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きょうの社説 2011年8月25日
◎学生ボランティア 息長く参加しやすい環境を
石川県内の大学で、東日本大震災の被災地へ赴く学生ボランティアを支援する動きが広
がり、夏休み中の学生たちの活動を後押ししている。若者たちは現地で復旧、復興活動に貢献するとともに、本人にとっても社会性や自主性を成長させる貴重な経験を積むことになる。今後も息の長い被災地への支援態勢が必要であり、大学側や行政、ボランティアの関係機関は被災地での支援活動に参加しやすい環境を整えて、志のある若者たちを支えてもらいたい。県内大学の支援では、金沢学院大が県ユネスコ協会の被災地派遣プロジェクトに大型バ ス1台を提供し、同大と金大、金沢美大、金城大の学生ら計29人が宮城県に向かった。金大では6月に設置されたサポートステーションがボランティアの情報提供や講習会の開催などに当たっている。夏休み後も学生がボランティアに関心を持ち、初心者も参加できるようにきめ細かい情報提供などを続けて、学生たちの継続的な支援につなげてほしい。 大震災発生から5カ月半が経過し、被災地のボランティアの重点は、がれき撤去などの 肉体作業から高齢者や子どものケアなどの生活支援に移りつつある。仮設住宅の高齢者の孤立化を防ぐ「見守り」や買い物の手伝い、被災者の悩みや不安を聞く活動などが行われている。中高生を対象にした大学生による学習支援もある。 能登半島地震の際も、学生ボランティアの足湯の提供や児童への人形劇披露などで被災 者の心を癒やす取り組みが行われており、これらの活動は今後の参考になるだろう。今回の大震災でも金大生らのグループが足湯活動を通して被災者らの心身のケアに努めている。活動の形態やニーズはさまざまだが、被災者に寄り添った若者たちの活動に期待したい。 災害ボランティアには学生をはじめ幅広い層が参加しており、現地での体験が災害への 備えについてあらためて考えるきっかけになっている。参加した教訓をもとにして、防災訓練を行った小松市の町内会もあった。被災地での経験を地域の防災力向上につなげる積極的な取り組みも求められる。
◎カダフィ政権崩壊 「建国」の道は険しくとも
リビアのカダフィ独裁政権が事実上崩壊した。首都トリポリの政権本拠地を追われたカ
ダフィ大佐は、潜伏先でなお徹底抗戦を叫んでいるが、反体制派「国民評議会」は首都を制圧し、「政権移行が直ちに始まる」と表明した。リビア国民の「和解と結束の精神」で民主的な新政権づくりが進むことが望まれる。欧米主要国は既に、国民評議会を新たな正統政府として承認している。ただ、寄せ集め と言われる国民評議会の実態と統治能力は不確かであり、リビアの前途はたいへん険しい。 国家建設の根底を支えるものは、そこに住む人たちの国家・国民意識である。ところが 、リビアの人たちはもともと、部族への帰属意識が強く、「リビア国民」という意識は薄いといわれる。部族的な結束が重視される上に、憲法もまっとうな議会もない独裁政治が40年以上も続いてきた。 国民の民主化要求で一足早く政変が起きたチュニジア、エジプトも独裁政治ではあった が、憲法と議会は一応、設けられていた。リビアはそうした民主的な国家統治の経験も土壌もないところから国づくりを進めなければならない。国家の再建というより、一からの建国といった方がよく、その困難さは想像に難くない。 また、カダフィ政権打倒の戦いは、反体制側の東部と政府側の西部の対立という図式に もなっていた。東部、西部、南部という区分けは歴史的なものであり、地域の融和、信頼関係の構築も難しい課題である。それでも衛星テレビを視聴し、ツイッターやフェイスブックという新たな情報通信手段でつながる若者世代が増えている。民主化の担い手は確実に育っているのであり、「アラブの春」が挫折しないよう、国際社会も支援しなければならない。 空爆で国民評議会を支えた欧米は財政難と金融危機に見舞われているが、新生イラクの 支援は責務である。日本もその準備を進めたい。カダフィ後に「権力の空白」による混沌が続き、テロの温床にもなるといった事態は何としても避けねばならない。
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