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2011年8月26日12時57分

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「重要事件除き裁判権放棄」 政府、米との「密約」公開

 日本政府が在日米軍関係者の公務外の犯罪について「重要事件以外は裁判する権利を行使しない」との見解を明記した秘密文書を1953年に米政府と交わしていた。一定の裁判権を放棄し、起訴しない方針を示したものだ。松本剛明外相が26日、関連文書を公開した。

 米兵らの公務外の犯罪に対する裁判権は、52年の日米行政協定(日米地位協定の前身)では米国側にあったが、53年の協定改定で日本に移った。公開された文書には、改定交渉の中で日米両政府が裁判権放棄について協議していたことを示すものが含まれていた。

 日本側発言の草案と見られる文書もあり、そこには「実質的に見て重要であると考えられる以外の事件は(中略)裁判権を行使する第1次の権利を行使する意図を通常有しない」などと記されている。

 日米両政府は、改定された行政協定が発効する前日に会議を開催。法務省の津田実・刑事局総務課長(当時)が草案通りに発言して文書に署名した。この秘密文書は当時、米側だけで保管すると取り決めたため、日本政府の資料からは見つからなかったという。日本政府は今回、米側から英文の秘密文書提供を受け、和訳して公開した。

 日本側が裁判権放棄の方針を示していたことは08年に米政府の公文書で明らかになっていた。日本政府は当時、「裁判権放棄について米側と合意した事実はない」と否定したが、09年の民主党政権発足後、岡田克也外相(当時)が調査すると表明していた。

 ただ、松本外相は26日、「日米合意はなかったと確認できる。密約と言えるかどうかはコメントしにくい」と説明。日米両政府は25日に日米合同委員会を開いて「日本側の裁判権行使に関する一方的な政策的発言で、日米の合意ではない」と確認した。また、日本政府は「被疑者を起訴するかどうかは、日米地位協定上の地位とは無関係に、日本国の法に従って行われる」とし、米側も「指摘の理解を共有する」と応じた。(鶴岡正寛)

    ◇

 沖縄の米兵犯罪などに詳しい琉球大・我部政明教授の話 日本政府は自ら主権を制限することになる裁判権の放棄について、表に出てしまうとまずいから法務省課長の口頭陳述にするよう求め、長い間にわたって日本側文書を公表してこなかった。一方、米政府は協定改定案を審議する議会への対策などから、米側文書に課長の署名を要求したとみられる。日米ともに妥協し、秘密の合意をしたと言える。明らかな密約だ。

    ◇

 〈日米行政協定〉 1952年の旧日米安保条約発効に伴い、米軍の日本での権限などを定めた日米行政協定が締結され、翌53年に改定された。60年の安保改定を受け、行政協定も現在の地位協定に改定された。米軍に対する日本側の施設・区域の提供義務や米軍人への日本国内法令の適用除外などを定めている。米軍関係者が起こした事件を最初に裁く権利(第1次裁判権)は、公務中の犯罪は米側に、公務外の犯罪は日本にあると定めている。法務省や外務省は、起訴すべきかどうかについて米兵を特別扱いはしていないとの立場を取っている。

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