きょうのコラム「時鐘」 2011年8月26日

 連載漫画「ヒラリ君」で、スカートが窮屈になったママが「夏太りしたんやろか」と嘆いていた。夏やせとは正反対の言葉を最近、よく耳にする

暑さで食欲がうせ、げっそりやせる。かつての夏の常識はどこかへいってしまったようである。ヒラリ家のママならずとも、思い当たる事が幾つもある。熱中症予防の掛け声で、大いに水分を補った。糖分の多いジュース類も毎日愛飲し続けた

食欲不振を覚えても、冷たい料理やデザートなどには事欠かない。じっとしていても汗をかくから、適度な運動は怠りがち。これでは夏やせをする道理がない

やせて消耗するよりも、腰回りを気にしながらも元気な方がよいのかもしれない。手元の歳時記に高浜虚子の句が載る。「夏痩(なつやせ)の人ことごとに腹を立て」。体がやせると、心のゆとりまでがそぎ落ちて怒りっぽくなる。夏やせは始末に負えない

夏太りならば、心穏やかでありたいと思う。が、永田町の騒ぎやら人気タレントの不始末やら、心がいら立つ事が続く。さしずめ、「夏太り人ことごとに腹を立て」か。俳句の風情はかけらもない晩夏の世情である。