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ザ・特集:共産・志位委員長と社民・福島党首、反核の「老舗」対談

 ◇「脱原発」どう進める

 粘り腰で「脱原発」を訴えた菅直人首相とともに2011年の夏が過ぎていく。ポスト菅を狙う民主党代表選の候補者たちはフクシマを語らない。小さくとも「原発ノー」を掲げてきた政党の思いはどうか。共産党委員長の志位和夫さん(57)と社民党党首の福島瑞穂さん(55)。2人の「脱原発」はどれくらい本気? 語り合ってもらった。【司会・鈴木琢磨】

 ◇世論は変わった。国民の声実現へ大同団結を--志位委員長

 ◇菅さんの言葉を生かさねば。集会や署名集めしている--福島党首

 --東大では1学年の違いでしたね。志位さんは工学部の物性物理学、福島さんは法学部。3・11のショックは?

 志位 核燃料の崩壊熱が止められなかったら、メルトダウンが起こる。爆発が起こった時は戦慄(せんりつ)し、政府に対応を強く求めました。そもそも原発は技術的に未完成。米軍の開発からスタートしていますから、安全は二の次、三の次。「死の灰」がばらまかれたら、その被害は空間的、時間的、社会的に制限できない「異質な危険」になる。日本の政治の多数が「安全神話」にとらわれて、この大事故を防げなかった。それは一人の政治家として痛恨の思いです。

 福島 津波後、今、電源車が福島第1原発に向かっていると聞いた時は、どうか間に合ってと神に祈る思いでした。私は青春時代から反原発。東大の自主講座で、反原発学者、久米三四郎さん(故人)の話を聞いたり、運動をしたりしてきました。チェルノブイリ事故の直前に出産して、母乳が危なくなるかもしれないと、粉ミルクを買ったりもしました。だから福島県のお母さんたちの気持ちは痛いほど分かります。

   ■

 --さて、志位さんのところは<一貫して原発に反対してきた唯一の政党>。福島さんのところは<日本の主要政党の中で唯一、脱原子力の立場を明確にしている>。まるでラーメン屋の老舗争いみたいですけど、どこが違う?

 志位 1953年、アイゼンハワー米大統領が国連演説で「アトムズ・フォー・ピース」、原子力の平和利用を呼びかけました。これに応えて55年に日米原子力協定が結ばれ、原子力基本法がつくられていく。当時、安全性が保証されていない、ときっぱり反対したのは共産党でした。以来、商業用原発の建設にノーと言い続けてきた。

 福島 しかし、共産党は核の平和利用について認めてきたんですよね。社民党は、核と人類は共存できない、いかなる国の、いかなる核にも反対、です。核の平和利用はありえない、と訴え、行動してきました。

 志位 私たちは核エネルギーの平和利用の将来にわたる可能性、その基礎研究までは否定しない。将来、2、3世紀後、新しい知見が出るかもしれない。その可能性までふさいでしまうのはいかがかとの考えなんです。

 福島 共産党は極めて安全な原発なら推進してもいいんですか?

 志位 そうじゃない。現在の科学と技術の発展段階では、「安全な原発などありえない」と言っています。いま問われているのは、原発ゼロの日本にしようということでしょ。

 福島 安全な原発はないし、核の平和利用と言って原発を肯定するのはおかしいです。

 志位 そこでは意見が違っても原発ゼロでの協力は可能だと考えています。

   ■

 --お互いのプログラムを見れば、共産党は<5~10年以内に原発ゼロ>、社民党は<2020年までに原発ゼロ>。ほとんど同じ。フクシマの事態は現在進行形。菅さんはともかく「脱原発」へとかじを切り、浜岡原発を止めました。評価は?

 志位 浜岡を止めたことは評価しますが、結局、依存度を減らす、なんです、民主党の方針は。記者会見で菅さんは原発がなくてもやっていける社会にしたい、と言った。変化だと思いました。でも、すぐ個人の意見だと後退したでしょ。原発輸出も続けるという。いま出ているポスト菅の顔ぶれに原発をなくす立場はだれもいない。

 福島 菅さんには国会で質問もし、官邸に何度も足を運び、電話もがんがんした。浜岡を止めろ、玄海原発の再稼働をすんなり認めるな、原子力安全・保安院を経済産業省から分離せよ、と。あなたが歴史に名を残すとしたら、脱原発と自然エネルギー促進しかない、とも。脱原発依存社会と言った菅さんの言葉を私たちは生かしていかなければなりません。

 --そういえば、福島さんは鳩山由紀夫政権で連立与党の閣僚でした。米軍普天間飛行場移設問題で離脱しましたが、与党にいたら、脱原発の発言力はもっと増したと?

 福島 与党だからできたこともあるでしょう。しかし、野党として脱原発をリードできたと思っています。鳩山さんが辞めたら、歌舞伎の演目が変わるようにさっと次のテーマになったでしょ。あたかも普天間は鳩山さんの問題だったみたいな。菅政権はTPP(環太平洋パートナーシップ協定)と消費税。次もそうかもしれない。脱原発は菅さんとともに去りぬになりはしないか。それを一番、危惧しています。

 志位 私は、原発をなくす、この1点での国民的合意をつくることが何より大切と考えています。一致できる政党、団体、個人はみな大同団結する。国民世論はうんと変わりましたから、3・11で。国民が声を上げ、その力で政府に圧力をかける。われわれ政治家は、そうした国民の声を代弁して、原発ゼロの政治決断を政府に迫る。

 --反核・平和でもなかなか足並みがそろわない。脱原発は二人三脚できますか?

 志位 私は両党間で協力が可能だと考えているし、それを願っています。

 福島 5月3日の憲法集会はいつもご一緒しますけどね。9月19日に東京の明治公園で「さようなら原発」の5万人集会があるんですよ。1000万人の署名集めも進めています。

 志位 大江健三郎さんや澤地久枝さんら著名人が呼びかけておられるんですよね。私も行くつもりです。私が参加した、同じ明治公園で7月2日にあった2万人集会、福島さん、メッセージを寄せましたよね。

 --集会といえば、女性運動家、平塚らいてうが雑誌「青鞜(せいとう)」を創刊して100年記念の集会が9月にあるとか。

 福島 ええ。彼女たちが生きていたら、きっと脱原発の運動をやるでしょうね。「女たちは原発を選ばない」と。

 志位 原発ゼロの集会なら、どこにでも行きますよ。

 福島 脱原発を思うすべての人と手をつないでいきたいと思います。

 --いよいよ菅さん退陣です。声をかけるとすれば? 

 志位 やはり自民党政治を変えてほしいという国民の願いを裏切ってきた。菅さんの責任は極めて大きいなあ。

 福島 お疲れ様。首相を辞めたら身軽になるので、脱原発議員としてばりばり一緒にやっていきましょう。もう何も遠慮するものはないでしょ。

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 「ザ・特集」は毎週木曜掲載です。ご意見、ご感想は

 t.yukan@mainichi.co.jp

 ファクス 03・3212・0279まで

毎日新聞 2011年8月25日 東京朝刊

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