2011年06月15日
[福岡]脱原発運動を監視する「自警団」
6月11日、福岡の脱原発デモの集合場所である警固公園に某業者が集音マイクを設置して、デモ出発前およびデモ後の集会の音を「監視」していた。その監視の結果、音量が一定のレベルを超えた場合は訴訟を起こすというような警告も出ていたという(デモの主催者は依頼者を特定できていないようなので、これは推測だろうが、そういう目的で設置している以外に考えにくい)。
私はその業者に名前を尋ねたが「依頼されている業者です」としか答えなかった。目的が集会の音量監視であることは否定しなかった。なぜ業者名を、依頼者を隠す必要があるかを問うたら無視された。
天神地区の自治会組織*、警固公園横にある(公園の一部である?)宗教法人警固神社、または在特会のいずれかが依頼したものではないかと推測されるが、現時点ではいずれとも確定できないようだ。福岡市中央区役所に問い合わせれば業者の名前は明らかになるかもしれないが、それ以上は無理だろう。
さらに福岡市中央区役所の連中まで4人も動員して集会を「監視」していた。
区役所としては「前回のデモについて苦情が多数あったので、公園の使用にあたっては音量が他の公園利用者等の迷惑にならないように協力をお願いしたうえで、現状を確認した」ということである。
ある公共的な価値を持つ、あるいは持つとされるものが、市民生活の利便性を制限する、あるいはマイナスの効果を持つことなど無数にある。その一つが、憲法上の権利行使に基づいているときに、一部の市民の苦情に基づいて、区役所が貴重な労働時間を割いてまで監視的な行為をするというようなことが認められるならば、「どんたくは迷惑だ」という苦情に基づいても同じことをしなければならない。もちろん、それもありえないことではないし、そのような合意が法律化されることもありうる。すでに憲法上の権利を骨抜きにする法律を枚挙したらキリもないのが現状だ。
憲法上の権利行使であるものに対して選択的に警戒的な注意が向けられている。私たちはつねに危うい地点に立たされている。
憲法上の複数の条項自体も、お互いに整合性がとれないときはある。現状では経済活動の自由のようなものよりも、言論表現の自由の方が、「公共の福祉」の名の下に規制されるべきだということに暗黙の自警団的合意が成立している。そのような高度な判断に関わるものについて、区役所は、「市民の苦情」とやらに基づいたうえで、独自の判断で監視対象を選択し、言論表現の自由の規制に傾きかねない行為をなしたのだ。
どんたくや「ミュージックシティ天神」などは、福岡市が認可しているから問題ない、などという理屈は存在しない。憲法上の権利行使とのかねあいという高度な判断に基づくべき事柄については、むしろ市や国家のやることよりも、憲法上の権利に基づいて市民がやることについてこそ、権利侵害がないように最大限尊重されるべきであり、よほどの明確な根拠がないかぎり、特定の市民の言論表現の自由の行使を特別に監視を要する対象にして、言論表現に対する規制や萎縮効果につながりかねないようなことをするべきではない。これは憲法の「名宛人」は誰なのかという問題であり、憲法とは国家権力の市民に対する監視や抑圧をこそけん制するためにある。東京杉並区の議員が「デモは迷惑だから規制しよう」とか言い出したらしい。いまさら驚くまでもなく、ほとんどの政治家や弁護士や司法関係者はこの程度の認識と感覚なのだ。
依頼者が上に挙げた団体のいずれであっても、せいぜい「周囲に迷惑」というような理屈しか出さないであろうが、福岡市お墨付きの音楽イベント(ミュージックシティ天神)その他が市役所前広場その他公共の場所でとてつもなくでかい音を出してイベントをやっているのには文句の一つも言わないし、迷惑だとも思わないだろう。それは「経済活動の自由」だからだろう。私から言わせればWe love天神協議会が警固公園をクリスマスの時期にイルミネーションだらけにするのも公園の私物化(実際に私企業の宣伝の機会となっている)であり、「公害」だ。
集会を監視した団体にとっては、憲法に保障されている言論表現、集会結社の自由を行使するデモおよびデモ前の集会には、「市民の迷惑感情」以下の価値しかないということだ。このような自警団的なるものは、私たちが声を出し、言葉を発する空間そのものに攻撃を加えるものである。抵抗し、闘わなければならない。「憲法上の権利を死守」するという闘い、そしてわれわれはすでに「非合法」化されつつあることを前提にした闘い。
*「自治組織」として私が念頭においているのは「We Love 天神協議会」(馬鹿げた名前だ):この団体はミュージックシティ天神に協力しており、岩田屋前その他に監視カメラを設置しているのもこの団体である。こいつらは一種の「自警団」である。
私はその業者に名前を尋ねたが「依頼されている業者です」としか答えなかった。目的が集会の音量監視であることは否定しなかった。なぜ業者名を、依頼者を隠す必要があるかを問うたら無視された。
天神地区の自治会組織*、警固公園横にある(公園の一部である?)宗教法人警固神社、または在特会のいずれかが依頼したものではないかと推測されるが、現時点ではいずれとも確定できないようだ。福岡市中央区役所に問い合わせれば業者の名前は明らかになるかもしれないが、それ以上は無理だろう。
さらに福岡市中央区役所の連中まで4人も動員して集会を「監視」していた。
区役所としては「前回のデモについて苦情が多数あったので、公園の使用にあたっては音量が他の公園利用者等の迷惑にならないように協力をお願いしたうえで、現状を確認した」ということである。
ある公共的な価値を持つ、あるいは持つとされるものが、市民生活の利便性を制限する、あるいはマイナスの効果を持つことなど無数にある。その一つが、憲法上の権利行使に基づいているときに、一部の市民の苦情に基づいて、区役所が貴重な労働時間を割いてまで監視的な行為をするというようなことが認められるならば、「どんたくは迷惑だ」という苦情に基づいても同じことをしなければならない。もちろん、それもありえないことではないし、そのような合意が法律化されることもありうる。すでに憲法上の権利を骨抜きにする法律を枚挙したらキリもないのが現状だ。
憲法上の権利行使であるものに対して選択的に警戒的な注意が向けられている。私たちはつねに危うい地点に立たされている。
憲法上の複数の条項自体も、お互いに整合性がとれないときはある。現状では経済活動の自由のようなものよりも、言論表現の自由の方が、「公共の福祉」の名の下に規制されるべきだということに暗黙の自警団的合意が成立している。そのような高度な判断に関わるものについて、区役所は、「市民の苦情」とやらに基づいたうえで、独自の判断で監視対象を選択し、言論表現の自由の規制に傾きかねない行為をなしたのだ。
どんたくや「ミュージックシティ天神」などは、福岡市が認可しているから問題ない、などという理屈は存在しない。憲法上の権利行使とのかねあいという高度な判断に基づくべき事柄については、むしろ市や国家のやることよりも、憲法上の権利に基づいて市民がやることについてこそ、権利侵害がないように最大限尊重されるべきであり、よほどの明確な根拠がないかぎり、特定の市民の言論表現の自由の行使を特別に監視を要する対象にして、言論表現に対する規制や萎縮効果につながりかねないようなことをするべきではない。これは憲法の「名宛人」は誰なのかという問題であり、憲法とは国家権力の市民に対する監視や抑圧をこそけん制するためにある。東京杉並区の議員が「デモは迷惑だから規制しよう」とか言い出したらしい。いまさら驚くまでもなく、ほとんどの政治家や弁護士や司法関係者はこの程度の認識と感覚なのだ。
依頼者が上に挙げた団体のいずれであっても、せいぜい「周囲に迷惑」というような理屈しか出さないであろうが、福岡市お墨付きの音楽イベント(ミュージックシティ天神)その他が市役所前広場その他公共の場所でとてつもなくでかい音を出してイベントをやっているのには文句の一つも言わないし、迷惑だとも思わないだろう。それは「経済活動の自由」だからだろう。私から言わせればWe love天神協議会が警固公園をクリスマスの時期にイルミネーションだらけにするのも公園の私物化(実際に私企業の宣伝の機会となっている)であり、「公害」だ。
集会を監視した団体にとっては、憲法に保障されている言論表現、集会結社の自由を行使するデモおよびデモ前の集会には、「市民の迷惑感情」以下の価値しかないということだ。このような自警団的なるものは、私たちが声を出し、言葉を発する空間そのものに攻撃を加えるものである。抵抗し、闘わなければならない。「憲法上の権利を死守」するという闘い、そしてわれわれはすでに「非合法」化されつつあることを前提にした闘い。
*「自治組織」として私が念頭においているのは「We Love 天神協議会」(馬鹿げた名前だ):この団体はミュージックシティ天神に協力しており、岩田屋前その他に監視カメラを設置しているのもこの団体である。こいつらは一種の「自警団」である。
hesalkun at 12:36│Comments(5)│
この記事へのコメント
1. Posted by 前田年昭 2011年06月15日 16:54
報道によればすでに盆踊りの音量規制のために,みながイヤホンをつけて外に音がもれないようにして踊っているところもあるといいます(笑えぬ話だ!)。
【「憲 法上の権利を死守」するという闘い、そしてわれわれはすでに「非合法」化されつつあることを前提にした闘い】と的確に提起されているとおりだと私も思います。
とりわけ言論表現の自由とともにそれ以上に結社の自由を死守することが,不安定貧民にとって決定的だということ。「リベラル・左派」が自警団的な圧力がやってくる前に自主規制によって自警団的なものに道をあけていること。ーーここに気をつけたいと思います。
上記の名前からのリンク先をご参照ください。
【「憲 法上の権利を死守」するという闘い、そしてわれわれはすでに「非合法」化されつつあることを前提にした闘い】と的確に提起されているとおりだと私も思います。
とりわけ言論表現の自由とともにそれ以上に結社の自由を死守することが,不安定貧民にとって決定的だということ。「リベラル・左派」が自警団的な圧力がやってくる前に自主規制によって自警団的なものに道をあけていること。ーーここに気をつけたいと思います。
上記の名前からのリンク先をご参照ください。
2. Posted by しゃくしゃく 2011年06月15日 17:31
大変重要なご指摘だと思います。参加出来なかったので、今まで上手く理解出来ていなかったのですが、クリアになりました。有難うございました。
3. Posted by ono 2011年06月15日 18:37
> 前田さん
イヤホンをつけて盆踊りとは何とまた前衛的な!「フラッシュモブ」でそういうことやってましたけどね。
言論の内容と批判、それが可能になる空間、いろいろ考えないと危ういですね。
> しゃくしゃく氏
コメントどうも。まぁマイク問題は「犯人を炙り出す」とかそういう情動じゃなくて、「監視するなら勝手にすれば?」というようなスタイルとかも考えないといかんかもね。
イヤホンをつけて盆踊りとは何とまた前衛的な!「フラッシュモブ」でそういうことやってましたけどね。
言論の内容と批判、それが可能になる空間、いろいろ考えないと危ういですね。
> しゃくしゃく氏
コメントどうも。まぁマイク問題は「犯人を炙り出す」とかそういう情動じゃなくて、「監視するなら勝手にすれば?」というようなスタイルとかも考えないといかんかもね。
4. Posted by くー 2011年06月28日 11:55
玄海町長は九州電力と利益関係にあるようですね。http://hunter-investigate.jp/news/2011/06/post-59.htmlだから原発推進なんですか?原発の周囲では正常な運転でも白血病が多いそうですが玄海町長の孫たちは原発の周囲に住んでいるんですかね?
http://janjan.voicejapan.org/world/0812/0812110292/1.phpにドイツでの原発周囲の小児白血病についての報告があります。
http://janjan.voicejapan.org/world/0812/0812110292/1.phpにドイツでの原発周囲の小児白血病についての報告があります。
5. Posted by ono 2011年06月28日 13:57
くーさん
コメントありがとうございます。原発推進派が、自分や自分の子供が原発の近くに住むのは嫌だというまともな感情を持っているなら、まだ救いはある気がします。そんなことに想像も及ばないで、「日本の経済のために原発は必要だ」という命題を信仰している人が非常に大勢います。
コメントありがとうございます。原発推進派が、自分や自分の子供が原発の近くに住むのは嫌だというまともな感情を持っているなら、まだ救いはある気がします。そんなことに想像も及ばないで、「日本の経済のために原発は必要だ」という命題を信仰している人が非常に大勢います。