この夏、家庭の契約電流の容量を引き下げる「アンペアダウン」が広がっている。基本料金が安くなるうえ、ブレーカーを落とすまいとする心がけが節電につながるという。手間をかけながら、電気への依存度を下げる生活を楽しむ人たちもいる。
東京都品川区の会社員平戸実生(みしょう)さん(38)は6月、30アンペアだった社宅の契約を20アンペアに下げた。819円だった毎月の基本料金は273円安くなった。照明の使用を抑え、髪はドライヤーを使わずに自然乾燥させる。その結果、7月の使用電力量は昨年より24%減った。
アンペアダウンに踏み切った決め手は、東京電力福島第一原発の事故。以前から関心はあったが、「我慢を強いられるのでは」とためらっていた。事故後に原発反対のデモに参加し、アンペアダウンを実践する人の話を聞き、背中を押された。
妻の美登里さん(34)も「やってみると、無駄遣いをしないように少し意識する程度。それで結果的に使用量や電気代も減るから、いいですね」と話す。
東電は10〜60アンペアの間で契約アンペアの変更に無料で応じている。今年の変更申込件数は4〜7月、前年同期の2倍以上に急増。6月には約5倍に上った週もあり、一時は工事が1週間待ちになったことも。
東電は「例年、夏はアンペアを上げる依頼が多いが、今年は10アンペア程度引き下げる家庭が多いようだ」(広報部)とみる。8月の変更依頼も昨年の約1.3倍という。