医療事故で患者が死亡したり、重い障害が残ったりした場合に、医師に過失がなくても補償金を支払う「無過失補償制度」の創設に向けた厚生労働省の検討会の初会合が26日開かれた。対象とする医療分野の範囲や補償水準など具体的な制度設計について話し合う。座長の里見進・東北大学病院長は「半年後を目標に報告書をまとめたい」と話した。
医療事故が起きると患者側は民事訴訟を起こして損害賠償を求めるのが一般的だが、立証が難しく時間がかかるため、患者側の負担の重さが指摘されていた。無過失補償制度は、患者や家族を早期に救済し、医療関係者の負担を軽減することで医療の質の向上を図る狙いがある。
産科分野の一部では09年から同制度を導入。出産はリスクが高く、過失の有無の判断が難しいためで、赤ちゃんが重度の脳性まひで生まれた場合に一定の要件を満たせば総額3000万円を支払う。財源は、運営組織の財団法人が分娩(ぶんべん)機関から保険料を集め、民間保険会社を活用して賄っている。
委員からは「補償だけでなく、事故の原因究明や再発防止の在り方についても併せて議論すべきだ」などの意見が出され、今後、海外の取り組みも参考にしながら議論を進める。【佐々木洋】
毎日新聞 2011年8月26日 21時41分