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[29345] 【完結】俺が拾った家出少女がフェイトなわけが無い
Name: スマフォ欲しい◆be57115b ID:caa5b97b
Date: 2011/08/24 02:45
※多すぎて返信できませんが、感想はありがたくよまさせていただいています。
 っていうかこんな大量にいただけるとは想定外でした。
 
こんなタイトルだけどシリアスっぽい流れの練習です。
以下ちょっとだけ前説明

テーマ
【シリアス】【ダーク】【なるべくリアル】【タイトル詐欺】【原作ブレイク】

っていうか最早家出じゃねぇ、家出してねぇし。
おかしいな、主人公がフェイトを拾う話だったはずなのにいつの間にか……

主人公
・転生者、原作知識アリ
・魔法無し、気無し、レアスキル無しの3無し
・「俺みたいな一般人が原作ブレイクできるわけが無い」と思っていた。
・口癖「ヤバイ」「クソが」 等基本的に口が悪い
・ヤバイヤバイ言うけど本当にヤバイ

世界観
・リリカルなのは 地球
・なんか転生者が他にも居るっぽい
・転生者の影響で原作ブレイク 

指先次第なので、突然更新しなくなるかもしれません。
すみません。


感想でご指摘があったので追記。
・ブレイク方面がリアルにブレイクするので原作キャラでも容赦なく死にます。
・普通に大怪我とかするので生々しいというかグロ判定になるかもしれません。

更新履歴的なもの
8/18 感想で指摘があったりした点をちょこちょこ修正
    03話うp
    04話うp
    感想で指摘のあった誤字を修正。
    05話うp
    引越し!引越し!
    06話うp本編完了

8/23 解編をうp
    うpしたはいいが指摘があったのと自分でも正直なんだかなぁと思ったので改定
    書けば書くほどチープになるので一旦終了。

 
はやて「うち死んでしまうん?」
フェイト「大丈夫だよ、無印編で完結だから」
はやて「フォローになってない件」



[29345] 01
Name: スマフォ欲しい◆be57115b ID:caa5b97b
Date: 2011/08/18 01:07
神なんて居なかった。
二度目の人生を送る事になった俺だけど、結局神になんて会わなかったし。
居ないんじゃないかな。

いや、俺は会った事無いだけで居るかもしれない。
最近そう思った。




俺こと山近カズフサはその日、急に飲みたくなったペプシを買うべく月村の屋敷を抜け出してコンビニに向かっていた。
チャリで行こうかとも思ったがそんな距離でも無いし、普通に徒歩で。
ちなみに別に俺は月村家のお嬢様方の恋人とかじゃなくて、敷地内に小さい離れみたいな家があって、そこに住んでいるのだ。
理由は単純で、俺も夜の一族の関係者だから。
つっても異能とかがあるわけでも、ついでに言うなら魔力や気や超能力やレアスキルがある訳でもなく。
山近家は夜の一族でも下っ端の方の薬剤師の一族なのだ。
仕事は薬草とか調合して漢方っぽいのを作ったり。
吸血衝動を抑えたりする丸薬やちょっとした傷薬を作ったりして、それを夜の一族に卸していた。
まぁ、俺以外は色々抗争に巻き込まれて死んじゃったんだが。

しかも、忍お嬢が化学薬品系でウチの一族の秘伝の薬剤より効果があって副作用の無い薬をばんばん開発したお陰で、仕事が殆ど無い。
なんというか一族の抗争に巻き込まれて天涯孤独になった俺を助けてくれているというか、そんな感じである。
一応代々受け継いできた調合法を次世代に残すとか文化保存みたいな建前があるが、山近家は夜の一族の薬剤師系の家系でも下っ端もいい所なので、ぶっちゃけ大した秘薬の調合方法なんてないわけで。
今じゃ健康グッズの出来損ないを月村家に卸して贅沢しなければギリギリ生きていけるくらいのお金を貰っている、そんな存在が俺である。

21歳高卒。
まぁ、ここ数年はお嬢の想い人である高町家の坊ちゃんにいかにアプローチするか相談に乗るってのが月村本宅に呼び出される唯一の用件であるあたり、俺の重要度の低さが解るだろう。

で、俺の身の上話はこの辺にしてペプシを買いに来た俺の話に戻るのだけれど。


「やべぇ、眼があっちゃったんですけど?」


今なんか凄い見ちゃいけないものを見た気がする。
いや気のせいだろ。
こんな場所に居るわけねー。

眼をゴシゴシと擦りもう一度見てみる。


「……どう見ても本人な件」


コンビニとその横のビルとの間、ペットボトル専用ゴミ箱の後ろにそれは居た。
痩せ型だとは思っていたがそんなのはとっくに通り越してげっそりとやつれており、遠めから見ても泥やらなんやらで汚れており、髪の毛もうねって酷いことに成っている。

そう、なんか今にも死にそうな人が近所のコンビニの横にあるビルとビルの隙間に居るのだ。
しかもなんか見覚えのある子が。



「いやいやいやいやいや、ないないないないない。ありえねーって。ありえねーですよ。いやホント意味わかんね」


浮浪児とかリアルで初めてみた。
っていうかマジなんで此処に居んのこの子。

赤い瞳に金の髪。
特徴的っちゃ特徴的だが、会った事も無いこの子の名前が俺にはわかる。


「フェイトさん何してはるんですか……………」


だってここは、リリカルでマジカルな世界なんだから。






「いやもう何なの。まさかヒーロー君やっちゃった?」


フェイトをスルーして店内に入り、ペプシの他にクリームパンと紅茶を買いながらこうなった原因を俺は考えていた。
俺の年は21で確かすずかお嬢が今小学校低学年。
今は初夏、そういやこの前駅前に巨大な樹木が突然生えて消えたとか事件があったな。
リリカルでマジカルが始まります、そんな時期だ。
しかし魔法関係どころか一般人を超える要素が前世の記憶持ちしか無い俺には全く関係ない事である。
そして前世知識チートは21歳じゃ最早役に立たない。
まぁ、小中高と成績だけはそこそこよかったが。
別にトップクラスってワケじゃなかったあたり、ホント凡人である。
そもそもなのはお嬢とは2~3回しか会った事が無いし、いくらバタフライ効果でも俺は関係無いだろう。
となると、多分ヒーロー君辺りが原因なんじゃないかと思う。

ヒーロー君とは、すずかお嬢が友達を集めて屋敷の庭でティーパーティーをする時に連れてきた、唯一の男子同級生の事だ。
紅月と名乗ったその少年は髪の色こそ俺と同じ黒だが、イケメンであり名前の通り眼がちょっと赤い。
しかも剣術の修行中とかで高町道場に通う唯一の高町の姓を持たない存在とのこと。
修行フラグとか怖いわ。
瞬動とか抜刀術とか普通に使いそう。
ついでに言うならジュエルシードが落ちてくる前からこれ見よがしに首元に待機状態のデバイスをぶら下げている、解りやすいオリ主だった。
んでもって更に言うなら恐らく原作知識持ち。
何せ俺がたまたま忍お嬢に呼ばれてバッタリお茶会で会った時にメッチャ睨まれたからなぁ。
まぁ名乗って代々月村家の屋敷にある植木とか植物の管理してるっていう一般向けの説明したら納得してくれたけど。
どうせ俺の事は原作には登場しないモブだとでも思ったんだろう。
ヘタに絡まれても何も出来ないから正直助かった。

実はそれが本宅の屋敷に俺があまり近寄らない理由でもあったりするのだが。
多分彼の事だ、なのはお嬢に協力してジュエルシード探しでもしてたんだろう。

で、何かが拗れてフェイトが月村家の近所のコンビニのゴミ箱の裏で餓死しそうな顔して通りを眺めていて、俺と眼が合ったわけだ。

ねーよ。
ホント何があったし。

とりあえずペプシをコンビニの前でぐびぐびと飲みながらそんな事を考えていたが、ついに最後まで飲んでしまったのでゴミ箱に放り込む。
ガラン、という音と共に僅かに布が摺れるような音がした。
まだ居るか、フェイトよ。
帰れよ、アルフはどうした。
ったく、ほっとけないが俺に出来ることは殆ど無いぞ。

「あー……買いすぎちまったなー……今さら返品できないしなー……勿体無いけどここに捨てるかー……ノラネコ辺りが食べるだろ」

そうわざわざフェイトに聞こえるように言って俺はクリームパンと紅茶が入ったビニール袋をゆっくりとボミ箱の向こう側、つまりフェイトが居る方に下ろす。
目線は通りに向けたままで。
あれだ、眼があったら野良猫みたいに絶対逃げると思ったから。

後はまぁ、頑張れ。
悪いが俺に出来るのはここまでだ。

何かうめき声のような今にも消え去りそうな声が聞こえたが、俺は無視して月村の屋敷に帰った。





―――――翌日、深夜。



「なんでまだ居るし」

まだなのかまたなのかは不明だが、気になって今日も一応コンビニに来て見たんだが、何故かフェイトがゴミ箱の後ろからちょっとだけ顔を覗かせていた。
ワケわからん。
つーか帰れよ。
いくら小食設定でもあの量じゃ足りねぇだろ。

とりあえずサンドイッチと菓子パンとお茶を数本購入し、昨日と同じセリフを言ってゴミ箱の後ろに下ろし、さっさと帰った。
かすれたような声が聞こえたが、無視した。



―――――翌日、深夜。


「お前ホントいい加減にしろよ」

二度ある事は三度あった。
何やってんのお前。
理不尽な怒りすら感じた。
リリカルなのはのフェイト・テスタロッサでは無く、1人の家出少女に対して。
隠れ家でも時の庭園でもいいから帰ってシャワー浴びてメシ食って布団で寝ろ。
死にそうな顔でこっち見んな、クソが。
流石にいたたまれなくなってほっとけねーだろうが。
つーかコイツ俺が食い物上げなかったら今頃もう餓死してんじゃねーの?
何なの?ヒーロー君仕事しろ。
でも行き成り親しくないのに金髪の浮浪児の話すんのもな……匿名で手紙でも出すか?
いやでもなぁ……実際彼がどういうスタンスかも知らないしなぁ……
偽りの命は土に返れみたいな思考回路だったらヘタしたらフェイト殺されんじゃね?
そうじゃなけりゃ浮浪児化してる理由がわからん。
もうホント解らん。
知るかもう、とりあえず保護方向で話聞いてみるか。

俺はここ2日と同じように飲み干したペプシそゴミ箱に捨てると、コンビニで買ったメモ帳にカリカリと伝言を書いて千切り、パンが入ったビニール袋に入れてゴミ箱の後ろに投下して立ち去った。
立ち去る際にまたかすれたような声が聞こえたが、もしかしれあれは「ありがとう」と言っているのだろうか。
聞き取れない以上どうしようもない。
俺は夜の街を1時間ほどフラフラした後にコンビニの前に戻ってきた。

ゴミ箱の上にペットボトルのキャップが一つ置いてある事を確認し、その横を通ってビルの隙間に入ってゆく。

メモにはこう書いてあった。

【帰る家が無いなら寝る場所くらいなら貸すけど、ついて来るなら目の前の箱にペットボトルのフタを乗せておくように】



そういや日本語読めるんだな……アニメでもなのはと会話成立してたし。
ミッド語知らんし通じなかったらどうしようかと後になってヒヤリとしたぜ。




[29345] 02
Name: スマフォ欲しい◆be57115b ID:caa5b97b
Date: 2011/08/18 04:31
前書き。

アルフは犠牲となったのだ……転生者の犠牲にな……

前書きおわり。


臭い。

全国のファンに怒られそうだが、俺がフェイトに近づいて最初に抱いた感想である。
数日風呂に入っていないとか以前に、海にでも落ちたのか海水や何かが腐ったような匂いなど、兎に角彼女は臭かった。
なんかもうホンキでわからん、何があったし。

「……………………」

「……………………」


お互い、無言。
俺の方はまず何て話しかけるかわからず、それは向こうも同じようだった。
つーか、眼が死にすぎんだんだけど。
何なの、何でそんなレイプ眼なの。
地面にぺたりと座り込んだままこっちを見上げる眼が怖すぎるんですけど。
プレシアさんにクローンがどうとか酷い事言われたんだろうか。
ちょっとしたホラーなんだけど。
あと臭いんですけど。


「…………えーと……パンは食ったのか?」

コクリ

「……立てるか?」

フルフル

どんだけ衰弱してんのアンタ。
参ったな、夜に少女抱えて長距離歩くなんて嫌だぞ。
職務質問的な意味で。


「あー……何だ。車っつーか……乗り物とってくるわ。待ってる気があるなら此処に居な」


一旦屋敷に戻り、白い軽トラの助手席にありったけのバスタオルを放り込んでコンビニの前に戻る。
割と大きな通りに面しているものの、日付はとっくに変わっているので交通量も少なく、気にせず路肩に止める。
フェイトは、まだそこに居た。
意識を失って。
仕方が無いので所謂お姫様抱っこで運ぼうとした時、気付いた。
汚れきって匂いも酷かった上に薄暗くて解らなかったが、コイツ怪我してやがる。
触った瞬間パリパリと何かが崩れるような感触があったのは、間違いなく血糊だろう。
なるべく慎重に持ち上げたが、腕の中で痛みに苦しんで呼吸が荒くなる。
顔色も最悪だし、体温も妙に低い。
なんとかタオルを敷いた助手席に乗せるが、後ろに荷台がある構造上、背もたれが殆ど倒せない。
慎重に運転しないと足元に転げ落ちてしまいそうだ。


「……う……うぅっ……ぁ……?」

「おい?!気付いたか?もう直ぐ手当てしてやるから、頼むから大人しくしててくれよ」


シートベルトをゆっくりと付け、運転席に戻ってキーを捻った瞬間、フェイトが眼を覚ました。
いや、覚ましたと言えるのだろうか。
目線は定まらず、ただ人形が瞼を開いただけのようにも見えた。


「ぁ…るぅ……」

「ん?何だって?」


フェイトの口から出る音の意味が解らず、俺は助手席に身を乗り出して音を拾おうとした。


「ぁ……るふぅ……」

「アルフ?アルフがどうかしたのか?名前か?」

「……奥に…………い……っしょ……」

「おい!眼を閉じるな!……クソがっ!」


『アルフ』『奥に』『一緒』

それだけを呟いてフェイトはまた気を失った。
明らかにさっき運んだ時にヤバイくらい軽かったし、ヘタしたら命に関わるぞコイツ。
早く手当てを……ったく、アルフは何をやって…………



………待てよ?


「まさか、いや……ワリィ、スグ戻るわ」

再度キーを逆方向に捻ってエンジンを落とし、先ほどフェイトが居た場所まで戻る。
地面にぬちゃりとした感触、フェイトの血だろう。
そして、この違和感。


「やっぱりまだ全然クセェ……マジか、ホンキでヤバイぞこれ」


フェイトからする悪臭は当然フェイトが原因だと思っていた。
事実、彼女を抱えていた時、彼女の体からは異臭がした。

しかし、いくら血痕があるとはいえ、いくらフェイトが長時間ここに居たとはいえ………






何故ここは、こんなにも腐敗臭がする。





ビルとビルの間の細い通路を進む。
左右の壁には窓も無く、ドアも無い。
裏口がある訳でもない、たまたま設計上出来たデットスポットなのだろう。
進めば進む程、弱くなってゆく光とは逆に腐敗臭が強烈になってゆく。
思わず胸元に何時の間にか大量に出ていた汗を拭う。
粘着質でぬるぬるした、酷く不快な汗だった。

そして行き止まり。

暗くて見えないが、恐らく、すぐ、そこに、『ある』。

スライド式の携帯で明かりを確保すると、折りたたまれたダンボールがつまれていた。
高さは、俺のひざよし少し高いくらい。
広さは、『大人をすっぽり覆い隠せるくらい』。

周囲にはハエが飛び交い、そこに何があるか容易に想像させた。
何故フェイトはあんな場所に居た?
理由はたくさんあるだろう。
そんな事は俺にはわからない。

何故フェイトは1人で居た?
決まっている、何らかの理由でアルフが一緒に居ることが出来なかったからだ。

ならば……その理由とは?

その答えが、恐らくここにある。

靴の先でダンボールをどかしてゆく。
1枚……2枚……

3枚目の裏には大量の血の跡、その下にあるのはボロボロの布がかぶせてある何か。
ますます強くなる臭い。
鼻呼吸なんざとっくにやめてるが、それでもなお強烈に臭う死臭。

布の端を持ってめくるとそこには……


「ジーザス……くそ……何なんだ、この世界は……」


薄汚れながら通常ではもありえないと解るオレンジ色の毛並み。
明らかに攻撃を受けたと解る肉体の損傷。
所々焼け爛れて焦げており、腹からは内臓の一部が飛び出て腐り始めている。


見つけたのは、見つけてしまったのは、アルフの死体だった。




「最悪だ、クソ。マジでどうなってる?」


一旦トラックに戻るとバスタオルと一緒に放り込んでおいたシーツを手にアルフへ向かう。
バサリと上から3枚シーツを掛け、包み込むように持ち上げる。
ぬちゃりと指が食い込む感触が吐き気を催すほど気持ち悪い。

持ち上げたアルフの体からはぴちゃぴちゃと何かは解らないが液体が滴り、一層異臭を激しくしていた。
小走りでトラックに戻り、荷台へ。
運転席のドアを開けようとして気付く、自分の手と、胸から腹に掛けてが、べったりと血で汚れている事に。


「後でファブリーズかな……これ」

服は捨てよう。
そう決意して運転席に戻り、キーを捻る。
タオルで拭きはしたがハンドルを握る手が妙にぬめぬめとした感触を伝えてきて、気持ち悪い。
鼻なんざとっくに麻痺した。

こうして俺は、自宅である月村家の離れにフェイトを連れて帰ってきたのだった。

とりあえず生きている人間が優先なのでアルフはそのままに……つっても朝までに何とかしないと大騒ぎになるな。
とにかくフェイトを家に連れ込む。
俺が月村家から間借りしている家は、位置的には裏手の端にある塀沿いの内側にある。
裏手には林があり、そこを超えるとすずかお嬢がよく友達を招待してお茶を飲んでいる庭があると言えばわかるだろうか。
敷地面積は一軒家とほぼ同じくらいあるが、1階建て。
はしごを上ると屋根裏になるが、全く使っていない。
冬は寒く夏は暑く、物を補完するのにも向いていないからだ。
ちなみに薬の材料などは地下室にある。
まぁ、あんまり使っていないが。

一応簡単な手当てや点滴をする部屋があるので、そこに運び込んだ。
未だかつて使ったことの無い手術台にフェイトを乗せ、明かりを付けてお湯を用意する。
その間に俺は手洗いや着替えなどを済ませ、さて手当てをするかとよくよくフェイトを見て絶句した。



やばい、コイツ、本気で死に掛けてる。


明るい所まで連れてきてようやく気付いたが、服が焦げて血が滲んでいた。
場所は左腕から肩、胸にかけて……そして見えないが恐らく、背中も。
そうだ、アルフが死ぬ程の攻撃を受けたのだ、近くに居ただろうフェイトも、同じ攻撃を受けた可能性があるのは自明……!!

内線で屋敷に連絡し、出てくれたメイドのノエルにすぐ来るよう頼んで俺はフェイトの衣服をハサミで切り裂いた。
元々ボロボロだった上に血糊が酷すぎたし、どの道もう服としては使えない。


「……チッ……クソが……やったのはプレシアか?!」


皮膚が広い範囲で焼け爛れていた。
だがこれは火じゃない……電気だ……それも強力な。
恐らく雷撃系の魔法だろう。
フツーの科学的な電気でこれだけ人体を破損させる出力を人間に流したら、例え吸血鬼である忍お嬢だろうが一撃で死ねる。
そういう意味では魔法に対する抵抗力、デバイスが張ったであろうシールドに助けられたのだろう。

だが、広範囲で真皮までダメージを受けていたとしたら……
とっさにフェイトの手のひらのサイズを確認し、やけどの範囲を確認する。

手のひら13枚分……一般的に手のひらの面積は人体の1%……1割以上の皮膚が死んでいる計算になる。
ショック症状や多臓器不全……進行性壊死なんていう……死に一直線な要素がゴロゴロしてやがる。
まっとうな医療だったら皮膚移植をしないと……
管理世界の人間をか……?
怪我してるフェレットを動物病院に担ぎ込むんじゃねぇんだぞ。
後ろ暗い部分を持つ月村だからこそ、そんな怪しい人間のために本家に動いてもらう事が出来ない。
俺が例えば忍お嬢の兄弟だったりしたら話がまた別なんだが……
ようするに、コイツはここで何とかしないと……!!

酸素マスクを付けてやり、沸騰したお湯を生理食塩水で割ったぬるま湯で傷口の汚れを落としてゆく。
擦り傷なんてレベルじゃないため、消毒液も使えやしない。
出血自体は止まりかけていたのだろうが、ぬるま湯によってカサブタがはがれたのか徐々に血が流れ出した。
いや、少量なら出血はまだいいのだが……ねっとりとした、黄色い液体が染み出すようにそこかしこから出てきている。
体液が漏れ出してきている……まずい、広いだけじゃなくて深いぞ……!!



「お呼びでしょうか、カズフサ様……その子はッ?!」

「あぁいい所に来た!ノエルさん、この子の治療を!病院には連れていけない子なんだ!!」

「事情は……後でですね」

「見ての通りだ、ほっといたら……あと数時間で死ぬぞコイツ!!」

「お手伝いします……これは……酷い……病院が駄目では……『地下室』を使わせて頂いてよろしいですか?」

「あぁ、そのつもりだった。持ってってくれ!」

俺は自分の首からシャツの内側に提げていたチェーンを引っ張り出し、その先についていた鍵をノエルさんに投げ渡した。
地下室、そこは夜の一族に下ろす薬の材料や完成した薬、そして輸血用の血液などの保管所だ。

ダメージの少ない右腕を消毒し、点滴用の針を差し込む。
途中のチューブが枝分かれしているタイプを選択しており、栄養剤や抗生物質を点滴しながら太ももから採血。
試験管に血液を流しこんで血液型検査機にぶち込む。
結果が出るのは最短で2時間後……それまでは輸血も出来ない。

まずは外気に触れてしまっている傷口を保護し、かつ体液の漏れを防ぐ処置……つっても大それた事はどのみち無理か。
ワセリンのビンを取ってヘラで適量を取り出して皿に移す。
そこに炎症を止める薬、皮膚の再生力を高める薬、抗生物質を何種類かぶち込み、かき混ぜてゆく。
今作ってるのはぶっちゃけ現代医学の塊である。
夜の一族の薬?んなオカルト民間療法使えるか。
少なくとも俺はこんな緊急時に安心して使えるような秘薬は作れん。
つーかぶっちゃけノエルさんの方が詳しい。
自分の使えなさ加減に笑えてくる。

「用意できました。それは……そうですねそのままお願いします」

俺が薬を混ぜている間に戻ってきたノエルさんの手には、点滴用のパックが握られていた。
一見真っ赤で輸血パックに見えるが……恐らく増血剤を中心に俺の知らないレシピで作った秘薬の類だろう。
点滴のまだ使用していない枝分かれ部分に接続し、管の中を流れていた透明な液体に赤が混じり始める。

俺の方は綿で出来た布……というか大きめのガーゼに先ほどから混ぜていた薬を塗りたくり……所謂昔ながらの湿布を作っていた。

「悪いけど背中側の洗浄を頼めるかな、こっちはもうすぐ用意できるから」

「はい……なんて痛ましい……」

点滴の邪魔にならないようにフェイトの右腕を横にずらしてから、ノエルさんはフェイトを仰向けから右半身が下になるように体勢を変えた。
やはり、背中側も酷かったか。

「出来たのから張ってくれ……この分じゃまだ全然たりねぇな……」

べたべたとガーゼにヘラで薬を塗り、それをノエルさんがぺたぺたとフェイトに張ってゆく。
俺が最後の1枚に塗り終わって振り向いた時には、フェイトの患部は最後に張る箇所を除きガーゼに覆われており、心電図も接続がされていた。
流石だ、彼女は夜の一族の戦闘にも駆り出されて治療する事もあるだろうから、この程度じゃ修羅場にすらならないんだろう。

最後にガーゼがずれたり剥がれたりしないよう、包帯を巻いてゆく。
しかし、ようやくひと段落ついた。
というか、あとはフェイトが回復するのを神に祈るしかない。
これで心臓が止まったら本気で打つ手が無くなって死体の処分方法を考えなきゃいけなくなる。


「検査を待たないと断言できませんが、失血が酷く栄養失調も併発しているようです……」

無くなった点滴を取り替えつつ、ノエルがフェイトについて聞きたそうにしていた。
何て話せばいいか……いや、どの道忍お嬢にはノエルから話が行くんだ。
月村家の庇護下にある俺に、嘘はつけない。
ヘタな嘘ついても調べられたら一発で割れるし。

「血液型出たか……O型……あぁその子なんですけど……忍お嬢も交えて説明したいんで明日っていうか世が明けたら朝イチで時間取れませんか?できればお嬢とノエルさんとの3人だけで」

「輸血開始します……これで持ち直してくれればいいんですが……そこまでですか?では余程の……」

「あー……多分、ちょっとした騒ぎなるんじゃないかなぁ……俺も身の振り方考えないといけないかもですよ」

「カズフサ様のですか?」

「俺の出生にも関わる話なんで……まぁまずは朝までこの子のバイタル監視してないとですけど」

「少し休憩なされては?」

「んにゃ……あぁ……そうですね。ちっと外でタバコ吸ってきますわ」


俺はタバコとボロボロになった金属片を持って外に出た。
空はやや明るい。
携帯を見たら5時を回っていた。


「クソッたれの世の中だぜ……お前もそう思うだろ?デバイスさんよ」


手にはデバイス、バルディッシュがそこにあった。



[29345] 03
Name: スマフォ超欲しい◆be57115b ID:caa5b97b
Date: 2011/08/18 17:10
前書き

ヴィヴィオかわいい。
違った。
いや、違わないけど。

前書きおわり。






下らない事を考えていた。
つーか正直、マジメに考える気が失せた。
タバコを吸ってる時間くらい、現実逃避したっていいだろう。

俺が考えていたのは、タバコの煙はどこに行くんだろうって話。
今は眼に見えている煙でも、やがて霧散して消えてゆく。
けど物質としての煙だったものは、厳密に言えば何処かにはあるんだろう。

どこにあるかは誰にも解らない、どこに行くかも誰にも解らない。

ヘタしたら……1年後に地球が存在するのかさえ。
そうなのだ、恐ろしい事に、このまま行くと地球消滅とか普通にありえる。
この街には闇の書があり、この世界は………

最早リリカルな世界とも呼べなくなりつつあるのだから。




タバコを携帯灰皿に放り込みポケットにしまう。
普段は1度に1本しか吸わない俺が滅多にやらない連続喫煙で3本のタバコを灰に変え、右手に持っていた金属片に話しかける。

「俺はカズフサ。魔法は使えないしデバイスも持ってないけどワケあって管理世界ってのがあるのと、魔法が存在するのは知ってる」

【………】

「お前の持ち主は治療して……まだどうなるかは解んねぇけど助ける心算だ」

【………】

「その後お前らがどうするかは知らん。出て行きたきゃ出てけばいい。ここに居たいならまぁ食いモンと寝る場所くらいならどうにかできる『かも』しれん」

【………】

「別にお前に俺のデバイスになれとかわ言わねぇよ……ただ聞きたいんだが……何があった……?」

【………】



俺が聞きたいのは、知りたいのは……つまりは『それ』なのだ。


今、この街で何が起きているのか。
誰が居て、誰が居ないのか。





どこまで『ズレている』のか。






今最悪なのはバルディッシュの位置を捕捉可能であろうプレシアが、フェイトにトドメを刺すためにこの屋敷を中心に広域殲滅魔法を使う事。
もしくは、ヒーロー君、もしくは彼以外の俺の知らない転生者がフェイトの魔力パターンを捕らえてトドメを刺しに来ること。
さらに挙げるとするならば、『ハーレム気取りか?クズが!』とか言って俺を殺しに来る転生者が居た場合。

飛躍して言うならば、なのはお嬢、ユーノ坊ちゃんの死亡。
アースラクルーの全滅。
管理局の崩壊。
ジュエルシードによる次元震、次元崩壊。
手付かずの闇の書、暴走、崩壊。



そして仮にそれら全てを乗り越えたとしても、スカリエッティの『原作知識持ち狩り』『レアスキル目当ての転生者狩り』。
俺以外にもヒーロー君が居るからな。
他にも居ないなんて誰にも言えない。
そして、ソイツらが管理局上層部やスカリエッティにちょっかい出して捕まったり、または最初からグルになっている可能性が否定できない限り……

例を挙げるならきりが無い。

転生者の存在の証明?

俺かヒーロー君を連れてくればいい。

じゃあ、居ない事の証明は?



まぁ、一番の笑いどころがソレを知った所で俺には何も対策する方法が無い事なんだが。


「ダンマリかよ……お前が完全に機能停止してるってワケじゃねーのは解ってんだ。鏡ごしにコアが光ってんのを見たからな」

【………ザ】

「ん?」

【Z……Z…gggggg…】

「言語野の故障……いや、発音まわりか?俺が何を言ってるか聞こえているか?理解しているか?」

【Zi……Zizizizi…】

「ワカんねぇよクソが……とりあえず聞こえてて理解できてるが表現できないっつーつもりで対応するぞ」

【gggg………PIiiiiiiIII】

「わかった。わかったからうるせぇ少し黙れ。とりあえずここの敷地の責任者と話すからお前は黙って聞いてろ。な?」

【Pi………iht】


「宝石に話しかけるなんて……リアリストな貴方が実はそんなロマンチストだったとは知らなかったわ。そして喋る宝石もね」

「うおっ?!」


急に後ろから話しかけられて驚きつつ振り向くと、そこには紫の髪を腰まで伸ばした女性……月村忍がそこに居た。
年は18と俺より3つ下だが、その落ち着きと頼れる感は俺なんぞより遥か高みにある、月村家の長女だ。
前世含めると俺の方が倍は生きてるんだがなぁ……


「来んのがはえーですよお嬢。ノエルさんの差し金で?」

「えぇ。後で時間が欲しいって言われたけど私今日デートなの。長い話なら早めに済ませたくて」

「あぁ……そりゃダメだ。早めにキャンセルの連絡をして下さい。そんくらい今日の話はガチです」

「ワケありって聞いてたけど…………貴方がそこまで言う程の物なの?」

「何と説明したらよいのやら……そうですね……ちょっと前に市街地で巨大な樹木が突然現れて消えたって事件があったでしょう」

「アレね……頭が痛いわ。私もたまたま肉眼で確認したけど、終わってみると何の痕跡も無いんだから。お父様達も調査に追われててね……で?それと瀕死の少女に関わりが?」

「あるんですよこれが。ちなみにヘタすっと年内にもっとでかい規模の災害が発生する見通しです。ちなみにその場合……みんな死んじゃいます」

「それはこの地の管理者たる月村家が……という事かしら?」

「いいえ?」

「海鳴市が丸ごと巻き込まれる規模なのかしら?」

「冗談じゃないです。そんなので済むなら苦労しないですよ。北海道にでも逃げりゃいいんですから」

「掴みきれないわね。それ以上だと少々現実味を失うわ」

「でしょうね。とりあえず一旦ノエルさんと合流しましょう。彼女の容態も気になりますし」

「いいわ。私も彼女の顔は見ておきたかったし」


バルディッシュをポケットに戻しお嬢と一緒にフェイトの所に戻る。
改めて部屋に戻ると解るが……やはりまだ大分臭う。

「……………」

振り返るとお嬢が顔を顰めていた。
単純に嫌な臭いがどうとかでは無い。
もっと深い……肉が腐った臭いを、嗅ぎ取ってしまったんだろう。
解りやすく言うなら、死臭を……だ。
フェイトの服はビニール袋に入れて硬く縛っておいたが、彼女の髪や体に染み込んだ臭いが色濃く室内を染め上げている。
ノエルさんは床にこびり付いた汚れを水で洗い流していた所だった。
手術室は血液を含め様々な液体が流れるため、床が洗えるようにゴムになっているのだ。


「この子が……うわっ……何……こんな……ノエル、容態は?」

「皮膚総面積の13.7%に当たる範囲が火傷(やけど)によるダメージを受けており、内3%がレベル3のダメージを受けていたため切除を行っています。細胞外液の急速な喪失により処置中にバイタルが危機的レベルまで低下しましたが、乳酸リンゲル液を含めた峰石家系列の秘薬で点滴を行い持ち直しています。現在は安定していますが……余談を許さない状態です」

「オイちょっと待ってくれ、切除っつったか?」

「壊死、炭化した皮膚は一刻も早く取り除かねばショック症状の際に深刻な事態を招きかねませんでした。切除した後については湿潤環境……カズフサ様の湿布がありましたので」


ノエルさんが眼で指し示した方を見ると、黒くこげたナニカの塊が乗っているスチール製のトレイがあった。
焼肉で焼きすぎて炭になった肉というか……3%ってお前……フェイトの手のひら3枚分だぞ……
そんな量の『切除しなきゃ命に関わる』ものを俺は放置してたなんて……
恐らく湿布を張りながら切除してくれたんだろう。


「あぁ……そうか。クソ、俺のアホが。すいませんノエルさん。助かりました」

「いえ……」


火傷ってのは厄介で、切り傷とかと違って範囲的にダメージを受ける。
軽度ならまぁ冷やして終わりなんだが、重度だと始末に終えない。
ノエルさんを呼んで正解だった。
俺だけで対処してたら……きっとフェイトを殺してしまっていただろう。


「誰かが見ていないと駄目かしら」

「はい。出来れば火事や事故の対応経験のある外科医か……適わなければ私に経過を見させていただきたく」

「ならここはお願い。貴女にも『聞こえるようにしておく』から。出ましょうカズフサ。話は此処でなくてもいいんでしょう?」


そう言って足早に手術室を出て行く彼女の背中に、一瞬俺と同じものを感じた。
あれは、怒りだ。
この街で少女が明らかにまっとうな手段じゃない方法で殺されかける。
そんな事があった事実、行った人物、防げなかった自分、あるいは許容した世界、もしくは運命。
そういった全ての物に対する、怒り。
月村忍は、少女のあんな姿を見て冷静で居られる女じゃない。

何故なら、平穏とか、平和とか、安心して眠る事ができる事とか、暖かい食事とかの価値を、よく解ってるからだ。
あぁ、そうさ。
俺も同感だ。



アイツは…

そりゃあちょっと辛い眼に逢うかもしれないが

生涯の友達が出来て

頼れる使い魔と相棒が居て

これから知らなかった景色を見て

食べた事のなかった御菓子や食い物を食べて

聞いた事なかった音楽を聴いて、歌って

明日はどんないい事があるのかワクワクしながら布団で寝てればいいんだよ。



クソが。



現状説明

フェイト:危篤 容態が急変すると一気に心停止に行くレベル
アルフ:死亡 狼状態 グロい かもされつつある
バルディッシュ:機能停止一歩手前 変形機能、発音機能、魔法行使機能損傷 自己修復中だが修理メド立たず
ノエル:フェイトの治療継続中
主人公:世界丸ごと死亡フラグに気付く(NEW!!)

年齢について
月村忍(18)大学生は無印公式サイトキャラクター紹介より

現状説明おわり。



[29345] 04
Name: アンドロイドでいい(謙虚◆be57115b ID:caa5b97b
Date: 2011/08/18 19:43
前書き

巨大ネコの日?
この前すずかお嬢がお茶会開いてたからそん時じゃないかなぁ。
俺?アサシンクリード2で忙しかったから……
いやだって、ヒーロー君怖いし、フォトンランサーとか死ぬっしょ。

~フェイト初登場を全力で見逃した日について 山近カズフサ~

主人公はいろいろ立て続けに起こり過ぎて冷静なつもりでも実はテンパってたりします。

前書きおわり。




困難にぶつかった時、混乱して目標を見失った時。
最も大事な物が何なのかをまず初心に立って思い出し、優先順位を付ける。
出来る事と出来ない事を見定めて、できる事からこなして行く。

しかしそれでも、最善の正解を選び続けたとしても成功するかは別の話で。
特に、俺みたいな出来る事からして全く思い浮かばないようなヤツは。




「この辺にしましょうか」

「此処には随分来ていなかったけど……こんな趣味があったのね」

「いや、根っこが素材になるんで」

「だと思ってた」

「人が悪い」


俺達2人が来たのは俺ん家の裏にある小さい花畑。
解ってると思うが観賞用ではなく、勿論薬の材料としてだ。
根っこがニンニクの成分に似ていて、滋養強壮の効果がある薬を作れるのだ。
といっても使った高町の坊ちゃん曰く、戦闘時には気休め程度だとか。
カフェインの錠剤をガブ飲みしたほうが意識がハッキリすると言われた時には泣けた。
あぁ何でカフェインの話が出てくるかっていうと、彼らが戦闘を行うのが深夜だから。
それでも月に1度渡してるんだけどね。
興奮が戦闘じゃなくて性欲にも行くらしく、まぁホラ……ウチのお嬢と……な。

ちょっと前に「彼のエッチが急に激しくなった」と相談された時には対応に困ったもんだ。
結局体力の付くような似たような薬を渡したけど。
その材料が目の前にあるとは……流石に気付いて無いだろう。
根っこ以外は価値が無いし、普段見ない筈だ。


「で、何処から話してくれるのかしら?」

「いやもう……何処から話したモンでしょうか……」

「貴方ねぇ……」

「ホントですって。ヒトの歴史を話せって言われて聖徳太子かキリストから話を始めるか、原始人の話を始めるか、そんなありさまで。元々墓まで持ってくつもりだった話もありますし」

「ならそうね、リクエストするわ。私が知りたいのは次の3点。あの少女は誰でなんであんな怪我をしているのか、貴方が彼女について関わっている秘密、そして最後に貴方がこれからどうしたいか……今はそんな所ね」


確かに、判断材料が無い今だと浮かぶ疑問はその3つだろう。
最も、俺が説明したらそこから更に別の疑問が浮かぶ……というのは間違いなさそうだけど。


「……まぁ俺の今後は決まってますよ。死にたくない、のんびり生きたい。ガキの頃からそれだけはブレてないつもりです」

「解らないわ。兎に角知ってる事を全部話して」

「んー……俺が小学生の頃の事覚えてます?お嬢が低学年だった頃の」

「勿論。貴方が天才児として誰からも一目置かれていた時期だもの。今じゃ見る影も無いけど」

「辛口だなぁもうお嬢は。んじゃ何であの時俺は天才なんて言われてたでしょうか、ご存知で?」

「小学校高学年で連立方程式や二次関数、確率の問題を難なく解いていたからでしょう?正直、確かに凄いとは思うけどあそこまで持ち上げる必要は無かったと思うわ」



だって、私にも出来たし。
そう言ってお嬢はニヤリと哂った。
笑うのでは無く、哂った。
こえーよ。
いや、確かにお嬢が小学校高学年の頃には、同じ年の俺と同じ問題が解ける様になっていたんだが。
低学年の頃は俺と比較されて辛い目に遇ってたみたいだしなぁ。
高校生になって俺の知識があんまし役に立たなくなって凡人化し、高町ラブラブ大作戦とか企画してようやく仲が良くなったのだ。
それでも思う所はあるのだろう。
月村家から見れば本来は俺なんて、使用人以下の穀潰しだしな。


「ちょっと惜しいって所です。お嬢は俺という先人が居た。親に言えば参考書も買えて貰えた、勉強する事ができた。けど俺は?」

「………そうね、この辺りに年が近い年上は……貴方には居ないわね」

「そ、勉強もせずに、公式も知らずに、全くの無の状態からサラリと解いてしまったのが不味かったんですよ。世に居る数学者を纏めてコケにするようなモンですからね」

「………とても興味が出てきたわ、ソレ。特に天才だった貴方が高校の途中辺りから急に凡人に成り下がった辺りがね」

「答えは簡単。知ってたから。デジャブっていうか他人の記憶っていうか、俺は高校卒業程度の知識を最初から持ってたんです。だから高校生になったら化けの皮が剥がれた」

「ふぅん……」

「いやホントなんですって。だから話したく無かったんだよなぁ………」

「失礼ね、信じるわよ。………2%くらいは」

「低いか高いかは聞かないほうがよさそうだ」

「高いわよ?正直、他に色々考えてたけどどれも1%以下だったもの」

「あー」



ポケットからタバコを出して咥え、少しお嬢から距離をとって火を点ける。
さっき吸ってからあんまり時間が経っていないせいか、あんまり旨く感じない。


「でまぁ、その知識の中には色々よくわからん知識もあったんですよ。例えばお嬢が18の頃には既に高町の坊ちゃんと付き合っていて、家族ぐるみの付き合いがあったとかね」

「ふーん…え?ちょっと貴方今なんて」

「だから知ってたんですよ。上手くいくって。俺がデートとか告白作戦をしたのは、まぁちょっと後押しになって付き合い始めるのが数ヶ月早くなったくらいの誤差です」

「頭痛くなってきたわ。あぁもう、確かにそんな話をするなら長くなるわね……恭也にも聞かせられないの?」

「まぁお嬢から話す分にはいいんですけどね。俺から話せるのはお嬢とノエルさんだけです。ちっと歩きましょうか」


そう言って俺は歩き出す。
目的地は決まっている。
どの道、そろそろ始末をつけなければ成らない。

「ちょ、ちょっと!」

「んでまぁその知識の中にはもっと奇天烈なのがありましてね、なんでも世の中に魔法があるんですって。メラとかルーラとか使えちゃったり」

呼び止める声を無視してずんずん進む。
長くダラダラと説得してる時間も無い。

最悪、話の流れによってはフェイトを殺して山に埋めに行くなんて事態になってもまるでおかしくないのだ。

どうする?
いや、どうしたい?
フェイトの戦力化?
魔法の解析?
PT事件はどこまで進んでいる?
今後の影響は?
こっちもじっくり考える時間が無かった。
フェイトを拾ってからまだ5時間も経過していないのだ。

何が起こってるのか解らない、対処の方法も解らない。
全てに備える事は出来ず、たった一つの事に備えるにも俺は余りに無力で。


「あの少女は魔法使いなんですって。で、なんか魔法使い同士でやりあって行き倒れてたのを俺が拾ったんですよ」

「カズフサ貴方………記憶操作でも受けたの?それを本気で言ってるなら、私もちょっと貴方への接し方を考えないといけなく………何……この臭い」

「何って、さっきの少女からも臭ってたでしょう?」

「でも、こんな、いや、何それ、ねぇ………幻覚使いの攻撃でも受けてるのかしら?」

たどり着いた先は俺の軽トラ。
朝日の下で見ると、ドアやら荷台やらが血まみれでホラーな事になっているのが見て取れた。
そしてこの、むせ返るような死臭。

「幻覚でも作り物でもドッキリでもない………彼女の使い魔ですってさ」

血まみれになっているシーツを引き剥がす。
液体を吸って重くなっているシーツはバサリではなく、ジュリュリと粘着質な音を立て、その下に隠していたモノを白日の下に晒す。


「ヒッ……な……」


こちらも明るい場所で見たのは初めてだが、酷い有様だった。
右前足が根元から無い、毛並みは所々黒く焼け焦げ、眼球も片方は破裂してしまっており、瞼ごと無くなって窪みになっていた。
アバラから下腹部に掛けての裂傷は深く、骨の無い下腹部からは腐った内臓が……



「マジでヤバイんですよ。こういう怪我を負うような殺し合いが、今この街でまかり通ってる」


世界、或いは補正、或いは運命、或いは……フラグ?とでも呼べばいいのだろうか。
何故俺に見せ付ける。
そんなに死にたいのなら俺の居ない所でやってくれ。



アルフの死体が俺に訴えて来ている様な錯覚を受ける。
バカな、錯覚だ。
そんな事……あるものか、あってたまるか!畜生が!




今更だ。
余りに今さら過ぎた。

何かサインがあったのだろうか。
俺はこの世界で、何かしておくべきだったんじゃないのか?

この結果は、俺が何もしないでただダラダラと生きていた事に対するツケだとしたら……





その時。


「あれ?」



その声は、今までの流れを用意に断ち切るほどに軽くその口からこぼれた。
純粋な、疑問。



「ん?」

「ねぇ……コレって」




最初は一度、大きくぐらりと。


そして、二度、三度、四度とどんどん大きく。


地面が揺れ始めた。





「おい、おいおいおいおいふっざけんじゃねぞ。オカシーだろコレはいくらなんでも……くそっお嬢!!屋敷へ!!」

「貴方は!?」

「自分ち!!あいつをほっとけねぇ!!」


揺れはどんどん大きくなる、大きくなり続けている。





思い当たるフシは1個しかない。




「そんなに死にてぇなら首でもくくれ!こっち巻き込むんじゃねぇよ!!!!」









次元震だ。



[29345] 05
Name: ギャラクシーでも可◆be57115b ID:caa5b97b
Date: 2011/08/18 21:11
最終話と思ったらそんな事は無かった。区切りがいいので一端切り。

前書き

世界が違えばルールが違う。
俺たちはただ致命的なまでにその事に気付かなかっただけ。

前書きおわり。




「ノエルさん!」

「彼女を抑えて下さい!」


なんとか手術室に飛び込むと、ノエルさんが俺に叫んだ。
大地震と言って誰も否定しないクラスの地震は数分経過した現在も続いており、手術室の中も酷い有様だった。
棚やその扉は全て固定やフック付きであるため倒れて中をブチ撒けるような事にはなっていないが、治療に使っていた器具を乗せた車付きの作業台がいくつか地面に倒れ、ノエルさんは点滴を抱えて手術台になんとかしがみついている状態だった。
今投薬をやめるとフェイトは間違いなく死ぬ。
安定したってのは点滴を続けているのが前提なんだ。
今も傷口からは体の維持に必要な成分が漏れ続けているだろう。
文字通り穴の開いたバケツに後から後から水を入れてごまかしているのが現状。

その状態で大人の腰の高さからとはいえ固い床に転げ落ちるなんて考えたくも無い。
手で押さえるような余裕も無く、俺はフェイトに覆いかぶさって手術台ごと抱きしめる。
苦しそうにしてるのは若干心が痛いが、今はそれどころじゃない。

そして、暗転する室内。


―――――配電システムのどっかがイカレやがった!!

発電所か、送電線か、変圧器か、この家の中の配線か、ブレーカーか、どうでもいい、どの道どうにもならん。


「いつまで揺れる気だ?クソ、ノエルさん。本家の屋敷は?お嬢はどうなりました?」

「先程ファリンと連絡が取れました。お怪我も無く保護できたようです。現在は揺れが収まるのを……ぐっ」

「こっちに!!なりふり構ってらんねぇでしょう!!」

「はいっ!!」


揺れが更に酷くなり、抱きしめるようにしていた点滴がぶんぶんと揺れる。
姿勢が維持出来なくなったノエルさんをフェイトの足ごと手術台に抱きつかせる。
俺は点滴台から点滴のパックを毟り取ると、台を蹴飛ばしてフェイトの体の保持に戻る。
心電図計?んなモンとっくに部屋の隅っこにころが……やべぇ。
フェイトの体が……冷たい。
もちろんこの部屋の気温には気を使ってたし、治療後の彼女にはタオルケットを掛けていたが、いまはもうそんなものはどこかに行った。
薄暗い部屋じゃ見つけるのに時間がかかるだろうし、そもそもどんなモノが付着してるかわかったもんじゃない。
ただでさえここの床は……くそ。

体が小さすぎる。
クソ、もっとメシ食っとけ畜生が。
体力の無い状態での体温低下は……複数臓器の機能不全……すなわち死を容易に招く。


「ちょっと頼む!すぐ戻るから!!」

「カズフサ様ッ!!」


ノエルにパックを押し付けてフェイトの腰の辺りに移動してもらい、俺は手術台を突き飛ばすように離れてドアに向かう。
別にこの建物は収容所ってワケじゃない。
手術室にこそ窓は無いが、それ以外は特別な作りってわけじゃない。
つまり、朝の今なら最低限の光量がある。
夜じゃなかった事に感謝しつつ、そもそもこんな事態を引き起こしたどこぞのアホを呪い、つまづくように廊下を走る。


「だぁクソ、アホが!!ざけんなハゲ!!死ね!!百回位死ね!!もしくは死ね!!!」


中途半端にゆっくり移動すると揺れに翻弄される。
跳ねる様に走りドアが……開かない、蹴り開ける。
家中からミシミシと悲鳴が聞こえるが、まさか崩れやしないよな?
一階建てでホントよかった。
これが高層ビルだったら…………オイ。
もう10分以上たってんぞこの地震。

波なんてもんじゃねぇ、ずっとマックスの揺れでだ。
市街地は……考えたくもねぇ。
万単位で死人が出るなんざ………いや、そもそも5分後に地球があんのか?それすら怪しい。

タオルケットを数枚掴んで手術室に戻る。


「戻った!!」

「カズフサ様!!おか」








ゴン、と。







明るい通路から真っ暗な手術室に目が慣れるまでのほんの一瞬。

何か重くて硬いものが当たる音がした。

続く破砕音、プラスチックや金属やノエルやガラスが砕ける音。

こちらに転がってくる金属の塊。
手術台の上にあった照明だ。
恐ろしく頑丈に出来てるはずなんだが、想定外の長時間の揺れについに耐えられなくなったようで千切れてしまったんだろう。

おい、こいつは何処にあった。
その下に居たのは………


「ノェルゥッ!!!!」


部屋に飛び込む。
揺れに翻弄される彼女の上半身を起こし、手術台に背中を押し付けて座り込み、ノエルに呼びかける。
反応が無い、新しい血の臭い、頭に重い衝撃、何だ?

「っつあぁぁぁああああ!!!!!」


手術台から転げ落ちてきた、フェイトだった。

俺の体の上を跳び越して目の前で頭から落ちかけているフェイトの肩を掴んで、無理やり手繰り寄せる。
近くに落ちていたタオルケットを掴み、そのまま2人を抱きしめる。
肩に掛けてやる余裕なんてない、ただ抱きしめるその手に持っているだけ。

俺に出来る事は、余りにも少なかった。

出来る事は、ただ足を突っ張って背中をひたすら手術台に押し付けて体を固定し、2人を抱きしめるだけ。










あぁクソ、神様。










どうか俺たちのこの足掻きが、無駄になりませんように。








そして死ね、クソが。



[29345] 06
Name: 防弾腹筋っていう本が欲しい◆be57115b ID:caa5b97b
Date: 2011/08/18 23:31
前書き

バルディッシュも犠牲となったのだ……

前書きおわり。



バタンという音と共に、世界は静寂を取り戻した。
耳鳴りが酷い、平衡感覚が狂って世界が傾くというか……
前に傾いたり後ろに傾いたり、右に傾いたり左に傾いたり、自分の中の基準面が水面に揺れる板切れのように安定しない。
暗い。

一切の光がなく、ただ只管に暗い。



「一瞬死んだかと思ったぜ……マジで」


地獄か何か死後の世界と勘違いしそうになった。
俺がここが現実だと意識できたのは、両手に感じる重みが、俺に空想に逃げる時間を与えてくれなかったから。
ゆっくりとノエルを床に下ろし、フェイトを手術台の上に戻してタオルケットをかけてやる。
揺れで閉まったドアを明け、光源を確保した。
さすが、揺れて閉まったってのでオカシーとは思ったが手術室のドアだけあって頑丈だったらしい。
スームズに開くことが出来た。
ノエルは額から側頭部にかけて傷が出来ていたのでガーゼで簡単な処置をする。
脳にダメージがあったらもう正直どうにもならん。
ここの医療設備じゃ対応できないい病院も今頃パニック……物理的に潰れてなけりゃいいが……
ノエルを呼んだ身としては思うところはもちろんあるがとにかく、生きていることだけを喜んで他は全部後回し。


ひと段落だ。
わからんが、わからんことだらけだが。
とりあえず今俺は生きてここに居る。



疲れたよ。


本当に疲れた。
よくよく考えたら俺寝てねぇし。

この家も改装っつーか……建て直しだな。
ココが無事だったんだ、本家の連中は心配しなくても大丈夫だろう。

本来絶対禁煙である手術室で、俺は潰れてよれよれになったタバコに火を点けた。
吸わなきゃやってらんねー。

「ん…ここは」

「お、目ぇ覚めた?」

「はい、揺れは……収まったのでしょうか?」

「第一波はね」



あとはプレートのダメージ次第だが……いや、おい、待て。
こっから、マジモンの『普通の大震災』なんぞに繋がったら……マジこの地方滅びるぞ。
つーか……ちょっ……さっきの揺れ、『都市規模』だよな?
地球全土だったらお前……いややめよう、考えるだけ無駄だ。
こう考えるんだ、復興で雇用が生まれて景気なんてすぐ上向きに戻っちゃうさと考えるんだ。
ダメだな、頭ん中死に掛けてる。


【(所有者のバイタルの危機的状況を確認)】



あぁクソ腹も減ってきやがった。
確か俺の部屋に何か……




「カズフサ……様」

「あぁ悪ィ、今飲みモンと食いモン持って来るわ。頭打ってんだからジッと……おい、なんだよ」


ノエルさんが見ていたのは、俺じゃない。
その横、俺も見る、手術台、眠るフェイト、呼吸が安定して静かになった、そういや点滴が抜けてんな、無事な針を探さな……


「呼吸が……止まっています………」


「………ハァァアアアッ?!!」


【(システムスタート……失敗)】


フェイトの口元に耳をあてる……ホントに呼吸が……
って!!



「おいバカしっかりしろ!ふざけんなこんな所で死ぬんじゃねーよ!」



ここまできてか?
ここまでやっといて、結局全部無駄でした?


【(システムスタート……失敗)】


大概にしろよ、色々ナメ過ぎだ。



フェイトの胸元に耳を当てる。
包帯に染み込んだ薬剤と体液が頬にべちゃりと付いて気持ち悪いが、気にしてる場合じゃない。

「………くそっくそっくそっ止まってやがる!!」

【(システムスタート……失敗)】


心配蘇生方法は普通に知ってるが……だが、くそ、体も冷えかけてる!!

「ノエルさん!電気毛布……たしかそこのドアを開けると発電機があった!!」

「は……はいっ!!使用経験はあるので、壊れてさえいなければ……」


【(システムスタート……失敗 修復シークェンス開始)】


心臓マッサージ、胸の中心に手を置いて、5回!
この時に必要なのは、弱すぎない事!
例え肋骨が折れようとも、心臓が動くことを優先する!

「いっにぃさんしィごっ!」


【(使用不能部位をパージ パーツリセットを開始してハードウェアを再構成 魔法行使を最優先に)】


人工呼吸、起動を確保して鼻をつまみ、空気が漏れぬように……!!
色気なんて1ナノグラムもありゃしない、頭にあるのは、空気が漏れないように吹き込む事だけ!!
大きく口を開け、フェイトの口を完全に覆うように、肺が膨れて胸が上下するのを確認しながら、吹き込みすぎて肺が損傷しないように!!


【(第3魔力発振システムリセット 第14、第19魔力コンデンサーリセット)】


「発電機動きました!」

「電気毛布は……どこだっけか……あぁそこだ!!頼む!!いっにぃさんしィごっ!!クソッ動けよこの」


【(変形システムリセット                         人口知能領域リセット)】


心臓マッサージと人工呼吸、どちらも全身を使う運動であり、通常は数分続けただけで行う方も体力を切らせてしまう重労働。
しかも俺は徹夜明けに体力はガス欠寸前、ノエルさんは負傷中、動ける限り続けるが、それでもワリィが長くは持たねぇぞ?!

「だからよ、早く帰ってこいっつんだこのアホが!!」


【(リコントラクションスタート……完了 魔法行使システム復元率7% 全体の体積の57%消失 78%の機能破棄 残存エネルギー0.2%)】


足がフラつく、腕が痺れる、頭ががんがんして、思考がまとまらない。


「くそっこのっ、アホ毛!痛い子!天然!……えーと脱ぎ魔!何でもいい!くそ!何でだよ?!動け動け動け!!!」


【(システムスタート.......オールシステム・エンゲージ)】


「10分が経過しました……カズフサ様……もう」

「すっこんでろ!!旨いもんだって食わせてやる!キレイな服だって着せてやる!旅行にだって連れてってやる!だから!」


【(術式:サンダースマッシャーを読み込み中....完了)】


拳を振り上げた、瞬間。
自分の中に稲妻が走った気がした。

「帰って来い!フェイトテスタロッサァアアアアア!!!」

【 GOOD LUCK 】


































ドクン


























END


おしまい。
一区切り。
24時間でどこまで書けるかの挑戦の意味合いもあったんですがせっかくの休日に俺は何をしているのでしょう。

バルディッシュは自己の機能を殆ど捨ててしまったので復旧不能です。
デバイスマスターが居ても物理削除されてしまったAIはちょっと……

短編ってのは広げた風呂敷を畳みきれない「こんな筈じゃなかった」ばっかりなんだよ!
今までも!そしてこれからも!
誰だって!何時だって!
みんな「まぁ多分何とかなるだろう」って必死に書いてるんだよ!!
バーカ!(過去の自分に対して)


いい加減タイトル変更しようか真剣に悩んでる。

ここまで書いた今振り返って01話を見るとすごいほのぼのに見えるのはきっと作者が病気だから。
いや、02話が悪かったんだよきっと。


裏編で表現するつもりなんですが……あ、裏編書きます。明日以降に。
裏編では「蛇足」というのが今回のメインテーマの1つですね。
いや、最初はフェイトとイチャイチャするだけのSSになる予定だったんですが……ほんとどうしてこうなった。

ヒーロー君について本編中は一切描写を書いてないのですが、皆様のお察しの通りわざとなんです。
本編は表編というか、カズフサが知った事しか読者は解らないようにしてあります。
これから裏編というか1つの解釈編ですね。
推理して欲しいとかそういうのじゃなくて、表編は記載してない所は読んだ人が好きに空想して、作者的にはこんな感じで考えてましたよみたいな。

ひぐらしとかうみねこ級に未登場キャラとかが出てくるので、そんなに深く考えないでください。






ヒーロー君がんばれ、超がんばれ。



[29345] そんなわけで改定
Name: スマフォ欲しい◆be57115b ID:caa5b97b
Date: 2011/08/24 02:51
前書き

正直本来書くはずだったテンプレオリ主がやっちゃった世界の『小話』っていうのが
フェイト編で、書く順番を逆に後ろから書いてるような形だったんですね。
なので後半になるにつれてクオリティは下がるというか作者本来のものになるんですよね。
っていうかフェイト編があんなに反響あると思ってなかったので。
どうしよう、解編とかサックリ人物紹介みたいな流れにしてしまおうか。
フェイトを拾ってイチャイチャするはずが気付いたら心臓止めてるような適当さなので、
なんかもうホントどうしよう。
っていうか気付いたらフェイト殺してるとかヤンデレの才能ありすぎだろ俺。
蘇生はしたけどさ。気付いたら死んでたんだよ、ホント。

フェイトたんとちゅちゅしたいお⇒人工呼吸
フェイトたんのおっぱいさわりたいお⇒ガチ心臓マッサージ


……あれ?

そんなワケで改定です。

今回感想はたくさん頂きましたが、E-!さんの言葉が一番的を射てるというか、成る程と思いました。

前書きおわり。




紅月ハルキ
スタイル【有能な無能】
本人の能力はテンプレオリ主そのもので、古代ベルカ関係者だったりデバイスを持ってたりする。
ほんのちょっとオリジナルストーリーより笑顔が増えればいいと想い、原作介入。
幼少期の高町なのはやアリサ、すずかと友好を持つ。
自称紳士であり、ロリコンはもげろと思っている。
JS事件では動物病院襲撃時にデバイスを展開し、介入開始。
フェイトと同じタイミングでプレシアに襲撃され、死亡。
カズフサを睨んだのはすずか狙いのロリコン転生者と一瞬勘違いしたため。
作品のタイトルとスタンスからすると大体あってる。

未登場の転生者
スタイル【蛇足】
型月系、東方系の複合能力者でアホのように強い。
フェイトに愛を注いでおり、安易な気持ちでフェイト側で介入。
よりにもよって高町サイドから全てのジュエルシードを強奪する。
猫こそ介入が間に合わなかったが、樹木や温泉、神社の犬と先回りして片っ端からイベントを潰す。
フェイトとなのはの決闘イベントでは、紅月も含めた2対2での決闘の末、クロノが現れる前に全て回収してしまった。
フェイト、紅月と同じタイミングでプレシアに襲撃され、死亡。

プレシア・スタロッサ
スタイル【不変】
ジュエルシードの回収速度が速い事意外はおおむね原作どおり。
しかし、クロノを含め管理局が現れた事から計画の前倒しを実行。
アルハザードが存在すると彼女なりの核心を持ち、フェイト達に海中のジュエルシード回収を命じる。
実は、この命令自体が囮で、集まった人間全てに対し殺傷設定で大規模次元魔法を行使。
この時に使用した魔法を行使する際、ジュエルシードを1つ使用して威力を底上げしていた。
結果、紅月ハルキ、未登場の転生者、アルフが死亡。
フェイトは表編の通りで高町なのはは全治2週間クラスの怪我、ついでにユーノも同程度の怪我。
なのはが比較的軽症なのは、転生者の高い戦闘能力を警戒し、肩に乗っていたユーノが防御魔法を全面に常時展開していたため。
アースラは大破、操舵不能となり海鳴りの沖合いに不時着。
たまたまクロノの援護をしやすいよう地球に来ていなかったらクルー全滅もありえた。
その間にプレシアは時の庭園で残り14個のジュエルシードを発動、次元震を発生させ虚数空間に消えた。

クロノ・ハラオウン
スタイル【勇気】
次元震発生後、エイミィが発見した発生源に転移。
崩れ行く時の庭園で暴走する魔力炉を破壊。
残存魔力を全てジュエルシードに打ち込むも、成果は上がらずにその後行方不明。

リンディ・ハラオウン
スタイル【自己犠牲】
クロノと共に時の庭園に突入。
次元震の収束は最早不可能と判断し、周囲の空間を結界から切り離し、ジュエルシードごと虚数空間へ消えた。
その後行方不明。

エイミィ・リミエッタ
スタイル【ナチュラル】
原作より大規模な次元震を観測し、アルフらの協力を得ずに時の庭園の座標を割り出す。
艦長及び、執務管が行方不明になった後、管理局に救難信号を発信。
戦艦2隻が派遣され、牽引されたアースラごと帰還。

ユーノ・スクライア
スタイル【不屈】
彼の一族は遺跡の発掘、危険なロストロギアの回収と管理局への引渡しを行っていた。
その際に管理局から支払われる謝礼により、生活費、及び遺跡の保護を行っている。
しかし、予算不足により今回の不手際が発生。
目の前で自分達(決してユーノ個人が原因では無い)のせいで人が死んだのを目撃し、以後ロストロギアの回収と封印に生涯を費やす。
その過程で、皮肉な事に最終的に無限書庫に席を置くことになる。
最も、流石に室長にまで上り詰める事はなかったが。
資金調達と運用の重要さに目覚め、スクライア一族の族長に一時席を置いていた際に保護作業の完了した遺跡の観光地化を進め、企業を立ち上げる。
観光企業スクライアカンパニーは、その後長く繁栄を続けた。

高町なのは
スタイル【守護】
一連の事件後、高校卒業と同時にユーノの手伝いのため、家族に事情を説明して管理世界へ渡る。
以後、スクライア一族と活動を共にした。
発見したロストロギアの封印作業、ならびに管理局への引渡しを一手に引き受ける。
24歳の時にユーノと結婚、最終的に娘を2人授かる。
40歳の誕生日にスクライア一族の第一線を引退、スクライアカンパニーの女社長としてその腕を振るった。

フェイト・テスタロッサ
フェイト本人から発していたアルフの死臭、移動できない程の怪我から、長時間アルフの死体と共に居たと思われる。
使い魔とデバイスを失った彼女の公的記録は、管理世界にはその後存在しない。

八神はやて
通称、海鳴大災害から行方不明。
少なくとも高町なのはが存命中に闇の書事件は発生しなかった。


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