紳助さん引退〜芸能人と暴力団〜

バラエティ番組の司会者として人気を集めていたタレントの島田紳助さんが、暴力団幹部との親密な関係があったことを理由に芸能活動から引退しました。
所属事務所によりますと、平成17年6月ごろから平成19年6月ごろまでの間に暴力団関係者との間に、一定の親密さを伺わせる携帯メールのやりとりを行っていたことが明らかになったということです。
事実関係について島田さんに確認をしたところ関係を認め、みずから社会的責任をとって芸能活動から引退すると申し出たため、所属事務所は引退を了承したということです。
引退を受けて、民放各社は相次いで、出演する番組の放送中止を決めるなど、波紋が広がりました。

トラブル解決を機につきあい

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会見で島田さんは「10数年前に解決できないトラブルがあり、芸能界を去ろうと思った。そのときに昔からの友人に相談したら、暴力団組織の人物に連絡してもらいトラブルを解決してくれた。その人物からは、『芸能界で頑張ることが恩返しだ』と言われ、本当に感謝した。6年前、傷害事件を起こして謹慎しているときにも、励ましのメールをいただき、その友人を通じて暴力団組織の人物にメールで感謝の思いを伝えた」と話しました。
そして、「10数年の間にその人物には4〜5回、会った。4年半前にバーを開店した際には、店に来て多めにお金を置いていったこともある」と述べて、面識があったことを明らかにしました。
また、「暴力団関係者とつきあってはいけないことは十分理解していたので、友人を通じてメールのやりとりをしていた。悪いことをしているという意識はなかった。しかし、そうした考え方は間違っており、本当に迷惑をかけて申し訳なく思う」と陳謝しました。
その一方で、この人物と付き合ったことについては、「正直言って後悔していない。これからも感謝は持ち続けたいと思う」とも述べました。

なぜ暴力団と関係を

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暴力団の事件を担当していた警察の元捜査員によりますと、この人物は、山口組の幹部だということで、島田さんが関係を持ったきっかけについて、元捜査員は、「島田さんが右翼団体とトラブルになった際、知り合いの元プロボクサーでもある暴力団関係者の仲介で、この暴力団幹部にトラブルの解決を依頼することになった」と証言しました。
また、6年前、大阪府警が、事件の捜査に関連してこの暴力団幹部の自宅などを捜索した際、島田さんが幹部に送った手紙などが見つかっていたことが、捜査関係者への取材で分かりました。
捜査関係者によりますと、平成17年に大阪府警が競売入札妨害事件に関連して、東大阪市にある幹部の自宅など関係先を捜索しました。
この際、関係先から、島田さんが暴力団幹部に宛てた直筆の手紙や幹部の家族と飲食店でいっしょに撮影した写真が見つかったということです。
警察は、手紙や写真をきっかけに島田さんと幹部の親密な関係を把握したものの、事件との関連を伺わせるものではなかったとして、手紙と写真は押収していないということです。
こうした手紙や写真について、島田さんは23日の会見で、「あるわけないですから」と述べ、存在を否定していました。

芸能人と暴力団

お笑い評論家で江戸川大学メディアコミュニケーション学部の西条昇准教授は、「島田紳助さんは、芸人としてのやんちゃな面に加えて、その時代に何をしたら目立つかということを計算して自分や番組を演出するしたたかな面があった。芸能界と暴力団が興行の面で切っても切れない関係にあったことは以前から指摘されていたが、今回の引退は、大相撲の事件のように、そうした関係は断ち切らなければならないという風潮が強まっていることの現れではないか」と話しています。

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暴力団の事情に詳しい作家の溝口敦さんは、「島田氏は以前から関西の暴力団幹部との交際が噂されており、表では解決できないような頼み事などを通じて関係を深めていったのだろう。島田氏は単に芸人というだけでなく、政治的な番組の司会を担当するなどオピニオン・リーダー的な立場でもあり、こうした人物が暴力団と付き合っていたということが社会に与える影響は非常に大きい」としています。
また、芸能人と暴力団との交際が改めて問題になったことについて、「芸能人側は暴力団に警察沙汰に出来ないトラブルの対応を依頼することがある。一方、暴力団は多くの芸能人の面倒を見ることで器を大きく見せることが出来る。双方にメリットがあるから、つきあう理由があり、こうした関係は古くからあるものだ」と指摘しています。
そして「暴力団との交際自体が犯罪になるわけではないが、社会的な罰は受けなくてはならない。これを機に芸能界は暴力団とつきあうことがマイナスだということをしっかり認識すべきだ」と話しています。

暴力団排除進まない芸能界

暴力団を巡っては、警察の強い指導で、全国の自治体が暴力団排除のための条例を設けたり、企業が経済活動から暴力団を排除するための協議会を立ち上げたりするなど、対策が強化されてきました。

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相撲界では去年、暴力団関係者が関与した野球賭博に力士らが関わっていたことが明らかになり、警察は力士や親方を対象に講習会を開くなど、暴力団との関係を絶つための対策を進めてきました。
また、プロ野球でも、12球団が警察などと協力して協議会を作るなど、さまざまな取り組みを行っています。
芸能界でも、相次ぐ薬物事件をきっかけに警察が暴力団の排除を指導していますが、芸能人は所属事務所との契約関係がさまざまで、事実上、独立して活動している人も多く、管理がなかなか行き届かないのが実態です。
また、個人的なトラブルや金銭問題があっても、自分のイメージなどを気にして表沙汰にしたくないと考えるケースも少なくなく、こうした問題の解決を暴力団関係者に依頼することがあるということです。
警察は、社会全体で暴力団排除の機運が高まるなかで、芸能界では依然として見えにくいところで暴力団とのつきあいが続いているとみており、今後、業界への指導を強めていくことにしています。

(8月24日 20:10更新)

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