どうしんウェブ 北海道新聞

社説

里親制度 養育の悩み和らげたい(8月25日)

 3歳の里子を虐待死させたとして、東京都内の里親が逮捕された。

 捜査関係者によると、昨年8月、容疑者の自宅の階段の下で倒れているのが発見された。里親は「階段から落ちた」と、容疑を否認している。

 虐待があったのかどうか。全国の献身的な里親も注目していよう。真相の解明が待たれる。

 里親制度は、さまざまな事情で実の親と暮らせない子どもを、別の大人が育てる国の仕組みだ。

 恵まれない環境に置かれた子どもに、家庭のぬくもりを提供しようという狙いで、厚生労働省は拡充が必要との立場だ。その通りだろう。

 ただ、実態は国民の善意に支えられており、希望者が都道府県などの審査を受けて登録している。

 里子は、実の親から虐待を受けたなどで心に傷を負っている場合が多く、養育には実子と違った難しさがあるという。

 里親の愛情を試そうとするケースが目立ち、わざと反抗したり、赤ちゃん返りをしたりする。容疑者も里子の養育に悩み、孤立していたのは事実のようだ。

 どの里親も直面する可能性があるだけに、行政は日常的に相談に応じるなど支援体制を強化するべきだ。

 里親と里子を結びつけるのは、児童相談所(児相)だ。里親になると、生活費や手当などを含め月12万円以上が支給される。

 昨年3月末現在、全国で登録されている里親は7158人。道内では今年7月末で、296世帯の里親が400人の里子を育てている。

 厚労省は里親になるにあたって、6日間の研修を課している。

 より多くの人に不安なく里親になってもらうには、心の傷を負った子どもの実態や対処法がさらにわかるような内容にする必要があろう。

 経験者による講義や、里親体験などを増やしてはどうだろうか。

 児相は定期的に里親と面会しているが、里親は本音を打ち明けづらいという。責任感などから、里子を取り返されるのではないかと躊躇(ちゅうちょ)する傾向があるためだ。

 こうした里親の不安を払拭(ふっしょく)しなければならない。児相は日常的に接触し、悩みをともに考えてゆく姿勢が大切だ。

 増え続ける虐待の対応に追われ、児相が人手不足なのはわかる。専門家は子育てNPOの職員やカウンセラーなどを相談員に活用することを提案している。そうした声に耳を傾けるべきではないだろうか。

 道も事件を受け、里親の交流会を増やすなどの対策を決めた。同じ悩みを持つ者同士なら話しやすいはずだ。早急に進めてほしい。

北海道新聞・道新スポーツ購読のお申し込み
このページの先頭へ