(cache) 【梶浦由記,FictionJunction】2011/6/29 「やりたいことを素直にできた」アルバム『FICTION II』を引っ提げた待望のソロライブ! 「Yuki Kajiura LIVE vol.#7“FICTION”」ライブレポート! – OH

ライブレポート
梶浦由記,FictionJunction2011/6/29

「やりたいことを素直にできた」アルバム『FICTION II』を引っ提げた待望のソロライブ!
「Yuki Kajiura LIVE vol.#7“FICTION”」ライブレポート!

8月24日 18:00 更新

アニメ、ゲーム、映画といった様々なジャンルのBGM制作をはじめ、See-Saw(現在活動休止中)でのアーティスト活動やヴォーカルユニット・Kalafinaへの楽曲提供を数多く手掛ける一方、自身のソロユニット・FictionJunctionでも活躍するマルチコンポーザー・梶浦由記。
幻想的、かつ前衛的なサウンドで多くの音楽フリークを魅了し続ける彼女が、6月29日、「Yuki Kajiura LIVE vol.#7“FICTION”」(東京・NHKホール)を開催した。
前回の「FictionJunction/Yuki Kajiura LIVE vol.#6 at JCB HALL」以来、ほぼ1年ぶりとなる今回のライブは、そのタイトルからもうかがえるように、3月30日にリリースされた2ndソロアルバム『FICTION II』を引っ提げての公演となる。
「今回のライブはアルバム『FICTION II』の曲を演奏することがコンセプトです」
最後のリハーサル直後のインタビューにおいてそう言い切った彼女は、今夜どんなステージを繰り広げるのだろうか。
 

 
■異次元空間に導く梶浦ワールド全開のオープニング!

幻想的なSEが会場にこだまする中、梶浦由記をはじめとするミュージシャンたちが遺跡を思わせるセットが組み上げられたステージに登場した。
NHKホールが大きな拍手に包まれ、ライブへの期待感が最高潮に達したところで、佐藤強一による力強いアタックのドラムと、今野均のニューエイジな香り漂うヴァイオリンの旋律が異空間なイメージを醸し出す『lotus』で、ライブの幕が上がった。
そしてステージ中央に4人の歌姫・KAORI、KEIKO、WAKANA、YURIKO KAIDAが登場。黒を基調とした、シックな衣装に身を包んだ彼女たちは美しいハーモニーで梶浦語(梶浦由記が考案した造語)によるヴォーカルを披露する。
そこに思い切り歪ませた是永巧一の鋭いギターと、どこかトライバルなグルーヴを感じさせる高橋”Jr.”知治のベースが合流。ダウンビートな楽曲に、じわじわと熱気を込めていく。

そんな音の奔流の中心で、梶浦由記は体を躍らせつつ鍵盤を叩く。
あらゆるサウンドが混然一体となった迫力のステージングにより、オーディエンスがすっかり異次元空間に引きこまれたところで、激しいハイハットとともに『E.G.O』がスタート。
デジタル・サウンドとダンサブルなビートに乗せて、幾重にも重ねられたシンフォニックなヴォーカルと哀愁漂うシンセの鮮やかなコラボレーションに、『lotus』では着席したままその不可思議な世界観に身をゆだねていた観客も、いつしか総立ちで盛り上がっていた。

■新曲中心に展開するライブ序盤

「皆さん、お久しぶりです。今日、ここに集ってくださったことを感謝しております」
1年ぶりのソロライブということで、まずは深々と一礼した梶浦は、
「このライブは日本語曲の割合が非常に少なく、また不思議な造語でできた曲もあります。何だか意味が分からない歌詞だなと思ったら、解析を諦めてゆっくり音楽を聴いていただけたらと思います」
とライブの楽しみ方をコミカルにレクチャーする。音のマジシャン・梶浦由記のコメントにほっと一息ついたところでライブは再開。
まずはスポットライトの中で歌うKEIKOの低くハスキーな英語詞ヴォーカルと、梶浦の奏でるピアノによる静謐なオープニングが印象的なミディアム・バラード『I swear』だ。
リフレインするメインフレーズを支えるように、歌姫たちが透き通ったコーラスを重ねていく。まるでゴスペルソングを思わせる一体感に、会場が感動的な空気に包まれたかと思うと、『jubilee』で悠久の時の流れを、自由自在にサウンドで描き出す。
続いてフォーキーなリズムが郷愁を感じさせる『March』では、ゲストのフルート奏者・赤木りえが登場。
深みのあるヴォーカルを聴かせるKAORIとまるでデュエットするように、表情豊かなフルートを奏でた彼女は、続く『blue clouds』(アニメ『ツバサ・クロニクル』より)では梶浦のピアノと華麗なセッションを披露した。
「自分が初めて書いたインスト曲でフルートを吹いてもらって以来の付き合い」とMCで梶浦は語ったが、そんな長年の信頼感が生み出す穏やかなメロディに、観客もうっとりと耳を傾けた。

■ゲストを迎えて、『まどか』『ゼノサーガ』など人気サントラを演奏!

ついに最強のバンドメンバーが勢ぞろい。
これを受けて、ステージに無数の魔法陣がクルクルと回る中、劇中の魔法少女たちの宿命のように儚げなフルートの旋律を気品あるチェンバロと歌姫のコーラスが美しく彩る、アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』のBGM『Sis puella magica!』、そしてアルバム『FICTION II』にてCD初収録となった『my long forgotten cloistered sleep (unreleased work of Xenosaga)』の勇壮なスネアロール。そしてドラマティックな世界観が広がる『forest』(アニメ『エル・カザド』より)が、ホールの空気をグッと引きしめた。
高まった緊張感を解放するように、ここで再び『魔法少女まどか☆マギカ』より『Credens justitiam』が披露された。
ラテン語で「正義を信じる者」という意味の同曲は、人気キャラ・巴マミの変身シーンなどで使用されたBGMである。多幸感に満ちたコーラスワークと、小鳥が歌うようなフルートがマミの持つ純粋さを描くように共鳴。
多彩な表情を見せるフルートという楽器の可能性をリスナーに示した赤木は、観客による盛大な拍手に見送られ、ここで退場した。

■燃え曲あり、バラードありのFictionJunctionコーナー

続いてはFictionJunction曲のコーナーだ。
まずは、このステージにも出演している4人のヴォーカリストをフィーチャーした新曲『eternal blue』が、PSP用ゲーム『戦律のストラタス』の主題歌に起用されることが梶浦から発表され、そのフルバージョンがライブで初披露された。
最初から最後までクライマックス、とでも言うべき闘志を感じる熱いトラックに、会場のテンションは急上昇。
この盛り上がりを維持したまま、屈指の人気を誇るアッパー・チューン『時の向こう 幻の空』(アニメ『おおかみかくし』OP)に突入。
勇ましくも美しい梶浦サウンドのオンパレードに、フロアからも激しい声援が上がり始めた。会場の盛り上がりを受けて、歌姫たちも縦ノリのビートに身を躍らせ拳を高く掲げる。
彼女たちと一緒にオーディエンスも腕をステージに伸ばし、大きな一体感がNHKホールを満たした。
そんな熱狂のステージから一転、ヴァイオリンの切ないメロディが胸に響くバラードナンバー『花守の丘』(OVA『真救世主伝説 北斗の拳 トキ伝』主題歌)を、KAORIが熱唱。
伸びやかなヴォーカルを、歌姫たちが繊細なコーラスワークで支える感動の一曲に、誰もがじっと聴き入った。
そして全7部作の劇場版『空の境界』サウンドトラックをメドレー形式に再構成した『in the garden of sinners~from paradigm』では、Kalafinaとして主題歌も担当したKEIKOとWAKANAがコーラスを先導する。楽曲後半では、攻撃的なバンド演奏に負けじとYURIKO KAIDAが高音ヴォーカルを披露。激しさと美しさが表裏一体となったサウンドが会場を呑み込んだ。

■感動の演出に誰もが涙したクライマックス!

ライブもいよいよ終盤に突入。
ここで、「Yuki Kajiura LIVE」では恒例のバンドメンバー&歌姫へのアンケートが行われた。
今回のテーマは「NHKホール」でのライブ、ということで「何だか(N)ほっとする(H)こと(K)」がお題。
個性的な回答を繰り広げるメンバーと、ウィットに富んだツッコミを入れていく梶浦由記に、思わず笑顔に包まれるNHKホール。まるで梶浦のプライベートスタジオに紛れこんだかのようなアットホームな空気がフロアに広がっていく。
そんなMCを経て、北欧の少数民族サーミ人の歌唱法・ヨイクを操るシンガーのヨハン・サラ・ジュニアをフィーチャーした雄大なナンバー『heigen』で大きな感動を会場にもたらした梶浦は、今度は『the image theme of Xenosaga II』を演奏。

高揚感を煽るバンドサウンドと畳みかけるような梶浦語のコーラスがグイグイと楽曲を引っ張っていく一方、ステージ上のモニターにはビートに合わせて刻々と切り替わる万華鏡のような映像が流される。
視覚と聴覚を刺激されたオーディエンスは再び総立ち。会場が一体となってラストスパートをかけ始めた。

ライブ本編のクライマックスに彼らが演奏したのは、「珍しく明るい曲」と梶浦自身が冗談めかして解説した『I reach for the sun』(アニメ『エル・カザド』第26話挿入歌)。ポジティブなメッセージとメロディを16ビートで表現する同曲がスタートすると、いつしかフロアからは息の合った手拍子が始まり、ピースフルな一体感がステージ上と観客席を繋いでいく。
「皆さんに素敵な明日が訪れますように」
梶浦のストレートな、だが心からのメッセージとともにフィナーレを飾ったのは、人生の無常とそれでも生きようとする人の強さを切々と歌い上げる、感動のバラード『maybe tomorrow (Xenosaga III ending theme)』(PS2用ゲーム『ゼノサーガ エピソードIII[ツァラトゥストラはかく語りき]』ED)だ。
全英語詞の同曲だが、ステージ上のスクリーンには歌姫たちの歌に合わせて対訳を表示。
愚かしくも愛おしい人間の全てを包み込むような感動的な歌詞に、思わず涙を見せる観客もちらほら。
最後は万感の思いを込めるように、梶浦はピアノソロを披露。盛大な拍手が会場にこだました。

■新曲『stone cold』では梶浦も歌い、踊る!

『maybe tomorrow』の感動の余韻から覚めやらぬ観客たちは、もう少しだけこの夢のような時間を味わいたい、とばかりにアンコールを敢行。
熱烈な手拍子と歓声に応えて、まずは現在放送中のアニメ『セイクリッドセブン』OPテーマに起用されたFictionJunctionの最新ナンバー『stone cold』のPVが上映され、引き続き今一度ステージに集った梶浦由記ほか出演者による生演奏がスタートした。
ここでは、なんと4人の歌姫のみならず梶浦もキーボードの前に着席したまま、ヴォーカルに参加。
ステージにズラリと並んだ4人のヴォーカリストと梶浦は、デジタルビートと是永巧一のソリッドなギターが疾走する中、息の合った華麗な振り付けと厚みのあるコーラスワークを会場に響かせる。
そしてニューエイジ風味の浮遊感あふれるヴァイオリンと攻撃的なバンドサウンドが炸裂する人気ナンバー『zodiacal sign』(アニメ『アクエリアンエイジ』より)では、スクリーンに怒涛の如く押し寄せる梶浦語が次々と表示されていく。

異世界を思わせる歌を熱唱しながら歌姫たち。KAORIが「みんな、一緒に!」と会場を煽ると、最後は観客も一緒になって呪術的な振り付けを行うのだった。
そしてグランドフィナーレは情熱的なFictionJunctionの1stシングル『Parallel Hearts』(アニメ『PandoraHearts』OP)。
そして
「私たちが愛する歌というものへの思いを込めて」
という梶浦のMCを受けてスタートした『Sweet Song (Xenosaga II ending theme)』(PS2用ゲーム『ゼノサーガ エピソードII[善悪の彼岸]』ED)が、最後にオーディエンスの感動を誘った。
『maybe tomorrow』同様に英語詞の対訳がスクリーンに表示され、楽曲のイメージをさらに膨らませる美しい映像とともに奏でられる叙情的なバラードに、会場からは割れんばかりの拍手がいつまでも鳴り響き続けた。

記事冒頭でも述べたように、
「今回のライブはアルバム『FICTION II』の曲を演奏することがコンセプトです」
と語った梶浦は、『あにみゅ!2011年春号』でのインタビューにおいて、同アルバムについて「自分のやりたいことが素直に出てきた」とコメントしていた。
つまり、今回のライブは「梶浦由記がやりたいサウンド」を、純粋に追求したライブだったと言えるのではないだろうか。
そしてそのライブは、梶浦の音楽を愛するファンにとってかけがえのない幸福な時間となったことは、フロアにあふれる笑顔を見れば明らかだ。
「Yuki Kajiura LIVE vol.#8」ではどんなステージを見せてくれるのか。
早くもそんな期待を抱いだいてしまう、充実のライブであった。

(文中敬称略)(有田シュン、OH編集部)

『あにみゅ!2011年夏号』では梶浦本人による本ライブのセルフレビューを掲載!

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「Yuki Kajiura LIVE vol.#7“FICTION”」 in NHKホール(6/29)
曲順 曲名 iTunes mora win
1 lotus lotus - FICTION II mora win
2 E.G.O. E.G.O. - FICTION II mora win
3 I swear I swear - FICTION II mora win
4 jubilee ─── ────
5 March March - FICTION II mora win
6 blue clouds ─── ────
7 Sis puella magica! ─── mora win
8 my long forgotten cloistered sleep my long forgotten cloistered sleep (unreleased work of Xenosaga) - FICTION II mora win
9 forest forest - FICTION II mora win
10 Credens justitiam ─── mora win
11 eternal blue ─── ────
12 時の向こう 幻の空 時の向こう 幻の空 - TBSアニメーション 「おおかみかくし」 オープニングテーマ 『時の向こう 幻の空』 - Single mora win
13 花守の丘 ─── ────
14 in the garden of sinners~from paradigm ─── ────
15 heigen heigen - FICTION II mora win
16 the image theme of Xenosaga II the image theme of Xenosaga II - FICTION II mora win
17 I reach for the sun I reach for the sun - FICTION II mora win
18 maybe tomorrow maybe tomorrow (Xenosaga III ending theme) - FICTION II mora win
EN1 into~stone cold ─── mora win
EN2 zodiacal sign ─── ────
EN3 Parallel Hearts Parallel Hearts - TBS系アニメーション PandoraHearts オープニングテーマ Parallel Hearts - EP mora win
EN4 Sweet Song Sweet Song(Xenosaga II ending theme) - FICTION II mora win

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