ブータンは大国インドと中国に挟まれたヒマラヤ山麓の人口70万人足らずの小さな王国です。敬虔な仏教徒、文化の保存、自然の保護、鎖国主義、国民総幸福量(Gross National Happiness:GNH)、タバコの禁止、流暢な英語、民族衣装着用の義務化、教育/医療の無料化、「世界一辛い」料理など、世界でも非常にユニークな国家です。
ブータンとJICAの関係は、1964年に西岡京治専門家を派遣して以来の長い歴史があります。その間に派遣された多くのJICA関係者、特にボランティアの献身的な活動が高く評価され、JICAの知名度や評判は非常に浸透しています。最初の青年海外協力隊員が派遣されて20年目にあたる2008年、ブータン政府とともにこの節目の式典を12月20日に開催しました。
ブータンはGNHを追求、達成するため、種々の事業を実施していますが、その本質は全ての国民が等しく幸せを享受できることにあります。人間生活の営みに必要な環境を整えるため、特に村落住民の生活向上に資する農道建設をまず最優先、その後に電化、そして教育や医療へのアクセス改善が続きます。JICAはそれらの達成を支援するための事業を集中的に実施しています。ブータン政府が定める国家計画に沿って、農業、インフラ、社会(医療/教育/職業訓練)、地方行政の4分野に力を注いでいます。
ブータンにおけるJICAの事業は、2009年1月現在、7件の技術協力プロジェクト(農業開発、農業機械化、地方行政、国営放送、地方電化、感染症対策、職業訓練)、1件の有償資金協力事業(地方電化)、5件の無償資金協力事業(貧困農民支援〈2KR〉2件、学校建設、橋梁建設、国営放送機材)、と、小さな国にしてはかなりの協力を実施中もしくは予定しています。
またボランティア事業では、1987年に協力隊派遣にかかる交換公文が署名され、1988年に最初の隊員(JOCV)が派遣されて以来これまでに計300人、2001年にシニア海外ボランティア(SV)が派遣されて以来計100人、国内各地でブータン国民と共に汗を流し、優れた成果を得るとともに、両国の友好の橋渡しに大きな貢献をしています。
事業を進める中で、他の国と絶対的に違うところがあります。それは、日本やJICA、JOCVの名が全国にとどろいていて、非常に前向きにJICA関係者を受け入れてくれることです。協議でも非常に真摯に対応し、揉めるなどということはまず存在しません。日本や日本人をほめ称え、常に思いやりの言葉があります。治安にいささかの問題もありません。気持ちよく仕事ができる国です。
近年はブータンの人気が高まり、日本人観光客は年間2千人を超えました。数年前から倍増です。今のブータンには50年以上昔の日本を思い出させる郷愁があります。ブータンを訪れた日本人は間違いなくブータンファンになります。多くの方々に、ブータンをもっと知っていただきたいと願っています。
JICAブータン駐在員事務所
仁田 知樹