

お詫びなのに、シンジの家で食事しようと提案するカヲル。
それはちょっと図々しいんじゃないかと思うのだがどうだろうか?
あと、早くも家に上がりこもうとするカヲルも、赤木女史と一緒で
ガツガツし過ぎだと思うのだが、如何なものだろうか?


「しょ、しょ、しょ、しょくどーにしよう!
そうだよ、食堂がいいよ!あそこの料理は、結構イケルんだ!」


案の定、警戒心バリバリで外食を提案するシンジ。
負けじと食堂そのものが味気ないと、頑として自身の提案を通そうとするカヲル。


「・・・・・・」


「え、どうしたのカヲル君?
いきなり黙っちゃったりして・・・・・・」



「食堂なのに味が無い・・・・・・」


「ええええ?
まさか、それって駄洒落のつもり!?」





「・・・・・・つまらなかったようだね」

ホントにね。

カヲルは、この全く成立して無い駄洒落で、
本当にシンジを魅了できると思ったのだろうか?


「ゴメン、カヲル君がそんなこというなんて・・・
ぷっ・・・あはははは」



「・・・リリンとは奇妙な生き物だ。
つまらないのに、笑い出すなんて」

笑わすのではなく笑われているのだが、カヲルは
シンジの笑顔が見れたことにひとまず満足を得ていた。

結局、二人は揃って食堂に足を運ぶ事に。

カヲル君は野菜炒めなんだね、というシンジに
「ビタミンを摂取しなくては」と返すカヲル。


「シンジ君はハンバーグが好きなんだね」


「うん。そうだけど?」


「憶えておくよ」


「か、カヲル君?」


「好きだといえることは大切な事だ。
何かを好きでいられれば、きっと自分も好きになれるからね」



食堂のハンバーグからも、耽美発言を欠かさないカヲル。
さりげなくシンジの頬からゴハン粒を取るカヲルの仕草に、
シンジは顔を真っ赤にして恥らうのだった。

<続く>







第参話



養成、2週間目。


「体調は万全ですよ。
まぁ、アナタ達と違って、僕はもともと
病気なんかにはなりませんけどね」

しんどくなったら勝手にサボる渚カヲル。体調は常に万全だ。
でも彼はもともと心が病気なので、ストレス消化には細心の注意が必要だ。

必然的に、日曜日に選択するのは「調査」になる。
調査するのは赤木リツコ女史であり、カヲルは休養にあてがわれる。


「カヲル君は休むなりなんなり、自由にしていいわ」

そういってNERVにシンジのスケジュールをハッキングしに出かける赤木博士。
せっかくなので羽を伸ばそう、と公園でくつろぐ渚カヲル。



自然を愛する渚カヲルは、木々に囲まれている時が一番寛げる様子。
先週始めのように赤木博士に個人授業を受け、濃ゆい顔を近づけられたり
脈絡無く手を握られたりするのはさぞかし苦痛だったに違いない。
どうも赤木女史からは行き遅れの焦りの匂いがプンプンする。



帰宅すると、調査内容を報告してくる赤木博士。
だが、そのスケジュールは殆ど歯抜け状態。


「あとのコマは全部、『先週と同じ』としか書かれていないの。
その肝心の『先週のデータ』も、どこにあるかわからない。
・・・ハナから打ち込んでないのかも」



「それは・・・・・・困りましたね」


「あとは実地で調べるしかないわね。
・・・こっちもハッキングだから、叱れないのが余計に悔しい。
ミサトのやつ・・・・・・」




どうやら、赤木博士はパイロットの行動スケジュールを貰えない立場のようだ。
現場責任者なのにハッキングしないとスケジュールも判らない。
何気に権限弱いんじゃないの、赤木博士?
どこかの三尉には派手なおばさん呼ばわりされてるし・・・




なんにしても、先週の教育パターンは把握しているので、
『先週と同じ』は問題ない。
前回シンジと遭遇したスケジュールに併せれば、カヲルを多く
シンジと共に過ごさせる事が出来るだろう。






「カヲル君は、ずいぶん頭がいいんだね」


「ありがとう、シンジ君。
きみさえよければ、僕が教えてあげるよ。
いろいろとね・・・・・・


「えっ、いいの?
じゃあ、今度お願いしよっかな」


カヲルの真意など知らず、笑顔でそう答えるシンジ。
一週間のスケジュールだけで、渚カヲルは飛躍的にパラメータを伸ばす。
シンジの尊敬を得るだけのパラメータを得ることは、カヲルにとっては造作も無い。




戦闘訓練でシンジと合流し、何気ない会話に花を咲かせるカヲル。
どうでもいいけど彼の立ち絵にはプラグスーツ姿がない。
というか、顔アイコンも1つしかない。
オマケゲームまで用意されてる割には、彼の扱いは粗雑だ。


「シンジ君、きみはこのプラグスーツってどう思う?」


「どうって、エヴァとのシンクロをしやすくするためのものだって、
リツコさんから聞いたけど」



「体の線がはっきり表れるにも拘らず、決して素肌は見えない。
ビザール・ファッションの極みだね」



ちなみに、ビザール・ファッションとはSM女王風のファッションの事だ。
我らが渚カヲルは、エヴァのプログスーツを全身ラバーと同意と見なしているらしい。
我らが渚カヲルは、ドイツ仕込みの高尚な趣味をお持ちのようだ。


「かかか、カヲル君!?何言ってるの!?」

それより何より、ビザールファッションというものを
どうして中学生のシンジが知っている。その反応は知っている反応だぞ!?
前の育成プレイ記でシンジが毎回ミサトに見つかっていたアダルト雑誌はもしや・・・・・・



中学生なのに、マニアックすぎるよ、シンちゃん・・・





NERV施設からの帰り道。
その出口で、偶然シンジと遭遇するカヲル。
シンジは、広いNERV施設出口で、ぽつんと一人立っていた。


「シンジ君」


「あ、カヲル君」


「また、ひとりでいるね。
・・・そうか、葛城三佐は、今日も忙しそうだったからね」


「うん・・・・・・」


「シンジ君は、知っているかい?
NERV内の施設に、大浴場があることを」


「うん、あんまり入った事ないけどね」


「せっかくだから、きみと一緒に入ろうと思ってね」

何が折角なのかさっぱり判らないが、渚カヲルの猛烈アプローチがシンジに迫る。
思わず絶句するシンジに、僕のことキライかい?と定番の攻め言葉を用いるカヲル。
押しに弱いシンジには、カヲルの要望を跳ね除ける事などできなかった。




カポーン・・・・・・

浴場に、桶の音が高らかに響く。
併せて聞こえてくるのは、渚カヲルの上機嫌な鼻歌。


「公衆浴場はイイね。
リリンの生み出した、文化の極みとでもいうべきだ」

公衆浴場を文化の極みと言われるのも釈然としないが、
渚カヲルはひたすら上機嫌だ。

その横で、シンジはカヲルの呟いた「リリン」という言葉に首を傾げる。
その問いに、カヲルは「人間、ってことさ」とさも当然の様に呟いた。


「シンジ君、背中を流してあげるよ」

来た。

明らかに、今回の渚カヲルの目的が、それだ。
慌てるシンジを他所に、身体をべったり擦り付けて背中を流し始める。


「かかか、カヲル君!?」


「きみは、どうしてそんなに一時的接触を嫌うんだい?
他人と触れ合うことを、恐れているんだね」

そういって、ネコのような表情でシンジに擦り寄る渚カヲル。
オマエ絶対一時的接触じゃ済まさない気だろう!?



シンジの方もアスカや綾波には見せたことも無いような恥じらい顔で
カヲルの行為を受けている。文字で隠れているが軽く乳首まで描かれている。
やめてください。


「・・・・・・でも、やっぱり恥ずかしいよ」


「どんな偉大な人物でも、自分の背中だけはハッキリ見ることも、
しっかり触れることもかなわない。
だから昔の銭湯には、"サンスケ"と呼ばれる
背中を流す専門の人が居たんだよ」


「そうなの?」


「つまり人間には、もうひとり背中を任せられる誰かが必要なんだね。
・・・寂しさを、忘れる為にも。」


「う・・・・・・ん」

更に、理知的かつ哲学的な言葉でセクハラ行為を正当化するカヲル。
だが、シンジには効果覿面。ほぼ、落ちかけの状態だ。


「・・・だから、きみの背中は僕が流してあげるよ」


「なんだか屁理屈みたいな気がするなあ・・・
って、ああっ!ちょっと・・・
そんなヘンな触り方されたら・・・・・・」




そういって、シンジは結局カヲルに背中とある一部分を流させた。
生々しい喘ぎ声を上げながら。
やめてください。やめてください。

最後は、カヲルがシンジに僕の背中も流して欲しい、と要望し、
結局シンジはテレながら、カヲルの背中を流してあげるのだった。


「うっかり手を滑らせないようにね。シンジ君」


「ぼ、僕は、カヲル君とは違うよ!」

<続く>





第四話



養成、3週間目。
早くも養成期間は折り返し地点を迎えた。


「シンジ君、もうすっかり打ち解けてくれました。
可愛いですね、カレ。・・・任務を忘れて、本気になりそうですよ」

此処に至り、シンジへの接近に手ごたえを感じるカヲル。
パラメータ推移の方もバランス良い。
シンジの尊敬を得るべく、順調に成長する渚カヲルの能力。




絵師様 きりのべやの物置 天川直樹様

同時に、溜まり続ける渚カヲルのストレス

既に二週間の同居生活だが、渚カヲルが赤木博士に馴れる様子はまるでない。
よくよく考えると、赤木博士は三十路に至っても髪を金髪に染めて
白衣の中はミニスカ、ボディコンという年甲斐の無い派手なファッション。



大人の女性としての魅力を感じるよりも、結婚適齢期を過ぎた焦りのほうが
見え隠れするように思えるのは、筆者の穿ちすぎであろうか。



何にせよ、彼女の大人の色香は耽美系の渚カヲルにとっては
何の癒しにもなっていないであろう事は想像に易い。
赤木博士宅のむせ返るようなブランド香水臭から逃れるように、
今日も彼は公園で自らの心と胃潰瘍を癒す。


「あとのコマは全部、『先週と同じ』としか書かれていないの。
その肝心の『先週のデータ』も、どこにあるかわからない。
・・・ハナから打ち込んでないのかも」


シンジのスケジュールを調べてきた赤木リツコ博士だったが、
その調べてきたスケジュールも先週と同じだった。
あとのコマは先週と同じ、も何も全てのスケジュールが先週と同じだ。
3週目に至り、ミサトは早くもスケジュール作成をブン投げていた。








「お帰り、シンジ君」


「カヲル君!?・・・どうしてここに?」

シンジの住まう、葛城ミサトのマンションの前。
無難に訓練課程を終えたカヲルは、先回りしてシンジの帰宅を待っていた。
軽いストーカー行為に、驚いた表情のシンジ。


「きみを待っていたんだ。
連れて行ってあげたいところがあってね。
・・・今からなら、ちょうどいい頃合だし」


「え?でも、そんな急に・・・・・・」


「誰かと約束が有るのかい?」


「そういうわけじゃないよ」


「じゃあ僕を、敬遠しているんだね」


「そんな訳ないじゃないか!
ただ、もう時間も遅いし・・・・・・」



よかった。さあ、行こう!」


「ちょ、ちょっとカヲル君!?」

自分に都合のいいところで会話を切って、強引にシンジを連れ出すカヲル。
先程、軽いストーカー行為と発言したが、あまり軽くないかもしれない。




渚カヲルが連れ出した先は、街を一望出来る国道沿いの峠道だった。


「ここから見ると、この街は書き割りの絵のようで、美しくて・・・寂しいね。
あたかも死の如く、静かにそこに鎮座している。
灰色の街、ブリュージュのように・・・・・・」


「・・・灰色の街?」


「19世紀のフランスの作家ローデンバック。
彼が書いた『死街ブリュージュ』という小説の舞台だよ。」

沈黙と憂愁にとざされた黄昏の世界を描いたベルギー文学
「死都ブリュージュ」に例えて第3新東京市を見下ろすカヲル。
取り上げる作品が悲哀と耽美に満ちた世界なのが、いかにもカヲルらしい。

終末に向けて少しづつ、だが確実に歩み始めている世界。
シンジと心を交わすカヲルは、そこに何を見ているのか・・・


「・・・先を急ぐよ、シンジ君」

目的の場所は、どうやらここではないらしい。
カヲルは、そこから目をそむけるように、シンジを急かして歩み始めた。



月明かりだけが照らす、夜の峠道。
もはや車の通る事もなくなったその道を、カヲルとシンジは歩んでゆく。

やがて、薄暗がりの先に、


「うわぁ・・・・・・」

目的の場所が、見えた。





「すごいや!こんなに星が見えるなんて・・・・・・」

峠道の終着は、満天の星空が見える小高い野原。
新東京市では見えない星明りに、目を輝かせるシンジ。

星座の話、を語りながらシンジの関心を引くカヲル。
指差したその先にあるのは、うしかい座。


「あの星座は、ギリシアの大神ゼウスの息子、アルカスだと言われている。
アルカスの母親は彼を生んだ頃、ゼウスの妻ヘーラーに呪われて
熊の姿にされてしまったんだ」

ギリシア神話を、昔語りのように語るカヲル。
シンジは、カヲルの言葉に、黙って耳を傾けていた。


「アルカスは成長すると、猟師になった。
・・・そして有る日森で、母親とは知らずに、
その熊を殺しそうになったのさ」


「・・・・・・それで、どうなったの?」


「親殺しという悲劇を哀れに思ったゼウスが、寸前で仲裁に入って、
親子ともども空に上げて、星座にしたんだよ」

アルカスは小熊座の方だって話もあるけどね、と注釈をつけて〆るカヲル。
シンジは、カヲルの知識に感心しきりの表情だ。


「・・・でも、僕はこうも思う。
愛する息子に最後に出会い、その手にかかる。
・・・母親は、その方が幸せだったのかもしれない」

不意に、寂しげな表情でそう語るカヲル。
言葉の無いシンジ。

簡潔な星座の話では真意の程は窺えないが、カヲルの考え方は、
何かに照らし合わせるような達観めいたものが有る。
まるで何かの結末に照らし合わせるよな・・・・



ーーーーごめん、変な話をしてしまった。
そういって、カヲルは寂しげに小さく笑った。

その後も、星座の話を続けるカヲル。
見ると長生き出来るという『長寿星』を指差し、シンジ君は長生きできるね、と話題を変える。
何でも知っていそうなカヲルの話術に、シンジは尊敬の眼差しをしていた。


そのとき、ざぁ、という草の音とともに夜風が舞い降りる。


「・・・風か・・・・・・少し冷えてきたね。
こっちにおいで


「わっ!カヲル君・・・・・・!」


「こうすれば、二人とも暖かい」



ロマンチックな雰囲気に、ここぞとばかりに
シンジの肩に手をかけるカヲル。


「星は、誰かと眺める方が、ずっといい。
ひとりのときよりも、輝いて見える」

「ヒトはひとりひとり、宇宙の星に匹敵する。
・・・特に、シンジ君みたいに繊細なヒトはね」

頬を赤らめつつも、僕もこんなに星を綺麗に思ったことは無い、と呟くシンジ。
それに対する、渚カヲルの言葉。

・・・・・・シンジとのコミュニケーションで、渚カヲルの心にも
少しづつ変化が見え始めている。

ゼーレの思惑通りに進む、カヲル養成計画。
だが、当のカヲルの心中は、ゼーレの思惑と徐々に違え始めていた。



ーーーーー次週、最終週。
カヲル養成計画の、結末や、如何に?

<続く>




最終話




「あの・・・・・・カヲル君。ちょっといい?」


「どうしたんだい?
きみから話しかけてくるなんて」

渚カヲルがシンジに接触を試みる最後の週。
神妙な面持ちのシンジが、カヲルに話しかけてきた。
普段は、カヲルの方からのアプローチが多い二人の関係だが、
シンジは口ごもりながらもカヲルに何かを持ちかけようとする。


「・・・・・・何やら、難しい顔をしているね」


「うん・・・・・・その」


「あ、シンジ君。ちょうどいいところであったわ」

と、シンジが何かを話そうとした、その時。
偶然廊下をすれ違った葛城ミサト嬢に話の間を崩される。
今日も帰れそうにないの、とシンジに家の事を頼んで去ろうとするミサト。


「あの、ミサトさん!」

だが、そのミサトの言葉に意を決したのか、シンジは慌ててミサトを引きとめる。

すこし高潮した顔で、言いにくそうに、搾り出すように、
シンジは、ミサトに訴えた。




「今日・・・・・・カヲル君の家に・・・・・・
泊まってもいいですか?」



「・・・・・・そうね・・・・・・
カヲル君さえよければ、いいわよ」


そのシンジの発言に少々目を丸くしながらも、
ミサトはカヲルさえよければ・・・と返答を返す。


「僕は構いませんよ」

間髪要れずに即答で返すカヲル。
獲物が自ら足を運ぶと言ってきたのだ。断る理由など当然ない。

ミサトは、シンジ君をひとりにしておくより安心できるわ、と
カヲルにお礼を述べていた。かくして兎は虎の檻に。

ありがとう、と笑顔のシンジ。
かまってあげられなくて、ごめんね、と謝るミサト。
渚カヲルは、心情の読めない笑みでそんな二人を眺めていた。






「あれ・・・・・・ここって、
リツコさんが住んでるマンションじゃないの?」


連れて来られた先が赤木博士のマンションと知っていたシンジは、少々驚き気味。
対するカヲルは、キミと葛城三尉の関係と同じだよ、と涼しげに返す。



だが、幾分ノーマル(?)なシンジは葛城ミサト嬢との同居にムラムラし、



アブノーマル全開の渚カヲルは赤木リツコ女史との同居に(胃が)キリキリしている。

似て非なる、二人の同居生活。


「おじゃまします」


「楽にしておくれ。
赤木博士、今日は帰らないから・・・・・・」


「リツコさんもなんだ・・・・・・」

自分と同じ境遇のカヲルに、親近感を覚えるシンジ。

最近のシンジは、殆ど一人暮らし同然の生活を強いられていた。
非常事態警報の解除されない第3新東京市。
現場責任者である葛城ミサトには、家で休む暇も無い。
同居していたアスカは入院、綾波は初めて出会った頃の様な他人行儀に戻り、
鈴原トウジは今だ入院中。相田ケンスケ、洞木ヒカリは疎開。

同居するミサトとも、友達との語らいも無いまま、
シンジは孤独な日々に寂しさを募らせていた。

だが、カヲルにとっては赤木リツコ博士は寂しさを紛らわす対象ではない。
カヲルにとって興味の有る対象は、シンジただひとり。
カヲルはシンジの言葉にはなんの反応も見せず、夕食の支度をするよ、と笑顔で答える。
シンジ君の好きなハンバーグを作るよ、とカヲルは珍しく張り切った様子だった。



ーーーーーそして、夜。




「・・・・・・やはり、僕が下で寝ようか」


「・・・平気だよ、気にしないで」


「布団の事をすっかり忘れていた。
だからといって、赤木博士のベッドを勝手に使うわけにもいかないしね」






( д ) ゚ ゚

おっ、おま、お前!上とか下とかいうからベッドと床の話しかと思ったら
本当に上下か!


本当に上下か!!

「・・・・・・ここに来るまで、僕の人生は平穏だった。
何も無くて、ただそこにいて、日々を送るだけで・・・」

「でも、それでよかったんだ。したいこともなかったから。
・・・・・・・・・生きてる事さえ、どうでもよかった」


告悔の様に、そう呟き始めるシンジ。
母に先立たれ、父に捨てられたも同然に投げ出され・・・・・・
彼の生活は、平穏と同時に、無為な日々が流れ続けていた。


「・・・・・・きみは、人間が嫌いなのかい?」


「・・・・・・よく、わからない。
でも、ここに来て・・・・・・」










「誰かに必要とされてるって感じて、
僕にも出来る事があるんだって、少しだけ思える気がした。」












「・・・・・・でも、いろいろなことが起きて、
加持さんも、アスカも、友達も・・・みんな、いなくなってしまった。」


気付けば、シンジの瞳からは、一筋の涙。
初めて、誰かに必要とされた日々。誰かと一緒に、頑張れた日々。
喧騒と騒乱の中に、確かに有った、充実。

・・・だが、その代償の様に、彼はひとつひとつ、その拠り所を失っていく。


「きみは、なんて繊細なんだ」

頼れるものを少しづつ害い、傷付いてゆくシンジの心に、カヲルはただ、そう呟く。


「ミサトさんも、ほとんど帰ってこないし、
父さんは・・・・・・父さんは・・・・・・うう・・・・・・う・・・・・・」



「さあ、こっちにおいで。
ーーーずっと、僕が抱きしめていてあげるよ」

遂に、泣きじゃくるシンジを、カヲルは黙って抱きとめる。
手と手を重ね合わせ、寂しがらなくてもいいんだ、と優しく囁くカヲル。
カヲルの瞳をじっと見つめて、涙を零すシンジ。





ーーー僕が、きみのそばにいるよ





ずっと、きみの背中を守る。
決して、きみを見放したりはしない。







「約束するよ、シンジ君」


その日、二人の心は、強く、強く繋がった。



その日、全ての育成スケジュールが終了した。
赤木博士の与えられた、約束の1ヶ月・・・・・・




「やあ、シンジ君」


「カヲル君!
よかった、来てくれたんだね!」


シンジより遅れてしまったことを詫びるカヲルに、
カヲル君との約束があると思ったら嬉しくて、と照れた笑みで早く来すぎた事を伝えるシンジ。



ーーーシンジは、完全に陥落した。
アスカの浴室を覗いた時と同じだらしない顔で、シンジはカヲルに
ずっと一緒に、いてくれるか、と問いかける。

カヲルは、あの誓いを忘れはしない、とさも当然の様に答えを返した。


「そうだよね!
カヲル君だけが、僕を騙さない。僕を裏切らないでいてくれる!」



「僕を信じてくれるんだね・・・・・・
なら僕は、きみに正しい選択をあげよう」


「・・・正しい、選択?」


「ここにいる大人達は、きみの父上を含めて、みんなキミを利用している。」


「父さんや・・・・・・ミサトさんも?」


「そう。だからきみは、ここを出るべきだ。
きみが本当にいるべき場所に、僕が連れて行ってあげるよ。」


「カヲル君・・・・・・
わかったよ、カヲル君、カヲル君と一緒にいられるなら、何処へでも行くよ」



「いつまでも、ずっと一緒だよ。
時が尽きるまで、ね・・・・・・」



その日、全ての育成スケジュールが終了した。
赤木博士の与えられた、約束の1ヶ月・・・・・・


ーーー渚カヲルと、碇シンジの二人は、第3新東京市から、姿を消した。







「赤木博士は、よくやってくれた」

「彼女は極めて優秀な教育者だ。任せて正解だったといえよう」

「最後の障害は、取り除かれた。
ーーーここに、人類補完計画を発動する!
碇のではなく・・・・・・我々の、シナリオのな」



全ての人類をないまぜに、原初の海へと回帰させる、ゼーレの人類補完計画。

老人達の延命の為だけの、拙いその計画だったが



ーーーーずっと、一緒に居る。

二人の約束は、これ以上無い形で果たされる。


時が尽きる、その日まで。











( д ) ゚ ゚


ドラマチック育成ゲーム 新世紀エヴァンゲリオン 碇シンジ育成計画
開発・制作 : GAINAX



あとがき

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