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20110821-5.jpg

泊原発のすぐ近くの岸壁で毎日、温排水の温度を計測する斉藤武一さん。とても危険な作業です。

泊村のガン死亡率は、確かに抜きん出ている

前の記事「魂を売った泊村は、北海道でいちばんガン死亡率が高い」では、原発立地である泊村のガン死亡率が北海道の中でも、ダントツ1位であることを書きました。

採用した情報は「北海道市町村別ガン死亡率の特徴」ですが、この情報の出所について、閲覧者の方から詳しい情報をいただきました。

(画像クリックでソース元へ)
20110818-1.jpg  

これは、北海道健康づくり財団が6年に一度統計をまとめて出している「市町村別死因数」という冊子からの情報をグラフ化したもの、とのこと。

まず、元になっているデータまでのリンクが分りづらいので、以下の手順で、そのデータまで到達してください。

トップページ、北海道健康づくり財団の最上段にある「財団の事業」という白抜き文字リンクの上にマウスオンする。

下にプルダウン・メニューが出てくるので、いちばん下の「SMRをダウンロード」をクリック。

右列に「SMRダウンロード」という文字があるので、ここをクリック。

「がん」と書いてあるところなら、どこでもいいのでクリック。

20110821-3.jpg

ガンの病名ごとに分かれているので、どこでもクリックすると、xls(表)ファイルが表示されます。
ちなみの「肺がん」をクリックして、泊村の前後の数字をコピーすると、下のようになります。

北海道・市町村別「肺がん死亡率」の一部
肺がん 400 倶知安町 58 51.3 113.1
401 共和町 39 28.3 138.0
402 岩内町 91 59.9 152.0
403 泊村 24 9.7 246.7
404 神恵内村 16 7.5 212.7
405 積丹町 30 17.5 171.6
406 古平町 27 19.5 138.5
407 仁木町 32 19.6 163.6
408 余市町 118 93.5 126.3

やはり、抜きん出て高い数字です。

SMRというのは、「標準化死亡率」のことで、その説明は、こちらにあります。

少し理屈っぽいことを書いておくと、
「死亡数」とは、実際にデータを取るに際して決められた期間内に、その市町村で亡くなった人の数。

「期待値」とは、「期待死亡数」のことで、年齢階級別(たとえば50歳〜60歳、というように)死亡率の全国平均に対して、その市町村の(同じく50歳〜60歳)の実際の死亡率を出したもの。
これを全年齢階級別に出た数字を累積したもの。

「SMR」(standardized mortality ratio)とは、「標準化死亡率」のことで、数字が大きければ大きいほど、「そのガン」が原因で死亡する人が多いことを表しています。

「死亡数」「期待値」が同じであれば、「SMR」は100となり、その市町村で、(たとえば)肺がんが原因で亡くなる人の数は、全国平均と同じ、ということになります。

ということは、高齢化の進んでいる地域では、当然、「期待死亡数」は大きくなりますが、「肺がん」などの病名を特定した場合は、年齢などの属性を超えた「有意性」は出てくるものの、若年層に限定したガン発症率は出ません。
今は、それはそれで信頼できるデータとなります。

福島の5年後、10年後などは、年齢階級別のデータを出さなければならなくなります。
他の市町村と比較するものがない(若い人のガンの症例は少ないでしょうから)わけですから、喜ぶのは山下俊一のようなクレージーな学者だけです。

ただし、前立腺がんや、乳がん、子宮がんなどの場合には、死亡者数自体が少ないので、統計データに代表性が認められません。
いくらSMRの値が高いからといって、「ダントツにガン発症率が高い」ということにはなりません。

その場合、たとえば泊村のように人口が少ない地域においては、1年後ごとではなく、数年の経過を見て、その期間内に、特定のがんで亡くなった人の数を基にSMRを算出すれば、有意な結果が得られるはずです。

北海道・市町村別「前立腺がん死亡率」の一部

前立腺がん 400 倶知安町 10 10.0 99.8
401 共和町 5 5.8 86.1
402 岩内町 10 11.3 88.8
403 泊村 8 2.1 373.7
404 神恵内村 2 1.8 109.6
405 積丹町 5 3.8 132.6
406 古平町 4 3.9 103.9
407 仁木町 1 4.0 24.8
408 余市町 22 18.6 118.3

北海道・市町村別「乳がん死亡率」の一部
乳がん死亡率 400 倶知安町 5
6.4
78.1
401 共和町 6
3.3
182.9
402 岩内町 6
8.1 74.3
403 泊村 4
1.5
270.8
404 神恵内村 3
1.0 291.2
405 積丹町 6
1.9
315.3
406 古平町 1
2.4
42.5
407 仁木町 1
2.3
44.2
408 余市町 15 12.2 122.9

泊村のようなSMRが突出して高い地域においては、日本人の平均的な労働、平均的な食事、平均的な生活の仕方と照らし合わせて大きな「ズレ」を生じさせる「何か」がある、ということになります。

そのひとつに「原発からの空気、排水」による農畜産物、海産物の汚染、飲料水の汚染が考えられ、大気の汚染も考えられることから「原発立地」という、他の地域にない「特殊な要因」が働いているということがはっきりします。

チェルノブイリ周辺、そのホットスポット、スリーマイル島の原発周辺に住んでいる住民には明らかに、脳神経の障害を始めとするさまざまな機能障害、さまざなガンが認められるわけですから、原発との因果関係を否定することは不可能です。

しかし、政府、電力会社、国からさまざまな余禄に預かっている御用学者は、それを認めたがりません。

原発が人間にとって危険であることを一番知っているのは電力会社。だから、詐欺的な手口を使うほかない

泊原発周辺の小さな町村の、ガン死亡率が突出して高いということは間違いありません。

特に、積丹半島の住民には、それが顕著に出ています。
神威岬の、あのシャコタン・ブルーが放射能で汚されることを考えると、はらわたが煮えくり返る思いです。

問題は、「因果関係」を立証することです。住民による草の根調査が期待されます。

たとえば、10年後に「だらだら病」になった場合、2011年3月11日以降に採取して保管していた髪の毛を検査機関に持っていって分析してもらえば、セシウムやストロンチウムが出てくるはずです。

物理的半減期は正確にわかっていますから逆算して、2011年3月の時点で、どれくらい被爆して、どれくらいの遺伝子を切断してしまったかが推定できます。

東大の児玉龍彦教授が研究している継続的な低線量被爆における「P53遺伝の作用」や「レット遺伝子の作用」がもっと解き明かされれば、遺伝子レベルで、原発周辺で生活することと放射線被曝との関係が明確になります。

同時に、全国各地の原発周辺、たとえば原発から半径10km圏内、30km圏内に30年以上住んでいた人のガン発症率などを調べることができれば、こうしたゲノム科学とのすり合せによって、補償を求める裁判の確実な「証拠」になります。

それを見れば、原発立地の自治体の住民は青ざめるでしょう。

こうしたことを、電力会社、経済産業省、文部科学省、厚生労働省は、原発立地の住民に隠すことなく開示し、それを知った住民が「たとえ寿命が少なくなっても贅沢のほうを取る」と、納得づくで原発を受け入れるのであれば、何も言えなくなってしまいます。

「どうぞ、早死にしてください。遺伝子を壊して原発という悪魔に子々孫々まで祟られてください」と言うほかありません。

今まで、そうであったように、日本の政府や御用学者たちが、「原発と地域住民の死亡率との間に、明確な因果関係が認められない」と、いくら言ったところで、実際に、がんによる死亡率が高いのですから、当然、それを全国的に告知し、誰でもデータベースから情報を取り出すことができるようにすれば、そうした地域に引っ越したり、そうした町に企業が移転したりするケースは激減するでしょう。

人材が広く集まらないから町が活性化しないし、人口も増えません。

今後、少子高齢化のスピードがもっと速くなると、こうした地域の地価は下がっていく一方です。
役所も路線価を算定しなおさなければなりません。

原発立地の自治体の最大の収入のひとつが、原発関連施設の建っている土地からの固定資産税ですから、これが漸減していきます。

それでも、原発推進派は、電源三法を改正してでも、原発マネーを乱発するはずです。
(海江田と文部科学大臣の高木が、国民の誰にも知らせないで、4月13日にこっそりやってしまった)

原発立地の自治体は、今がピーク。
これからは、我が世の春を謳歌できるどころか、数年後には、冬空の下に放り出されるのです。
地震が来て原発から放射能が漏れだせば、冬空どころか放射能のプルームの「屋根の下」です。

政府は、原発事故が起こった場合は、広域にわたって、このことを地域住民、いや全国の国民レベルで説明できないので、ひたすら情報を隠蔽するしかないのです。

本当に有能な人間は官僚などになりませんから、結局、彼らは原発を推進するためには、「詐欺師」と同じ手口を使うしか方法がなくなります。
特に、経済産業省、文部科学省の官僚たちが犯罪官僚というのは、そういうことです。

まず何より、児玉教授のように専門の研究をしている学者グループに潤沢な研究予算を継続的に付けること。
反対に、理科の実験レベルのようなことをやって遊んでいる学者の予算をカットすること。

NPOの活動を住民が理解し、支援すること。
ドイツ放射線防護委員会や、クリス・バズビー博士が科学議長を努める欧州放射線リスク委員会(ECRR)のような組織が民間の発露によって大きく育っていくことが大切だと思います。

海江田万里や高木義明のような政治家である以前に、人間として不適切な連中が大臣をやっているような政府には期待できません。
私たちが、やらなければならないのは、こうした国民を死なせるようなことばかりやっている人間を排除することです。

北海道にも、小出裕彰助教のような、反骨の“市民学者”がいる

北海道各地で「原発紙芝居」を使って、分りやすく原発の脅威を説いて回っている人がいます。
泊原発の10km圏内にある岩内町の斉藤武一(さいとう たけいち)さん。

住民からは、市民学者と呼ばれています。



斉藤さんは、岩内町立の保育園で保育士をされていましたが、腰を痛めたことがきっかけで、以前から義憤を感じていた原子力行政に対して反原発啓蒙活動を始められた方です。

小さな市民団体、「岩内原発問題研究会」の中心的な人で、福島第一原発事故が起こっても、いまだに何も知らされていない日本人に、原発立地ゆえに知りえた真実を伝え、警鐘を鳴らしています。

ここに斉藤さんのメールが紹介されていますが、とても素晴らしい内容で、特に内部被曝から人々を守るために、真剣に取り組まれておられます。(この紙芝居↓は、素晴らしいです)

斉藤武一さんのお話〜止めなきゃ泊、プルサーマル2011〜




斉藤武一さんは大学で数学を学んだ方で、33年間にわたって、泊原発の排水口付近の温排水の温度の計測をやっています。



こうした危険きわまりない「寿命を削るような」活動の他にも、有志の招きにより、手弁当で各地で講演会を行い、次世代の子供たちのために原発廃止を訴え続けています。

大学教授という職に就きながらテレビのゴミ番組に連発出演して、有料で講演会をやっている武田とかいうインチキ専門家などより、よほど正しい知識をお持ちです。

この原発紙芝居は、子供はもとより、多くの原発に関するサイトを読んだ方でも、あらためて気づかさせれるところが多く、新鮮です。

斉藤さんが住んでいる岩内町は、泊原発と目と鼻の先です。
怒涛のような荒海を前に、寒風吹きすさぶ中、毎日毎日、放射能に汚染された危険な温排水の計測を、独りで行ってきました。

こうした活動が北海道新聞などで紹介されていますが、そのたびに、無知な一般市民から誹謗中傷が入るようです。

「エセ学者」だの、「岩内原発問題研究会は結社」だとか、一見、紳士的表現を装った罵倒がネット上でも、わずかですが、散見されます。

この種の人間に言わせると、斉藤さんたちの活動を紹介した北海道新聞は、「信者記者の集団」になるそうです。
しかし、その理由は書いていません。何もない、ただの嫌がらせだからです。
こうした人間たちのヒステリックな反応は不思議です。電力会社とどんな関係があるのでしょうか。

同じ岩内でも、こういう人間が斉藤さんの活動を、まるでカルトでもあるかのように印象付けをするのですから、日常的に妨害が入るのでしょう。

こうした活動を見るにつけ、無尽蔵に電力が供給されるかのごとく文明を享受してきた都会生活者も、福島第一原発の惨状を目のあたりにして初めて、自分たちの無知を知ることになったのです。

知らなかったとはいえ、原子力マフィアに恫喝されつつ何十年の長きにわたって孤独な戦いを続けてきた「サムライたち」を応援しなかった私たちは、少しずつ自己嫌悪の念に取りつかれ始めています。

小出助教が、「私などを頼っているようでは、脱原発などできない」と言いました。
まったくそのとおりだと思います。

こうした「サムライたち」が真に望んでいることは、「私を祭り上げることより、みなさんひとりひとりが、自分で考え、自分の足場を固めて、できることをやってみてください」ということなのでしょう。





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