ホメオパシーについて
【ホメオパシーの基本原則】
ホメオパシーは、約200年前に、ドイツ人の医師サミュエル・ハーネマンが体系化した医療で、ヨーロッパにおけるホメオパシーは、日本における漢方のような存在です。
ホメオパシーは、本来、体に備わっているといわれる自然治癒力に働きかけ、病気の人が全体のバランスを取り戻し、回復していく過程に作用していると考えられています。
病気に焦点を当てるのではなく、病気の人、その“人”に焦点を当てるため、自然に、治療はひとりひとりの個性に目を向けることになり、患者中心の医療であるといえます。
ホメオパシーには、2つの基本原則があります。
1.類似の原則
ある症状で苦しんでいる人に、もし健康である人に与えたときに同じような症状を示すホメオパシー薬(レメディ)を投与すること。
例)花粉症の患者さんにタマネギからできたレメディを投与する
2.最小限で効果的な投与を行うこと
ホメオパシー薬(レメディ)には、トリカブトや水銀など、その原料
に強い毒性を持つものが多く存在します。しかし、レメディにする過
程で、非常に高い希釈率で薄めるため、心身に悪影響を及ぼさず、自
然治癒力に働きかける作用のみを得ることが可能となっています。
また、ハーネマンは、希釈すればするほど、さらに、希釈物を激しく振とうすればするほど、レメディの効力が高まり、治療効果が高まることに気がつき ました。ここに、希釈(dilution)と振とう(sucussion)による、活性化(potentisation)という考え方が生まれました。
ホメオパシー薬
ホメオパシー薬は、一般的にレメディと呼ばれています。現在、3,000種以上のレメディがあり、約65%が植物から、そのほか動物や鉱物などからつくられます。
レメディの種類によっては、理論上、原料の分子がひとつも残っていないほど薄めているものもあり、なぜ、レメディが効くのか、科学的にはまだ解明されていません。
ただし、治療効果の科学的な検証については、世界で170以上の無作為対照試験や、多くの研究論文が報告されています。
現在、欧州や米国では、レメディが医薬品として認可されていますが、日本では医薬品として認可されていません。
ホメオパシーの利用
ホメオパシーは、急性疾患と慢性疾患の場合で、使い方が異なります。
急性疾患の場合は、病気や怪我の状態を見極めた上で、対症療法的に、スピーディに処方します。緊急の場合の初めの対応として、ホメオパシーは、とても有効な手段になり得ます。
慢性疾患の場合は、次のような使い方ができる可能性があります。
①従来の治療が効果的でない場合
②従来の治療を行うことが安全でない状況のとき
③従来の治療では副作用が起こる危険がある場合
④従来の治療における薬の量を減らしたいとき
ホメオパシーの治療
産婦人科では、妊娠中や授乳中で通常の薬が使えなかったり、使いたくなかったりする場合にホメオパシーを効果的に使えるかと思います。
また普通の薬では治療薬がない場合にも、その人にあうのではないかと考えられるレメディを使用することができます。
ホメオパシーの安全性と危険性
ホメオパシーのレメディ自体は、安全であるといえます。ただし、その使い方によっては危険となる場合もあります。特に、アグラベーションとプルービングには注意が必要です。
アグラベーションは、本来“悪化”という意味ですが、一方で、病状が回復する前に一時的に悪化するという状態を意味して使われる場合もあります。そのように、回復していく過程で見られるアグラベーション(悪化)は、全体の10%程度でしか起こりません。
本来、アグラベーション(悪化)は起こらないで回復するのが望まれます。しかし、アグラベーション(悪化)を起こしたら、ホメオパシーをいったん中止し、病状をしっかり見極めるのが大切です。
もしも、回復していく過程で見られる一時的な悪化でなければ、単に病状が悪化していることにほかなりません。そのままホメオパシーを続ければ、最悪の事態すら招く可能性があります。
そのため効果がなかったり、症状があっかしているのに漫然とレメディを続けることは避けなければなりません。
プルービングは、本来、“試験”という意味です。創始者のハーネマンは、健康な人にホメオパシー薬を投与して、引き起こされた症状を記録し、薬効を 決めるというプルービング(試験)を繰り返し、現在のホメオパシーの体系を築きました。現在でも、レメディを服用することによって、そのレメディの持つ像 (症状)が引き起こされる可能性があります。
病気でもないのに健康な人がレメディを服用したり、誤ったレメディを服用したりすると、今までなかった症状(レメディが持つ症状)が新たに引き起こされる可能性があり、危険です。
ホメオパシーにおける海外の状況と日本の状況
ホメオパシーは、ベルギー、フランス、イタリアなど、ヨーロッパ諸国でさかんに利用されているほか、中南米、インド、南アフリカなど、世界で広く利用されています。
Q&A
Q:ホメオパシーは、どんな病気や症状にも効くのですか?
A:ホメオパシーは誰もが持つ自然治癒力に働きかける治療法であるため、自然治癒力によって回復できる病気や症状であれば、効果を期待できます。内科、外科、婦人科、小児科、精神科、耳鼻科、眼科、皮膚科、泌尿器科、歯科…等、各領域を対象とします。
Q:ホメオパシーは、人にも動物にも効くのですか?
A:ホメオパシーは、自然治癒力に働きかける治療法であるため、人と同様、あるいはそれ以上の自然治癒力を持ち得る動物にも効果を期待できます。
Q:ホメオパシーで、どんな病気や症状でも治るのですか?
A:原則、病気や症状の種類は問いませんが、ただ、患者さんの状態によって治療の目標はさまざまです。また、「治る」という意味もさまざまです。病気や症 状が治ることは当然期待されますが、QOL(Quality of Life=生活の質)の向上という目標も非常に大切です。
Q:どのようなときにホメオパシーを利用するとよいですか?
A:急性疾患の場合は、対症療法的にスピーディに利用できます
慢性疾患の場合は、次のようなときに利用できます。
①従来の治療が効果的でない場合
②従来の治療を行うことが安全でない状況のとき
③従来の治療では副作用が起こる危険がある場合
④従来の治療における薬の量を減らしたいとき
妊娠中や授乳中に一般の薬を使用したくないときにも利用するのに適していると考えます。またつわりや出産時、一般の薬では効果が期待できない場合にもレメディを使用できる場合があります。
Q:ホメオパシーは、病気の予防やワクチンの代わりに使えますか?
A:使えません。ホメオパシーによる予防効果の証明はされていません。
Q:ホメオパシーは、なぜ効くのですか?
A:その作用の仕組みを現代の科学で説明することはできません。しかし、ホメオパシーの効果の科学的検証は、数多くの研究論文で報告されています。
Q:ホメオパシー薬(レメディ)は、なぜ、薄めた方がよく効くのですか?
A:レメディの原料を薄めるという作業をする度に、振とうを加えるという、レメディを活性化する過程にポイントがあると考えられています。
Q:ホメオパシーは安全ですか?
A:レメディそのものは安全といえますが、その使い方によっては危険な状況にもなり得ます。
Q:レメディによる副作用はないのですか?
A:西洋医学的な意味での副作用はないといえます。しかし、割合は低いものの、レメディが本来持っている病気や症状の像を引き起こしてしまう、つまりプルービングという現象が起きることもあり、危険な場合もあります。
Q:レメディは、西洋医学の薬や漢方の薬と一緒に服用できますか?
A:できます。レメディには、何かを抑える働きは確認されていません。むしろ、現在服用している薬を急に中止することはたいへん危険です。薬の服用を中止 するのは、ホメオパシーにかかわりなく、あくまで医学的見地にもとづいて中止できる状況になったときに、中止して下さい。量を減らすときも同様です。
Q:一度アグラベーション(悪化)が起きないと良くならないのですか?
A:そんなことは決してありません。アグラベーション(悪化)を起こしたのち、回復へ向かう過程をたどるのは全体の10%程度に過ぎません。レメディを服用して、症状や状態が悪化したら(アグラベーションを起こしたら)、ただちにレメディの服用を中止して下さい。アグラベーション(悪化)を起こしたのちに 回復へ向かっているのか、あるいは単なる悪化なのか、という判断は、非常に高度な医学的判断が必要です。
Q:レメディは、どこで買えますか?
A:現在、日本においてレメディは薬として認可されていませんので、薬局で薬として販売・購入することができません。当クリニックでは必要と判断された方には、服用するレメディを指定して購入をおすすめする形をとる予定です。
当院では、ホメオパシーによる治療について説明し、治療を同意していただいた方に、ホメオパシーによる治療を行っていきます。