東京電力福島第1原発事故で飛散した放射性物質を除去(除染)するため政府が26日に決定した基本方針は、年間線量が20ミリシーベルト以下の地域では市町村を除染主体と位置づけ、汚染土壌などの仮置き場の設置も求めた。自治体への「丸投げ」とも言える内容に、福島県内の首長らからは憤りの声が上がる。一方、原発から3キロ圏内で放射線量の高い双葉、大熊両町では同日、初の一時帰宅が実施されたが、参加者からは「もう住めないだろう」との嘆きも聞かれた。
放射線量が20ミリシーベルト以下と想定される地域は主に緊急時避難準備区域に指定されている。全域が同区域で住民の9割以上が町外に避難している広野町の山田基星町長は「年間被ばく線量を1ミリシーベルト以下にするという目標を掲げながら肝心の除染を自治体任せにするのはおかしい」と基本方針に憤る。25日に国の担当者が説明に来た際、抗議したという。
「国の方針を待っていたら町の復興は遅れるだけ」(山田町長)と、同町は9月から学校などの除染を独自に行うが、予定する仮置き場に住民の理解を得られるかなど「問題は山積している」(町災害対策本部)。
同区域を市内に抱える南相馬市の桜井勝延市長も「国の責任で取り組むよう求めたい」とコメントし、不満を示した。同市も独自の除染計画を策定しているが、市の幹部は「当然やらなければならない国や東電が一切動かないからだ。国は何を考えているのか分からない」と批判した。【高橋克哉、神保圭作】
除染に欠かせない仮置き場だが、住民の反対で自治体などが苦境に立たされるケースが相次いでいる。
放射線量が比較的高い「ホットスポット」がある福島市渡利地区では7月下旬、住民ら約3800人で大規模な除染実験を行った。市は側溝などからかき出した泥の仮置き場として山間部にある市の処分場を選び、約6000袋を持ち込んだ。
だが、周辺住民が猛反発。数百メートル離れた場所に住む主婦(50)は「近所の除染で出たのなら仕方がないが、よそから運ばれてくるのは納得できない」。市は新たな仮置き場の選定を迫られた。
国土交通省福島河川国道事務所が8月上旬に二本松市の堤防で刈り取った雑草を河川敷に埋めた際にも反発が起きた。雑草は従来、飼料や堆肥(たいひ)に利用していたが、原発事故後は放射性物質を含むため河川敷に仮置きしたところ、作業を見た住民が市に問い合わせ問題化。近くの男性(44)は「放射線に敏感になり精神的に参っている。自分の家のそばに置きたくないのは当然だ」と話す。【竹内良和、椋田佳代】
毎日新聞 2011年8月26日 20時54分(最終更新 8月26日 23時18分)