大河ドラマ「平清盛」
ホームへもどる

2010年8月 制作発表

二〇一二大河ドラマ五〇年 時代(とき)が動き、英雄(サムライ)が生まれた

今から900年前、王家や貴族が対立し、混迷を深めた平安末期、
1人の男が現われ、この国の行く先を示した。

平清盛(1118年 - 1181年)

本当の親を知らないまま、武士の新興勢力・平氏のもとで育てられた少年は、
養父・忠盛とともに海賊退治を行い、一人前の武士に鍛えられる。
武士が上流貴族から低き階層と差別されていた時代、
人の心をつかむことに長(た)けた彼は、瀬戸内の海賊を束ね、
やがて武士の王となり、そして日本の覇者となる。

巨大な港を築き、海外に繰り出す夢を描き、海に浮かぶ荘厳華麗な厳島神社を造営し、
中国との交易で巨万の富を築く。
争いでもなく、家柄にこだわるのでもなく、
貿易こそがこの国の豊かになる道だと人々に説いた男。
同様に志をもった、織田信長の遥(はる)か400年前、坂本龍馬の700年前の話である。

「平家物語」ではアンチヒーローとして描かれていた男に、
新たな光をあて、歴史絵巻から解放された、躍動感とエネルギーにあふれる男として描く。

壮大なスケール、魅力的なキャラクターの数々、
卓越したストーリーテラーで知られる脚本家・藤本有紀が贈る
オリジナル作品、大河ドラマ —平清盛—

まだ誰も知らない、武士サムライ誕生のドラマが、ここに始まる。

※本作品は大河ドラマ51作目。平清盛主役は「新・平家物語」(1972年)以来40年ぶり。
[清盛が登場した大河ドラマ]
「源義経」(1966年)、「草燃える」(1979年)、「義経」(2005年)

ページトップへ

「生きることに熱中した人々の物語」

作 藤本有紀

「平清盛」と聞いてまず思い出すのは「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」という『平家物語』の有名な語り出しです。心地よいリズムに乗せ、五感の記憶に訴えかけながらこの世の無常を感じさせる巧みな構成によって、日本人の心に刻まれ続けています。
けれどもこの時代の多くの資料をあたった今、私は「平清盛」というと、後白河法皇の愛した今様の、この有名な一節を思い出します。
「遊びをせむとや生まれけむ、戯れせむとや生まれけん」。
この歌の解釈は諸説ありますが、私にはこの「遊び」「戯れ」が「生きる」ことそのものを意味するように感じられ、この一節こそが平清盛とその時代の"テーマソング"にふさわしいと感じるのです。
貴族社会が揺らぎ、天皇家の確執が武力闘争に発展し、やがて武士の世へと移り変わっていく平安末期、抜き差しならない状況の中で平家も源氏も天皇家も摂関家も僧徒も、頭脳を駆使し肉体を躍動させて命がけで生きています。その多くが夢半ば、志半ばで死んでいきますが、そこに感じられるのははかなさよりも、人間という弱き存在のたくましさとおもしろさです。とりわけ平家一門の、壇の浦での壮絶な散りざまには、「これは敗北ではないのだ」と思わせるほどの、すさまじい生への執念を感じます。
子どもが夢中で遊ぶように、生きることに熱中した人々の物語。それが私の描きたい『平家物語』であり、平清盛の物語です。
いま私の頭の中では、極悪非道の独裁者ではなく、「無頼の高平太」と呼ばれるやんちゃな清盛、海賊討伐に奮闘する血気さかんな清盛、北面の武士として活躍する若き清盛が、悩み苦しみながらも青春をおう歌し、夢に向かって駆け回っています。
そしてそんな清盛を取り巻く人々もまた、夢中で生きています。立派な生きざま、死にざまを見せてくれる人もいれば、最後までみっともない人も、報われない人もいます。その誰もが、かわいらしく、いとおしい存在です。
そんな個性的で魅力的な人々の織りなす壮大な群像劇を、一年の長きにわたって物語ることができる。こんな幸せなことはありません。この機会を与えていただいたことに感謝しています。
心地よいリズムに乗せ、五感の記憶に訴えながら、夢中で生きることのすばらしさを感じさせ、人々の心に刻まれ続ける。2012年の大河ドラマがそんな作品になるよう、私も夢中でこの物語を書き、清盛たちと共に最後まで「生きることに熱中する」つもりです。

[プロフィール]
藤本有紀(ふじもとゆき)
兵庫県出身。舞台脚本等を経てテレビドラマの脚本を手がけるようになる。NHKでは土曜時代劇「咲くやこの花」、「名探偵赤冨士鷹」などを執筆。連続テレビ小説「ちりとてちん」では物語の構成や登場人物の設定に落語を取り入れ話題となり、多くの視聴者を魅了した。魅力的な人物造形と巧みなストーリーテリングには定評がある。今回が大河ドラマ初執筆。

ページトップへ

「清盛の挑戦・ドラマの挑戦」

チーフ・プロデューサー 磯 智明

2012年の大河ドラマは51作目、第1作「花の生涯」(1963年)が始まってから50年目を迎えます。新たなステージに立つ大河のテーマは「挑戦」です。
これにふさわしい題材として「平清盛」の生涯を描きます。
清盛の人生は「挑戦」の連続でした。実の親を知らない清盛は、平家一門となるべく努力を重ね、棟梁(とうりょう)になると一門を武士のトップに押し上げました。そして、平安貴族による政治体制を壊し、初めて武士による世の中を作ります。家柄や血筋がものをいう平安時代に、実力で栄華を勝ち取り、新たな時代を切り開いたのです。まさに実力社会、武士の世の到来を告げた男でした。
源氏によって平家は滅ぼされてしまったために、清盛について書かれている文献はそれほど多く残っていません。不運にも極悪人、負け組の代表格に挙げられる人物となり、なかなかドラマの主人公として描きにくい題材でもありました。
これを最新の研究を通じて、悪役とイメージされている清盛を全く違う角度から描いていきます。歴史は常に新しい。歴史から消されてしまった清盛の先見的で挑戦的な生きざまを、閉塞(へいそく)感漂う現代に生きる人に伝えることこそ、50年目を迎える大河にふさわしい私たちの「挑戦」だと思います。
清盛は青年の頃、大きな体格の上に高い下駄(げた)を履いて、京の町を闊歩(かっぽ)していたそうです。「無頼の高平太」と呼ばれた青年が、さらに大きく成長を遂げていくドラマを通して、元気と感動をお送りしたいと思います。ご期待ください。

ページトップへ

「海」の向こうにあるもの

チーフ・ディレクター 柴田岳志

演出にあたって、最初に浮かんだイメージは、「海」だった。平家は海の一族だった。
海賊討伐で名を馳(は)せ、多くの海賊がその軍門に下ったという。
そうか、平清盛は瀬戸内の海賊王だったのか!と思った瞬間、次のイメージが浮かんだ。
帆船の先端で、太刀を担いで仁王立ちとなる清盛の雄姿。
海賊どもをひきいて颯爽(さっそう)と海を渡る若き暴れん坊——。そんな活力ある、はじけた平清盛を描けたら、どんなに最高だろうか。そんな清盛、今まで見たことがなかったから。
まだ国境も定かでない時代。「海」は、さまざまな国の人や文化が行き交う、混沌(こんとん)とした活力に満ち溢(あふ)れていたはずだ。そんな「混沌」を自らのエネルギーの源にした男。
日本史上の大変革期に颯爽と現れた風雲児・平清盛の目線は、日本国内だけでなく、きっと「海」の遥か向こう、まだ見ぬ世界へと向けられていたに違いない。
彼が「海」の向こうに見つめていたものは何だろうか。
それを求めて、われわれは大海に繰り出す。長い旅が始まる。

ページトップへ

ストーリー

平安末期、海の一族・伊勢平氏は瀬戸内の海賊退治によって貴族社会にその存在を示していた。清盛は養父・忠盛のもとで一人前の武士となるように育てられ、「人の絆」の大切さを学ぶ。また清盛は船上での生活で先見性や判断力を身につけ、外国商人や海賊たちと渡り合う中でたくましい男として成長していく。
京に上ると清盛は個性的な仲間と出会う。ライバルとなる源義朝(よしとも)、後に歌人・西行となる文武に秀でた佐藤義清(のりきよ)、そして繊細・奔放(ほんぽう)な少年から日本一の権力者「大天狗」へと変貌(へんぼう)を遂げる雅仁親王(まさひとしんのう/後白河天皇・上皇・法皇)。若き清盛は彼らとともに世の中を見つめ、それぞれの夢を語り合った。
時は戦乱の世を迎える。王家(天皇家)の後継争いに始まった保元・平治の乱。そこで清盛が見たのは、子が親を兄が弟を殺す地獄絵図だった。
その中で清盛は、朝敵となった源義朝を討てとかつての雅仁親王・後白河上皇から命ぜられる。だが義朝の嫡男・頼朝には恩情をかけ命を救ってしまい、この判断が大きな悲劇を生むことになる。
京を舞台にした戦いで、藤原摂関家や源氏が力を失う中、清盛は「武家の棟梁」となり中央政界を左右する存在となる。盟友であった後白河法皇は院政を行い、政治権力をふるい、両者は同盟を結ぶものの、やがて厳しい対立関係に入る。そんな清盛を支えたのが家族だった。実の親を知らず、忠盛の情愛の中で育てられた清盛は、家族の絆を何よりも大切だと感じていた。しかし清盛が最愛の長男・重盛を病で失うと、後白河は平家一門の追い落としをはかる。ついに堪え切れなくなった清盛はクーデターを起こし、法皇の院政を停止して、最高の権力者となる。日本史上初めて武士が政権のトップにつくことになった瞬間だった。
そして400年ぶりに都を京から福原(現・神戸)に遷(うつ)し、自らの夢に立ち返った政治を行おうとした。それは巨大な貿易港を築き、日宋貿易を中心とした、海外に開けた交易国家を作ることだった。だが、あまりに急進的な改革だったために、世間の不評を買い、天下の大悪人とされてしまう。
こうした世論に乗じて、後白河法皇は平家追討令を出した。頼朝を先頭に、源氏一族が全国で呼応する中、清盛は熱病で命を絶つ。子供たちは父の名誉を守るために果敢に戦うが力尽き、平家一門は父・清盛が愛した海に消えるのだった——。

ページトップへ
大河ドラマ「平清盛」
ホームへもどる