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【社会】

水戸納豆 苦境 稲わら汚染 後引く風評被害

わらで納豆を包み込む従業員ら。原発事故の影響で生産量も減った=水戸市柳町のだるま食品で

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 昔ながらの稲わらを使った茨城県の特産品「わら納豆」が、稲わらから放射性セシウムが検出された問題などで売り上げを大きく落としている。福島第一原発事故で、観光客が激減したことも影響している。風評被害にも頭を悩ませる水戸市内の納豆組合は、東京電力に一億円程度の賠償を請求する方針だ。 (水越直哉、写真も)

 「誰も思ってないことが起きた。まさか稲わらが障害になるなんてね」。水戸市内の五社が加盟する県納豆商工業協同組合水戸支部の高野正巳支部長(65)が嘆いた。

 震災直後は被災などで化学工場が稼働できず、納豆のカップ容器のフィルムなどが不足し、大手業者の出荷が滞った。このため、納豆をわらで包む老舗店舗の商品に注文が殺到した。

 しかし、工場や道路などが復旧すると状況は一変。老舗店舗「だるま食品」(水戸市)社長も務める高野さんは「てんてこ舞いになってたのは四月下旬までだったよ」と肩を落とす。

 高野さんによると、セシウムに汚染された肉牛用の稲わらが問題になって以降、納豆を包む稲わらに対しても「放射性物質は大丈夫か」という問い合わせがあるという。

 使用しているのは昨年収穫された県内産わら。検査機関の調査で放射性物質は検出されていない。しかし、今年収穫される稲わらに対しては「検出されないよう祈っている」と不安も口にする。

 水戸支部は観光客の土産用納豆がほとんどで、スーパーなどへの納入は少ない。今夏、県内の海水浴客数が例年の一割にとどまるなど、事故の影響で観光客が激減したのも大きな痛手となった。

 支部の加盟各社は減少した生産量に合わせ、休日を一日増やし、営業時間も二時間ほど短縮するなどして対応している。高野さんは「観光客がいつ戻ってくるかはわからず、状況は深刻だ」と訴えている。

 

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