今から900年前、王家と貴族が対立し、混迷を極めた平安末期、
1人の男が現われ、この国の行く末を示した。
平清盛(1118年 - 1181年)
本当の親を知らないまま、
武士の新興勢力・平氏のもとで育てられた少年は、
養父・忠盛とともに海賊退治を行い、
一人前のサムライに鍛えあげられる。
武士が低き階層と差別されていた時代、
人の心をつかむことに長(た)けた彼は、瀬戸内の海賊を束ね、
やがて武士の王となり、そして日本の覇者となる。
巨大な港を築き、海外に繰り出す夢を描き、
海に浮かぶ荘厳華麗な厳島神社を造営。
宋(中国)との交易で巨万の富を築く。
争いでもなく、階層にこだわるのでもなく、
貿易こそがこの国の豊かになる道だと人々に説いた男。
同様に志をもった、織田信長の遥(はる)か400年前、
坂本龍馬の700年前の話である。
「平家物語」ではアンチヒーローとして描かれていた男に
新たな光をあて、歴史絵巻から解放された、
躍動感とエネルギーにあふれる男として描く。
壮大なスケール、魅力的なキャラクターの数々、
卓越したストーリーテリングで知られる脚本家・藤本有紀が贈る
オリジナル作品、大河ドラマ —平清盛—
まだ誰も知らないサムライ誕生のドラマが、ここに始まる。
* 本作品は大河ドラマ51作目。
平清盛主役は「新・平家物語」(1972年)以来40年ぶり。
清盛が登場した大河ドラマは「源義経」(1966年)、
「草燃える」(1979年)、「義経」(2005年)
平家の棟梁(とうりょう)・平忠盛の子として育つが、実は白河院の落胤(らくいん)。その出自ゆえの葛藤を抱えつつ、下級貴族にすぎなかった武士として初めて正三位(公卿)となり、太政大臣にまでのぼりつめる。
幼少期より海に親しみ、海賊や宋の商人らと深くかかわったことから進取の気性に富み、独特の感性を育んで、やがて福原(現・神戸)に都を遷(うつ)して日宋貿易による交易国家をつくることを計画、その実現のために生涯をかけて奔走することとなる。
無頼の生き方を余儀なくされた少年期を過ごし、やがて貴族政治を変革することに努め、武士の一員としての生き方を貫き、巨大な「平家一門」を築き上げる。豪胆さの一方に危うい繊細さをあわせ持ち、そこを後白河院につけこまれて、王家との長い戦いが始まる。
白河法皇の落胤(らくいん)である清盛を託され、平氏の跡取りとして育てる。やがて出生の秘密を知り距離を置く清盛に対しても、武芸をしこみ、強く温かい父親として接し続ける。
海賊討伐や私貿易などの精力的な活動により平氏の財力・武力・家格を飛躍的に高めた。武士が差別される貴族社会に疑問を感じ、政治のトップに立つ野心を抱きながらも、志半ばで病死する。
義朝の父。源氏の棟梁。血の気が多く手荒い源氏は一族の間で争いが絶えず、その度に為義は責任を問われ、白河・鳥羽院政のもとで不遇の日々を送る。
平家の棟梁・忠盛に激しい対抗心をもつが、何をやっても裏目に出る。保元の乱にさいし、義朝に将来を託して悲運な最期を迎える。
清盛の親友であり終生のライバル。いくら働いても報われない父・為義を見て育ち、武士の在り方に疑問を抱く。
清盛と出会い、武士の可能性に目を開かされるも同じ道を行くことを嫌い、源氏の本拠地である関東に下向して勢力拠点を築く。
平治の乱では清盛と武士の棟梁をかけて戦う。その夢はのちに、義朝の嫡男・頼朝によって実現される。
うつけものでわがまま、皇位への望みは薄く、孤独や欠落を埋めるために今様(いまよう)に狂い、気ままな少年期を過ごす。
街なかで偶然出会った清盛に「人生は誰が勝ち上がるかわからない」と教わる。近衛(このえ)帝が突然に崩御、29歳で即位したとき、清盛の言葉が本当であることを実感。最強の王になることを夢見て、やがて清盛の前に立はだかる。
名門貴族の出身で、清盛とともにエリート集団「北面の武士」で活躍。歌に通じ、武芸も闊達(かったつ)、妻子をもち順風満帆な人生であったが、ふとしたことで鳥羽上皇の妃・璋子(たまこ)と関係を持ってしまう。それがきっかけとなり出家。エリート武士の将来を捨て、漂泊の人生を歩む。生涯を通じて清盛の親友となる。
「桜に生き、桜に死す」桜を愛した稀代の歌人として後世に名を残す。
祖父・白河法皇亡きあと盤石な政治体制を構築し、権力の頂点に君臨。時に平家の大きな壁になる。
璋子(たまこ)・得子(なりこ)の2人の争い、崇徳・後白河の不仲に頭を痛め、後に大きな火種を残す。
したたかさと人間的な弱さをあわせもつ、平安時代400年の最後の栄華を築いた大君。崇徳・後白河の父。
系図上の父は鳥羽であったが、実の父は白河だった。藤原璋子(たまこ)が不実の関係のもとに産んだ子が崇徳天皇。そのため鳥羽上皇に嫌われ、強引に帝位から退けられるなど孤独に追いやられる。
鳥羽の死後、謀反の疑いをかけられ、藤原頼長とともに「保元の乱」を引き起こす。
藤原道長を先祖にもつエリート一族・藤原摂関家の長。支配階級である貴族の頂点に君臨する。
白河院政のもとで踏みにじられた摂関家の栄華を取り戻そうと画策する。長男・忠通よりも次男・頼長に目をかけたことが、やがて摂関家の分裂を招き、保元の乱を引き起こすことになる。
エリート一族・藤原摂関家に生まれ、忠実の次男でありながらその資質を見込まれ貴族のトップに立つ。貴族政治の巻き返しを行い、勢力を拡大する武士への大きな壁になる。崇徳上皇と結び、保元の乱を起こし、清盛・義朝と戦うことになる。
日宋貿易・国家構想における清盛の師。宋の言葉も堪能。中流貴族出身にも関わらず少納言に任じられるが、それ以上の出世はみこめないと出家・信西と名乗る。
清盛や藤原得子(なりこ)と深く結びつき、自らの政治理想を実現しようと努めるが、早急な改革が貴族や武士の反感を買う。
忠盛・清盛に仕え、血のつながらない親子として葛藤し、確執を抱える二人にとっての良き理解者。平家一の家人(けにん)。無頼の生活を送る清盛も温かく見守る。
唐菓子(からくだもの=中国の菓子)の味が忘れられず、もっと唐菓子が食べたいという意外な見地から、清盛の日宋貿易に期待をかけている。
漁師の子でありながら、白河法皇の殺生禁断令により父親を亡くしたのち、忠盛の計らいで平家一門の養子となる。
控えめで冷静沈着に物事を判断、暴走しがちな清盛を抑える、たった一人の兄のような存在である。清盛は盛国の自宅で命果てたとも言われている。
伊勢出身、平家譜代の家人。根っからの武人で、武骨な生き方しかできない男。保元の乱では先陣を切り、さまざまな合戦で侍大将を務める。
清盛が家督を相続することに異議を唱えるが、やがて彼の器の大きさに触れ理解を示し、後には清盛の嫡男・重盛の後見役を任されるまでになる。
忠盛と正室・宗子の息子。平家の正式な後継者の資格をもっているにもかかわらず、忠盛の教えのもとで兄・清盛を支える。
忠盛に似て礼儀正しく、品格・勉学に優れる。清盛が祇園乱闘事件の首謀者として罰せられると忠盛の後継者として脚光を浴びるが、不慮の死を遂げる。
平安末期、海の一族・伊勢平氏は瀬戸内の海賊退治によって貴族社会にその存在を示していた。清盛は養父・忠盛のもとで一人前の武士となるように育てられ、「人の絆(きずな)」の大切さを学ぶ。また清盛は船上での生活で先見性や判断力を身につけ、外国商人や海賊たちと渡り合う中でたくましい男として成長していく。
京に上ると清盛は個性的な仲間と出会う。前半生のライバルとなる源義朝(よしとも)、後に歌人・西行となる文武に秀でた佐藤義清(のりきよ)、そして繊細な少年から日本一の権力者「大天狗」へと変貌(へんぼう)を遂げる雅仁親王(まさひとしんのう/後白河天皇・上皇・法皇)。若き清盛とともに世の中を見つめ、それぞれの夢を語り合う。
だが、時は戦乱の世を迎える。
王家(天皇家)の後継争いに始まった保元・平治の乱。そこで清盛が見たのは、子が親を兄が弟を討つ地獄絵図だった。その中で清盛は、朝敵となった源義朝討伐をかつての雅仁親王・後白河上皇から命ぜられる。だが義朝の息子・頼朝には恩情をかけ命を救ってしまい、この判断が大きな悲劇を生むことになる。
京を舞台にした戦いで、藤原摂関家や源氏が力を失う中、清盛は「武家の棟梁」となり中央政界を左右する存在となる。盟友であった後白河上皇は院政を行い、政治権力をふるい、両者は同盟を結ぶものの、やがて厳しい対立関係に入る。そんな清盛を支えたのが家族だった。清盛は忠盛の教えを守り、ゴッドファーザーとして一族の絆を守り続けた。実の親を知らない清盛にとって、家族は頼りであり支えであった。
しかし清盛が最愛の長男・重盛を病で失うと、後白河は平家一門の追い落としをはかる。ついに堪え切れなくなった清盛は、クーデターを起こし、法皇の院政を停止して、最高の権力者となる。日本史上初めて武士が政権のトップにつくことになった瞬間だった。
そして400年ぶりに都を京から福原(現・神戸)に遷(うつ)し、自らの夢に立ち返った政治を行おうとした。それは巨大な貿易港を築き、日宋貿易を中心とした、海外に開けた交易国家を作ることだった。だが、あまりに急進的な改革だったために、世間の不評を買い、天下の大悪人とされてしまう。
こうした世論に乗じて、後白河法皇は平家追討令を出した。頼朝を先頭に、源氏一族が全国で呼応する中、清盛は熱病で命を絶つ。その子たちは父の名誉を守るために果敢に戦うが力尽き、平家一門は父・清盛が愛した海に消えるのだった——。
先日、プロ野球の震災復興ゲームで、楽天イーグルス・嶋選手会長がこう宣言しました。「見せましょう、野球の底力を」。復興に向けて社会全体が動き出しているときに、テレビドラマもまた、その真価を問われているように思えます。ドラマに何ができるのか——。
来年は大河ドラマ50年。これまで、数々の感動とメッセージを残してきたと思います。そして節目の年を迎えて、私たちは新たな感動を伝えなければなりません。そのために、私たちは力強い仲間を得ることができました。
エネルギッシュで創造性に富んだ逞(たくま)しい出演者の方々です。
いつの世でも、困難を乗り越え、新しき時代を創り上げたのは人間の力(ちから)。900年前の平安末期、武士も、貴族も、そして誰もが「こんな混乱した世の中が続くはずがない」と思っていました。そんな時代を舞台に「平清盛」は、希望を持って夢中で逞(たくま)しく生き抜いた者たちを描いていきます。素晴らしき俳優陣とともに「ドラマの底力」、お見せしたいと思います。ご期待ください。
兵庫県出身。舞台脚本等を経てテレビドラマの脚本を手がけるようになる。NHKでは土曜時代劇「咲くやこの花」、「名探偵赤富士鷹」などを執筆。連続テレビ小説「ちりとてちん」では物語の構成や登場人物の設定に落語を取り入れ話題となり、多くの視聴者を魅了した。魅力的な人物造形と巧みなストーリーテリングには定評がある。 今回が大河ドラマ初執筆。
東京都出身。少年時代は漫画家や科学者に憧れていたが、中学3年のときに突然クラシック音楽に目覚める。
一時松村禎三に師事したほかはロックやジャズのグループに参加しながら独学で作曲を学ぶ。
1981年「朱鷺によせる哀歌」でデビュー。いわゆる「現代音楽」の非音楽的な傾向に異を唱え、調性やメロディーを復活させた「新(世紀末)抒情主義」を提唱、5つの交響曲や9つの協奏曲を始めとするオーケストラ作品、「鳥のシリーズ」などの室内楽作品、「プレイアデス舞曲集」などのピアノ作品の他、ギター作品、邦楽作品、舞台作品など数多くの作品を発表。クラシックというジャンルを超えた幅広いファンの支持を得ている。
満を持しての大河ドラマ音楽担当、久しぶりのクラシック界からの作曲家起用である。
(近作)
2009年、映画「ヴィヨンの妻」で日本アカデミー賞音楽賞受賞。
2010年、CD「タルカス〜クラシックmeetsロック」発表。
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